システム開発会社の中には、営業と開発部門が明確に分かれていたり、営業専任の担当者がいたりするところもある。その場合、最初に発注者と会って要件をヒアリングするのは営業担当者となることが一般的だが、実はそこにリスクがある。営業担当者が把握した要件の内容における微妙なニュアンスの違い、それを開発部門に伝えるときの伝え方や受け取り方に少しずつでもズレが生じると、最終的なシステムが発注者の要望と乖離してしまうというリスクだ。
この『営業が介在することのリスク』を回避しながら、新規の顧客を開拓するにはどうすれば良いのか。MICKS株式会社は発注ナビを利用することで、紹介7件中、受注5件という成約率70%を実現した。その裏側に迫る。
社名 | MICKS株式会社 |
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所在地 | 東京都港区新橋2-1 ニュー新橋ビル903 |
従業員数 | 1 – 30名 |
事業内容 | ソフトウェア開発販売業 |
掲載カテゴリ |
- 導入前の課題
営業担当者が商談に行って顧客から話を聞き、それを開発部門に伝えるというやり方だと、発注者の要望と実際に出来上がったものとの間にギャップが生じるリスクがある。営業担当者が介在することのリスクを回避するため、エンジニアが発注者の案件に責任を持つ一社一担当者制を採用していたが、営業専任の担当者を配置しない体制のため、新規顧客開拓を見据えると営業面が手薄になってしまうことが課題だった。
- 導入後の効果
発注ナビで紹介された多くの案件の中から、自社の強みが発揮できる案件に絞り込んでエントリーし、商談や提案では発注者のもとに何度も足を運ぶなど独特のアプローチを積極的に実践。現場に足を運ぶ、こまめに連絡を取るといった『地道で当たり前のこと』を繰り返すことで発注者の信頼を得ることに成功し、発注ナビ利用開始後、7件紹介のうち5件受注で成約率70%を実現。
営業が介在するリスクを排除するために『一社一担当者制』を採用
2011年創業のMICKS株式会社は、発注者の困りごとを丁寧にヒアリングし、要望にマッチしたシステムをゼロから作り上げることを信条としているシステム開発会社だ。スクラッチ開発を得意としているが、その高い技術力をベースに自社で独自開発したパッケージシステムも提供している。
たとえば、介護業向けシステムや人事システム、運送業向けシステムなどで、こうした業種・業界の顧客が同様のシステムを構築したいという場合には、これらのパッケージをベースにカスタマイズすることで、高品質なシステムをスピーディーかつリーズナブルに構築している。特に、発注者の現場での独特の業務のやり方に即した要望をパッケージシステムに搭載すると、業務改善や効率化が期待できる『カスタマイズSUCCESS』という独自の考え方をもとにシステム構築を手がけていることも特長だ。
また、同社はFileMakerでのシステム開発にも精通している。水谷氏は2011年よりFileMakerによるシステム開発を始め、2015年には『FileMakerDeveloper』の資格を取得している。
スクラッチにもパッケージのカスタマイズにも、FileMakerでのシステム開発にも強みを持つ同社だが、代表取締役である水谷聡一氏は、「どちらで作る場合でも、当社ではお客様の声をしっかりとヒアリングしてシステムに反映させるために『一社一担当者制』を採用しています」と説明する。
一社一担当者制というのは、ひとりのエンジニアがヒアリングから設計、開発、実装など一連の開発工程のすべてを担当するということではなく、「お客様に相対して、やり取りをする専任の担当者を一名、配置する」(水谷氏)ということだ。
この制度を採用することで、顧客側には『途中で担当がころころ変わってしまう』、『打ち合わせで技術的な質問をすると、エンジニアへの確認のために一度持ち帰られるというコミュニケーションの無駄が多い』といった不満が減り、システム開発側にも、顧客から最初に聞いた要望を最後までしっかりと開発に反映させられるメリットがある。水谷氏曰く、実はここがとても重要なのだという。
前述の通り、システム開発会社の中に営業部門があったり専任の営業担当者がいたりする場合、最初に顧客から要望を伺うのは営業担当者の役割だ。水谷氏は、ここにシステム開発が失敗する要因が含まれていると指摘する。エンジニアが営業担当者を中継して困りごとや要望を聞いたとしても、それで顧客が求める要件を100%満たすことができるとは限らないからだ。
「微妙なニュアンス、伝え方、受け取り方、それらに少しずつでもズレが生じると、それが最終的なシステムとなったときに大きな齟齬となって現れることがあり得ます。『営業担当者が介在することによるリスク』もあるのです。当社のような規模で、しかもお客様のご要望にマッチしたシステムを作り上げることを強みにしているシステム開発会社にとっては、このリスクを回避することが不可欠だと考えました」(水谷氏)。同社が一社一担当者制を採用する理由はここにある。
発注ナビは『厳選された数社しか商談に進めない』ところが魅力
営業担当者が介在することのリスクを回避するために一社一担当者制で顧客と相対している同社だが、この仕組みを採用したことで、やはり営業面が弱くなってしまうことは否めない。創業からしばらくは顧客からの紹介(リファラル)案件で事業を継続してきたが、企業としての今後の成長を考えるとやはり新規の顧客開拓が必要となる。
