仙台に拠点を置く開発会社が、発注ナビを導入することで全国の発注者にアプローチができるようになり、SES案件が9割以上を占めていた当初から、受託案件を7割にまで増やすことに成功。そんなビジネスのシフトを実現したのが株式会社ティーダシステムだ。同社はどのようにしてそこまでビジネスをシフトできたのか、同社代表取締役である三浦隆氏、開発部部長である浜口淳一氏の両名にお話を伺った。
社名 | 株式会社ティーダシステム |
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所在地 | 仙台市宮城野区榴岡4-5-22 宮城野センタービル3F |
従業員数 | 1 – 30名 |
事業内容 | システム開発事業、インターネット事業、レンタルサーバー事業、機器販売事業、データ復旧事業 |
掲載カテゴリ |
- 導入前の課題
SES案件と受託案件の割合が9対1の状況を改善したいと考えていた。受託開発の経験が豊富なエンジニアの入社で現場営業による受託案件の受注が安定的に取れるようになったものの、案件数を増加させるために、さらなる受注方法を検討していた。
- 導入後の効果
3年間で4件の受注に成功し、導入前に抱いていた小規模な会社でも本当に受注ができるのかという不安は解消された。結果としてSES案件対受託案件の割合が3対7まで変化し、受託案件の割合が増えた。また、新人の育成の場としても有効で、新卒採用も毎年行えるようになった。
SESメインのビジネス構成から脱却し、利益率向上と新人育成を図りたい!
ティーダシステムは設立16年目(取材当時)。当初のビジネスの主要な柱はSES(システムエンジニアリングサービス)だったという。
「私たちティーダシステムは、仙台市に本社を置くエンジニア23名の会社です。2006年に設立し、企業や団体、官公庁などさまざまなお客様のシステム開発、ウェブサイト制作を行っていますが、設立当初は9割がSESでした。残りの1割は受託開発の案件で、ときどき入ってくるという感じです」(三浦氏)
そんな同社に転機が訪れたのは2015年のことだった。
「もともとの受託開発を専属で営業を行うスタッフはおらず、SESの現場で当社のエンジニアが信頼と実績を積み上げ、業務の一部を切り出して、自社に持ち帰って開発を行うというパターンが大半でした。しかし、そうしたケースはごく稀で、あってもポツリ、ポツリという感じでした。大きく変わったのは2015年に浜口が入社してきた時からでした。浜口は前職で受託開発を手掛けてきた経験が豊富で、SESで現場に出ると、安定的に受託案件を切り出して、持ち帰ってきてくれました」
安定的に受託案件が受注できる状況は同社にとっても大きかったという。
「SESは一定の売上が見込めますが、利益率を上げることが非常に難しい。一方で受託開発は、利益率は高いものの受注を安定させるのが難しいというジレンマがありました。利益率を考えると、受託案件をもっと増やせないものかと、真剣に検討するようになりました」
「受託案件の安定的な受注は、エンジニアの採用にも大きく関わってきます。ついには、新卒採用を始めることができるようになりました」(浜口氏)
多くのSESをメインにする開発企業が抱える悩みの1つが新人の育成だ。SESはお客様の現場で仕事を進めていくが、そこに実務経験のない新卒社員を担当させることは難しい。常に一定数の受託案件があれば、自社内で開発実務を経験させることができるようになり、新人教育の場としても利用が可能だ。自社内で経験を積んだ後は、SESとして現場に出ることもできるようになる。
「当社ではそれまで、紹介からの採用がほとんどでした。新人育成の余力があるときに採用してきたという感じでした。受託案件を新人教育の場としてもっと活用できれば人員の拡充も図ることができます。そうした思いもあり、受託案件の切り出し・持ち帰りをお客様に積極的にご提案していました」(浜口氏)
本当に受注できるのか?という不安も、初受注で解消。3年間で4件の受注に成功!
