近年、サーバーを意識しなくて良いサーバーレスに注目が集まっています。今までサーバー上で起動しているシステムを構築および運用するうえで、サーバー管理は必須でした。しかし、サーバーレスを活用するとサーバー管理が不要になり、システム開発者はプログラムを書くことに集中できるようになります。さらにコストの効率化を図れることで、サーバーレスを導入する企業が続々と増え、注目されるようになりました。
そこで今回は、サーバーレスを上手く活用するために基礎情報やメリット、デメリットを解説します。既存システムやこれから開発するシステムが、サーバーレスに適用するかの判断に役立つ内容になっていますので、サーバーレスの導入を検討している方は、ぜひご参考ください。
目次
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サーバーレスの特徴
「サーバーレス」とはクラウドサービスの一種で、システム開発者がサーバーを意識せずにシステムを構築・運用することを意味します。Webサイトやスマホアプリ、Webメールや業務システムなどがサーバー上で起動しているため、これらのシステムを構築・運用するうえで、サーバーの構築や保守が必須でした。しかし、サーバーレスサービスを使うと、システムを構築するだけで、すぐにサーバーで実行できるようになります。
続いてはサーバーレスの仕組みと、クラウドとの違いについて詳しく解説します。
●サーバーレスの仕組み
サーバーレスは名称を見ると、サーバーが不要という印象がありますが、サーバーが存在しないわけではありません。サーバーレスサービスの提供会社が、サーバーの構築や保守を行ってくれる仕組みです。利用者はサーバーの管理を一切意識しなくても良いため、サーバーレスと呼ばれています。
サーバーレスサービスを利用することで、システム開発者はプログラムを書くことに集中できるため、非常に注目されています。
●クラウドとの違い
クラウドサーバーとは、クラウド上に仮想サーバーを構築するサービスです。一般的にサーバーレスはFaaS、クラウドサーバーはPaaSやIaaS形式でサービスを提供しており、わかりやすい大きな違いは2つあります。
1つ目の違いは、料金体系です。
多くのサーバーレスサービスは、プログラムの実行回数や実行時間によって料金が発生する従量制課金形態です。一方でクラウドサーバーは、サーバーの稼働時間に伴って課金されます。
2つ目の違いは、管理範囲です。
サーバーレスは実行環境がすべて用意されているため、プログラムを送るだけですぐ実行してくれます。利用者はシステムを管理するだけで済みます。クラウドサーバーは、サーバー環境からシステムまで管理します。システムの管理だけではなく、プログラムの実行環境の設定や、ミドルウェアのインストールなどの作業が必要です。また、クラウドサーバーはPaaSやIaaSなど種類によってサーバーレスとよく似ているため、次で詳しく解説します。
サーバーレスの種類
アプリ開発ができる環境を提供するサーバーレスは「FaaS」とも呼ばれています。FaaSと似ているクラウドサービスには「IaaS」「PaaS」「SaaS」の3種類があります。以下でそれぞれの特徴を解説します。
●IaaS
IaaSとは「Infrastructure as a Service」の略で、アイアースまたはイアースなどと読みます。サーバーやネットワーク、ストレージなどのインフラをサービスとして利用する形態です。
OSやミドルウェアを選択できるため、自由にアプリの構築や開発が行えます。しかし、システム開発者が管理すべき部分が多く運用負荷がかかったり、開発のための高度なスキルを要求されたりするデメリットがあります。
●PaaS
PaaSとは「Platform as a Service」の略で、パースと読みます。ミドルウェアやデータベースなど、システム開発に必要な環境が整備されたプラットフォームを、サービスとして利用する形態です。
環境の整備に手間がかかることがないため、開発に専念できます。自社で開発できる分、業務に最適なソフトウェアを利用できるのが特徴です。しかし、開発環境が用意されているため、開発の自由度が制限されてしまうデメリットがあります。例えば各リソースやプログラミング言語は、ベンダーから提供されているものしか利用できません。
●SaaS
