数あるシステム開発会社の中から最適な発注先を探すのには大きな労力と時間を要する。さらに特定の技術領域に強い開発会社ともなれば、その苦労がさらに増えることは間違いないだろう。
株式会社平和テクノシステムは、自社開発のナースコールシステムのスマホアプリ化に向けSIP(Session Initiation Protocol)と呼ばれる技術に強い開発会社を探していた。しかし、数多の開発会社の中からSIPに強い会社を見つけ出し、そこからさらに最適な発注先を決めていくのは時間的にも労力的にも難しいと判断。発注ナビを利用することとなった。結果として最適な発注先である合同会社なのはなシステムと出会うことになる。
今回の発注の背景と開発内容について、株式会社平和テクノシステムの代表取締役である達橋義信氏と、合同会社なのはなシステムの代表である佐藤雄朗氏に、詳しく話を伺った。
市場を牽引する自社製品である高機能ナースコールシステム「Yuiコール」のスマホアプリ開発で新たな発注先が必要になった。
――平和テクノシステム様はどのような事業を展開されているのでしょうか。
株式会社平和テクノシステム 達橋氏:当社は静岡を拠点とした通信工事会社からスタートしました。通信・ネットワーク工事全般を手掛けており、県やNTTなどからも受注していました。次第に事業エリアを拡大し、あの洞爺湖サミットにおけるネットワークの構築を経産省から受注した実績もあるなど“工事に強い”会社として、広く知られるようになりました。
その後、お客様からのご要望を受け自社開発したのが「Yuiコール」です。同製品は介護、医療機関などで使われる、いわゆるナースコールのシステムで、これまで当社が培ってきた通信、ネットワークの技術を活用した、まったく新しいソリューションとして開発、市場に展開しています。
――今回の発注の経緯について教えてください。
達橋氏:「Yuiコール」開発のきっかけは今から14年ほど前まで遡ります。当時、ナースコールは2大企業がシェアを独占していました。そんな時、当社が出入りをしていた医療機関の経営層や現場の方々から、既存のナースコール機器の値段が高いという声が上がったのがきっかけです。当時、特に介護市場で上がっていた声としては、「ナースコール呼び出しを受け、通話するだけの機能でよいのに無駄な機能が多すぎる」や、「ナースコール端末、ハンディナース端末、電話機、というようにそれぞれ別々の機器、システムが必要になり、操作が煩雑になるだけでなく、コストがかさんでしまう」というものです。
「Yuiコール」の最大の特徴といえるのが、さまざまな機器やシステムを自由に組み合わせ、それらを管理、集中コントロールすることができることです。ナースコールのみならず、電話機能(内線、外線通話、転送)をワンシステムに内包。さらに多彩な見守りセンサーやカメラ、防犯、防災システムなどを接続することができ、それらの情報を一覧表示し、情報を一元管理することができます。ワンシステムで、ナースコールはもちろん、入院患者さんの生活状態の見守りまで行えるという画期的なシステムです。現場のニーズに応え、さまざまな機能と連携、統合していく中で、“業界初”となる機能を次々に実現してきた、常に進化を続けるシステムです。
そんな中、今、需要が高まっているのがスマートフォンを中心としたさまざまな機能、サービスです。スマートフォンの活用例としては、ナースコール端末としてはもちろん、インカムや介護記録の入力、見守り機器の表示管理などがあります。しかし、それぞれ必要とする端末やOSが異なるため、別々の端末が必要になるなど、仕様が煩雑になり、機能を使いこなせないという現状があります。それならば、それらの機能を全部まとめて統合し、そうした課題を全て解決しようというのが、今回の発注の根底にありました。
スマートフォンを利用したシステムはたくさん存在します。しかし、Android限定だったり、PCでなければ動かなかったりと制限が定められているものがほとんど。そこで今回は、スマホのOSや機種、メーカーなどを選ばずに使え、スマホの内線化と各種情報を参照できるアプリを開発するために、新たな発注先を探すことになりました。
――平和テクノシステムさんは自社内でも開発部門がありますが、なぜ外部に発注したのでしょうか。
達橋氏:スマートフォン用の内線通話アプリの開発については、アプリのデザインや機能などの企画は完成していたのですが、当社内に開発するノウハウが蓄積されておらず、外部の開発会社にお願いすることにしました。
ところが、こうした開発をどこにどう頼めば良いのか、あまり分かっておらず、ネットで検索したり、展示会にも足を運んだりしたのですが、SIPに強みを持つ開発会社さんをなかなか見つけられずにいました。
そのような中、発注ナビの存在を知り、申し込んでみることにしました。
――SIPというと、IPネットワークを使った内線網の構築やコールセンターなどで使われている技術ですね。
達橋氏:はい。コールセンターではSIP端末の電話機とPCの顧客情報を連動させ、業務効率を高めるような使い方をしていますが、それをスマートフォンアプリとして実装し、ナースコールや見守り情報と連動させようというイメージです。
オープンソースソフトウェアを活用した提案ができるのが、なのはなシステムの強み。SIPについても豊富なノウハウを蓄積していた。
――なのはなシステム様は、普段、どのようなシステムを開発されているのでしょうか。
合同会社なのはなシステム 佐藤氏:当社は人数規模こそ小さいですが、各種システム、ソフトウェアの開発から、ネットワーク・システムインフラの構築まで、トータルに手掛けています。
