システムやソフトウェアの開発手法においては、従来ウォーターフォールモデルによる開発が主流でした。しかし、2000年代に入ってから、インターネットが急速に普及し、企業を取り巻くビジネスモデルもそれに比例して急速に変化しましたこのような背景から、近年の開発手法はウォーターフォールモデルからアジャイルモデルへとシフトしている傾向にあります。
アジャイル開発の特徴として、これまでの開発手法と比較して、開発期間が大幅に短縮されることが挙げられます。なぜ、アジャイル開発を活用すれば開発期間が短縮されるのでしょうか。
本記事では、アジャイル開発の概要から特徴、具体的な手法やメリット・デメリットまでご紹介します。
目次
「理想のシステム開発の外注先
見つけ方ガイド」無料配布中
アジャイル開発とは?
アジャイル(Agile)とは、直訳すると「素早い」「機敏な」「頭の回転が速い」という意味を表します。アジャイル開発とは、システムやソフトウェア開発におけるプロジェクト開発手法の1つで、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めていく手法を指します。従来の開発手法に比べて開発期間が短縮されるため、アジャイル(素早い)と呼ばれています。
2001年に、当時軽量のソフトウェア開発を提唱していた17名の技術者やプログラマーが米国ユタ州に集まり、開発手法の重要な部分について統合することを議論しました。それをまとめたものが「アジャイルソフトウェア開発宣言」です。
アジャイルソフトウェア開発宣言は、ソフトウェア開発とそれに基づく12の原則を定義しており、現在もアジャイル開発の公式文書として広く知られています。
従来のソフトウェア開発は、ウォーターフォールモデルによる開発が主流でした。ウォーターフォール開発は、最初に全体の機能設計・計画を決定し、この計画に従って開発・実装していく手法のことを指します。機械製造や造船業、ソフトウェア開発など様々な開発に応用できる手法として、広く活用されています。
アジャイル開発の手法
一言でアジャイル開発といっても、多くの手法があります。アジャイル開発の主な手法として、以下の6つが挙げられます。
-
スクラム
-
エクストリーム・プログラミング(XP)
-
ユーザー機能駆動開発(FDD)
-
リーンソフトウェア開発(LSD)
-
カンバン
-
適応的ソフトウェア(ASD)
●スクラム
スクラムとは、アジャイル開発の中でも有名な手法で、開発を進めるためのフレームワークを指します。スクラムとはラグビーで肩を組んでチーム一丸となってぶつかり合うフォーメーションのことで、その名のとおり、チーム間のコミュニケーションを重視している点が特徴です。
メンバーたち自身で計画を立案し、イテレーションごとに開発の進行に問題がないか、制作物は正しい動きをしているのかを精査します。そのため、メンバー間でのコミュニケーションが重要で、コミュニケーションが不十分になると、イテレーションの制作物としてリリースができなかったり、リリースした機能が正常な動きをしなかったりするといった問題が生じる可能性があります。
また、役割分担が明確な点も特徴の1つです。ゴールへの方向を決定する「プロダクトオーナー」、進捗管理を主導する「スクラムマスター」、各開発タスクをこなす「開発者」が主な役割として挙げられます。
各メンバーが自身の役割に専念しながら、スクラムを組むようにチーム全員で協力し開発を進めることが大切です。
●エクストリーム・プログラミング(XP)
エクストリーム・プログラミング(Extreme Programming)とは、事前に立てた計画よりも途中変更などの柔軟性を重視する手法を指します。略称であるXPと表されることもあります。
顧客の要望が変化することを前提とし、その変化に対応する手法であるため、開発初期には綿密な計画を立てません。顧客の要望をこまめに確認しながら開発を進め、動作するソフトウェアを頻繁にリリースするのが特徴です。
