
「基幹システムと業務システムの違いがよくわからない」と感じたことはありませんか?会社のIT環境を整えるためには、この二つのシステムの役割や特徴をしっかり理解しておくことが大切です。どちらも業務効率化には欠かせませんが、役割や導入の目的、障害が起きたときの影響などに明確な違いがあります。また、近年ではクラウド型のシステムが普及し、より柔軟で安全な運用も可能になりました。本記事では、基幹システムと業務システムの違いを中心に、それぞれの特徴やクラウド化する際のポイント、導入前に知っておきたい注意点まで、専門用語を使わずわかりやすくまとめています。自社に最適なシステム選びやクラウド化の第一歩として、ぜひご活用ください。
目次
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基幹システムと業務システムの違いとは?
企業がITを活用していく上で、「基幹システム」と「業務システム」という言葉はよく登場します。しかし、その役割や目的には大きな違いがあり、両者を正しく理解しておくことが、自社にとって本当に必要なシステム選びや投資判断をするために欠かせません。ここでは、それぞれのシステムの特徴と違いについて分かりやすく説明していきます。
●役割と目的の違い:「全体最適」か「部分最適」か
基幹システムは、企業全体の「全体最適」を目指すシステムです。たとえば、販売・生産・会計・人事などのデータを部門を越えて連携し、全社の業務プロセスをまとめて管理できるようにする役割があります。これにより、経営層は会社全体の状況をリアルタイムで把握でき、素早い意思決定につなげられます。
一方、業務システムは「部分最適」を追求するもので、特定の部門や業務の効率化が主な目的です。例えば、営業部門の顧客管理システム(CRM)や、人事部門の勤怠管理システムなど、業務ごとに便利なツールを導入し、それぞれの業務効率アップに役立てます。
ただし、部分最適の業務システムだけでは会社全体の効率化につながらない場合があり、複数の業務システムを導入した結果、部門間でデータのやりとりが手作業になってしまい、かえって非効率になることもあります。
このようなリスクを防ぐためにも、全社の情報を一元管理できる基幹システムの重要性が高まっています。
●影響範囲の違い
システムにトラブルが発生した場合、その影響の範囲にも大きな差があります。
基幹システムが止まると、企業全体の業務がストップする危険性があります。たとえば、生産管理システムに障害が出れば、工場の生産ラインがすべて止まり、販売や在庫管理システムがダウンすれば、商品が売れなくなってしまいます。会計システムの障害なら、請求や入金ができなくなり、資金繰りにも影響します。
これに対し、業務システムの障害は影響範囲が比較的限定されます。たとえば、社内チャットが使えなくなっても、メールや電話など別の手段で連絡が取れるため、業務そのものが完全に止まることはありません。営業支援システムが止まっても、顧客への連絡や進捗管理を一時的に手作業でカバーすることができます。
つまり、基幹システムは「止まると会社が止まる」レベルの重要なシステムであり、業務システムは「止まると不便だけど何とかなる」システムだといえるでしょう。
●【比較表】基幹システムと業務システムの違い
ここまでの内容をまとめ、基幹システムと業務システムの主な違いを表にしました。
| 項目 | 基幹システム | 業務システム |
|---|---|---|
| 目的 | 全社の経営資源を統合管理し全体最適を目指す | 特定部門・業務の効率化や部分最適を目指す |
| 対象業務 | 生産、販売、会計、人事など会社の中心となる業務 | 顧客管理、営業支援、情報共有、コミュニケーション |
| システム停止時の影響 | 事業全体が停止するリスクあり | 影響は限定的、他の手段で業務継続が可能 |
| データ連携 | 部門をまたいだデータの一元管理が前提 | 単独完結型や、必要な場合のみ他システムと連携 |
| 導入の視点 | 長期的な経営戦略・全社最適が主な導入目的 | 部門ごとの課題解決・効率化が中心 |
こうした違いを理解しておくことで、自社の課題や目的に合ったシステム導入がしやすくなります。
基幹システムと関連システムとの違い
基幹システムを検討する際には、似たような言葉や他のシステムとの違いも整理しておくことが大切です。ここからは「情報システム」と「ERP」との違いを紹介します。
●情報システムとの違い
情報システムは、企業活動に使われるあらゆる情報関連システムの総称です。基幹システムや業務システムも、この情報システムの一部に含まれます。
基幹システムは「会社の根幹を支えるために絶対に必要なシステム」であり、万が一止まってしまうと事業全体がストップします。一方、情報システムの中には、グループウェアやナレッジ共有ツール、メールソフトなどもあり、これらは主に「業務の便利さを高める」ことを目的としています。
たとえば、メールソフトやチャットツールが一時的に使えなくなったとしても、代替手段で業務を進めることができます。基幹システムとの違いは「不可欠性」のレベルにあると言えるでしょう。
●ERPとの違い
ERP(Enterprise Resource Planning)は、「統合基幹業務システム」と呼ばれることも多く、会社のさまざまな基幹業務システムを一つにまとめて、データを一元管理できるようにしたシステムです。
以前は、会計システム・販売システム・生産管理システムなどがバラバラに導入されていましたが、ERPはそれらを一つのシステムにまとめて「全体最適」を実現します。
