現在、あらゆる企業でシステムのDX化が進んでおり、自社でも基幹システムをクラウドに移行しようと考えている企業も少なくありません。しかし、基幹システムの移行にはいくつかの課題やリスクがあるため、移行前に把握しておくことが大切です。「どのような点に気をつければ良いかわからない」「委託先が多すぎて見極められない」とお悩みの方に向けて、今回は基幹システムの再構築や移行が進む理由、移行のメリット、課題などについて解説します。クラウドへの移行を成功させるポイントにも触れていますので、ぜひお読みください。
目次
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基幹システムに該当するシステム
「基幹システム」とは、企業の基幹業務を司るシステム全般を指します。何らかのトラブルで停止した場合、企業の活動や利益に大きな損害が出る可能性が高い重要なシステムです。英語では「Mission Critical System」と表記します。
基幹システムは、業務内容に合わせていくつかの種類に分かれています。以下は、主な基幹システムの一例です。
生産管理システム | 材料の仕入れや生産、完成品の在庫登録などの生産フローを管理するためのシステム |
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販売管理システム | 製品の販売に関する業務を管理するためのシステム |
受注管理システム | 製品の受発注に関する業務を管理するためのシステム |
在庫管理システム | 製品の在庫管理に関する業務を行うためのシステム |
労務管理システム | 従業員の勤怠や保険など労務に関する管理を行うシステム |
財務会計システム | 企業のお金のやり取りを管理するためのシステム |
基幹システムと間違われやすいものに「ERP」や「情報系システム」があります。ERPは「Enterprise Resources Planning」の略です。基幹システムが業務内容ごとに独立し、互いに連携して活用されているのに対し、ERPは情報をすべて統合・一元管理するという違いがあります。情報系システムとはメールシステムやスケジュール管理用のシステムなどを指し、基幹システムほど企業活動に影響を及ぼしません。
基幹システムの再構築が進む理由とは?
現在、多くの企業で基幹システムの再構築やクラウド移行が課題とされています。日本は世界の先進国と比較してもIT化が進んでいないともいわれています。理由は基幹システムが抱える以下の3つの問題点にあります。
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既存システムが老朽化している
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システムがブラックボックス化している
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システムが分断化されている
●既存システムが老朽化している
1つ目の問題は「既存のシステムが老朽化している」ことです。多くの企業では導入から長い年月が経ったシステムを、メンテナンスを繰り返しながら使用しています。古くなったシステムを意味する「レガシーシステム」では、現在の高度な業務には対応できなかったり、システムとの連携に支障が出たりと、使用を続ければ業務の非効率化が懸念されます。また、セキュリティ面での脆弱性も指摘されています。
経済産業省が2018年に発信したDXレポートの中の「2025年の崖」も、基幹システムに関連する問題の1つです。2025年の崖とは、レガシーシステムを使い続けることで多くの問題が2025年に発生・顕在化し、日本企業が国際的な競争力を失う危険性が高いという危機的状況を表しています。このような状況を回避するためにも、老朽化した既存システムの再構築や移行は急務です。
●システムがブラックボックス化している
2つ目の問題は「システムがブラックボックス化している」ことです。レガシーシステムは長い期間使用されているため、何度もメンテナンスやアップデートを繰り返しています。また、古いコンピュータ言語を用いて開発されていることも多い状況です。
使用言語の知識やシステム全体を把握している技術者の多くが、すでに現場から異動したり退職したりしているケースもあります。その結果、「知識があり現場に残っている特定のスタッフしかシステムを扱えない」「システムを深く理解しているスタッフがいない」という状況が起こりかねない状況です。
システムのブラックボックス化によって障害や不具合が起きた場合、迅速な対応ができなくなります。円滑に対応するためには、現在の担当スタッフが対応できるシステムに再構築・移行することが大切です。
●システムが分断化されている
3つ目の問題は「システムが分断化されている」ことです。今までは業務内容に合わせて、各部門でシステムを導入していました。システム同士はほとんどの場合連携して活用されていますが、統括されてまとめられているわけではないため、必要なデータを集めたり分析・編集したりする際に手間や時間がかかります。
業務を効率化し、多様化するビジネスに乗り遅れないようにするためにも、システムを統一して全員が社内のあらゆるデータに簡単にアクセスできるようにする必要があります。
このように、基幹システムの再構築やクラウド移行は急務です。「2025年の崖」問題に直面する前に、自社に最適な方法を検討することが大切です。
基幹システムをクラウド移行するメリット
基幹システムをクラウドに移行するメリットは、主に3つ挙げられます。
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基幹システムの管理コストを削減できる
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社外での利用が可能になる
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常に最新のシステムを利用できる
●基幹システムの管理コストを削減できる
1つ目のメリットは「基幹システムの管理コストを削減できる」ことです。自社で基幹システムを運用する場合、ハードウェアや基盤の管理をしなければなりません。それに伴って管理費や人件費もかかります。
基幹システムをクラウド化すれば、運用や管理を自社で行う必要はありません。システム変更に伴う手間も少なくなるため、今までより少ないコストで管理が可能です。
クラウド型の基幹システムサービスは、利用料を支払うだけで済むため導入しやすくなっています。
●社外での利用が可能になる
