「モダナイゼーション」という言葉をご存知ですか?モダナイゼーションとは簡単に言うと、企業のITシステムを刷新して現代に合わせた業務体制を整える一連の取り組みのことです。
国内の企業で使われてきたITシステムはいわゆるレガシー化しているケースも多く、刷新せずに放置していると「業務遂行が非効率になる」「操作や管理に関してノウハウ共有が難しくなる」といったデメリットが発生してしまいます。
今後、DX(組織のデジタル改革)を進めていくためにも、モダナイゼーションの実行は必要不可欠です。
今回は、モダナイゼーションってどういう意味? モダナイゼーションを実施するにはどうすればよいの? そんな疑問に対して詳しく解説していきます。
目次
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「モダナイゼーション」とはどういう意味?
英語に詳しい方であれば、モダナイゼーションが「モダン(現代的)」という言葉と関係しているのに気づくのではないでしょうか。その名の通り、モダナイゼーションは直訳すると「近代化」あるいは「現代化」といった意味になります。ことビジネスにおいては、業務で使用しているITシステムやデバイスといった「インフラを最新のものへと刷新すること」を指します。特にIT分野で使われることから、「ITモダナイゼーション」と呼ばれるケースもあるので覚えておきましょう。
基幹システムや業務管理システムなどビジネスで使用されるITシステムは、
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ソフトウェア
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ハードウェア
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蓄積データ
といった各要素が連携して稼働しています。モダナイゼーションでは上記のような要素を活用しながらシステム内容を最新化して、業務に適合するように調整を行っていくのがポイントです。
現代でモダナイゼーションが重要視される理由
経済産業省が、有識者を集めて会議を行い「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」というレポートを公表しているのをご存知でしょうか?レポートの内容を簡単にまとめると、「2025年までに企業がシステム刷新を含めたDX化を実現できないと、日本国内で最大12兆円もの経済的損失が発生する」というものです。
冒頭で述べた通り、DXは組織のデジタル改革のことですが、この企業のDX化において大きな障害になっているのが既存のITシステムです。ITシステムは、リリースを開始してから時間が経過するほど業務に適さなくなっていきます。例を挙げると、
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事業部門ごとにシステム内容やデータが分割されている
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その場しのぎのシステム改修により特定のメンバー以外のシステム操作が困難に
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余計なコードが実行されてシステムの稼働スピードが遅くなっている
といったデメリットを抱えながらシステムを稼働させ続けると、動作性が遅くなって業務が非効率になるだけではなくセキュリティホールが放置されるといったリスクも抱え込んでしまうことになります。もしも企業で長年使い続けているソフトウェアや機器が存在している場合、モダナイゼーションを検討して現代に合わせたシステムへ移行を行うことをおすすめします。それぞれの企業がシステムをモダナイゼーションすることでDX化が推進され、「2025年の崖」を回避できる可能性も高まるのです。
モダナイゼーションとマイグレーションは何が違う?
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モダナイゼーション:既存システムのIT資産を流用しながら新しいシステムを作る
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マイグレーション:既存のシステム構造を新しいシステムで再現をする
モダナイゼーションとしばしば混同される取り組みに、「マイグレーション(migration)」というものがあります。
マイグレーションは「移行」といった意味のあることであり、ビジネスでは既存システムを新しいシステムへと移行する取り組みを表します。これだけ聞くとモダナイゼーションと変わらないように見えますが、モダナイゼーションとマイグレーションではシステムへのアプローチが異なるので注意が必要です。
モダナイゼーションでは既存システムのIT資産を流用しながら新しくシステムを形作っていきます。それに対してマイグレーションの場合はシステムの構造に手を加えるのではなく、既存のシステム構造を別のシステム上で再現しながらそこへデータの移行などを行っていきます。
ですから「既存システムとマイグレーションで作ったシステムを併用する」というシステムの使い方も可能です。「レガシーマイグレーション」とも呼ばれるマイグレーションは、モダナイゼーションが叫ばれる以前から企業で取り組みが行われてきました。
しかし、マイグレーションからしばらく経過して、システムが再びレガシー化するケースもしばしばです。以前マイグレーションを実行しているからと言って油断せずに、必要な場合はモダナイゼーションを行ってレガシー化から脱却してみましょう。このレガシーシステムやマイグレーションについては、以下のページで詳しくご紹介しています。
■レガシーシステムとは?マイグレーションとオープン化のメリット
モダナイゼーションにはどんな方法がある?
