AI予測システムとは、AIを用いて未来のものごとや値の予測を行えるシステムのことです。すでに、様々な分野でAI予測が活用されています。過去のデータを分析することで、正確に予測を行うことができます。この記事では、AI予測の仕組みやメリット、すでに導入されているAI予測の事例紹介、システム開発会社を選ぶ際のコツなどについて紹介します。
目次
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1.AI予測とは2種類に分けられる
AI予測とは、人工知能(AI)技術を用いて、大量にある過去のデータから未来に発生する物事や値の予測を行うことです。社内外のデータを学習し、過去のデータからパターンや関連性を探り出して変化のトレンドを導き出すことで、自社製品の売れ行きや需要などの未来予測が可能です。
AI予測で分析するものは、大きく分けて2種類あります。
1つは、機械が故障する確率や病気の発症率などといった「未来の物事の発生」の予測です。もう1つは、商品の需要や株価などの「未来の値」の予測です。
AIについての詳細は「人工知能(AI)とは?基礎知識からビジネスの利用方法まで詳しく紹介」で行っていますので、ぜひご覧ください。
2.AI予測が重要な理由
現代のビジネスを取り巻く環境には、多様な要素が複雑に絡み合っており、単一のデータによる分析だけでは不十分なことが多く、複数のデータソースから傾向やパターンを抽出することが必須と言えます。
ただし、データが大量化するにつれ、この分析作業を人力のみで行うことには限界があります。人間が行うよりも大量のデータを効率良くスピーディーに処理できるため、AI予測が欠かせなくなってきているのです。
また、主観や感情、過去の個人的経験などに左右されがちな人間の予測とは異なり、AIによる予測はデータに基づいた理論的なものと言えます。企業が抱える課題を解決したり、生存競争に勝ち抜いたりしていくためには、AI予測の積極的な利用がカギとなるでしょう。
3.AI予測の仕組み
AI予測の仕組みは、大まかに分けて「学習」「評価」「予測」の3つのフェーズに分かれています。「学習」のフェーズでは、機械学習という技術が用いられます。これは大量のデータを読み込ませることで、AI自身が自らデータのパターンや傾向を発見して学んでいく手法です。これにより予測したい項目に合わせた予測モデルを作成します。
次に「評価」のフェーズに移ります。ここでは作成した予測モデルの精度について評価します。AIが過去のデータと突き合わせて自ら精度判定を行います。
精度判定で問題がなければ、最後に予測モデルを使って「予測」します。その後も、新たなデータが追加されるたびに「学習」→「評価」のフェーズをAIが自動的に繰り返していくため、よりAI予測の精度やスピードを向上させていくことができます。
4.AI予測と生成AIの違い
近年、ChatGPTなどの生成AIが話題を呼んでいます。生成AIには大規模言語モデル(LLM)というアルゴリズムが使われています。これにより、人間の指示でテキストや画像、動画、音声などを新たに生み出すのが生成AIです。
一方、AI予測に用いられる予測AIは、大量の過去のデータを機械学習することでこれから起こることを予測するために用いるAIです。
生成AIは進化を続けてはいますが、予測の用途に用いるには不向きとされています。なぜなら、一度にやり取りできるデータ量に上限があったり、計算ミスをしたり、長期記憶が苦手だったりするためです。それぞれのAIの特性を活かして使い分けることが重要です。
5.AI予測に用いられる主なアルゴリズム
AI予測に用いられるデータは、時間とともにその値が変化する時系列データであることが一般的です。「予測対象となる値は過去の値に影響される」という前提のもと、複数のアルゴリズムを使用して予測を立てています。その代表的なものが、以下の3つです。
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線形回帰
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決定木
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ニューラルネットワーク
●線形回帰
線形回帰とは、直線的な関係を仮定して予測する分析方法のことです。
コンビニのおでんを例に挙げて説明します。寒くなり、気温が下がるとおでんの売れ行きが良くなる、という直線的な関係を仮定し予測するものです。予測したい変数であるおでんを「目的変数」、予測に用いる変数である気温を「説明変数」といいます。
線形回帰は単純なので、どの説明変数との関係を重視した予測なのかがすぐにわかります。直線的な関係を仮定しているので、複雑な関係性の反映はできません。
●決定木
決定木(けっていぎ)とはディシジョンツリーと呼ばれ、分類木と回帰木を組み合わせた分析方法です。
回帰木は連続して変わる値についてのルールを樹形図(ツリー)で表現したものです。説明変数の値に従いデータの振り分けを行っていくと、まるでツリーのような形になります。統計やマーケティングなどでもよく用いられます。