開発チームでは「コミュニケーション」「シンプル」「フィードバック」「勇気」の4つの価値を共有することを推進しており、中でも「勇気」は、開発途中の仕様変更や設計の変更に立ち向かう勇気を指しています。初期の計画よりも技術面を重視しているため、プログラマー中心の開発手法といえます。
エクストリーム・プログラミングにおいては、「ペアプログラミング」という2名のプログラマーが共同で開発を進める方法が代表的です。ペアプログラミングは、1人がコードを記述し、もう1人がレビューする方法です。それぞれが別の視点からコードを確認できるため、問題を発見しやすい2名のプログラマーが共同で実装を進める「ペアプログラミング」が代表的です。1人がコードを書き、もう1人がすぐにレビューする方法で、異なる視点からコードと向き合うため、問題を検出しやすい点がメリットです。
エクストリーム・プログラミングにおいても、顧客や共に開発を行うプログラマーとのやり取りが頻繁に発生するため、スクラム同様にコミュニケーションが重要です。
●ユーザー機能駆動開発(FDD)
ユーザー機能駆動開発(Feature Driven Development)とは、実際に動作するソフトウェアを適切な間隔で繰り返す手法を指します。
ユーザー機能駆動開発は、「フィーチャーリスト」に沿って機能ごとに計画し、設計、構築をします。「フィーチャーリスト」とは、開発すべき機能を網羅したリストを指します。
略称であるFDDと表されることもあり、顧客にとっての機能価値(Feature)という観点で開発が進められていくのが特徴です。
実際に動作する機能を開発するには、ユーザー側のビジネスの見える化を行います。そのため、事前にビジネスモデリングを実施する必要があります。
また、動作するソフトウェアを頻繁にリリースするという点は、エクストリーム・プログラミングと同様ですが、ユーザー機能駆動開発においてはドキュメント経由のコミュニケーションがより重視される点が違いとして挙げられます。
●リーンソフトウェア開発(LSD)
リーンソフトウェア開発(Lean Software Development)とは、「リーン思考」をソフトウェア製品に適用した開発手法を指します。
そもそも「リーン思考」とは、製造の工程から無駄を省き必要なものだけを残す」思考で、「リーン(lean)」という言葉は、「痩せた」「無駄のない」という意味を表しています。
1980年代、トヨタ自動車の工場で行われていた「生産する製品の数量を適量とし、発注する部品の数量も必要な量だけとする」というリーン生産方式をソフトウェア開発にも取り入れました。
具体的な手順やフレームワークは厳密に定められていませんが、リーンソフトウェア開発では以下の7つの原則に基づいて開発を進めることが特徴です。
-
1.無駄をなくす
-
2.不具合を未然に防ぎ、品質を高める
-
3.フィードバックから得た知識を蓄積・活用する
-
4.重要な意思決定を急がない
-
5.ソフトウェアを迅速にリリースする
-
6.メンバーを尊重する
-
7.開発プロセス全体を見て最適化する
上記の7つの原則は様々な観点から定められていますが、すべてにの共通点として「無駄をなくすこと」が挙げられます。不具合を未然に防ぐことも、重要な意思決定を急がないことも、無駄の抑制につながります。そのため、無駄をなくすことにフォーカスしたい開発プロジェクトに適しています。
●カンバン
カンバンとは、開発プロジェクトの状況を可視化することによって管理を容易にする開発手法を指します。
カンバンは、標識や看板が名称の元になっており、行動のきっかけとなる視覚的な信号を表します。ジャストインタイムデリバリーと仕事の流れの最適化を重視している手法で、現在進行中の作業が完了すると、キューから取り出した新しい作業に移行するという流れで行います。
「カンバンボード」には「To Do」「進行中」「完了」の3つの領域を用意し、各タスクを状況に合わせて配置します。カンバンボードは物理的なホワイトボードやITツールなどでも問題ありません。
