最近よく聞かれるようになった言葉に「仮想化」があります。企業がITコスト削減に取り組んだ時、注目されているのが仮想化サーバーです。仮想化システムとは、物理サーバー上に論理的な区画として仮想化サーバーを作成し、ハードウェアのリソースを個々の仮想化サーバーに割り当てることです。
仮想化システムの構築により、コスト削減につながったり、余剰リソースを活用できたりするなどのメリットがあります。しかし、いざ仮想化システムの導入を検討しても「どのようにすればいいのかわからない」「仮想化システムを導入する時のポイントを知りたい」と考える企業担当者の方は多いのではないでしょうか?今回は、仮想化システムの役割、仮想化システムを導入するメリット、仮想化システムを導入する方法などについて解説します。
目次
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仮想化システムの役割
出典:「ITmedia エンタープライズ:仮想化技術、本当に″当たり前″と言えますか?」
「仮想化システム」とは、ソフトウェアで複数のハードウェアを統合することで、1台のサーバーを複数のサーバーのように見せかけて動作するシステムのことです。米国のVMware社が1999年に最初の仮想化ソフトウェアVMwrare Workstationを発表しました。
ベースになるサーバーを「物理サーバー」といい、仮想化された複数のサーバーを「仮想化サーバー」といいます。仮想化されたハードウェアの特徴は「自由に設計できる」「柔軟にシステムを構築できる」ことです。サーバーの設置台数を減らせることから、導入コストを抑えたり運用負担を軽減したりできるメリットがあります。
サーバーの仮想化には「ホストOS型」「ハイパーバイザー型」「コンテナ型」の3つの手法があります。
●ホストOS型
ホストOS型は、Windows・Macなどに仮想化ソフトウェアをインストールすることでLinuxなどのOSを動かす手法です。ホストOS型のメリットは、比較的簡単に構築でき、ハードウェア環境にほとんど依存しないことです。普通のアプリケーションのように気軽にインストールするだけで構築できるため、テスト環境を作りたい場合に向いています。
●ハイパーバイザー型
ハイパーバイザー型は、専用ソフトウェア「ハイパーバイザー」を直接サーバーへインストールし、OSやアプリケーションを動かす手法です。仮想化ソフトウェアの管理方法は、以下の2つです。
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管理専用の仮想マシンを使う
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管理用の別マシンを準備し、管理用ソフトウェアをインストールする
●コンテナ型
コンテナ型は「コンテナエンジン」と呼ばれる仮想化エンジンをインストールして仮想環境を提供する手法で、急速に利用者を伸ばしています。
メリット・デメリット | 内容 |
---|---|
コンテナ型のメリット | ・ホストOS上に構築されているため、ゲストOSを起動せずに必要なアプリケーション実行環境を構築できる ・リソースの消費も少なく起動時間が少ない |
コンテナ型のデメリット | ・コンテナ環境でベースとなっているOSと異なったOSのシステムで動かせない ・新しい技術であるため学習コストも高くなる |
●仮想化サーバーの機能
仮想化サーバーの機能はOSを仮想化するのではなく、物理サーバーのリソースを切り出し「仮想マシン」を作ることです。仮想マシンにOSをインストールすると「ゲストOS(仮想マシンにインストールされたOS)」として仮想化サーバーが稼働します。
●仮想化サーバーとそうでないサーバーの違い
「仮想化サーバー」と「そうでないサーバー(物理サーバー)」の違いは、物理的なリソースがあるかどうかです。
仮想化サーバーは物理サーバー上に構築されるため、リソース(CPU・メモリなど)は物理サーバーのものを利用できます。複数のハードウェアを統合したり分割したりすることが可能です。物理サーバーはサーバーに負荷がかかる場合、リソースの増設が必要になります。
仮想化システムを導入するメリット
仮想化システムを導入するメリットは以下の3点です。
●セキュリティ対策につながる
仮想化システムを導入するメリットは、セキュリティ対策につながることです。通常、OSのセキュリティ対策を実施するには下記の手順で行います。
- システム停止
- セキュリティパッチの適用
- システム再稼働
- システム異常確認
これらのセキュリティ対策を行うには、本番用の代替機が必要です。例えばシステムを5台のコンピュータで構成している場合、5台の代替機が必要になります。
しかし、仮想化システムでは1台のコンピュータ上で複数の論理コンピュータを実行しているため、複数のコンピュータは必要ありません。セキュリティ対策する場合、必要な数のコンピュータの複製をして、本番機と入れ替えるだけでセキュリティ対策が可能です。また、1台のコンピュータで管理するためセキュリティ対策も一元化できます。
