バージョン管理システムは、主にシステム開発などで利用される、ファイルやデータの管理を効率化するためのソフトウェアです。プロジェクトの規模が大きくなると、作成したファイルやプログラムの変更履歴を手作業で管理することは難しくなります。
しかし、バージョン管理システムを導入すれば、複雑になりがちなファイルの管理作業をシンプルかつ効率的に行うことができるでしょう。
この記事では、バージョン管理の基礎知識や管理方式、システム導入のメリットなどについて詳しく解説していきます。
目次
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バージョン管理システムとは?
バージョン管理システムとは、ファイルやデータの変更履歴を管理するためのシステムです。ファイルに対する更新が繰り返されるプロジェクトや、複数人で同じデータを扱うケースでは、ファイルやデータの管理は非常に煩雑になりがちです。
しかし、バージョン管理システムを導入することで、どのファイルが、いつ、どのように変更されたのかを記録し、常に正確な状態で管理できます。プロジェクトの規模が大きくなるほど、その重要性は増していくでしょう。
●バージョンの付け方や命名規則の例
バージョン管理自体は、特別な作業ではありません。例えば、新しく作成したファイルに「20180101_◯◯」など年月日を付けて管理し、ファイルを編集するたびにファイル名に付けられた年月日を更新していくといった作業もバージョン管理のひとつです。
しかし、ファイル名に年月日を付けるという手法は手軽に導入できる反面、ファイル数や更新回数、あるいは更新に関わる人数が多くなってくると、ファイルをバージョンごとに正確に管理することが難しくなります。
そのため、組織的な管理や、人為的ミスの防止を目指す場合、バージョン管理システムの活用が欠かせません。
●バージョン管理の注意点
バージョン管理を行う際は、単にファイルを保存するだけでなく、「いつ」「誰が」「どのように」という情報を詳細に記録していくことが大切です。特にシステム開発や資料作成など、複数人が同一のファイルを頻繁に更新するような場合、この履歴がチーム内の混乱を防ぐ効果が期待できます。
また、バージョン管理システムはドキュメントや画像、音声・動画ファイルなどさまざまなファイル形式に対応しており、過去のバージョンへの復元も容易です。これにより、作業効率やファイルの管理性が大きく向上するでしょう。
バージョン管理システム導入のメリット
バージョン管理は手作業でも可能ですが、専用のシステムを導入することでさまざまなメリットが得られます。ここでは具体的なメリットを詳しく紹介します。
- 以前の状態に戻せる
- 変更履歴をすべて記録できる
- デグレードの発生を防止する
- チーム開発が効率化される
●以前の状態に戻せる
バージョン管理システムを使うと、変更した過去のファイル状態をすべて記録します。これにより、誤ってファイルを上書きしてしまっても、すぐに変更前の状態に戻すことができます。
手作業で管理していると、誤って上書きされたファイルを元の状態に戻すことは難しく、修復には大きな手間がかかることもありますが、システムではリポジトリ内の情報を元に変更を取り消せるため、安心して作業を進めやすくなります。
●変更履歴をすべて記録できる
バージョン管理システムは、ファイルの変更内容を日時やユーザーごとに細かく記録します。具体的には、誰がいつ何を変更したのか、どの部分が更新されたのかが明確になるので、不具合の調査や特定部分だけの修正がスムーズに行えるのは大きなメリットです。
また、変更時にはコメントを添えることも可能で、後から変更の意図を振り返りやすい仕組みとなっています。
●デグレードの発生を防止する
デグレードとは、新しいバージョンのソフトウェアが、以前よりも品質を落としてしまうことです。原因のひとつに、バグのある古いバージョンのソースコードを反映してしまうといった、バージョン管理の失敗によるものが挙げられます。
バージョン管理システムを導入すれば、古いバージョンのファイルに誤ってチェックインすることを防げるため、安定した品質を保ちながら開発を進められます。特に、複数人によるシステム開発を行う場合には、バージョンの混乱を防ぐことは大きなメリットとなるでしょう。
●チーム開発が効率化される
バージョン管理システムがあれば、複数人が同時にファイルを編集しても作業の衝突が減り、スムーズに統合(マージ)できます。これにより、メンバー間のコミュニケーションコストや作業の重複を減らせるため、全体の生産性が向上するでしょう。
また、異なる場所や時間帯で作業するメンバーも、変更内容を共有しやすくなるので、リモートワーク環境などでも、効率的な共同作業を実現可能です。
バージョン管理システムの管理方式
バージョン管理システムの管理方式は、「集中管理方式」と「分散管理方式」の大きく2つに分けられます。プロジェクトの規模や運用形態に応じて適切な方式を選択することが重要です。ファイルの管理方式について、それぞれの特徴と利用シーンを解説します。
- 集中管理方式(Centralized VCS)
- 分散管理方式(Distributed VCS)
●集中管理方式(Centralized VCS)
集中管理方式とは、ファイルのバージョン管理を専用のサーバ(リポジトリ)で一元管理する方式です。サーバ上にリポジトリと呼ばれるバージョン管理専用のフォルダを作成し、ユーザーのPCにクライアントソフトウェアを導入します。クライアントPCからユーザーがそれぞれがサーバに接続することでファイルを利用できます。
変更を加えた場合は、その都度コミット(チェックイン)としてサーバに保存します。リポジトリのバージョンコミットごとに自動的にひとつずつ増えていきます。なお、ファイルをサーバから取得する操作は「チェックアウト」と呼ばれます。
集中管理方式ではサーバ上でファイル情報を一括管理するため、サーバにつながっていない状態ではファイルの変更情報を記録できません。
以前は、集中管理方式の「CVS」や「Apache Subversion(SVN)」が多く利用されていましたが、集中的な管理がしやすい反面、サーバ障害時のリスクやネットワーク接続への依存が生じる可能性もあるため注意が必要です。
集中管理方式はシンプルな運用がしやすく、小規模チームや明確な権限管理を重視したい場合に適しています。
●分散管理方式(Distributed VCS)
分散管理方式は、サーバでファイル情報を一括管理する集中管理方式とは異なり、ユーザーがそれぞれPC内にリポジトリのコピーを持つ方式です。ファイルの編集や変更履歴の記録はまずローカルリポジトリで行い、一定のタイミングで、サーバ上のリモートリポジトリに反映させるのが特徴です。
ユーザーがそれぞれ自分のPC内にリポジトリを保持しているため、ネットワークにつながらずサーバにアクセスできなくても作業ができるのが大きなメリットです。
システム開発においては、複数人が分散して開発するという近年のニーズとマッチした、分散管理方式の「Git」や「Mercurial」などが主流になってきています。
ネットワーク障害が起きた場合でも、復旧した際にローカルとリモートの内容を同期することで、各メンバーの作業内容をまとめて管理できるというメリットもあります。分散管理方式はオフライン作業や大規模な分散開発が求められるプロジェクトに最適です。
ブランチ機能を使ったバージョン管理システムとは?