「進行中」のタスクが完了したら「完了」に移動させるため、各タスクの場所を確認するだけで迅速に状況を把握できる点がメリットです。カンバンのこのような特徴は、状況をリアルタイムで把握する必要があるアジャイル開発と相性が良い手法です。
●適応的ソフトウェア(ASD)
適応的ソフトウェアとは、反復型アプローチと漸進型アプローチを組み合わせた開発方法です。反復型アプローチは、各工程を繰り返しながらより優れた形にする手法です。一方で漸進型アプローチは開発工程を機能や部品ごとに分類し、プロセスに沿って作成していく手法です。どちらもアジャイル開発では代表的な開発方法で、両方を組み合わせることによって適応的なソフトウェア開発が行えるのが適応的ソフトウェアです。
適応的ソフトウェアは、「Adaptive Software Development」の略称である「ASD開発」と呼ばれることもあります。「リリース計画」「設計」「実装」「テスト」のイテレーションを繰り返しながら開発を進める点が大きな特徴で以下の3つのサイクルを繰り返しながら開発を進めていきます。
-
開発する機能の検討
-
機能を開発するための知識共有
-
次のイテレーションに向けた品質レビュー
また、短期集中で行う点も特徴の1つとして挙げられます。イテレーションを繰り返しながら開発を進めるため、1つひとつの段階に時間を要すると開発がなかなか進みません。そのため、各段階を短期集中で行い、良質な反復を繰り返すことによって成果物のクオリティを高めます。
実際に開発に取り組みながら各イテレーションのサイクルを回し、システムやソフトウェアの品質を高められるため、詳細が定まっていないプロジェクトであっても進められるメリットがあります。
アジャイル開発の流れと特徴
アジャイル開発の流れは、機能単位で要件定義・設計・開発・テスト・リリースのサイクルを反復して、システムやサービス全体を作り上げていきます。そのため、従来主流であったウォーターフォール開発よりも開発期間を短縮できることが特長です。
●アジャイル開発の流れ
アジャイル開発は、以下の流れで行います。
- リリース計画
- 開発チームの結成
- 全体スケジュールをリスト化
- イテレーション
それぞれについて詳しくご紹介します。
リリース計画
アジャイル開発においては、ソフトウェアの計画段階で厳密な仕様を決めずに、大体の仕様と要求のみを決定します。「開発途中に仕様や設計の変更があることは当たり前」という前提があるためです。大まかな計画のみでは、その後の実装フェーズで問題が起こるリスクもあります。しかし、仕様が決まっていないため、途中で変更があっても臨機応変な対応が可能です。そのため、顧客のニーズに最大限に応えられるメリットがあります。
リリース計画を立てる際には、以下の要素を最低限決めておきましょう。
-
プロジェクトで実現したいこと(目標やゴール)
-
イテレーションの長さ
-
ベロシティの算出
-
ユーザーストーリーの優先順位や工数
開発チームの結成
リリース計画を決定したら、開発チームを結成しましょう。開発チームの結成においては、各メンバーの役割と責任を明確化することがポイントです。
各メンバーが担う役割や責任を明確にしておくことによって、コミュニケーションが活性化するだけでなく、自身が行うべきタスクがわかりやすくなります。
具体的な役割としては、以下の3つが挙げられます。
-
開発するプロダクト(アプリケーションやシステム)の方向性を決定する「プロダクトオーナー」
-
開発作業がスムーズに進むようにスケジュール管理やチーム内の調整をする「スクラムマスター」
-
開発作業を行う「開発者」
全体スケジュールをリスト化
次に、全体スケジュールをリスト化しましょう。短い反復期間のスケジュールで実施できる範囲に、プロジェクトを細かく切り分けてリスト化します。反復期間は固定して行う傾向にあり、1週間~4週間程度です。
イテレーション
全体スケジュールのリスト化が完了したら、イテレーション(iteration)と呼ばれるサイクルを繰り返して開発を進めます。イテレーションとは「反復」という意味を表し、小さな単位に分けられた開発を「計画」→「設計」→「実装」→「テスト」の順に行いながら、機能のリリースを繰り返します。