●ニューラルネットワーク
ニューラルネットワークとは、1943年に提唱されたもので、脳の神経回路の断面図を模した分析方法です。
ニューラルネットワークは、AIの中で大きな役割を担っています。人間の脳のように複雑な処理をするため、ニューラルネットワークを複数層結合させて処理をすることを「ディープラーニング」と呼びます。
1957年に人間の視覚や脳の機能を模した「パーセプトロン」が注目を集めたことから、第一次AIブームが到来しました。しかし、弱点を指摘されたことからブームは下火になってしまいました。その後1986年、より複雑な学習が可能になったモデルの発表により、第二次AIブームが訪れます。こちらは利用可能なデータが少なかったことから、再びブームは下火になりました。
第三次AIブームは2006年に訪れました。これはディープラーニング(深層学習)と呼ばれています。ディープラーニングとはオートエンコーダ(オートエンコーダ:入力されたデータを一度圧縮して、重要な特徴量だけを残した後、再度もとの次元に復元処理をするアルゴリズムのこと)と多層のニューラルネットワークを用いた学習方法のことです。
6.AI予測を取り入れるメリット
AI予測の導入には多くのメリットがあります。ここでは具体的にどのように役立つのかご説明します。
●データドリブンな意思決定を行える
これまでの人間による予測は、参照するデータの数が少なく、どこか予測者の経験や勘に頼っている部分がありました。ただ、人間の経験や勘は個人ごとにばらつきがあり、予測結果に大きなズレが生じやすいものです。また、根拠に乏しいため、予想の当たる確率を上げていく方法論を確立しにくいという弱点もあります。
AIによる予測は、データに応じた理論的な予測のため、誰が使っても一定の結果を得ることができます。感覚的な予測結果ではなく、データに基づいた規則性を見つけ出しているため、事業の存続にかかわるような重大な判断も行いやすいと言えます。
また、AIであれば、これまで企業に蓄積されてきた大量のデータを読み込ませることができるため、過去の資産を有効活用できます。長年蓄積されたデータの中から、AIが市場動向や顧客の傾向などを抽出・分析することで、企業の成長につながる予測を行えます。
●スピーディーな意思決定を行いやすい
AIは人間と異なり、大量の情報量でも短時間でデータを処理できるため、予測に必要なデータの収集・分析・解釈のプロセスを大幅に短縮されます。そのため、経営層による意思決定のスピードも大幅に迅速化できるのです。また、AIは24時間365日稼働できるため、常に最新の情報に基づいた意思決定が可能です。
●適切な生産計画を立てやすい
特に製造業・小売業においては、AIは需要予測に利用しやすく活躍が期待できます。AIは従来の予測方法よりも複雑で可視化しにくいパターンや傾向を発見できるため、変数の多い需要予測が得意とされているためです。過去の受発注履歴や市場の動向、部材の仕入状況に関するデータに基づき、需要の変化をAIがシミュレーションすることで、必要な在庫量の事前把握や、適切な生産計画の立案が可能になるのです。
適切な生産計画により過剰在庫や品切れを防げるため、不良在庫の減少に役立ちます。また、人員配置や資材の調達も効率的に行えるようになり、コスト削減につながります。
人力の予測と比べて時間がかからないため、余計な機会損失を防げる点もメリットです。また、不良在庫を抱えないことで、コスト削減だけでなく、余ったリソースを商品開発などに割けるようになります。
製品を適切なタイミングや量で揃えたり、広告を打ち出したりできるようになるため、顧客満足度や売上、成約率の向上にもつながります。
●成長分野に注力しやすい
複数のビジネスを手掛けている企業の場合、AI予測により成長分野を見極めることも可能になります。どこにリソースを集中すべきかを予測できるため、企業の効率的な発展が望めます。
●設備の劣化・故障・異常を予測できる
過去の計測データなどに基づき、設備の劣化・故障・異常が起こるタイミングを予測してメンテナンスを行う、予知保全が可能になります。また、過去の事例データなどからサーバーへの不正アクセスを早期に検知することも可能です。巧妙化し続ける手口にも適切に対応できるため、セキュリティ強化につながります。
7.AI予測を取り入れるデメリット
AI予測は導入に際して一定のデメリットや注意点もあります。主なものは以下の4つです。
●大量のまとまったデータが必要になる
AI予測分析の正確さはデータ量に比例します。そのため、できる限り多くのまとまったデータを準備しておく必要があります。ビジネスを立ち上げたばかりでデータが少なかったり、そもそもデータの取得が難しかったりする場合は、AI予測の活用が難しいと言えます。
●専門知識・スキルを持つ人材が必要になる
AIをスムーズに活用するには、AIの技術に精通している専門的な人材が必要となります。主に統計学や機械学習に関するデータサイエンス系の専門知識やプログラミングスキルなどを持つ人材が求められます。さらに、ビジネスで成果を出すAI予測を行うには、ビジネスの現場における業務課題への深い理解を持つ人材であることも重要になるでしょう。
●利用できるまで時間がかかりやすい