つまり、「すべてのERPは基幹システムですが、すべての基幹システムがERPとは限らない」という関係性です。ERPの導入によって、各部門のデータがリアルタイムで連携され、会社全体の動きを正確につかめるようになります。
基幹システムを導入するメリット・デメリット
基幹システムの導入には大きな効果が期待できますが、注意したいポイントもいくつかあります。ここではメリットとデメリットを分かりやすくまとめます。
●メリット
基幹システムを導入することで、会社全体のデータや業務フローが一つにまとまり、いろいろな効果が期待できます。
経営情報の見える化
全社のデータを一元管理できるため、売上や在庫、利益、現場の状況などを経営層がいつでもすぐに把握できます。データをまとめて可視化することで、勘や経験だけに頼らず、根拠のある経営判断がしやすくなります。
迅速な意思決定
最新の情報がリアルタイムで確認できるので、状況変化や新たなチャンスに即対応できます。たとえば、需要の急増をシステムでキャッチしたら、すぐに増産や追加発注の判断が可能です。
業務プロセスの標準化
業務の流れが統一され、担当者ごとにやり方がバラバラになることを防げます。属人化しがちな作業も見直しやすくなり、どの社員が担当しても同じ品質で業務を進めやすくなります。
生産性向上
今まで手作業で行っていたデータ入力や転記、帳票作成などの定型作業を自動化できます。その分、社員はもっと価値の高いコア業務に集中できるようになります。
データの信頼性アップ
手作業での転記が減り、入力ミスや情報の食い違いが起きにくくなります。正確なデータが集まるので、内部統制や社外からの信頼性も高まります。
●デメリット
一方で、基幹システムの導入には慎重に検討すべき課題もあります。
導入・運用コストが高め
システムの購入や構築にはまとまった費用が必要です。自社サーバーで運用する場合は、ソフトウェアだけでなくハードウェアや保守費用もかかってきます。
また、導入後も毎年一定の保守費やサポート費用が発生するケースが多いです。
導入までに時間がかかることも
基幹システムの導入は、現状の業務整理から開発・テスト・本稼働まで段階的に進める必要があるため、数か月から1年以上かかる場合もあります。
部門ごとに調整が必要な場合は、さらに時間がかかることもあるでしょう。
障害時のリスクが大きい
基幹システムが止まってしまうと、事業全体がストップする可能性があります。そのため、万が一のトラブル時には迅速な対応や復旧策(BCP:事業継続計画)をきちんと準備しておく必要があります。
バックアップや障害対策、災害時のサーバー復旧体制などもあわせて考えておくと安心です。
基幹システムを選ぶときに押さえておきたいポイント
基幹システムは長く使い続けるものなので、失敗のない選び方をすることが大切です。ここでは事前に確認したい主なポイントを紹介します。
●クラウド型かオンプレミス型かを決める
自社でサーバーを用意し管理する「オンプレミス型」と、インターネット経由で利用する「クラウド型(SaaS型)」があります。初期費用や導入スピード、運用・保守のしやすさ、カスタマイズの自由度など、自社の状況や経営戦略に合う方を選びましょう。
| 項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 低い、またはゼロ(サブスク形式) | 高め(サーバー・ライセンス費など) |
| 運用費用 | 毎月または毎年の利用料が発生 | 人件費・保守費用などが発生 |
| 導入スピード | 契約後すぐ利用可能な場合が多い | サーバー準備や開発、設定などで時間がかかる |
| カスタマイズ | ベンダーの範囲内で対応(限定的) | 自社要件に合わせて自由にカスタマイズ可能 |
| 保守管理 | ベンダーが担当 | 自社で実施 |
| セキュリティ | ベンダーの対策を活用(共有責任) | 自社でコントロール(閉域網など) |
| 災害対策 | データセンターや冗長化が標準 | 自社でDRサイト等の追加投資が必要 |
●必要な機能を明確にしておく
基幹システム選びでよく失敗するのが、「何を解決したいか」がはっきりしないままシステムを選んでしまうことです。たとえば、「受注処理にかかる時間を3割減らす」「会計と販売部門の転記作業をゼロにしたい」など、具体的で測定可能な目標を決めておくと、必要な機能もリストアップしやすくなります。現状の業務フローや課題をしっかり洗い出し、現場の担当者からも意見を集めておきましょう。
●サポート体制やセキュリティも重要
システムは導入して終わりではありません。トラブルが発生したときのベンダーサポートや、セキュリティ対策もしっかり確認しておくことが大切です。サポートの対応方法や時間、障害時の対応スピード、定期的なシステム更新の有無、権限管理やデータ暗号化、外部認証の取得状況(ISOなど)も見ておきたいポイントです。
●システムの連携力を意識する
最近は、基幹システムを中心にしつつ、さまざまな専門ツールと連携させて全体を最適化する考え方が広がっています。たとえば、CRMやSFA、ワークフロー管理システムなどと柔軟に連携できるかどうかも、選定時の重要な基準となります。自社のIT投資を無駄にしないためにも、将来的な拡張性や他システムとの連携のしやすさをよくチェックしておきましょう。
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