イテレーションは1週間~2週間ごとが一般的で、イテレーションごとに毎回機能をリリースします。「イテレーション1」「イテレーション2」「イテレーション3」…と繰り返しながら、細かく開発を進めていきます。
アジャイル開発が向いているものと向いていないもの
近年主流となっているアジャイル開発ですが、向いているものと向いていないものがあります。開発を行ううえで、プロジェクトの内容に適した開発手法を採用することが重要なポイントです。ここでは、アジャイル開発が向いているケースとアジャイル開発が向いていないケースを、それぞれの例を挙げてご紹介します。
●アジャイル開発が向いているケースの例
アジャイル開発に向いているケースの例として、以下の3つが挙げられます。
-
仕様変更や追加が予想されている
-
要件の全体像が漠然としている
-
クライアントがチームの一員として参画する
仕様変更や追加が予想されている
アジャイル開発は、開発の途中で仕様の変更や追加が予想されるプロジェクトに向いている手法です。例えば、モバイル分野などの日進月歩で技術や仕組みが進化している産業では、開発の途中で仕様の変更や追加が容易に予想できます。アジャイル開発では、リリース計画段階で厳密な仕様を決定しないため、途中変更の多いプロジェクトに適しています。
一方、数十年手作業で実行していた工程をシステム化する、20年稼働していたシステムをリプレースするといった場合は、すでに作るべき機能が明確に決まっています。そのため、このようなシステムの開発には、アジャイル開発よりもウォーターフォール開発のほうが向いているといえます。
要件の全体像が漠然としている
要件の全体像が漠然としているプロジェクトにおいても、アジャイル開発が向いています。具体的には、要件定義において7割程度が定まっており、残りの3割はプロジェクトの状況を見ながら並行して固めていくようなケースです。プロジェクトの状況を確認しながら進めていくため、短納期での納品やレビューを繰り返すアジャイル開発に適しているといえます。
クライアントが完成した部分を確認し、整合性を取りながら残りの要件を決定し、最終的な完成形に仕上げていきます。
クライアントがチームの一員として参画する
ウォーターフォール開発におけるクライアントの役割は、システムの最終チェックや経営層への橋渡しを担う傾向にあります。
一方で、アジャイル開発は開発チームの一員としてクライアントが参画し、開発会社と協力することへの重要度が高く、開発会社にすべてを任せるような状態では開発のスピードが落ちてしまいます。
スクラムの役割でいえば「プロダクトオーナー」にあたる役割をクライアントが担うことによって、可視化が困難だったシステム開発の現状が明確になります。クライアントがプロダクトオーナーとして参画してくれるプロジェクトこそ、アジャイル開発のメリットを最大に引き出せるといっても過言ではありません。
●アジャイル開発が向いていないケースの例
アジャイル開発が不向きなケースの例として、以下の3つが挙げられます。
-
開発メンバーが物理的に遠くコミュニケーションが取りづらい
-
厳格なスケジュール管理が求められている
-
仕様変更の可能性が少ない
開発メンバーが物理的に遠くコミュニケーションを取りづらい
アジャイル開発において、メンバー間の円滑なコミュニケーションは重要な要素の1つです。そのため、開発メンバーが物理的に遠く、コミュニケーションが取りづらいケースはアジャイル開発に向いていません。
アジャイル開発では、開発過程で積極的に意見交換することによって、仕様の細部を決めたり開発のクオリティを上げたりできます。そのため、コミュニケーションが活性化しないと、ニーズを反映させた開発を行うことが困難になったり、開発がなかなか進まなくなり余計な時間やコストがかかったりといったリスクが起こり得ます。
厳格なスケジュール管理が求められている
厳格なスケジュール管理が求められているケースも、アジャイル開発に適していません。アジャイル開発は、複数の開発サイクルを反復することや仕様変更を前提としていることが特徴であるため、厳格なスケジュール管理が困難です。
