データサイエンスや機械学習において、柔軟かつスピーディーな開発は常に求められているもの。そんなニーズに応えるのが、Python(パイソン)のフレームワークである「Streamlit(ストリームリット)」です。初心者でも手軽に始められ、少ないコードでアプリを作成できるStreamlitは、データの可視化やアプリの試作ツールとして注目を集めています。本記事では、Streamlitの概要からそのメリット、ほかのフレームワークとの違いまで解説します。
目次
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Streamlitとは?
Streamlit(ストリームリット)は、Pythonで簡単にWebアプリケーションを作成できるフレームワークです。これまでWebアプリを開発するには、HTMLやCSS、JavaScriptなどのフロントエンド技術やバックエンドの知識が必要でしたが、Streamlitではそれらを記述する必要がなく、Pythonだけでアプリケーションを構築できます。そのため、初心者でも取り組みやすく、少ないコード量で実用的なアプリを作れる点が特徴です。
特にデータサイエンスや機械学習の分野で役立つことが多く、分析結果やモデルの予測を可視化するためのツールとして利用されています。Streamlitを使えば、スライダーやボタンなどのインタラクティブ(ユーザーが操作できる仕組み)な要素を簡単に追加できるため、データの変化を直感的に把握できます。
また、データ分析の現場では、チームメンバーやクライアントに成果を見せるためのダッシュボードやレポート作成にStreamlitが頻繁に使用されています。その柔軟性と使いやすさから、初心者だけでなく上級者にも愛用されています。
Streamlitのメリット
Streamlitは、開発と公開の手軽さが特徴のフレームワークです。そのメリットを2つ紹介します。
●手軽に開発が進められる
Streamlitのメリットとしてまず挙げられるのが、開発が非常に手軽に進められる点です。通常、Webアプリの開発を始めるには、複数の言語やフレームワークを学び、複雑な環境構築を行う必要があります。しかし、StreamlitではPythonだけを使って簡単にアプリを作成できます。Pythonの基本的な文法がわかっていれば、そのほかに特別な準備をすることなく、すぐにアプリ開発に取りかかれるのです。
また、Streamlitでは1行のコードからアプリ開発を始められるという手軽さも魅力です。例えば、画面にメッセージを表示したり、データをグラフ化して表示したりといったことが短いコードで実現できます。このシンプルさは初めてWebアプリを作る方にも親しみやすく、直感的に開発を行えます。
●公開が簡単
Streamlitはアプリの公開(デプロイ)が簡単なこともメリットです。多くのWebアプリ開発では、サーバーの設定や管理が必要となり、それだけで多くの時間を費やすことがあります。しかし、Streamlitではそのような煩雑な作業は不要で、コマンド1つでローカル環境のアプリを動かしたり、Streamlit Cloudを使ってインターネット上に公開したりできます。この手軽さは特に、試作したアプリをさっと共有したい場合に便利です。
また、GitHubとも連携できるので、開発中のアプリをチームで共有・改良することもできます。こうした仕組みにより、個人のプロジェクトだけでなく、チーム単位での開発でも利便性を発揮します。
このように、Streamlitは開発のしやすさと公開の手軽さという2つの大きなメリットを持ち合わせており、特にデータ分析や機械学習に携わるエンジニアにとって欠かせないツールとなっています。
Streamlitとほかのフレームワークの違い
Pythonには、Streamlitのほかにも様々なフレームワークがあります。ここでは、DjangoとFlaskと比較します。
●Djangoとの比較
Django(ジャンゴ)は、大規模なWebアプリケーションや長期的なプロジェクトに向いています。その理由は、データベース管理からフロントエンド構築まで、1つのフレームワークでカバーできるからです。特に企業の業務システムやECサイトのように、多機能で堅牢な構造が求められる場合に活躍します。
一方、Streamlitはデータの可視化やプロトタイピングを素早く実現するのに特化しています。DjangoではHTMLやCSSなど複数の技術が必要ですが、StreamlitはPythonだけで直感的にアプリを作成できるため、「とりあえず動くものをすぐに試したい」というニーズに適しています。
●Flaskとの比較
Flask(フラスク)はシンプルで軽量な設計が特徴です。必要な機能を自分で組み合わせる自由度があり、小規模なWebアプリやカスタマイズが重要なプロジェクトに適しています。例えば、簡単なAPIやミニブログの構築に向いています。
一方、Streamlitはリアルタイムのデータ操作やインタラクティブ性に強みがあります。FlaskではWebSocketやAjaxを駆使して追加実装が必要な機能も、Streamlitならデフォルトでサポートされています。そのため、データ分析やインタラクティブなアプリケーションを手早く作りたい場合、Streamlitが便利です。
●比較まとめ
Djangoは大規模プロジェクト、Flaskは柔軟性を活かした小規模アプリ開発に適しています。一方、Streamlitはシンプルさとスピード感が必要な場面でその真価を発揮します。「とりあえずアプリを作ってみたい」「データをわかりやすく可視化したい」といったニーズには、Streamlitがおすすめです。
Streamlitでできること
ここでは、Streamlitでできることを2つ紹介します。
●データの可視化
Streamlitは、データの可視化が得意です。例えば「このデータの傾向を直感的に把握したい」と思った際に、Streamlitなら複雑な設定や難しい作業は不要です。Pythonのコードを記述するだけで、簡単に折れ線グラフや棒グラフなどを表示できます。