多くのバージョン管理システムでは、リポジトリを複数の開発ラインに分けて管理できる「ブランチ」という機能が搭載されています。ここでは、ブランチの基本から活用例、注意点まで詳しく解説します。
- ブランチとは
- ブランチ機能の活用例
- ブランチ機能の注意点
●ブランチとは
ブランチとは、英語で「枝」という意味で、リポジトリを枝分かれさせて独立した開発ラインを作る仕組みです。ブランチとして分岐した開発ラインは、互いに独立しており、更新内容による影響を受けません。
そのため、機能追加やバグ修正などの複数の変更を、同時並行で安全に進めることができます。大規模な開発プロジェクトや複数チームが関わる開発環境で有効で、異なる作業内容を整理しやすくなります。
●ブランチ機能の活用例
ブランチは、修正や機能単位ごとに分けて管理されることが一般的です。修正が完了するまではブランチ内で開発を進め、修正が完了すれば変更内容をマージ(統合)するといった使い方をすることで、作業内容の整理やトラブルの切り分けが容易になります。
一方で、ブランチそのものの概念の学習コストがかかることや、ブランチを取り扱うための操作が複雑といったデメリットも存在します。ブランチの特徴とプロジェクトの状況をよく見極めてから、管理方式にブランチを導入するべきかどうかを検討すると良いでしょう。
●ブランチ機能の注意点
ブランチを活用する際には、いくつかのポイントに注意が必要です。まず、複数のブランチが長期間にわたり分かれたままだと統合時のコンフリクト(衝突)が増え、トラブルが発生しやすくなります。そのため、定期的なマージやレビューを心がけることが大切です。
また、ブランチ戦略を事前に決めて、どのタイミングでどのブランチに統合するかルールを明確にすることで、誤操作や管理の混乱を防止できます。さらに、メンバー全員がブランチの概念や操作方法を理解していることも円滑な運用の鍵となるため、教育体制にも力を入れていくのがおすすめです。
バージョン管理システム選びの5つのポイント
バージョン管理システムを導入する際には、いくつかのポイントを比較検討することが大切です。ここでは、選び方の5つのポイントについて詳しく解説していきます。自社に合ったシステム選びの参考にしてみてください。
●1.機能性で選ぶ
バージョン管理システムを比較する際、まず注目したいのが搭載されている機能です。たとえば、ブランチ機能やマージ機能、細やかな履歴管理、権限管理の設定、トラブル発生時の復元方法など、プロジェクトごとに重視すべきポイントに違いがあるため注意しましょう。
自社やチームの開発フローや目的に合った機能が用意されているかを、事前にしっかり確認することが重要です。
●2.操作性で選ぶ
効率的な運用を実現するには、日々利用する現場メンバーにとって直感的で理解しやすい操作性も欠かせません。インターフェースがシンプルで分かりやすいものや、日本語対応がしっかりしているシステムだと、導入時の混乱や負担も軽減されるでしょう。
また、コマンド操作に不慣れなメンバーが多い場合は、アイコンやボタンなど視覚的に操作できるシステムを選ぶことで、操作ミスが減るというメリットがあるためおすすめです。
●3.外部ツールとの連携で選ぶ
近年は、プロジェクト管理やCI/CD(継続的インテグレーション・デリバリー)など、様々な外部ツールと連携しながらソフトウェア開発を進めるケースが増えています。そのため、バージョン管理システムが他のツールやクラウドサービスと円滑に連携できるかどうかも、選定時に注目すべきポイントです。
特に業務効率化や一元管理を実現したい場合には、外部ツールとの連携が可能かどうか、具体的なツール名も含めて確認しておきましょう。
●4.チーム・プロジェクト規模で選ぶ
チームやプロジェクトの規模によって、適したバージョン管理システムが異なります。小規模チームや社内限定の場合はシンプルなシステムでも十分ですが、多人数での開発や拠点が分かれている場合には、大規模対応や権限管理機能が充実しているシステムが求められます。
自社の組織体制や将来の拡張性も含めて、最適なものを選ぶ視点が必要です。
●5.学習コストで選ぶ
どれだけ多機能でも、導入や運用の際に大きな学習コストがかかると、現場の負担が増えてしまいます。過度に複雑なシステムや高度な知識が必要なシステムは、初心者や非エンジニアが多い現場では十分に活用しきれない可能性があるため注意しましょう。
また、教育サポートや導入後のサポート体制、ドキュメントの充実度も合わせて確認し、円滑な運用ができるシステムを選ぶと安心です。
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