
開発会社Aは、設立以来、製造業や販売業を中心に基幹・業務システムの開発を手掛けてきた独立系SIerだ。自社SaaSをベースに顧客ごとの要件へ柔軟に対応するセミオーダー型の開発を強みとする一方、営業専任の組織がなく、直販案件を継続的に開拓する仕組みづくりが課題だった。そこで新たな窓口として発注ナビを導入。案件を選べるエントリー制と、商談前に要件をすり合わせられる仕組みを活かし、利用開始から約1年半で7000万円規模の案件を受注した。さらに、注文書の締結前ながら、数億円超を見込む大型案件の詳細な打ち合わせも進んでいる。同社の担当者に、発注ナビを導入した背景や、少ないエントリーを大きな成果につなげる工夫を伺った。
| 社名 | 非公開 |
|---|---|
| 所在地 | 非公開 |
| 従業員数 | 101 – 300名 |
| 事業内容 | 企業向け情報システムの構築・受託開発、自社SaaSの開発・提供、IT技術支援など |
| ITセレクト掲載カテゴリ | 販売管理システム ERP(基幹システム) 在庫管理システム 受発注システム 生産管理システム |
- 営業体制の不足と外部依存:営業専任組織がなく、直販案件の多くを紹介に依存していた。
- 案件選択の困難さ:紹介案件について「断りにくく、自社の強みや開発リソースに合う案件を選べない」という悩みがあった。
- 質の高い商談への集中:予算感を早期に提示することでミスマッチを防ぎ、確度の高い商談にリソースを集中できた。
- 大型案件の着実な受注:利用開始約1年半で7000万円規模の案件を受注し、数億円超の大型案件も具体化できた。
- 商談化率の高さと選択型営業の実現:自社に合う相談のみにエントリーでき、手を挙げた案件の7~8割が商談へ進展した。
カスタマイズ前提の自社SaaSで、パッケージとスクラッチの間を埋める
開発会社Aは、独立系のシステム開発会社だ。従業員の約7割がSESなどの常駐型案件、残る約3割が受託開発を担当している。受託開発では、製造業や販売業向けの生産管理、販売管理をはじめとする基幹・業務システムを中心に手掛けてきた。
同社の提案を支えるのが、セミオーダー方式の自社SaaSだ。開発環境がVisual Basicから.NETへ移り変わった時期、開発を効率化するため、同社は社内で繰り返し使うソフトウェア部品を共通化し、それらを組み合わせて個別システムを構築する仕組みを整えた。しかし、顧客に「共通部品を使って開発する」と説明するだけでは、完成後の姿が伝わりにくい。そこで画面を備えたデモ版を用意し、販売管理など一連の業務をカバーできるところまで機能を発展させた。
このSaaSは、完成済みのパッケージとしてそのまま提供する製品ではない。土台には、顧客独自の業務ロジックや機能を加えていく『カスタマイズ前提』の仕組みがある。販売管理や生産管理の基本モデルを活用しながら、必要な部分はニーズに合わせてスクラッチ開発に近い形で作り込める。また、システム稼働後の機能拡張や周辺システムとのデータ連携にも対応し、オンプレミスとクラウドのいずれも選択できることも特徴だ。
「さまざまな既存のパッケージを検討しても自社の業務に合わない。だからといって一からスクラッチで開発するとコストが大きくなる。そうしたお客様に、その中間となる選択肢としてこの製品をご提案しています」(開発会社A担当者)
既存製品との機能差や価格だけで競うのではなく、顧客の業務そのものに合わせて仕組みを設計する。この明確な立ち位置が同社の強みであるが、その一方で、同社を必要とする顧客と継続的に出会うための営業チャネルが十分ではないという課題があった。
直販が8~9割へ拡大する一方、営業は実質2人。紹介に代わる新規開拓の窓口が必要に
同社はかつて、大手SIerやメーカーから請け負う案件を中心としていた。ところが約10年前から構成が逆転し、2026年現在ではエンドユーザーから直接受注する直販案件が全体の8~9割を占めるようになった。
この状況は、より顧客に近い立場で業務を理解し、自社SaaSを土台に個別提案できる機会が増えた一方で、直接案件を獲得するための営業体制が変化に追い付かなくなる新たな課題を生んだ。従来取引していた大手SIerが外注を抑えるようになり、継続的に案件をもたらしていた数社からの依頼が減ったことも、直販開拓を急ぐきっかけになったという。
特に大きな制約は、営業専任の組織体制が整っていないことだった。受託開発の営業は2人体制で、それぞれが別の業務と兼務で対応していたため、自社だけで新規顧客を探し続けるには限界がある。直販案件の内訳を見ても、7~8割はハードウェアベンダーや協力会社などからの紹介で、Webサイトや電話、メールなどからの直接問い合わせは2~3割にとどまっていた。
既存顧客や取引先からの紹介(リファラル)は、信頼を前提に商談を始められる有力なチャネルだが、紹介者との関係があるからこそ、難しい局面があることも確かだ。加えて、案件が来る時期や内容を自社ではコントロールできないため、限られた開発リソースに合う案件だけを選ぶことは困難だった。
「自社に専任の営業組織がなく、コンスタントに直販案件を獲得する仕組みがありませんでした。新規案件の窓口を増やすため、これまでとは異なる切り口として、インターネットのマッチングサービスを試してみようと考えたのです」(開発会社A担当者)
こうして同社は、従来の紹介営業を補う新たな接点として発注ナビの利用を始めた。