経営サイドと現場サイド、それぞれに受託案件を増やしたいという思いがあったが、実際には、なかなか思い通りに増やすことはできなかった。そのような中、発注ナビの存在を知り、利用を開始する。2015年のことだ。
「当社には専属の営業スタッフがいません。受託開発の受注を増やすには、SESの現場でエンジニアがお客様に対して営業を行うことしかできません。ましてや、エンドユーザーとなると、お客様を探し、ニーズを掘り起こすには多大な工数がかかってしまいます。そこを解決するための手段として発注ナビを導入することにしました」(三浦氏)
しかし、導入はしてみたものの、本格的に発注ナビを利用し始めたのは、そこから数年たってからだった。
「2015年に導入したのですが、最初の数年はほとんどエントリーしていませんでした。2015年に5件、2016年に4件、2017年に1件ほどです。この間は様子見という感じでした。果たして本当に受注ができるのか、という不安もありました」(浜口氏)
その頃は案件に対するエントリー数が少なかったため、発注企業を紹介されることはなかった。しかし、積極エントリーを開始すると、紹介数も増えていき、受注に成功する。
「初受注は仙台のお客様からの案件でした。案件内容を見て、これならできると思いエントリーし、商談を重ねていき、ついに受注することができました。当初いだいていた不安は解消され、しっかりと受注ができるサービスだと実感しましたね」(三浦氏)
同社は、これまでに発注ナビで4件の案件を受注している。
「セレクトプランは、利用する月と利用しない月を自由に決められるので、開発リソースが限られる会社でも、コストを抑えて効率的に利用できるところが良いですね」
同社は現在、7割が受託案件、3割がSESと、ビジネスの主軸が受託へとシフトしている。
発注ナビは案件を詳しくヒアリングしてくれているのでリードタイムが短い。商談のやり方も変わった。
「発注ナビでは、案件をあらかじめ発注企業から詳しくヒアリングしてくれているので、受注に至るまでのリードタイムも短く済むところも魅力です」(三浦氏)
業務系のシステムには、エリアに関係なく積極エントリーをするという同社だが、直近の案件では中部エリアの大手新聞社からも受注している。その際、発注担当者がティーダシステムを選んだ決め手の一つとして「議事録をきちんと作成してくれたところ」があったという。
「商談の流れで、お客様から『議事録を残してほしい』と言われました。議事録がないと、『言った言わない』で後から揉める原因にもなりますので議事録はこれまでも作っていますが、これは意外とポイントになるかなと思い、より丁寧な議事録の作成を心掛けました。まさかそれが受注を決するとは思いませんでしたが、お客様から議事録の丁寧さが決め手となったと言われた時には、本当に嬉しかったです」(浜口氏)
しかし、競合する数社の中で、きちんと議事録を作成してきたのは同社を含めた二社のみだったという。お客様のご要望を丁寧にヒアリングし、ニーズに応えるという基本的なことが明暗を分けた好例と言えるだろう。そしてこのことが、同社の商談を変えた。
「その後も、お客様の反応が良いため、商談の早い段階から『こうしてほしい』という要望を一覧にまとめ、議事録として残すようにしました。お客様だけでなく、当社にとっても提案に厚みが増すなど、効果が出ています」(浜口氏)
「初回商談時にお客様からのニーズを丁寧にお聞きして、それを持ち帰り、提案書を作成しています。具体的な提案にならないと、お客様にも興味をいただいてもらえません。イメージの擦り合わせを早い段階で行えるように、あらかじめ画面イメージを作ることも行っています。商談時に発注者に良いイメージを持ってもらうことは大事ですよね」(三浦氏)
「当社は初回の商談でかなり踏み込んだ話をしています。どのような点で困っていて、それをどのようにしたいのか、業務フローを洗い出していくと、要件定義書に近いものができあがります。初回商談の際はエンジニアも同席させることで上流工程を学んでもらうことができ、ゆくゆくは要件定義ができるエンジニアが育ってくると思います」(浜口氏)
今後はエンドユーザーのお客様を増やしていきたい。発注ナビの役割はさらに大きくなる。
同社では、さらに受注の仕組みを拡大していくという。
「受託とSESの比率が7対3という現在の状況はベストで、今後も維持していきたいと考えています」(三浦氏)
同社が目指す体制作りのための取り組みは今後も続いていく。
「エンドユーザーのお客様をもっと増やしていきたいですね。そういう意味では発注ナビの役割が大きくなっていくと思います。また、一度受注したお客様とは、その後も長くお付き合いしていきたいと考えています。そうした営業体制も、今後の課題です。エンジニアの育成については、毎年新卒採用を行っていき、目指すはエンジニア50名体制です。そこまでいければ理想的な体制が作れると思います」
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