●コスト削減ができる
物理サーバーを保有している場合にかかるのは下記のコストです。
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ハードウェア調達コスト
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ソフトウェアのライセンスコスト
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ランニングコスト
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サーバー設置のためのデータセンター利用料
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サーバーを置くスペースコスト
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サーバーを動かす電気代
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人件費
仮想化システムを導入することで1台のサーバーのCPU・メモリ・ディスクなどのリソースを効率的に配分でき、物理サーバーの数も減らせます。そのため、上記コストを削減できます。
●余剰リソースを活用できる
仮想化システムの導入で余剰リソースの活用が可能です。物理サーバーの場合、リソースが不足すると新たに購入する必要があります。一方。仮想化サーバーは複数の小規模のサーバーを単一化できるため、リソースに余裕があればすぐに拡張可能です。処理速度を向上させるスケールアウトなどもシステム上で対応できます。
仮想化システムを導入する方法
仮想化システムを導入する方法は以下の通りです。
(1)サーバー仮想化アセスメント
まず、システムの稼働状況を把握し負荷を測定し、その分析結果による仮想化統合システム構成を策定します。サーバー仮想化アセスメントには、以下のメリットがあります。
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リソースの無駄遣いを防ぐ
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キャパシティ残量を把握できる
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将来の需要予測ができる
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統合率の向上
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パフォーマンスを分析できる
(2)仮想化システムの設計・導入
仮想化アセスメントの分析結果から仮想化システムの設計・導入を行います。設計・導入のフローは「基本設計」→「詳細設計」→「導入」→「設定テスト」です。
(3)P2V移行(物理サーバーから仮想サーバーへの移行)
物理サーバーから仮想サーバーに変換し移行します。物理サーバーから仮想サーバーへ移行するためのP2Vをするためのツールは下記の3つです。
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AOMEI Backupper Professional
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Microsoft Systinternals Disk2vhd
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System Center Virtual Machine Manager(SCVMM)
(4)運用開始
サーバーを順次解放します。
仮想化システムを導入する時に注意すべきこと
仮想化システムを導入する時に注意すべきことは以下の2点です。
●サーバーに負荷がかかる
仮想化サーバーは物理サーバーの処理能力に依存しています。仮想化で注意する点は、ハードウェアのリソースが不足していても仮想化した場合、サーバーのパフォーマンスが低下してしまうことです。そのため、仮想化サーバーを導入する際は、サーバー・ストレージの性能、利用するデータセンターなどのサーバーリソースを適切に配分しなくてはなりません。
●細かい設備環境・セキュリティ対策が把握しづらい
仮想化サーバーの特徴は細かい設備環境・セキュリティ対策が把握しづらいことです。物理サーバーの場合、OS・アプリケーションに対するセキュリティ対策が必要でした。一方、仮想化サーバーは、1台のサーバーに複数のOSやアプリケーションをインストールするため、仮想化のノウハウをベースとした複雑なセキュリティ対策が必要です。
仮想化システムを導入するポイント
仮想化システムを導入するポイントは下記の4点です。
●ハードウェア要件・ソフトウェア要件を考慮する