SaaSは「Software as a Service」の略で、サースと読みます。ベンダーが作り上げた既存のソフトウェアを利用する形態です。例えばブラウザを通じて使うメールやWeb会議、スケジュール管理、オンラインのストレージなど、ソフトウェアを利用するサービスがSaaSです。
ベンダーがソフトウェアを管理しているため、セキュリティ対策やアップデートなど、自社で対応する必要はありません。しかし、業務に適したカスタマイズができないデメリットがあります。
●FaaS
FaaSとは「Function as a Service」の略で、ファースと読みます。サーバーを気にせず、ソフトウェアを開発できる環境が提供されたサーバーレスのことです。サーバーを用意することなく、ソフトウェアを開発できる点はPaaSと似ていますが、大きな違いはリソースの使用の方法・タイミングなどにあります。
PaaSではリクエストリプライ方式でリソースを使用するため、プログラムが常に稼働しています。それに対し、FaaSではイベントドリブン方式※1.を取っていることから、リクエストを受信した際にプログラムが起動します。
常に起動して処理を行う場合はPaaSを使用しましょう。イベント時や特定の時間に動くプログラムには、サーバーレスが適しています。また、アクセスの増減が激しいECサイトでは、FaaSを使うと良いでしょう。
※1.イベントドリブン方式:プログラムの実行形式の1つ。何らかの事象(イベント)の発生に応じて処理が行われる方式
サーバーレスのメリット
サーバーレスには、サーバーを気にせずソフトウェアを開発できるため、開発者はプログラムを書くことに集中できるメリットがあることを簡単に説明しました。作業の効率化のほかに、コストの削減やリソースの自動拡張・縮小など、様々なメリットがあります。
続いては、サーバーレスのメリットを詳しく解説します。
●サーバーの運用が不要
1つ目のメリットは、サーバーの運用が不要な点です。
例えばIaaSやPaaSなどでシステムを構築して運用する場合、サーバーの脆弱性に対応する必要があります。パッチ適用をしたりキャパシティが想定以上であればリソースの追加を行ったりと、サーバーの運用保守を実施しなければなりません。
サーバーレスの場合、サービスの提供側がサーバーの運用保守を行うため、利用者が行う必要はありません。
サーバーの運用保守に費やしてきた人員や時間を削減することができ、利用者はシステムの開発や運用に集中できるようになります。
●課金制のためコストの効率化を狙える
2つ目のメリットは、課金制のためコストの効率化を狙える点です。
サーバーレスは、利用した時間もしくはプログラムの実行回数に応じて課金されます。
例えばIaaSの場合、サーバーの利用契約を1年単位で結ぶと、1年間使っても使わなくても料金が発生してしまいます。
一方、サーバーレスは利用した時間もしくはプログラムの回数に応じた課金体系のため、実行しなければ料金は発生しません。使った分だけ課金されるため、コスト削減を狙うことができます。
●コンピューティングリソースを自動的に最適配置する
3つ目のメリットは、コンピューティングリソースを自動的に最適配置する点です。
一般的にシステムを運用する際には、アクセス数やデータ量など必要なキャパシティを想定して、リソースを用意する必要があります。
もしキャパシティが想定以下だった場合、用意したリソースが使用されないにもかかわらず、料金が発生してしまいます。反対にキャパシティが想定以上だった場合、リソースの追加を行わなければなりません。
一方でサーバーレスは、自動的にリソースの拡張・縮小を行うオートスケーリング機能を備えています。想定していたキャパシティを上回る場合でも、常に最適なリソースでプログラムが実行されるため、サーバーが落ちる心配はありません。
サーバーレスにもデメリットがある
サーバーレスを使用すると、IaaSやPaaSなどが抱えていた問題を解決できたり、コストの削減ができたりします。ところが、場合によってはデメリットもあります。
例えば即応性が求められるシステムや、ステートレス処理※2では困るシステムであれば、サーバーレスは適していません。
システムがサーバーレスに合っているのか判断するために、デメリットもチェックしておきましょう。
●既存のコードが使えない
1つ目のデメリットは、既存のコードが使えない点です。
既存システムを移管する場合、サーバーレスの環境によって既存のコードでは動かない可能性があります。
主要なプログラム言語はサポートされていますが、サーバーレスで動かすための規則に従った変更が必要な場合もあるため、開発工数がかかる可能性を考慮しましょう。