開発スケジュールに余裕があり、厳格なスケジュール管理を求められていない場合にアジャイル開発を採用しましょう。
仕様変更の可能性が少ない
アジャイル開発は、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めていくため、途中で仕様変更や追加が予想されているプロジェクトに適しています。そのため、仕様変更の可能性が少ないプロジェクトではアジャイル開発のメリットを活かせません。
仕様変更の可能性が少ないプロジェクトの場合は、ウォーターフォール開発のほうが向いているといえます。
アジャイル開発のメリット・デメリット
システムやソフトウェアに合った開発手法を選ぶためには、それぞれの特性を理解することが大切です。アジャイル開発は数多くのメリットがありますが、その一方でデメリットも生じます。メリットとデメリットを理解したうえで、適切な開発手法を選択しましょう。
●メリット
アジャイル開発のメリットとして、以下の4つが挙げられます。
-
後戻りの工数を抑えやすい
-
仕様変更に強い
-
開発者の成長を促しやすい
-
サービスを提供するまでの時間を短縮しやすい
それぞれのメリットについて、詳しくご紹介します。
後戻りの工数を抑えやすい
従来のウォーターフォール開発においては、最初に決定した設計・計画を重視するため、トラブルの発生箇所によっては戻る工数が大きく、多くの時間やコストが必要になる可能性がありました。しかし、アジャイル開発では、小さな単位で計画から設計、実装、テストを繰り返しており、テストで問題が発生しても1つのイテレーション内を戻る分の工数で済むため、後戻りの工数を抑えやすい点がメリットです。
仕様変更に強い
アジャイル開発では、計画段階で綿密な仕様を決めないため、開発途中でクライアントやユーザーとコミュニケーションを取りながらフィードバックを行い、確認しながら進められます。そのため、仕様変更や追加にも柔軟に対応しやすくなり、クライアントやユーザーのニーズに最大限に応えることができます。仕様変更に強いため、顧客満足度の向上につながる点もメリットです。
開発者の成長を促しやすい
アジャイル開発は、ウォーターフォール開発とは異なり、各工程の役割分担がないため、様々な作業を複数回にわたって体験できます。そのため、マルチスキル・マルチタスク化やスキルの向上につながり、開発者の成長を促しやすいといえます。また、プロセスの改善やマネジメント力の向上にもつながるため、チームの成長も期待できます。
サービスを提供するまでの時間を短縮しやすい
アジャイル開発は、「素早い」「機敏な」「頭の回転が速い」などといった意味を表す名前のとおり、従来の開発手法と比べて開発期間が短縮される点が大きな特徴です。
小単位で各機能を切り分けて開発し、優先度が高い順にテスト・リリースを行うため、開発にかかる時間を短縮できます。そのため、サービスを提供するまでの時間を短縮しやすい点もメリットだといえます。
●デメリット
アジャイル開発に生じるデメリットとして、以下の2つが挙げられます。
-
開発の方向性がブレやすい
-
スケジュールや進捗が把握しにくくなる
それぞれのデメリットについて解説します。
開発の方向性がブレやすい
アジャイル開発では計画段階で厳密な仕様を決めていないため、開発の方向性がブレやすいというデメリットがあります。仕様変更に対して柔軟な対応が可能ゆえに、さらに良くしようと改善を繰り返し、テストやフィードバックで変更・追加が増えていくことによって、当初の計画からズレてしまうことが起こり得るためです。また、多くの仕様変更や要望を受け入れることによって、予定よりも工期を要し、コストが高額になることも考えられるため、注意しましょう。
スケジュールや進捗が把握しにくくなる
アジャイル開発は計画を詳細に立案しないため、スケジュールや進捗具合が把握しにくくコントロールが困難になります。チームごとに小単位で開発を繰り返すため、全体を把握しきれずに、最終的に納期に間に合わないということも起こり得ます。