また、Streamlitは「動的な可視化」にも対応しています。リアルタイムで更新されるグラフを作ることができるので、時間とともに変化するデータ(株価やセンサー情報など)の追跡にも適しています。
さらに、ユーザーがスライダーやセレクトボックスで条件を変更すると、その場でグラフが切り替わるようなインタラクティブな機能も備わっています。例えば、売上データの傾向をズームして細かく分析したり、特定の期間だけをピックアップして表示したりできるため、「使いやすい」と感じる可視化が簡単に実現します。データサイエンティストやエンジニアだけでなく、データに詳しくない方でも「見てわかる」表現を作りやすいのが、Streamlitの強みと言えるでしょう。
ほかにも、データ分析ライブラリであるPandas(パンダス)、可視化ツールのmatplotlib(マットプロットリブ)やPlotly(プロットリー)などと連携することで、既存のリソースを活用しながらよりユーザーフレンドリーなアプリを作成できます。
●ユーザーインターフェースの作成
アプリ開発をする際、ユーザーインターフェース(UI)の設計はとても重要な要素です。UIがわかりにくければ、どれだけ機能が優れていても、ユーザーに使ってもらえません。
この課題に対して、Streamlitなら直感的なUIを提供しています。例えば、Streamlitでは開発者がスライダーやドロップダウンメニューを数行のコードで追加可能です。そして、ユーザーはスライダーを動かすだけでデータ範囲を変更できたり、メニューから選択して結果を即座に確認できたりします。
また、StreamlitはUIのデザインをシンプルに保ちながらも、必要に応じてカスタマイズ可能です。例えば、配色やレイアウトを工夫することで、アプリの目的に合わせて見た目をデザインできます。デフォルトでも視覚的に整ったデザインが提供されるため、デザインの知識がない開発者でも安心して利用できるでしょう。
Streamlitの基本的な使い方
Streamlitのインストール方法やサンプルアプリの作り方を説明します。
●インストールと初期設定
Streamlitをインストールする前に、以下の3つを揃えておきましょう。
【前提条件】
-
Python
-
pip(最新バージョン)
-
仮想環境(プロジェクトごとにライブラリを管理するため)
【Streamlitのインストール手順】
Mac OSはターミナル、Windowsであればパワーシェルやコマンドプロンプトから以下のコマンドを実行します。
pip install streamlit
Streamlitが正常にインストールできたか確認するために、以下のコマンドを実行します。
streamlit hello
ブラウザでStreamlitが立ち上がれば完了です。
●サンプルアプリを試してみる
Streamlitが立ち上がった画面の左側に、デモのメニューが表示されています。ここにはアニメーションやマップ、データなどがサンプルとして動かせます。例えば、データのデモでは実際に表に項目を追加でき、それに応じてグラフが変化することを視覚的に体感できます。どれもStreamlitがインタラクティブに可動することを実感できるサンプルとなっています。
Streamlit Cloudを使ってアプリを公開する方法
Streamlit Cloudは、Pythonを使ったアプリケーションを簡単にインターネット上で公開・共有するためのホスティングサービスです。Streamlit Cloudを使えば、作成したアプリを簡単にインターネット上で公開できます。以下はその手順を詳しく説明したものです。
(1)GitHubアカウントを作成する
GitHub(https://github.com)でアカウントを作成します。
※すでにアカウントがある場合は、このステップをスキップしてください。
(2)アプリのソースコードをGitHubにアップロードする
アプリのソースコードをローカルPCで用意し、GitHubにアップロードします。以下はその手順です。
-
GitHubのリポジトリを作成する
-
ローカルで作成したStreamlitアプリのコードをGitHubにアップロードする
-
GitHub上にアプリのソースコードが保存される
(3)Streamlit Cloudにサインアップする
Streamlit Cloudのサイトにアクセスして、アカウントを作成します。
GitHubアカウントでサインインすることで、自動的に連携が完了します。
(4)公開するリポジトリを選択
-
Streamlit Cloudの管理画面にアクセス
-
「New App」をクリック
-
GitHubリポジトリを選択
アプリのコードが保存されているGitHubリポジトリを選び、デプロイ設定を行います。
必要な設定項目(ブランチやPythonスクリプト名)を入力します。
(5)デプロイ(公開)ボタンを押す
-
設定が完了したら、「Deploy」ボタンをクリック
-
Streamlit Cloudが自動的にアプリをビルドして、インターネット上に公開します。
-
デプロイが完了すると、アプリのURLが発行される
このURLを共有することで、誰でもアプリにアクセスできます。
Streamlitを使うべき理由
Streamlitは、PythonだけでWebアプリケーションを開発・公開できるフレームワークです。その手軽さと柔軟性が人気で、初心者から上級者まで活用できる優れものです。Pythonの基礎知識とStreamlitの使い方をマスターすれば、開発効率を向上できるでしょう。
「アプリの開発をするのではなく、頼みたい」というご希望がある方には、ビジネスマッチングサービス「発注ナビ」が開発会社選びをお手伝いすることも可能です。発注ナビでは、企業のニーズに合わせたシステムを開発できるベンダーやメーカーを数多くご紹介しています。
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