顧客の悩みを解決するシステムを開発、および提供する「SIer(System Integrator)」は、高いスキルが必要な分、やりがいも大きい仕事です。SIerを営んでいる企業にとって重要なのが、自社のシステムを販売する窓口となる「SIer営業(SI営業)」。SIer営業で販売する商材は無形のため、顧客課題をヒアリングしてそれに合ったソリューションを提供するといった工夫が必要になります。またサブスクリプション形式で販売を行うSaaSの営業とも違う点があるので注意してください。
今回はSIer営業の概要やSaaS営業との違い、そして仕事内容や業務の流れなどを解説していきます。
目次
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SIer営業(SI営業)とは
SIer営業とは「ITに関係するコンピューター技術」を商材として販売を行う営業手法を指します。その性質から「システム営業」や「ソリューション営業」などとも呼ばれています。SIerを提供している企業では単にシステムを開発して提供するだけでなく、「システムの運用および保守」、「自社リソース(エンジニア)の外部派遣」、ITに関するアドバイス(コンサルティング)」といった業務を同時に請け負っているケースがあるのもポイントです。
つまりSIer営業として働く場合は、営業としてのコミュニケーションスキルはもちろんのこと、「自社が提供できるシステムに関する専門的な知識」や「システムを理解した上でのコンサルティング」、「システム開発だけにこだわらないソリューションの選定・提供を行う」といったスキルも必要不可欠になります。
そのため、営業として働いてはいたが、ITシステムに関する知識もかなり持っている人や、もともとエンジニア部門で開発に携わっており、コミュニケーションスキルも高い人であれば、SIer営業になじみやすいといえます。
ちなみにSIer企業では、顧客の課題を基に適したシステムを1から開発しているケースも多いです。そのためSIer営業は出来合いの製品を渡されて販売する通常の営業よりも、営業担当者が商材開発にかかわる割合がより大きい(営業が顧客から課題を聞き出して、それを基に開発部門が開発を行うため)といえるでしょう。
SaaS企業とSIer企業の営業職違いを解説!
ここからは、SaaS企業とSIer企業の営業職を比較して、違いを解説していきます。
●SaaS営業の場合
SaaSは簡単に説明すると「クラウド上でサーバーや、そこで稼働するソフトウェアをまとめて提供するシステムタイプ」ことです。SaaSは基本的にサブスクリプション形式で販売されており、月額や年額といった定期的なタイミングで顧客から料金を引き落としていきます。SaaSを提供している企業の営業は、まず解約率を下げずに顧客と長期的な関係を持てるように注力する必要があります。
SaaSの売上は簡単に計算すると「契約数×プランの料金×継続期間」で決まります。その理由は、長期的に見て契約数が減少するとダイレクトに売上へ影響するからです。またSaaSではサブスクリプションを提供する準備段階で多額のコストが発生するため、解約率が増えて短期的な契約しか獲得できないと、コストを回収できる可能性が低くなってしまう点もポイントになります。
売上を確保しながらコストを短期間で回収するためには、営業側で以下のような対応が必要です。
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顧客の声を深堀してシステム機能へ反映させる
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顧客がシステムをスムーズに利用できるようにサポートする
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顧客の段階に応じてクロスセルやアップセルを提案する
従来の、商材をただ販売して買い切りで関係が終わる営業とは違う方法で営業を行うことになります。サブスクリプションモデルにかかわらず継続的な関係を持てるような営業を行うことは現代で必要なスキルになっているので、不足している場合は腕を磨いてみてください。
●SIer営業の特徴
SIer営業には大きく分類して、「アカウント営業」と「ソリューション営業」の2つがあります。
アカウントで営業では顧客に焦点を当てた営業活動を行います。具体的にはまず顧客の課題を直接ヒアリングして、自社で適したソリューションを提案・提供するのがポイントです。
また、「顧客の各部門と関係を持つ」、「顧客企業がより自社のソリューションに投資してくれるように促す」といった業務も含まれてきます。新規顧客の獲得数を増やす方向性よりも、獲得した顧客との関係性を深めて、自社の利益を成長させていく方向性が強い点がアカウント営業の特徴です。
対してソリューション営業は、顧客にも焦点を当てますが特定のソリューションが、すでに用意されているのがポイントです。ソリューションをターゲットとなる複数の企業へ提案して、新規顧客の獲得数を増加させていくための営業になります。ソリューション営業では一企業当たりから獲得できる報酬が少なくなります。そのため、できるだけ複数の企業と関係を持ちながら、サービス利用継続率を高めていけるかがポイントです。その点SaaS営業に似ている部分もあります。
数を増やすのが重要だからといって、ターゲットとはずれる顧客へ無理に営業を行うといった手法は取らないようにしましょう。
SIer営業(SI営業)に必要な知識とスキル
SIer営業の担当者になるためには、次のような知識やスキルが求められるでしょう。
●自社サービスへの知識
SIerでは顧客課題に合わせたシステムを1から開発して売り出すケースも多いです。そのため自社がどんなサービスを顧客へ提供できるのか知っておかないといけません。また、「ITに詳しくないクライアントにはかみくだいて説明する」、「ITに詳しいクライアントとは専門用語をたくみに扱いながら説明する」といった柔軟な対応も求められます。コミュニケーションスキルがあっても自社サービスについてなぜ良いのか、またクライアントの何を解決できるのか明確に説明できなければ、SIer営業はできません。
●顧客や業界に関する知識
顧客や業界に関する知識も必須です。顧客理解には、例えばWebサイト開発などで良く使われる「ペルソナ設定」が役立ちます。
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どんな業界に身を置いているのか
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事業規模や年商はどのくらいか
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現在どんな課題を持っているのか