一方、ウォーターフォール開発の場合は、最初に指標となる機能設計と併せて、開発スケジュールを決定します。あらかじめスケジュールを設定しておくことで現状の進捗度を把握することが可能になります。そのため、納期が厳密に定められている場合は、ウォーターフォール開発のほうが適しているといえます。
アジャイル開発以外の開発モデル4つ
近年主流となっているアジャイル開発ですが、アジャイル開発以外の主流の開発モデルとして以下の4つが挙げられます。
-
ウォーターフォールモデル
-
スパイラルモデル
-
プロトタイプモデル
-
デブオプスモデル
それぞれのモデルの概要やメリット、デメリットについて詳しくご紹介します。
●ウォーターフォールモデル
ウォーターフォールモデルとは、上流工程から下流工程に向けて流れるように開発を行う手法を指します。上から下へ流れる滝をイメージして生み出された開発方法で、開発手順がシンプルでわかりやすいことが特徴の1つです。
開発を始める前に、実装する機能や性能などを定めて具体的にどのように進めるかを決定する要件定義を行い、設計、製造、テストと工程を進めていきます。すべての開発工程が完了してからリリースをする仕組みで、工程ごとに進めていくため、次のフェーズに進むと前のフェーズには戻れません。また、前のフェーズを完了しないと次のフェーズに進めないため、完成までに時間を要する点も特徴として挙げられます。
メリットは、要件定義からの工程に則って確実に開発を進めていくため、進捗状況が把握しやすく、計画的に開発を進めやすい点です。また、やるべき事項をあらかじめ決定しているため、完成品の品質が高くなる傾向にあります。それだけでなく、プロジェクトの開始時に必要な人材の数や作業量が把握できるため、コストやスケジュールの管理も容易となります。
デメリットは、最初に実装する機能や性能などを定めて進めていくため、途中で仕様の見直しが必要になった際には、コストの増加と納期の遅延が起こり得る点です。また、品質を重視した開発手法であるため、開発期間は長期化しやすく、市場の変化に合わせた新しい機能の提供が求められるシステムやソフトウェアの開発には適していません。
●スパイラルモデル
スパイラルモデルとは、「設計」と「プロトタイピング」を反復し、開発していく手法を指します。対象のシステムを機能ごとに分割し、重要な機能から構築していきます。開発チームや案件によって異なりますが、開発工程で機能ごとに、「要件定義→設計→開発→テスト→レビュー」を繰り返し、改善しながら完成を目指していく手法です。
スパイラル(Spiral)は英語で「螺旋」を表し、工程を繰り返す形が螺旋状に見えることから名付けられました。システムの工程を複数に分割する点が、アジャイル開発との共通点です。
メリットは、機能ごとに開発計画を立てていくため、最初に全体の設計を行いません。そのため、仕様やスケジュールの変更に柔軟に対応できる点です。また、開発の初期段階からプロトタイプを使って実際に動作させ、評価やレビューを得られるため、イメージの共有がしやすくなり、システムのクオリティを確保することが可能です。システムの規模やスケジュールの予測が立てやすく進捗を管理しやすい点や、要件定義や設計などの上流工程に時間をかけるため、下流工程への遅延が起こりにくい点もメリットとして挙げられます。
デメリットは、反復回数の増加に比例し、工期が延びてしまったり、開発コストが肥大化してしまったりする点です。全体のスケジュールを把握することが困難になるため、作業スケジュールをあらかじめ決めておくことが大切です。
●プロトタイプモデル
プロトタイプモデルとは、本格的な開発に移る前にシステムの試作品であるプロトタイプを作り、クライアントやユーザーのフィードバックを得ながら開発を進める手法を指します。従来用いられていたウォーターフォールモデルでは、仕様書やワイヤーフレームを使った確認のみとなるため、認識の齟齬が生じやすく、開発の終盤に手戻りが発生しやすいことがデメリットでした。プロトタイプモデルは、このようなデメリットを解消し、ウォーターフォールモデルを改良した開発手法です。
