「発注ナビ」にご登録いただいている開発会社の皆様が発注ナビの導入に至った経緯、その使用感、そして導入後のビジネスの変化は、どのようなものだろうか。株式会社ガウスの牛山正弘氏、石原宏氏にお話を伺った。
社名 | 株式会社ガウス |
所在地 | 東京都千代田区二番町4-3 二番町カシュービル2F |
従業員数 | 51 – 100名 |
事業内容 | 各種業務ソフトウエアの計画・設計・開発・運用 ビルマネジメントシステム、ビルセキュリティシステムの計画・設計・開発 ソフトウェアパッケージの計画・設計・開発 |
掲載カテゴリ |
- 導入前の課題
大手電機メーカーや老舗繊維メーカーを株主に持ち、文教市場向けの自社オリジナルパッケージ開発・販売も行っているものの、少子高齢化を見据え、文教市場に加え新たな得意分野が必要。限られた営業スタッフ数での新規顧客の開拓が課題。
- 導入後の効果
案件は確実に増加し、新しいビジネスの柱となりそうな分野にもいくつか手応えを感じている。それ以上に、開発現場のエンジニアの意識改革に成功。また、エンジニアの育成や、直近のシステムソフトウェアのトレンドの把握などにも活用している。
文教市場への強みと大手企業を株主に迎えた安定性
1978年に独立系システムソフトウェア開発会社として創業した株式会社ガウス。創業メンバーであり2代目の社長だった人物が学校会計をとりまとめる経理研究会に繋がりを持っていたこともあり、同社は創業以来、文教市場のシステム開発に強く、現在も文教向けの自社オリジナルパッケージシステムを開発・販売しているほか、学校関連のさまざまなシステムのスクラッチ開発も手掛けている。自社パッケージについては、そのほかに勤怠管理システムも手掛けている。
また、創業から数年後には三菱電機グループと取引を開始。その技術力が認められ資本提携。ガウスは現在、東京本社のほかに三菱電機株式会社稲沢製作所内に中部事務所を構え、同事業所に30数名のスタッフが勤務している。中部事業所では、ビルマネジメントシステムやビルセキュリティーシステムの開発・品質管理などの業務、およびエレベーターリニューアルに関わる業務などに取り組んでいる。
そして東京本社では60数名のスタッフが勤務しており、自社パッケージの開発やカスタマイズ、あらゆる業界から受注する業務用システムのスクラッチ開発などを行っている。発注ナビの利用も、この東京本社での案件獲得が目的だという。
なお、同社の主要株主には、三菱電機株式会社のほか、老舗繊維メーカーである亀山製絲株式会社も名を連ねており、盤石な経営体制を敷いているのも大きな特徴だ。
もう一つの柱を打ち立てるため発注ナビを導入
そんな同社が発注ナビを導入したのは2015年のことだ。安定顧客を抱え、得意分野も持つなど、それほど新規顧客の開拓を積極的に行う必要もないように思えるが、導入の背景には、どのような経緯があったのだろうか。
「当社はベンチャー系企業としてスタートしたこともあり、いろいろな分野に積極果敢にチャレンジしながら得意分野を広げ成長してきました。亀山製絲様や三菱電機様とのお付き合いも、そうした積極果敢な取組みの中から生まれています(牛山氏)」
現在は、文教市場という得意分野や、亀山製絲、三菱電機という太いパイプを持っている同社だが、将来を見据え、新たな分野に進出したいと考えていたという。
「将来の少子高齢化により文教市場はこれから先細りしていく可能性が高く、それに代わるような大きな柱となる分野をもう一つ持っておきたいということで、いろいろな業界や分野のシステムを積極的に手掛け、何らかの得意分野に育てていこうと考えました(牛山氏)」
周囲から見れば、将来も安泰に見える同社のビジネスだが、同社としては危機意識を忘れず中長期的な視点に立ち、常に先手を打っていたのである。
そのような中で、現社長である佐々木 吉昭氏がネットの情報から「発注ナビ」の存在を知り「これを使ってみてはどうか?」という提案からサービス利用に至った。
同社の営業担当は現在3名体制だが、発注ナビ利用開始当初は2名体制で、1名は主にSESを担当し、もう1名が文教関連分野および企業向け案件を担当していた。発注ナビの利用は、当時も今も開発部門の石原氏が主に担当している。