新規顧客とアポイントが取れて、プレゼンテーションや商談のチャンスにさえ恵まれれば、持ち前の提案力や技術力で新規案件を獲得できる自信はあった。しかし肝心のアポイントを営業担当者なしでどうやって取ればいいのか。そのノウハウがなく、やり方もわからなかったのだ。「営業担当者を介在させると、当社の強みであるシステム開発の担当者がお客様に最初から最後まで対応するという最大の強みを発揮できなくなります。悩んだ末に選んだのがマッチングサービスの利用でした」(水谷氏)。
同社がマッチングサービスに期待したのは『アポイントを取ってくれること』だ。その視点で、複数のサービスを比較検討し、発注ナビの利用を決めた。発注ナビを選んだ理由について、水谷氏は『利用料金を分割払いできるので、大きなイニシャルコストをかけずに導入できる点です。当社のような規模のシステム開発会社にはとてもありがたいと感じました』と話す。
さらに、受注したい案件に応募(エントリー)すると、そのうち数社しか商談へ進めない仕組みになっていることが決め手になったという。
「システム開発会社が早い者勝ちで案件を取り合うような他のマッチングサービスと比べると、とても丁寧に考えられたサービスだと感じました。発注者は厳選されたシステム開発会社からの提案を比較検討できるし、システム開発会社にしても、無意味に応募の速さを競う必要がなくなります」(水谷氏)。こうして同社は、2022年5月より発注ナビの利用を開始した。
70%という驚異的な成約率を実現できたポイントは、現場に足を運ぶこと
発注ナビを利用開始してから、同社は順調に新規案件を獲得している。しかも、ただ順調に獲得しているだけではない。注目すべきはその『成約率の高さ』だ。なんと7件の紹介案件のうち5件を成約している。つまり、成約率が70%という驚異的ともいえる成果を上げているのだ。
いくらアポイントを取ってもらい、商談の機会に恵まれさえすれば新規案件を獲得する自信はあったとはいえ、70%もの成約率は他のシステム開発会社が簡単にマネできることではないだろう。
どのような秘密があるのかと質問すると、水谷氏は「実際に現場に足を運んでいることではないでしょうか」と話した。実際に、同社に決めた発注者から、その理由について「わざわざ現場に足を運んでくれて、丁寧にシステムの説明をしてくれたことで距離感が近くなったことが信頼に繋がりました」という声があったのだという。
もちろん、発注者によってはリアルに会って打ち合わせをすることは時間も手間もかかると考え、原則オンラインという形式での進行を好むケースもあるだろう。そのようなケースを除き、同社では会える発注者とはできる限り会うようにして、現場に足を運ぶことを重視している。ある発注者からは、現場でどのようなパソコンが使われているのか、紙でやり取りしているデータにはどのようなものがあるのか、それがシステム化のボトルネックにならないかなどを丁寧に確認していったことが評価されたという。
最近受注した案件も同様だった。1年間に渡り現地に足しげく通い、顧客の話を聞いて提案してという地道な作業を繰り返した結果、受注に至ったという。「実は最初の2、3回連絡をしたときに返信が来なくなったことがありました。そこでやめていたら終わっていた案件です。やはり、断られるにしても他社に案件が発注されるにしても、自社としてもきちんと『ここまではやった』と納得できるようにしたい。そんな想いもあって、最後まで足を運んで提案させていただこうと連絡を続けました。結局は地道に当たり前のことをやっているだけと言えるでしょう」(水谷氏)。
新規顧客とのアポは発注ナビというシステム(デジタル)を使い、商談や提案は足を運んで人との繋がりを大事にする(アナログ)という、デジタルとアナログの融合が成功の秘訣なのかもしれない。
一方、同社ではエントリーする際の工夫もしている。闇雲にエントリーするのではなくて、流れてくる案件を精査して自社と相性がいい案件に絞り込んでいるという。水谷氏は自社と相性が良い顧客について、「システムのことはよく分からないがこういうことがしたい、という要望がある企業」と説明する。
そうした顧客に対しては、いきなり全体のシステムを多大な費用をかけて作り上げることを勧めるのではなく、まずはFilemakerやパッケージシステムなども活用して最低限必要な仕組みを作り、それをベースに徐々に必要な機能をカスタマイズで追加開発する提案などもしていく。「入り口は小さくして、そこからご要望に応じてカスタムを加えていくのが当社に合ったやり方だと思っています」(水谷氏)
「今後は少数精鋭による一社一担当者という体制を維持しつつ、『営業もできるエンジニア』を育成していき、リソースを充実させていきます。その上で発注ナビをさらに活用して、新規案件の獲得に動いていきたいと考えています」(水谷氏)。よりパワーアップした同社の再始動が楽しみだ。
●Infomation
MICKS社が提供する1ヵ月から契約が可能な定額制のエンジニアリングサービス。大手メーカー工場、大学、病院といった様々な業種のシステム開発実績あり。
詳しくはこちらよりご確認ください。
新規案件開拓の課題は「発注ナビ」で解決!システム開発に特化したビジネスマッチング
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