ビジネスに大量データの高速処理や複雑な分析が求められるようになった今、業務効率化やサービス向上のために幅広い分野でAIの活用が進んでいます。企業の生産性向上や競争力強化にもつながることから、今やAIはビジネスに欠かせない存在となっていますが、導入や開発には相応のコストがかかるため、企業の負担は小さくありません。
本記事では、AIを導入して生産性やサービスの向上を図る企業やAIそのものを開発する企業が利用できる補助金に関する知識を紹介します。補助金の種類や概要、申請のポイントについても詳しく解説していますので、補助金の活用を検討されている方はお役立てください。
目次
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AI開発に使える補助金とは?
国や地方自治体は、企業のAI導入を促進するための補助金制度を設けています。これらの制度は、AI技術の開発や実装にかかる費用負担を軽減し、ビジネスの効率化と競争力強化を後押しすることが目的です。
●主な補助金制度の紹介
AI開発や導入を検討している企業が活用できる補助金制度には、以下のようなものがあります。
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IT導入補助金
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ものづくり補助金
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小規模事業者持続化補助金
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事業再構築補助金
それぞれの制度には特定の要件や目的があるため、企業のニーズに合わせて補助金を選択できるかが重要です。
IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際に費用の一部を補助する制度です。コンピュータやソフトウェアの導入、ホームページ制作やセキュリティ対策、クラウドサービスの導入、IoT関連の設備などが対象で、AIツールの導入も対象です。
IT導入補助金には通常枠、インボイス枠(インボイス対応類型・電子取引類型)、セキュリティ対策推進枠、複数社連携IT導入枠の5つの補助枠があり、補助率や補助額は、補助枠や導入するAIツールによって異なります。
2024年度の補助額は最大で450万円で、補助率は、通常枠の場合は1/2以内、インボイス枠は1/2~4/5です。
交付を受けるには、IT補助金事務局のポータルサイトからの「gBizIDプライム」のアカウント取得や「SECURITY ACTION」宣言の実施が求められます。さらに、その後「みらデジ経営チェック」で取り組むべき課題を把握し、審査を受けなくてはなりません。審査通過後に、導入したいツールとベンダーを選択し、交付申請を行います。
この時のベンダーは、IT導入補助金の事務局で「IT導入支援事業者」として登録を受けた業者でなくてはなりません。IT導入支援事業者については、IT導入補助金のポータルサイトから検索できます。
補助金は、ルールを遵守していれば返済は不要ですが、事業計画の目標未達や報告義務違反の場合に返還を求められる場合があります。
参考:「IT導入補助金」
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、中小企業が生産性向上のために革新的な製品・サービスの開発を行う際の設備投資を支援する制度です。補助対象は、新製品の開発や生産プロセスの改善に必要な設備投資やシステム構築です。
AIに特化した補助金ではないものの、AIを活用した自動化や効率化プロジェクトなど、生産性向上に役立つツールの開発は、要件を満たせば対象となります。
補助上限額は事業規模や申請枠によって異なり、750万円から最大8,000万円(大幅賃上げに係る補助上限額引き上げの特例を適用した場合は1億円)まで設定されています。
主な申請枠には、省力化(オーダーメイド)枠、製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠があり、それぞれ異なる目的や補助率が設定されています。
申請には、法人・個人事業主向け共通認証システム「GビズID」の取得と3〜5年の事業計画の策定が必要です。
電子申請を行い、審査を通過し採択されると、交付申請・決定を経て事業実施、完了後の確定検査を受けて補助金が支払われます。
補助金は原則返済不要ですが、基本要件が未達の場合は返還を求められるケースがあります。
また、補助事業終了後の5年間は、毎年の事業化状況等の報告が義務付けられており、これにより事業の成果や効果が検証されます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、中小企業庁のもと、全国商工会連合会が実施している補助金制度です。小規模事業者が働き方改革や賃金引き上げ、インボイス導入などに対応し、それに基づいて販路開拓や業務効率化を図るための取り組みに対して補助を行うものです。
AIに特化した補助金ではありませんが、商業・サービス業で従業員5人以下、製造業等で20人以下の事業者で、かつAIシステムの導入を通じて業務の最適化に取り組む場合は対象となります。
申請枠には、通常枠、賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業枠の5つがあります。補助上限額は最大250万円で、補助率は2/3です。