モダナイゼーションの主な方法 | |
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方法 | 概要 |
リドキュメント | 関係者から収集したシステムの情報をドキュメント化、可視化する方法 |
リファクター | 現在の状況に対応できるよう、システムの内部構造を最適化する方法 |
リホスト | プラットフォームとなるハードウェアのみ移行する方法 |
リライト | ITシステムの開発言語(ベースコード)を刷新する方法 |
リプレース | 既存のシステムから新しいパッケージソフトウェアに移行する方法 |
モダナイゼーションには上記のような方法があります。特性が異なるのでそれぞれの違いを紹介します。
●リドキュメント
リドキュメントは、既存システムのノウハウを社内で共有したいときに使える手法です。ITシステムの基本仕様や構築方法といった情報を関係者から収集してドキュメント化、可視化する方法を指します。ITシステムの変更を行うわけではないので、他の方法と比較して簡単に実行できる手法です。また関係者間でドキュメント内容を共有することで、指定のメンバーのみがシステムの概要や操作方法などを知っているという事態を防げるのもメリットになっています。
ただし既存システムに手を加えないのでレガシー化のリスクは残ったままになってしまうのがデメリットです。またそもそもシステム内容がすでに分かりづらくなっており、ドキュメント化が上手く進まない可能性もあるので注意しましょう。
●リファクター
リファクターは、「リファクタリング」とも呼ばれる方法です。アプリケーションのコードに対してアプローチを行い、内部構造を現在の状況に対応できるように最適化することを指します。リファクターを行うことで無駄なコード読み込みをなくし、コード内容を整理して誰でも分かりやすいように刷新ができるメリットがあります。
その代わり、コードの不具合をなくしたり機能を追加したりといった作業は含まれないため、コード内容がレガシー化して欠陥が増えている場合には適した手法とは言えません。あくまでシステムの挙動は変更せずに内部構造をシンプルにするのがリファクターです。
●リホスト
OSなどのITシステムの基本となる基盤を新しく別環境で構築して、アプリケーションやデータといった要素を別環境へ移行する行為を「リホスト」と呼びます。既存システムにはあまり手を加えずにオープンな環境を作って移行を行うことから、スピーディーに実行できる点が魅力です。しかし、既存システムは残ったままなので、システムの柔軟性が低くなり業務効率化の効果が限定的になってしまうリスクも抱えています。
●リライト
ITシステムの開発言語(ベースコード)に手を加える手法です。具体的にはコード変換ソフトなどを活用しながら既存システムの言語を新しい開発言語へ移行し、より使いやすい言語構造へと刷新するのがポイントです。
古いプログラミング言語を新しい言語へと変換することで、セキュリティ性の向上や稼働スピードアップといった効果が得られます。
しかしこの方法も、レガシーシステムの基本構造はそのまま受け継がれてしまうので、たとえプログラミング言語が刷新されても、構造自体が最適化されているとは限りません。また実行にはプログラミング言語といった分野に詳しい、スキルを持った人材が必要です。
●リプレース
既存のシステムから新しいパッケージソフトウェアに移行するリプレースは、業務構造を根底から見直して、DX化を推進する際に使える手法です。システムを単に新しく構築するだけでなく業務構造そのものにもメスを入れながら移行を行うため、業務プロセスの最適化を実現しながら最大限にシステムを利活用できるメリットがあります。一方でITシステムの資産や業務プロセス自体を抜本的に変革する必要があるため、コストや時間が掛かってしまう点がデメリットです。また大きな変革に伴い、現場から反発を受けるリスクもあります。
モダナイゼーションを実施する具体的な手順は?