AI技術やローコードツールも積極活用しており、たとえば、OCR(文字認識)をオープンソースのスマホ対応ローコードツールと組み合わせて、名刺撮影と画像送信のみで顧客管理システムに登録される、といったシステムをご提案する機会も増えています。古くなってしまったシステムの改修から最先端技術による新規システムの開発まで、お客様のニーズに幅広くご対応しています。
当社は、広くオープンソースソフトウェア(OSS)を活用しており、OSSのさまざまなライブラリを積極的に利用しています。お客様のご要望に対して、OSSを使った多彩な提案ができるのは、当社の大きな強みだと思います。また、OSSを活用することでトータル予算も抑えられます。
――今回の案件にエントリーされたのは、どのような理由からでしょうか。
佐藤氏:普段から、当社の強みが活かせるような案件、競合が少なそうな案件にエントリーするように努めています。
今回はSIPに関連した開発とのことでしたが、もともと当社ではSIPに関心があり、さまざまな開発を通じて知見もたまっていました。
当社なら、平和テクノシステムさんのニーズにご対応できるのではないかと考えエントリーさせていただきました。
決め手はSIPに対する知見の深さと実績、そして一緒に課題解決に取り組めるエンジニア同士の相性。
――発注ナビから2社ほどご紹介させていただきました。その2社から、なのはなシステム様に決められたのは、どのような理由だったのでしょうか。
達橋氏:そもそも応じてくださる開発会社さんがあるのかどうかも分からなかったので、2社ご紹介くださったことに驚きました。2社とも打ち合わせをさせていただきましたが、なのはなシステムさんの方がSIPをより深く理解していたように感じたのと、過去に電話アプリの開発実績があった、というのが評価につながりました。
さらに、打ち合わせを進めていくうちに、技術屋同士で響き合うものがあったというのも決め手といえるかもしれません。
――エンジニアさん同士の相性のようなものでしょうか。
達橋氏:はい。「Yuiコール」は、病室のセンサーや各種システムを接続し集中管理できるという特徴があります。
これを支えているのが「Yuiステーション」というプラットフォームです。サーバコンピュータなどを核に、当社の開発チームが、さまざまなセンサーや機器から情報を収集できるように作り込んでいます。
たとえば心肺や呼吸の状況、病室の室温、カメラ映像、電子カルテシステムの情報など、あらゆるものが一元的に把握できます。ベッドセンサーも自社用に開発しながらも、他社製センサーとの連携も柔軟にできるよう開発しています。
なのはなシステムさんは、一緒にこうした「ものづくり」に夢中になり、互いにいろいろな意見を出しながら課題解決に取り組める相手だと感じました。
ステーション側の作り込みや情報提供もあり、開発はとてもスムーズに進行。
――今回の開発で苦心されたところはありますか。
達橋氏:今回は、なのはなシステムさんと当社の開発サイドとの間で、エンジニア同士が話をし、どう連携していくのかというところに注力しました。
佐藤氏:今回の開発の肝となったのはSIPサーバとスマホアプリでの細かい設定合わせや、「Yuiステーション」とスマホアプリをAPI経由でつなぎ込むところです。そこさえクリアしてしまえば、順調に開発を進めることができました。多くの部分はオープンソースのライブラリを活用することで対応が可能でしたし、コアな部分は当社の知見を活かし、ライブラリをカスタマイズすることで解決できました。
「Yuiコール」では、「Yuiステーション」のサーバを経由すれば、ほとんどのことが交換機経由で行えるようになります。
今回開発した、スマホアプリでは、SIPプロトコルを利用して、SIPサーバ経由でさまざまな機器の操作に対応します。また、センサーや機器の情報にアクセスして、それらをスマートフォン上に見やすい形で表示することができます。交換機を活用した設計思想のおかげで、SIPに対応したアプリさえ構築すれば良いので、開発もとてもスムーズでした。
平和テクノシステムさんの開発陣からの情報提供にも、とても感謝しています。
達橋氏:今回のアプリには通話以外に、13の機能が搭載されています。まだまだ、第二弾、第三弾のアイデアも控えているので、タイミングが来たら、お願いしていきたいと考えています。
発注ナビは、電話で「こういうことがやりたい」と伝えるだけで、候補となる会社を紹介してもらえるのは助かった。今回のような特定の技術領域での開発ではなおさら。
――発注ナビの使用感はいかがでしょうか。
達橋氏:使い勝手は非常に良いという印象を受けました。Webで申し込んだ後、電話で「こういうことがやりたい」と、こちらの要望を口頭で伝えるだけで、候補となる会社を紹介してもらえるのはとても助かります。今回のように特定の技術領域での開発では、なおさらです。
SIP関連のノウハウを持つ開発会社さんと、いきなり打ち合わせが始められるということで、かなり時間の節約になりました。
佐藤氏:案件情報の中に発注企業の情報と、ヒアリングした内容がしっかり記載されているので、自社の強みが活かせる案件かどうかが分かりやすいというのは魅力ですね。発注ナビ側で、発注企業から要件などをしっかり聞き取ってくれているので、安心してエントリーできます。
――ありがとうございました。
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