補助金を受けるには、商工会議所の支援を受けながら事業に取り組むことが要件となっています。そのため、全国の商工会議所や商工会に事業支援計画書の交付を依頼し、補助事業実施に関するアドバイスを受けたうえで申請書類の提出が必要です。
事業再構築補助金
事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響を長期的に受けた企業が、新たな事業分野への進出や業態転換を行う際に支援を受けられる制度です。ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため、AI技術の活用など思い切った事業再構築に意欲がある中小企業や中堅企業が対象となります。
補助枠には、通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠などがあり、企業規模や目的に応じて申請できます。従業員数と応募枠によって補助金額や補助率が異なります。補助金額は500万円から最大3億円、補助率は2/3または1/2です。
申請するには、まずGビズIDプライムアカウントを取得し、認定経営革新等支援機関と相談しながら事業計画を策定します。その後、電子申請システムで申請を行い、採択後の交付申請、事業実施、実績報告を経て補助金が給付されます。
この補助金は原則として返済不要ですが、不正受給や事業計画の未達成、年次報告の未実施などの場合、返還を求められる可能性があります。5年間のフォローアップ期間中は、毎年経営状況等の報告が必要です。
名称 | 対象事業者 | 補助率 | 最大補助額 | 返済 | |
---|---|---|---|---|---|
IT導入補助金 | 中小企業と小規模事業者 | 1/2~4/5 | 450万円 | 原則不要 | |
ものづくり補助金 | 中小企業、組合、小規模事業者など | 中小企業・中堅企業 | 1/2 | 750万円から8,000万円 (※特例適用の場合は最大1億円) |
原則不要 |
小規模・再生事業者 | 2/3 | ||||
小規模事業者持続化補助金 | 小規模事業者等、個人事業主 | 2/3 | 250万円 | 原則不要 | |
事業再構築補助金 | 中小企業・中堅企業 | 2/3または1/2(対象枠や企業規模によって違いあり) | 500万円から5億円 | 原則不要 |
補助金の種類や対象枠により要件や補助金額などは異なります。詳細は中小企業庁や経済産業省、運用団体などの公式ホームページやポータルサイトをご確認ください。
生成AIの開発が企業にもたらすメリット
生成AIを開発すると、企業に多くの利点をもたらします。以下に、その具体的なメリットを挙げます。
●業務の効率化とコストの削減が可能
生成AIは、文章やデザイン分析レポートなどを自動で作成できるため、従来は多くの時間や労力を要していた作業時間の短縮が可能です。人員不足を解消する、人の手による定型作業のミスを減らすこともできます。これにより作業効率が向上し、コスト削減につながります。
●新しい商品やサービスの提供が実現
生成AIを活用すれば、より顧客にパーソナライズされた商品やサービスの提供が可能となります。これにより、これまでにない付加価値を持つビジネスモデルを構築したり新しい市場を開拓したりができるでしょう。また、既存市場での競争力強化を期待できます。
●顧客満足度の向上が期待できる
生成AIを活用することで、個々の顧客に最適な提案ができるようになります。AIチャットボットを例に挙げると、ユーザーからの業務時間外の問い合わせにも対応が可能です。これにより顧客の満足度が向上し、リピート顧客の増加や口コミによる新規顧客の獲得を期待できます。
●データを有効活用した分析が可能
生成AIは大量のデータを分析して予測する業務に長けています。人間がデータの分析や予測を行う以上に効率良く分析業務を進めることが可能です。これにより、企業は価値のある新たな発見を提供できるようになり、精度の高い経営判断ができるようになるでしょう。
●競争力を高めるための強力な武器になる
生成AIを導入すると、大量のデータを分析して市場や顧客のニーズを的確に把握できるようになります。それにより、他社との差別化を図る戦略を見出すことが可能です。これを経営に生かすことによって、企業は市場での競争力を強化できます。
●柔軟な対応と業務の拡大が可能
生成AIは、人間がデータの分析・予測を行う以上に効率良く分析業務を進められます。分析したデータをリアルタイムで企業の経営戦略やマーケティングに反映させれば、企業は市場の変化に対し、柔軟で迅速に対応できる体制を整えられます。事業の拡大や新しい分野への進出がしやすくなるのがメリットです。
補助金申請のポイント
国や自治体は、生成AIの導入を検討している企業に向けて補助金制度を実施しており、活用すればAIの開発や導入のコストを抑えられるとわかりました。補助金を受けるまでには準備すべき書類が複数あるうえ、申請の成功にはいくつかのポイントがあります。特に、以下の点に注意して申請作業を進めてください。
●申請書類の準備
補助金申請には多くの書類が必要です。漏れや誤りがないよう、しっかりと準備することが重要です。
必要な書類
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事業計画書
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資金計画書