ここからは実際にモダナイゼーションを検討している企業向けに、モダナイゼーションを進めるフローを紹介していきます。
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モダナイゼーションを行う対象を定める
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置き換えるシステムの比較検討を行う
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モダナイゼーションを実施するのに必要な予算や人員などを算出する
具体的にはこの3つのステップで行います。詳しく見ていきましょう。
●モダナイゼーションを行う対象を定める
業務システムや基幹システムなど、モダナイゼーションを行う対象はさまざまです。例えば「既存システムのレガシー化が激しく構造を見直さないといけないのに、リファクターやリドキュメントといった対策にとどめる」といった方針では問題解決にはなりません。自社にどのような課題があるのかを整理した上で、モダナイゼーションを行うべき対象を明確に定める必要があります。
業務システムの一部だけを刷新する、基幹システム自体を抜本的に見直して業務改革を行うなどの手法が考えられます。対象が広いほど作業に時間は掛かりますが、それだけ得られる効果も大きくなるでしょう。
ただし、プログラムの組み方によってもモダナイゼーションの難易度は変わってきます。自社オリジナルの構造部分が多いほど作業も難航しやすくなるので、システム要件を理解した上でトラブルが起きないよう、冷静にモダナイゼーションを遂行してみてください。
●置き換えるシステムの比較検討を行う
次に、置き換えるシステムについて比較・検討を行います。例えば「既存システムをオープン化して再現を行いたい」という場合は、クラウドシステムなどがおすすめです。クラウドシステムはコスト面で中小企業でも手軽に導入できる点や、メンバー間で簡単にデータ共有しながら作業ができる点などが受けており、テレワークの推進にも役立ちます。
しかし「クラウドシステムではセキュリティ性などに不安がある…」という声があるのも事実です。セキュリティ性を確保しながら業務遂行する点を重視するならばクラウドよりコストは掛かりますが、オンプレミスでシステム構築を行うのも良いでしょう。いずれのシステムを導入するにせよ、「現行システムと比較してより業務効率化やコスト削減などが実現できるか」が焦点になってきます。モダナイゼーションの目的を忘れずに適切なシステムを比較・検討してみてください。
●モダナイゼーションを実施するのに必要な予算や人員などを算出する
モダナイゼーションの対象や導入システムなどが決まった後は、実際に細かい計画を立てていきます。会社のリソースは限られているので、無理しない範囲でモダナイゼーションを実行できるように管理を行う必要があります。
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どのような手順でモダナイゼーションを進めるのか
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総合的にモダナイゼーションにどのくらい予算が必要か
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どのような人員がかかわって作業をする必要があるのか
といった観点で計画を立てられると安心です。手順については、思い切って対象システムすべての刷新を同時に行う、スモールスタートで段階的に少しずつ刷新を行うなどのフローがあります。自社でスムーズにモダナイゼーションを進められる方法を選びましょう。この他、予算管理も重要です。予算が不足すると計画通りにモダナイゼーションを実行できず頓挫してしまうリスクが発生してしまいます。実施する規模によって、経営層にモダナイゼーションのコスト面・業務効率化面から見た具体的なメリットを説明して協力をこぎつける作業も必要になってくるでしょう。
人員については、実務の作業スケールも考慮して決めていきましょう。もし業務プロセス自体が大きく変更になる場合は、現場から反発が出ないように上司や経営層などがじっくり説得を行う時間も必要です。
モダナイゼーションは外部の企業に依頼できる?
システム開発会社の中には、業務システムや基幹システムの開発だけでなく導入サポートなどを担ってくれるところも少なくありません。
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モダナイゼーションを担うエンジニアがいない
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モダナイゼーションについて初耳でノウハウが自社にない
といった場合は、無理に内製でモダナイゼーションを実行せずに外部に依頼をするのも手になります。日本最大級のシステム開発会社ポータルサイト「発注ナビ」では、実績豊富なエキスパートが貴社に寄り添った最適な開発会社選びを徹底的にサポートいたします。モダナイゼーションの実施を検討している企業担当者であれば、ご利用を検討してみてはいかがでしょうか。
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