こんなエンジニアに開発をお願いしたい!発注ナビ掲載企業の中には、そんな優秀な開発者がたくさんいます。たとえばこちらの女性エンジニア。三菱スペースソフトウエア、日本IBM、富士フイルムソフトウエアなど様々なIT企業で実績を残し、現在は東京都港区のシステム開発会社「エー・アンド・ビー・コンピュータ」においてシステム受託開発部門の責任者を務めている今井理希代さんです。システム発注者が聞きたい様々な質問を投げかけてみました。
提示された予算はたったの100万円。それを聞いたベテランエンジニアは…
発注ナビ 今井さんは、かつてIBMでThinkPad(高性能パソコンの世界ブランド)の開発に携わるなど、長い間IT業界でエンジニアとして第一線で活躍なさってきました。今まで経験した開発案件の中で、印象深いものを教えてもらえますか?
今井 そうですね、たとえばある化粧品メーカーから、「サンプル品の受発注システムを予算100万円、ひとりで開発できないか」と依頼されたことが記憶に残っています。
化粧品メーカーのサンプル品ですか?
今井 はい。コスメには必ず、販促のためのサンプル品がありますよね。全国の販売店から、化粧品メーカーにサンプル品の注文が大量にくるのです。その受発注を管理するシステムを、予算100万円で開発できないかと依頼されました。
全国からの受発注業務をさばくシステムの開発予算が100万円とは、なかなか難易度が高そうですね。
今井 私ひとりで、なるべくコストをかけずにシステムを完成させるため、いろんな工夫をしました。まず力を入れたのは、実際にシステムを使うユーザーの方へのヒアリング。主なシステムユーザーは、出荷作業を行なう運送会社の事務員さんでした。実際にどういう書類や資料を使って、どんな流れで業務を行なっているのかを私のほうでまず頭に入れ、システムユーザーである運送会社の代表や、部門責任者、担当者の方へのヒアリングに臨みました。
使いやすいシステムをつくるためには、実際にシステムを使う人に直接話を聞いてみることがポイントですよね。開発上で工夫された点はどこですか。
今井 既存のASPサービスを利用したことです。そうすれば、ゼロからデータベースやプログラムを構築する必要がなく、開発が短期間で済む上、お客様との打ち合わせ時間も短縮できます。
なお開発中は、何度も会って打ち合わせをするというより、電話打ち合わせも積極的に利用するスタイルにし、開発した機能はさっそく試しに使ってもらったりしました。そうすることで開発がスピーディに進み、開発費を削減できました。さらに完成前の動作テストにも、なるべく協力していただきました。
その結果、紙だった受発注伝票をそのままパソコン画面にしたような、誰にも見やすく、入力しやすいシステムを完成できたのです。結果的には、100万円の希望予算を多少オーバーしてしまったものの、完成したシステムの満足度は高く、今でも大きな変更なく使い続けていただいています。
発注者や、システムユーザーが開発に協力すれば、限られた予算でも使いやすいシステムができるという好例ですね。
システムエンジニアにとって、本当にやる気がでる開発案件とは?
今井さんは本当に様々なシステム開発を経験なさっていますね。予算100万円の小規模案件から、それこそ何億、何十億という大規模案件まで。今井さん自身、「特にこういう開発にやり甲斐を感じる!」というものはあるのですか?
今井 私は小さい頃から機械やコンピュータが大好きで、それでITエンジニアになりました。20代の時は、「最先端のITに触れたい」「世界的ヒット製品を開発したい」という気持ちも強かったですね。しかし日本IBMに入社して、クライアント企業のビジネスを支える業務システム開発をするようになり、しだいに「システムを使う人に喜んでほしい」という気持ちが強くなっていきました。
クライアント企業の業務効率化や、業績アップを実現するためのシステムを開発して、お客様から感謝されるのがうれしいと。
今井 私自身、学生時代までは口下手なほうでした。しかし業務システムの開発を通じて、自分の仕事が喜ばれると、お客様とコミュニケーションをとるのが楽しいと思うようになりました。業務システム開発を成功させるうえで、非常に大切なのは顧客とのコミュニケーションです。お客様が持つ業務上の悩みや、システムの要望をエンジニアが的確に理解し、それに応えようとしなければ、どれだけ高い技術力があっても、優れたシステムは開発できません。
また発注者側も、エンジニアに対して自分たちの悩みや要望を分かりやすく伝える努力も大切だと思います。発注者がエンジニアとコミュニケーションを取る際に、どのような点に気をつければ良いのでしょうか?
今井 どんなシステムを開発されたいのか、きちんとした仕様書でなくても、たとえば簡単なメモやイメージ図のようなもので結構ですので、まとめてあると分かりやすいですね。「こういうシステムをつくりたいのだ」という要望を、多少荒削りでも良いので、情報として細かく伝えていただくと、開発者も良く理解できます。
発注者と開発者の豊かなコミュニケーションが、システム開発成功の第一歩ということでしょうか。どんな形であれ、エンジニアさんとはしっかりコミュニケーションをとるように心がけたいものです。
元気な若手エンジニアと、落ち着いた年輩エンジニア。
正直、どちらが優秀なのか?
今井さんは現在、エー・アンド・ビー・コンピュータの受託システム開発部門で部長を務めていらっしゃいます。若手エンジニアの採用や育成も担当されていますね。「エンジニアの35歳限界説」というのも以前はありましたが、エンジニアの実力と年齢の関係について、どうお考えですか?
今井 若手エンジニアとベテランエンジニア、それぞれに良さががあると考えています。たとえば私自身、システム開発案件を成功させるプロジェクトマネジメントのスキルは、年齢を重ね、経験を積むほど高まっていきました。
システム開発のプロジェクトは、1つひとつがまったく違う、まるで“生き物”のようなもの。担当プロジェクトのなかに潜むあらゆるリスクに素早く気づき、それを事前に対処して成功まで導く能力は、やはり経験によって磨かれます。
その一方で若手エンジニアは、たとえば持っている技術が新しかったり、物事の捉え方が柔軟であったり、ベテランとは違う良さもありますよね。
今井 若手とベテランどちらが優れているかというより、大切なのはそれぞれのエンジニアの個性を活かせるよう、役割分担させることではないでしょうか。若手が多い会社、ベテランが多い会社など、開発会社の特長に合わせて、任せる案件の内容を決めていただくのが良いと思います。
開発会社それぞれの特長と個性は様々。開発側と発注側、双方のコミュニケーションが円滑になるよう、発注ナビもお手伝いできたらと考えています。本日はありがとうございました。
本日のエンジニア 今井理希代さん
大学で情報工学を学び、三菱スペースソフトウエアに就職。航空・宇宙関連のIT開発に従事する。その後日本IBMほか、国内の有力IT企業、著名ベンチャー企業でシステムエンジニアとして活躍する。臨海副都心マルティメディア実験をはじめ、IBM社製PC「ThinkPad」開発、大手旅行会社サイト開発、人気ロボットペット3DWeb育成サイト開発など、当時最先端の国内ITプロジェクトに多数参画。現在ではエー・アンド・ビー・コンピュータの受託システム開発部門責任者を務めている。