今回は、「ASPとSaaSの違いについて」について。
ASPとSaaSのコンセプトは同じ
今は「SaaS」が主流だがASPも健在
重要なのは「自社のニーズに合致しているサービスかどうか」
ASPとSaaSの違い
ASPとは「アプリケーション・サービス・プロバイダ」、SaaSは「ソフトウェア・アズ・ア・サービス」の略称です。いずれもアプリケーションを提供するクラウドサービスであり、この2つの違いがよくわからないという方もいらっしゃるでしょう。
双方、単に「呼び方の違い」として定義の違いなく呼ばれることも多いですが、
SaaSはASPよりも後に普及した概念であるため、「ASPの進化したものがSaaSだ」と考えている人も多いようです。
ASPとSaaSとの違いとして、次のような点が挙げられます。
・ASPは「シングルテナント」、SaaSが「マルチテナント」
シングルテナントとは1顧客に対し1つの環境を構築すること、マルチテナントは、複数の顧客を1つのシステム環境で共同管理する方法です。
・保守対応性
クラウド環境の進化などから、バージョンアップ時やエラー発生時などの保守対応性が向上しました。
・操作性
あらゆるシチュエーションにおけるユーザーインターフェースの操作性が向上しました。
・連携性
SaaSはAPIを利用して他システムとの連携も可能になりました。
ただしこれはSaaSが登場した2000年代前半頃のデータであり、現在においてユーザー側が感じられるASPとSaaSの違いはほとんどないといっていいでしょう。
それぞれの背景
「ASP」と「SaaS」、それぞれ略称の意味を司るとASPは「アプリケーションサービス提供者」なのに対して、SaaSは「ソフトウェア提供サービス」、つまりソフトウェアの提供というクラウドサービスそのものを表しています。つまりこれらの語が表しているものは本来似て非なるものだったといえます。
日本国内においては当初ASPが主流でした。しかし1990年代後半当時、米国でSaaSの定義が提唱されたのを受け、商品として低迷気味であったASPを呼び変える形で「SaaS」の呼び方が利用され始めました。これが、日本において両者の呼び分けが不明瞭になっている原因です。
ではASPは当時なぜ低迷してしまったのか?これについては、インフラ確立の失敗、アーキテクチャの問題、操作性の不備といった問題を多く抱えていたことが理由として考えられます。この後SaaSの登場を受け、ASPもさまざまな改良がなされました。当時あげられた問題はほぼ解消したといえるでしょう。
実際には何を注意すべきか
このようにASPとSaaSは源流や定義が若干異なるものの、基本的なコンセプトはほぼ同じだということがおわかりいただけたのではないでしょうか。
SaaSが広く普及した現在においては、ASPを大幅にアップグレードしたものの呼び方を変えずサービスを提供している事業者があったり、それぞれの意味を同様のものとしてそのまま利用されているケースも多々ありますので、それぞれの定義の線引きがさらにあいまいになっています。
このような背景から、実際の現場で「ASP」あるいは「SaaS」を取り入れる場合、ユーザーがこのふたつの違いについて気にすべきことはほとんどないといえるでしょう。それよりも各サービスの内容が自社のニーズに合っているかどうか個別にチェックを行い、もっともニーズを満たしてくれるサービスを選択することが重要ではないでしょうか。