今回は、ASPとERPの違いについて。
ASPとはネット経由で提供されるシステム業者のこと
ERPとはネット経由で提供される、基幹業務を一元的に管理できるシステムのこと
システムやソフトウェアとインターネットとの関連性の進化に注目
はじめに
ASPとERPの違いとは?
これまでコンピューターのシステムに携わったことのない方がシステム導入に携わることになったとき、最初に戸惑うのが膨大な数の専門用語や略語、そしてそれに伴う複雑な概念の理解ではないでしょうか。
そして、これらの用語をSEなどの専門家に質問してもなかなか明確な回答が得られません。これはSEが悪いというわけではなく、システムの専門家はその専門性ゆえに、一般人の間に複雑な概念を理解してもらえるような「共通語」を持ち合わせていないのです。
ここでは、初めてコンピューターシステムに関わる人がよく耳にするであろう「ASP」という言葉と「ERP」という言葉を比較し、これらがどのような概念を指す言葉なのかをできるだけかみ砕いて御説明しましょう。
ASPとは?
ASP(Application Service Provider=アプリケーションサービスプロバイダ)とは、あらかじめ提供者(プロバイダー)が用意したソフトウェアを、ユーザーがインターネット経由で利用できるサービス、あるいはこのようなサービス事業を行っているプロバイダーそのものを指す言葉です。
現在は“SaaS”と呼ばれることも多くなりましたが、ASPとSaaSとの間に本質的な違いはありません。ただしASPが登場した当時は現在のように高度なサービスの提供はされておらず、当初はアプリケーションソフト単体のレベルでサービスが提供されていました。そしてASPの進化につれてネット経由で提供できるシステムの幅は広がっていき、今日では、後述するERPのような統合業務ソフトですらネット経由での提供が可能になっています。このためSaaSは「ASPで提供されている膨大なサービスのうち、ユーザーが必要とするものだけを利用し、利用したサービスに応じた料金を支払う」という、ASPの利用形態のひとつとして識別される場合もあります。
ERPとは?
ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)とは、従来日本で取り入れられてきた販売管理・購買管理・在庫管理などの「基幹業務システム」を一元的に処理する大規模システムです。言い換えれば「会社のリソースを一括管理し、経営スピードを向上させるための総合システム」といえるでしょう。
ERPと従来の基幹業務システムとの最大の違いは、受注・販売・生産などの業務の流れがリアルタイムで把握でき、「現在のヒト・モノ・カネの流れがどうなっているか?」が俯瞰できるかどうかという違いです。
これによって業務効率の向上とともに、経営に必要な情報をすべてリアルタイムで吸い上げられるというメリットがあります。
さて、このような大規模のシステムを企業会計に導入する際、すべての端末に必要なソフトをインストールするには膨大な手間がかかります。またアップデートやバージョンアップの際、いちいち全端末に対しての処理が必要な場合、端末数の増加、部署の移動などにいちいち大きな手間がかかります。
このため、今日のERPはASP形式で供給されることが増えてきています。各端末がインターネット経由でERPにログインし、必要な作業・処理を行うことによってシステムの柔軟性や拡張性を保持し、たとえば新しい拠点を設立した際にも速やかにERPが導入できるといったメリットがあります。
おわりに
このようにASPとEPRとを比較してみると、両者は「目的も次元も全く違った概念である」ということが理解しやすいのではないでしょうか。
システムの世界を理解するためには、ひとつの用語を掘り下げて学ぶだけでなく、このようなさまざまな概念を横断的に学んでみることも有効かもしれませんね。また、「システムとインターネットの今日的な関わり方」についても、感覚的に把握しやすいのではないでしょうか。
<参考URL>
EPRとは
http://homepage2.nifty.com/mnakamura/erp/whatserp.html
ASP
http://e-words.jp/w/ASP-2.html
SaaSとSOA:『サービス』という言葉の意味
http://www.itmedia.co.jp/im/articles/0703/20/news144_3.html
ERP市場は縮小傾向のパッケージに対してASP・SaaS型が大幅な伸び–ITR予測
http://japan.zdnet.com/article/20407661/