システムやソフトウェアの具体的な案が浮かんでいない段階でも事前にプロトタイプを作ることができるため、プロトタイプから具体案を確定して本格的な開発を進められます。
プロトタイプを作ってから必要な機能を検討できるため、不具合の早期発見や開発前に必要な機能を追加できる点がメリットとして挙げられます。しかし、プロトタイプの作成にコストがかかる点や、開発期間も長くなる点がデメリットです。
●デブオプスモデル
デブオプスモデルとは、「開発(Development)」と「運用(Operations)」を組み合わせた造語です。開発チームと運用チームが連携、協力して、柔軟かつスピーディーに開発を行う手法を指します。
多くのシステムやソフトウェアの開発現場では、機能の開発を担当する開発チームと、サービスの運用を担当する運用チームに分かれて作業を行っています。そのため、開発チームと運用チームでは、それぞれの立場の違いから意見の対立が生じてしまう傾向にありました。このような問題を解決するためにデブオプスモデルが生まれました。
デブオプスモデルでは、開発中に様々な開発ツールを利用することが特徴です。そのため、ツールを活用した作業の効率化がメリットとして挙げられます。しかし、開発と運用が同時に進むため、全体スケジュールの把握が困難な点がデメリットです。
開発モデル名 | 概要 |
---|---|
ウォーターフォールモデル | 上流工程から下流工程に向けて流れるように開発を行う手法 |
スパイラルモデル | 「設計」と「プロトタイピング」を反復し、開発していく手法 |
プロトタイプモデル | 本格的な開発に移る前にシステムの試作品であるプロトタイプを作り、クライアントやユーザーのフィードバックを得ながら開発を進める手法 |
デブオプスモデル | 開発チームと運用チームが連携、協力して、柔軟かつスピーディーに開発を行う手法 |
アプリ開発にも適したアジャイル開発のメリット
一般的に、システムやソフトウェアの開発には多くの時間を要するため、1年以上を費やす場合も珍しくありません。しかし、アジャイル開発では、従来の長い開発期間を短縮させるだけでなく、開発途中でも仕様の変更や追加が可能です。
仕様の変更が発生しやすいWebサービスや、近年増加しているWebアプリ、スマートフォンアプリの開発に適しているため、現代に適した開発手法といっても過言ではありません。
アジャイル開発とウォーターフォール開発、両方のメリットを活かして、組み合わせるというのも1つの方法です。
プロジェクトに合わせて、最適な開発手法を検討してみましょう。
アジャイル開発を得意とする開発会社をお探しであれば、発注ナビへお任せください。発注ナビであれば、全国5000社以上の開発会社の中から、ご要望や案件内容に合った開発会社を厳選してご紹介いたします。
「自社に合った開発会社がわからない」「選定にできるだけ時間をかけずにスムーズに導入したい」とお考えのご担当者様はぜひ一度ご検討してみてはいかがでしょうか。
自社に合った開発パートナーをスムーズに見つける方法
システム開発の外注先探しでお困りではありませんか?
日本最大級のシステム開発会社ポータルサイト「発注ナビ」は、実績豊富なエキスパートが貴社に寄り添った最適な開発会社選びを徹底的にサポートいたします。
ご紹介実績:21,500件(2024年9月現在)
外注先探しはビジネスの今後を左右する重要な任務です。しかし、
「なにを基準に探せば良いのか分からない…。」
「自社にあった外注先ってどこだろう…?」
「費用感が不安…。」
などなど、疑問や悩みが尽きない事が多いです。
発注ナビは、貴社の悩みに寄り添い、最適な外注探し選びのベストパートナーです。
本記事に掲載するシステム会社以外にも、最適な開発会社がご紹介可能です!
ご相談からご紹介までは完全無料。
まずはお気軽に、ご相談ください。 →詳しくはこちら
「理想のシステム開発の外注先
見つけ方ガイド」無料配布中
■アジャイル開発に関連した記事