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業績報告
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法人登記証明書
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履歴事項全部証明書(申請日から3ヶ月以内のもの)
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法人税の納税証明書(個人事業主の場合は所得税)
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財務諸表や決算書類
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事業実施場所の確認書類
上記はあくまでも一例であり、必要書類は各補助金によって異なります。詳細は、補助金制度を実施している各省庁や運用団体、補助金に関する知見を持つ専門家に相談のうえで漏れなく揃えるようにしましょう。
申請書類の早めの収集と準備
申請書類は各補助金によって異なるため、公募要領で指定された書類を早めに収集しましょう。審査に通過しやすくなるためにも、関連部署や外部専門家と連携して正確な書類を用意することが大切です。提出前には第三者による書類チェックを実施して、内容や計算にミスがないかを確認します。
●計画書の明確化
補助金の審査では、プロジェクトが公募要件に適合しているかが厳しく評価されます。事業計画書は審査の重要な要素の1つであり、プロジェクトの目的や内容、実施スケジュールが詳細に示されているかが評価されます。
AI導入による具体的な効果や期待できる成果を明確に示して、採択の可能性を高めることが大切です。
まずは、AI導入の目的と背景を明確にし、次にAI導入によってどう業務が効率化するか、生産性が向上するか具体的な効果を明記するようにしましょう。
以下のように、導入後の業務プロセスの変化や改善点についても示しておくと、事業の具体性を示すことができます。
具体的な効果の記載
AI導入によるコスト削減や労働時間の短縮効果、生産性向上による売上増加や新規顧客獲得の見込みなど、具体的な効果を記載します。自社の課題に合わせて業務効率化による従業員の作業負担軽減や離職率低下などについても記載すると、プロジェクトの成功確率が高いことをアピールできます。
見積書や技術仕様書の添付
補助金申請では、いくらの予算を使って何を導入するのか具体的な内訳を示し、補助金の使用目的を明確にすることも重要です。導入するAIツールやシステムの具体的な技術仕様や見積書を添付すると、計画の信頼性を高められます。
●予算の妥当性の確認
AI開発のプロジェクトに妥当な予算であると示すことも大切です。各項目の費用の根拠を明確にし、無駄のない予算を設定するために、見積もりの妥当性を確認して具体的な金額を提示します。
コストの内訳と効果の整合性もプロジェクトの実現可能性を示すうえで重要です。AI導入に必要な初期費用やランニングコストを明確にし、それに見合う効果を示しましょう。補助金の対象となる経費項目とその理由も明確にします。
予算の妥当性を確認したら、申請金額の調整を行い、 補助金の上限額に合わせて申請金額を適切に設定します。
補助金活用時の重要な注意点
補助金は制度によって条件やルールが異なるため、申請する際にはそれぞれの補助金の詳細を確認することが重要です。
●返済義務が生じる場合がある
補助金には基本的に返済義務はありませんが、補助金を申請時の目的以外に使用した場合や虚偽の申請を行った場合、そして事業計画どおりに実施できなかった場合、全額または一部返還義務が生じます。
そのため、補助金の使用目的やプロジェクトの内容が申請時の計画と一致しており、かつ計画書に記載された内容を忠実に実行することが求められます。
プロジェクトの進捗が計画より遅れた場合は、速やかな対応策を講じることが必要です。これに違反すると、返還を求められる可能性があります。
プロジェクトの計画に変更が生じる場合、必ず事前に補助金交付機関の承認を得るようにしましょう。補助金申請後、承認なしに計画の変更を行った場合、返還しなくてはならなくなるかもしれません。
返済義務の条件は補助金制度によって異なるため、各制度の規定を確認することが大切です。
●事業実施後の報告義務を忘れない
補助金制度は、プロジェクトの実施後も定められた期間内に報告書を提出する義務があります。事業が完了したら、指定された期間内に完了報告書を提出しましょう。報告書には、事業の成果や達成状況、補助金の使用実績について明確な記載が必要です。
一部の補助金では、補助金を受け取った後も数年間にわたり事業の持続性や目標の達成状況などの経過報告が必要な場合があります。報告義務の内容や期間は補助金制度によって異なるため、必ず事前に確認してください。
それぞれの補助金を理解してAI開発に活かす
企業がAI開発やAIツールの導入を行う際に利用できる補助金制度は複数あり、活用すればコストを抑えて導入できる可能性があります。新たなAIの導入で業務効率化を図りたい、技術革新を推進したいと検討しているのであれば、ぜひ制度を有効活用したいものです。
補助金には厳格な基準やルールが設けられています。計画の実現可能性を示し、うまく審査を通過するためにも事前に書類やリソースの確保を整えておきましょう。
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