案件を選べるエントリー制が決め手。予算感を先に示し、商談のミスマッチを防ぐ
発注ナビを選んだ最大の理由は、配信された案件情報を確認し、自社が対応したい相談にだけ手を挙げられるエントリー制であることだった。
これは、自分たちの得意領域であるか、開発リソースに合うかなどを判断してから提案できるためだ。加えて、発注者との商談機会を得た段階で費用が発生する従量型の仕組みも、導入時のリスクを抑えやすいと感じたという。
さらに同社は、最初の商談前にメッセージを通じて、システム構成や自社の強み、関連資料などを伝えられる点も高く評価している。顧客の要望と、同社が提供する『カスタマイズ前提のシステム』との違いを事前に確認できるからだ。完成済みのパッケージを求める案件には手を挙げず、自社SaaSの強みが生きる案件に絞ることで、双方が前提を理解した状態から商談を始められる。
発注ナビの導入前には、文章でのやりとりだけで顧客の細かなニーズをつかめるのかという不安もあったとのことだ。しかし実際に案件情報を確認してみると、発注者が実現したいことや困りごとが具体的に整理されており、その不安は解消されたという。提案側も「パッケージではなく、個別カスタマイズを前提とする」と明記することで、適合度を判断するのに必要な情報を交換できた。その結果、エントリーの回数は多くないものの、手を挙げた案件の7~8割が最初の商談にまで進んでいるという。
また、商談の質をさらに高めるために同社が実践しているのが、予算感の早期提示だ。システムの概算費用は、発注者と開発会社の認識にずれが生じることも多い。そこで同社は、最初の提案メッセージから「この要件であれば、概算でこの程度になる」と率直に伝えている。予算が合わないことを理由に商談前に見送られる案件は増えたが、双方の想定額が異なる状態で話し合いを続ける心配はなくなったという。
「最初にお互いの本音となる予算を明らかにしています。お断りされることもありますが、予算感の合う質の高い商談にリソースを集中できます。お客様にとっても、当社にとっても、時間を無駄にしないための工夫です」(開発会社A担当者)
最初の商談を終えた後は、専用のQ&Aシートを作り、最低でも100項目以上のやりとりを重ねる。まず業務全体の流れを業務フロー図にできる水準まで整理し、その後、画面や帳票を含む機能の数と内容を詰めていく。大規模な業務システムでは、機能が100個か200個かで費用が大きく変わるためだ。約1カ月をかけて疑問点を洗い出し、顧客と機能一覧を確認した上で、精度の高い概算見積もりを提示する。この丁寧なプロセスも、事前に適合度を見極めた案件だからこそ実行しやすいという。
約1年半で7000万円規模を受注。数億円超を見込む大型案件も具体化
発注ナビの利用開始から約1年半で、同社は1件の大型案件を受注し、もう1件の大型案件も具体化させた。1件目は約7000万円規模で、すでに受注している。2件目は取材時点で注文書の締結前だが、詳細な打ち合わせが始まっており、開発期間は約2年、金額は数億円超を見込むプロジェクトだという。
導入当初、同社は2000万~3000万円規模の案件を年3~4件獲得できれば十分だと考えていた。実際には、最初の受注だけでも当初想定を大きく上回り、続く案件は1件で1年分以上の売上をカバーし得る規模となった。エントリーは月に1回あるかないかで、案件数だけを見れば多くない。それでも、自社の強みと条件に合致した1件がもたらす価値は大きく、少ない提案を大きな成果につなげられている。
既存顧客中心の受注構成を補完。新規案件を安定して獲得できる営業チャネルへ
同社の受託開発では、既存顧客の保守やシステム改修が受注全体の約7割を占め、残る約3割を新規案件で補う必要がある。その点で発注ナビは、この新規3割の枠を埋めるチャネルとして機能している。案件情報から企業規模や利用予定人数、要望を確認し、対応可能なものだけを選べるため、無理に案件を取りに行く必要もない。1~2カ月、自社に合う案件が見つからなくても、次の機会を待てる営業上の余裕が生まれたという。
受注を増やせばよいわけではないのは、同社のSaaSは専門性の高いSEや技術者が対応する必要があり、現在は約20人の専門チームがその役割を担っているため、対応できる案件数には一定の上限があるためだ。 顧客から業務要件を直接聞き出し、業務知識を基に提案できる人材の育成には時間がかかる。現在の体制では、既存案件7割、新規案件3割という構成が無理のない稼働につながっている。今後は人員を毎年2割程度ずつ増やすペースに合わせ、受注量も段階的に調整していく考えだ。
「毎日案件情報を確認し、月に1件ほど、自社に合うものがあればエントリーするというシンプルな運用を続けていきます。予算感やお客様の要望が最初から分かるので勝負が早く、無駄なプロセスがありません。人員の育成ペースに合わせて新規案件を獲得する窓口として、非常に使いやすいと感じています」(開発会社A担当者)
同社は、今後、案件情報の予算や利用規模がさらに充実すれば、エントリーの精度は一段と高まると期待する。数多くの案件に提案するのではなく、自社が価値を発揮できる相談を見極め、早い段階から率直に条件をすり合わせる狙いだ。
発注ナビは同社にとって、限られた営業・開発リソースを守りながら大型の直販案件を開拓する、選択型の営業チャネルとなっている。
リード獲得の課題は「発注ナビ」で解決!SaaS・IT製品に特化したビジネスマッチング