「石原は文教分野担当であると同時に、もともと開発エンジニア出身なので、現場や技術を熟知しています。そのため、現場に必要な案件、現場が求めている案件を選ぶのに適任で、案件選びからエントリーまで任せています(牛山氏)」
変わったのは営業体制よりもむしろ開発現場の意識
発注ナビの利用を開始してから同社のビジネスや営業体制はどのように変わったのだろうか。
「発注ナビは営業活動をショートカットするためのツールだと捉えています。ゴルフや宴席を設けた末に受注するといった回りくどいことをする必要も無ければ、もともとニーズのないお客様先をいくつも回る必要もありません。したがって、業務は確実に効率化されています(石原氏)」
それでも営業体制そのものは利用前と利用後でそれほど大きく変わっておらず、それよりも「むしろ開発現場の人間の意識の変化の方が大きかった(石原氏)」という。
それまでは、長年取引のある顧客からの案件や、大手ベンダーパッケージのカスタマイズ案件が多かった。そのため、顧客の業種もある程度分かっており、またパッケージの販売では要件定義やシステム提案といった上流工程を大手システムベンダーが行っているケースも少なくなかった。ところが、発注ナビを利用してからは、初めての業種・業態の顧客が増え、上流工程を手掛ける機会も増えた。上流工程も「いつもの手順」「いつもの感覚で」というわけにはいかず、現場のエンジニアたちは「このままではいけない。変わらなければ」という意識を持つに至った。
「エンジニアたちの受注前の準備体制が大きく変わりました(石原氏)」
また、技術面や規模感から、現場のエンジニアが「これは手掛けてみたい」と思えるような案件にエントリーすることで、エンジニアのモチベーションも大幅に向上しているそうである。
しかも、同社における発注ナビ導入の効果は、純粋な案件増や、開発現場の意識改革だけにとどまらなかった。
エンジニア育成やトレンド把握にも発注ナビを活用
発注ナビの利用効果は、単に受注することだけではないという。
「案件を選ぶだけでなく、発注ナビに並ぶ案件を俯瞰的に眺めることで、今、システムソフトウェアに何が求められているのかといったトレンドを探ることもできるため、便利に利用させてもらっています(石原氏)」
システムソフトウェアのトレンドということで言えば、リモートワークに関連したシステム構築、機能の追加などは、まさにここ1~2年のトレンドと言えるかもしれない。そうした世の中のニーズを探ることで、エンジニアにどのような技術スキルが求められるかも自ずと知ることができ、今後磨いていくべき技術スキルも明確になった。
また、同社では別の側面からエンジニアを育成するための案件選びも心がけているという。
「ある程度開発の実力が付いてきたエンジニアに、設計や要件定義のフェーズ、プロジェクトのリードやマネジメントを経験させるため、そういう段階のエンジニアがいる時には、全体が見渡せる小規模案件にもエントリーしています。もちろんベテランエンジニアの手が空いていて、きちんとフォローできる時期に限られますが(石原氏)」
開発現場に近い石原氏だからこそ、社内の開発リソースの状況に合わせた案件選びやエンジニアのニーズに応える案件選びができているようだ。それ以外にも、何か案件選びの基準はあるのだろうか。
「当社の開発の強み、骨格になりそうな案件を選んでいます。最近ですと鉄道関連、一部上場企業などからの案件ですね。最初の開発で信頼していただければ次の開発へとリピートがいただけますし、さらに保守の受注にも繋がります。そのスパイラルによって、業界について、お客様の業務についての知識もより一層深まり、それだけ当社の強みになりやすいですから(石原氏)」
「実際に、以前、発注ナビで受注させていただいた鉄道関連のシステム開発案件は、同じお客様からリピートを頂戴しています(牛山氏)」
当初の目的だった「新たな強み」についても、少しずつ手応えを感じ始めているようだ。
ガウスでは、受注だけではない発注ナビの新しい利用法や、利用前には分からなかった想定外の効果も教えてくれた。「発注ナビは営業・マーケティング部門向け」という固定観念にとらわれず、自社のエンジニアを鍛え、技術力を磨き、時流を押さえた開発を行えるように育成することができる「開発部門向け」のツールでもある。
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