2つ目のメリットは「社外での利用が可能になる」ことです。社内で運用するタイプの基幹システムは、社内のネットワークに接続されたパソコンからしかアクセスできないなど様々な制限があります。
クラウドに移行した場合、インターネット環境下であれば社外からでもアクセスが可能です。出張やリモートワークの際も業務を進められるため、移動の手間や負担が減り効率化につながります。
●常に最新のシステムを利用できる
3つ目のメリットは「常に最新のシステムを利用できる」ことです。自社で基幹システムを運用している場合、アップデートや修正に対応しなくてはなりません。しかし、クラウドに移行することで、サービス提供者が更新や不具合への対応を行ってくれるため、手間をかけずにいつでも最新のシステムを利用できます。
また、常に最新のシステムを利用できればセキュリティ面も安心です。
基幹システムのクラウド移行に残された課題
基幹システムをクラウド移行することには多くのメリットがありますが、少なからず課題もあります。主な課題は以下の3つです。
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業務の根幹を支えるシステムを外部に委託するリスク
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自社システムより劣るカスタマイズ性
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インターネット障害時の使用トラブル
●基幹システムに外部サービスを利用するリスク
1つ目の課題は「業務の根幹を支えるシステムを外部サービスで利用する場合リスク」があることです。基幹システムは、企業の重要な業務に直結したシステムです。基幹システムを外部サービスにしてしまうことで、以下のリスクが考えられます。
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突然サービスが使用できなくなる
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アップデートによって使いにくくなる
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利用料金が上がる
クラウド型の基幹システムサービスを提供している企業が倒産した場合など、突然サービスが停止し使えなくなることが懸念されます。また、クラウド型のシステムは自動でアップデートされる点がメリットの1つでもありますが、アップデートの結果、以前よりサービスが使いにくくなる可能性もあります。
クラウド型のシステムは初期費用が安く済む代わりに、月々の利用料を払う形式がほとんどです。サービス提供企業が利用料を値上げした場合、想定していたよりもランニングコストがかかることも考えられます。
●自社システムより劣るカスタマイズ性
2つ目の課題は「カスタマイズ性が自社システムより劣る」ことです。自社で運用するタイプの基幹システムは、企業のニーズに合わせて構築できます。しかし、クラウド型の基幹システムでは特性が異なるため、自社で運用するものよりカスタマイズ性が劣る可能性が高いです。
使いたい機能に過不足はないか、どのくらい柔軟にカスタマイズできるか、オプションを追加する必要があるかなど、事前に確認して自社に最適なシステムを探す必要があります。
●インターネット障害時の使用トラブル
3つ目の課題は「インターネット障害時の使用トラブル」が考えられることです。クラウド型のシステムはインターネット環境が整っていれば、場所を問わず利用可能です。一方で、インターネットに障害が起きてしまった場合、オフラインでは使用できません。
そのため、基幹システムをクラウドに移行する場合は、インフラ整備も同時に行うことが重要です。併せて、災害などで通信障害が起きた場合の対処方法も事前に検討しておく必要があります。
基幹システムのクラウド移行を成功させるポイント
基幹システムのクラウド移行を成功させるためのポイントは、以下の3つです。
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継続して利用できるクラウドシステムを選ぶ
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必要な機能とカスタマイズ性を確認
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セキュリティやコンプライアンスをクリアしているか確認
上記のポイントに注意し、システムを選ぶことをおすすめします。
●継続して利用できるクラウドシステムを選ぶ
1つ目のポイントは「継続して利用できるクラウドシステムを選ぶ」ことです。つまり、可用性が高いシステムかどうか見極める必要があります。システムが使えなくなってしまうことを防ぐために、「サービス提供側の企業がシステムを継続的に稼働させるためにどのような対策を行っているのか」「品質はどの程度保証されているのか」などを事前に確認する必要があります。
また、サービス提供側の企業にすべてを任せるのではなく、自社でもシステムの可用性を低下させないための対策を行うことも大切です。
●必要な機能とカスタマイズ性を確認
2つ目のポイントは「必要な機能とカスタマイズ性を確認すること」です。クラウドシステムは自社で運用するシステムに比べるとカスタマイズ性が劣ります。そのため、必要な機能を兼ね備えているシステムを選ぶことが重要です。加えて、どの程度カスタマイズ性があるかを確認しておく必要があります。
機能を選ぶ際は、今まで自社で運用していたシステムを完璧に再現しようとしないことが大切です。自社に必要な機能と不要な機能を改めて整理し、今求めている水準に達しているかどうかの基準を設けましょう。
●セキュリティやコンプライアンスをクリアしているか確認
3つ目は「セキュリティやコンプライアンスをクリアしているか確認する」ことです。基幹システムでは顧客や従業員の個人情報、企業の重要機密など重要な情報を扱っています。そのため、安全性には特にこだわらなくてはなりません。
クラウド型システムサービスを提供している企業が、どのようなセキュリティ対策を行っているか確認する必要があります。セキュリティ対策にどのような考えを持っているか記載された「セキュリティホワイトペーパー」を確認するのがおすすめです。自社が求めるセキュリティレベルに達しているか確認できます。
この記事では主に「基幹システムのクラウド移行」について解説しました。基幹システムを取り巻く現状と、システムをクラウド化することのメリット、課題を正しく理解したうえで移行することが大切です。
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