●処理上の制約がある
2つ目のデメリットは、処理上の制約がある点です。
サーバーレスのサービスは、処理のタイムアウト時間やデータの容量制限など、機能制限がかかっていることがあります。
例えば15分以上時間がかかる処理が行えなかったり、400KB以上の大きなデータを扱えなかったりするなどの制約が存在するサービスがあります。
制限を知らないまま開発をしてしまうと、後から処理の方法を変える作業が発生してしまうため事前に確認しておきましょう。
●ストレージがない
3つ目のデメリットは、ストレージがない点です。
サーバーレスではステートレスな処理・関数の実装が求められます。ステートを保持する機能を持たないため、アクセスごとに対応が必要です。
ステートレス処理では困るシステムの場合、サーバーレス以外のサービスが相応しいでしょう。
●デバッグが難しい
4つ目のデメリットは、サーバーレスの大きな課題であるデバッグが難しい点です。
サーバーレス環境はシステム開発者が長年慣れ親しんだデバッグ手段が制限され、ローカルテストが難しい場合もあります。
ローカルでサーバーレスの本番環境を再現するための、様々なツールが登場してきていますが、コストの問題や使いこなせるまでに時間がかかることが懸念されます。
●レスポンスにタイムラグがある
5つ目のデメリットは、レスポンスにタイムラグがある点です。
サーバーレスはリクエストを受け、プログラムを実行する工程において、応答性が低いです。その理由は、サーバーレスはイベントドリブン方式を取っていることから、リクエストを受信した際にプログラムが起動するからです。
即応性が求められるシステムの場合、サーバーレスの使用は避けましょう。
※2.ステートレス処理:サーバーーにそれまでのセッション情報を保持せず、入力した内容でその都度出力が決定される処理
サーバーレスの活用事例を紹介
サーバーレスは、業界を問わずあらゆる企業で導入されています。続いては、そんなサーバーレスの機能や特徴を発揮できる「AWS Lambda」を用いた活用事例を紹介します。
Webサイトとアプリの活用事例を参考にして、サーバーレスの導入を検討してみてください。
●Webサイト
大手新聞社ではデジタル上でも新聞記事を配信しており、PCやスマートフォンで読める「紙面ビューアー」を提供しています。この紙面ビューアーには、毎日たくさんのアクセスがあります。新聞社は、時間や日によって激しく増減するアクセスの負荷調整に、問題を抱えていました。
そこで「AWS Lambda」を導入した結果、負荷に応じたインスタンス増減調整の手間がなくなり、コスト削減に成功しました。
●アプリ
国内大手のゲーム開発企業では、年に数回のイベント時にアクセス負荷がかかり、サービス提供に大きな遅延が発生してしまう問題を抱えていました。しかし、年に数回しかない大量アクセスのためだけに、高価なサーバーを導入するのは割に合いません。そこでリクエストに応じて自動的にスケールされるサーバーレスの「AWS Lambda」を導入して、自社システムから切り離したプログラムにて対処することにしました。
その結果、画像処理にかかる時間を数時間から10数秒まで短縮し、コストも20分の1まで削減することに成功しています。
まとめ
今回はサーバーレスの基礎情報やメリット、デメリットについて詳しく紹介しました。
サーバーレスを導入すると、システム開発者がサーバーを意識せずに、システムを構築・運用することができます。利用した時間やプログラムの実行回数に応じて課金する料金体系のため、IssSやPasS、SasSなどのクラウドサービスと比べると、コストの削減も狙えます。
従来のサーバーの問題が解消されるサーバーレスには、便利な面が多々ありますが、デメリットも存在します。容量や時間の機能制限やストレージがないこと、レスポンスのタイムラグが挙げられます。そのため、システムによっては、サーバーレス以外のサービスがふさわしいこともあります。
しかし紹介した活用事例のように、サーバーレスを理解して導入することで、アクセス増加に伴う問題の解決が期待できます。サーバーレスを利用する前に、既存システムや今後開発するシステムにサーバーレスが合っているのか、事前に把握することが重要です。
サーバーレスを賢く活用して、開発の効率化やコスト削減を進めていきましょう。
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