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どんなサービスを検討しているのか
といった点で深堀してペルソナを構築することで、ターゲットとなる顧客を効率良く選定して受注や継続利用獲得へつなげやすくなるでしょう。
特に顧客と深くコミットしていく必要があるアカウント営業では、顧客や業界だけでなく組織部門構成や従業員の人柄といったさらに細かい部分の理解が求められる可能性があります。顧客を良く理解して悩みに寄り添う姿勢を見せてみてください。
●プロジェクトを進める能力および技術力
システムを導入して使ってもらうには、単に提案するだけでなく、以下のような各種コミュニケーション能力も必要です。
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商談をスムーズにクロージングして受注を決定させる
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開発部門とクライアント間の調整を行う
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開発の進捗状況を逐一クライアントへ報告する
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現場で滞りなく仕事ができるようにコミュニケーションを取る
またITに関する技術はめまぐるしくトレンドが変化するため、自身も最新情報を定期的に仕入れながらアップデートを行っていく積極的な姿勢が求められます。ITに関して古い知識しか持っていないと思われて、顧客離脱へつながらないように注意しましょう。主な開発はエンジニアが行っていくため、営業ではそれ以外の面をエンジニアが心配しなくて良いように上手く調整を行ってみてください。
システム販売だけが仕事ではない!SIer営業(SI営業)の流れを解説
ここからはSIer営業における業務の流れを解説していきます。
●顧客課題のヒアリング
SIer営業は顧客の窓口となるので、Webサイトや電話といった方法でお問い合わせが来た場合、対応する必要があります。顧客は本当に仕事を依頼して良いのか判断するために、発注候補企業の対応の仕方も確認しています。そのためITの知識や技術を有した上で、発注してもらえるように的確な応対を行う必要があるでしょう。担当者として、自分が自社のブランドを左右する可能性がある、ということを意識して対応を行ってみてください。
●自社商材の紹介
自社商品の紹介も、SIer営業の業務として重要です。
過去の事例や実績といった経験を顧客へ共有できれば、商品の説得力も増します。顧客に合わせた事例や実績を紹介できるように、相手側の情報を確認した上で共有したい情報の準備をしておきましょう。ただしSIer企業は固定の商材を持っていないケースもあります。そのためシステムを提案段階から作っていく場合は、顧客といっしょに商品を作っていくという感覚を忘れないようにしましょう。
●システム企画の提案
企画の提案は営業全般で重要な業務ですが、SIer営業の場合は、適切なシステム導入を促せるようにシミュレーションを行う必要があるのがポイントです。シミュレーションを行うためには、顧客から課題をヒアリングして自社のサービスでどのように解決できるのかイメージし、企画書へ落とし込む必要があります。そしてすでにパッケージとして商材を販売できる場合は導入を提案し、ない場合は開発を行い提供できる段階まで持っていきます。
クライアント側でぼんやりとしか企画を考えられていない場合は、SIer営業担当者として企画内容を明確化するサポートを行いましょう。
●開発部門との連携
営業は商談を持ってきて受注獲得を行いますが、実際に商材の開発などを行うのは開発部門です。ですからSIer営業は開発部門のエンジニアと話し合い、システムの開発内容や予算、開発期間などを調整してクライアントへ提案する必要があります。
また商談によっては「プリセールス」と呼ばれるエンジニアとしてシステムを説明する役、つまり営業補佐が同行するケースもあります。プリセールスがいっしょに商談の場にいる場合は上手く連携して商談を獲得できるようにしてみてください。
●商談のクロージング
商談が進んでも発注まで持っていかなければ収益は得られません。ですからSIer営業として業務を行う場合は、顧客と最終的な調整を進めて商談をクロージングさせる必要があります。またクロージングまでいかなくても、「システムが必要になったので追加で依頼をしたい」というニーズもあります。ですから顧客を取りこぼさないよう、クロージングまでいかなかった顧客を含めて情報を適切に管理する作業も必要です。顧客情報管理には「SFA」といった管理用のツール導入がおすすめです。手作業で管理するよりも膨大な情報を、必要な時にいつでも取り出してマーケティングへ活用できます。一社一社のニーズに合わせて商談を獲得したい場合は導入してみましょう。
●システムの運用や管理を行う
システム導入が完了してからがSIer営業の本番だと思ってください。長期的な契約へとつなげるためにシステムの運用や管理を行う作業へ移行します。
運用マニュアルを作成して相手の担当者がスムーズにシステム利用できるようにサポート、システムの定期チェックを実施して、トラブルが発生していないか点検するといった作業が発生するでしょう。運用マニュアルについては、操作する相手のスキルも加味して内容や言葉遣いなどを選んでいきます。
また定期チェックについてはトラブルが起こっていない場合でも、起こりそうな箇所があれば事前に変更を行いトラブルが大きくならないように工夫してみてください。
SIer営業(SI営業)の新規開拓にはマッチングサービスを使おう!
SIer企業において新規顧客の獲得や長期的な契約維持などを実現するためには、営業の力が必要です。しかし自社の社員だけで適切な顧客の課題聞き出しやクロージング、顧客情報の管理などを一元して実行するのは難しいです。そこでマッチングサービスを活用してみましょう。マッチングサービスはシステム開発企業とクライアントを仲介してくれるサービスであり、「営業で発生する負担を削減できる」、「発注情報を確認することでどんな案件がトレンドになっているのか確認できる」といったメリットがあります。
SIer営業には顧客との関係を強めることを重視したアカウント営業と、新規顧客獲得および契約維持に特化したソリューション営業の2種類があります。自社のサービス内容に応じて適切な営業手法を実施しましょう。営業工数の削減や効率化などには、マッチングサービスがおすすめです。営業リソースが不足しているといった悩みがある場合はぜひ利用してみてください。
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