仮想化システムを導入する場合、ハードウェア要件・ソフトウェア要件を考慮する必要があります。ハードウェア要件として、大規模な仮想化システムを構築するためにはハードウェアのリソースを満たすことが重要です。導入検討中の仮想化ソフトウェアの種類によっては、64ビットCPUに未対応であったり、CPU数・メモリサイズなどに制限があったりする場合もあります。
また、ソフトウェア要件に関しては、仮想化ソフトウェアをインストールできないOSもあるので注意が必要です。さらに、あらかじめ必要なソフトウェアのインストールが必要な仮想化ソフトウェアもあります。上記の課題を解決するためには、サーバー仮想化アセスメントがおすすめです。
●本当にコスト削減になるのかを検討する
仮想化システム導入のメリットは「省エネ」「運用コストの削減」「サーバーの集約」など、コスト削減です。しかし、数本程度のアプリケーションのみを稼働させているサーバーの仮想化は、削減効果があるとはいえません。仮想化の目的はハードウェアリソースの活用です。1台のサーバーで1つのシステムを使う場合、リソースに無駄が出てくるでしょう。
●サービスを提供する会社の実績を調べる
仮想化システムを導入する場合、仮想化の実績が豊富なシステムを構築するSI事業者に依頼します。サーバーの仮想化だけではなく、ストレージ仮想化・デスクトップ仮想化の実績があるかどうかも依頼前にチェックしましょう。ストレージ仮想化・デスクトップ仮想化にも実績があると、あらゆる仮想化に対応できます。
●運用監視する仕組みを作る
仮想化システムは運用監視する仕組み作りが重要です。仮想化するとどのサーバーが不具合を起こしているのか不明なため、物理サーバーのように監視ができません。
また、仮想化システムを導入した時、データセンターにシステムを預けるとサーバーの稼働を監視することは困難です。運用監視ツールはサーバーだけではなく、ネットワーク機器やクライアントなど、すべてを監視できるツールを選ぶことをおすすめします。
サーバー以外で仮想化できるもの
仮想化には、コンピュータシステムを構成する様々な機器に応じた仮想化技術があり、これまではサーバーの仮想化のみが注目されていました。しかし、現在はストレージ・デスクトップ仮想化などサーバー以外の機器でも仮想化が進んでいます。
サーバー以外で仮想化できるものは下記の3つです。
●デスクトップ仮想化
「デスクトップ仮想化」とは、サーバー上にあるクライアントPCのデスクトップ画面を遠隔地の端末に転送し、セキュリティの高い環境で利用できる仕組みです。端末型にデータ・アプリケーションを置かないため、安心してPC環境を利用できます。これまでは、PC1台ごとにアプリケーションのインストール・セキュリティソフトの更新などを行う必要があったため、運用管理に手間とコストがかかるだけではなく、社員がPCを紛失した場合の情報漏洩のリスクもありました。
デスクトップ仮想化では、アプリケーション・データがサーバー上にあるため、以下のようなメリットがあります。
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一元管理が可能
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端末に情報が残らない
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いつでも同じ環境で利用できる
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外出先でも社内と同じように業務ができるため「働き方改革」にも対応できる
●ストレージ仮想化
「ストレージ仮想化」とは、複数のストレージを仮想的に統合して管理する技術です。大きなひとつの「ストレージプール」を構成し、必要に応じて容量を切り出したり、戻したりすることができます。ストレージプールを集中管理でき、空き容量をストレージごとに管理する必要はありません。
●ネットワーク仮想化
「ネットワーク仮想化」とは、ハードウェアで提供されているネットワークリソースを抽象化し、仮想化ソフトウェアを使ってネットワークとして提供する技術です。1つのサーバー上でファイアウォールなどの物理的なネットワーク機器が稼働しているかのように見せることが可能です。ネットワーク仮想化により柔軟なネットワークが提供できるだけではなく、各種ネットワークの一元管理ができたり、コスト削減ができたりします。
仮想化システムは自社に合った方法を見極めて導入して
「仮想化システム」とは、ソフトウェアにより複数のハードウェアを統合することで、1台のサーバーを複数のサーバーのように見せかけて動作するシステムです。仮想化システムの導入により「セキュリティ対策につながる」「コスト削減できる」「余剰リソースを活用できる」などのメリットがあります。
ただ、仮想化システムを導入する場合、サーバーに負荷がかかるなどの点に注意が必要です。事前にハードウェア要件・ソフトウェア要件を考慮のうえ、仮想化の実績が豊富なシステムを選び自社に合った方法で導入しましょう。
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