AI予測を正確に行えるようになるまで時間がかかるケースは多い傾向にあります。と言うのも、利用するデータがAI予測で活用することを前提とした状態になっておらず、最適化に時間がかかってしまうことがあるからです。AI予測以前に蓄積していたデータをなるべく早く活用しやすい形式に最適化し、以降のデータも入力・管理しやすくなる仕組みづくりが重要です。
●予測精度が高くないことがある
入力するデータが少なかったり、誤情報や欠損が多かったりすると、予測の精度は低くなってしまいます。これまでほぼ売れた実績がない製品や、類似品のない新しい製品・サービスの売上予測などについては、AIにとっては苦手と言えます。また、これまでほぼ起こっていなかったような大規模な天災や社会情勢の変化などの予測についても、データが少ないため精度は高くないと考えられるでしょう。
8.AI予測システムは需要の予測に役立つ
AI予測システムとは、AI予測を行うシステムのことです。蓄積された大量のデータを利用して、商品やサービスなどの需要を予測できます。
今までは、経験者の勘に頼ったり数少ないデータから予測していたりしてきました。しかし根拠が乏しく、予測結果に大きなズレが生じやすい、という弱点がありました。
そこでAIを使用することで、より精度の高い予測が可能になりました。AI予測システムによる需要予測は、受発注業務の効率化や欠品防止などの効果が期待できます。
9.AI予測システムの活用事例
AI予測システムを活用すれば、「未来の事象発生の予測」や「未来の事象における値を予告」することも可能です。ここでは、8つの事例をご紹介します。
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水道管路の劣化予測
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インフルエンザの流行予報
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不整脈の発症予測
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10年後の不動産資産価値の予測
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患者の転倒リスクの予想
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生鮮トマトの収量予想
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タクシーの乗客数予測
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食品需要の予測
●水道管路の劣化予測
AI予測をすることで、年数だけでなく配管など周りの影響も考慮した配管の劣化状況を予測することが可能になり、水道管の交換時期の明確化や、更新計画を立てやすくなりました。水道管の配管は、設置年数に基づいて更新の時期を判断することが一般的です。これまでは、設置年数を基準にした判断で更新時期を予測していました。しかしこの予測では、配管周辺の環境は考慮されていません。
AI予測で水道管の破損確率が高いものから更新することで、管路整備をする際のメンテナンスコストを最適化できます。また、配管の破損や漏水の事故件数を抑えることも可能です。
●インフルエンザの流行予報
AI予測を行うことで、今週から4週間後までのインフルエンザの流行度合いが予測可能となりました。
インフルエンザの流行予報は、全国各地のインフルエンザの流行度合いをレベル0~3で予測し、可視化できます。AIによる予測ができることで、インフルエンザの予防や感染の拡大防止に役立てられています。
●不整脈の発症予測
AI予測によって不整脈の発症予測が可能になりました。不整脈の発症予測ができるようになり、全身の状態や危険な不整脈の兆候を察知することができます。日本に限ったことではなく、先進国の中に高齢化が進んでいるところは少なくありません。未発見の心房細動によって、突然脳梗塞を引き起こし、生命にかかわるような事態になることは起こりえます。AI予測で数分の検査で不整脈を検出し、早期治療につなげることで、大きな病気の併発予防につながるのです。
医療におけるAI予測の今後は、新型コロナウイルスのような感染症による症状悪化の早期発見や、運転中などの不整脈予測などの応用が期待されています。
●10年後の不動産資産価値の予測
ある企業では、マンションの担保価値(最低資金価値)をAIによって予測し、現在から将来までの住宅ローンのオーバーローンチェックをサポートするシステムの提供を開始しました。AI予測は、マンションを購入する時の物件選びやローン返済プラン検討の不安解消に効果的です。
また、別の企業は、マンション物件の10年後の未来までの推定担保価値の推移をオンライン上で知ることができるAI予測システムを開発しました。ユーザーは、スペックや価格が似ている複数の検討中物件の中で、どの物件が将来的に資産価値を残せるのかを知ることができます。ほかにもAI予測によって将来の担保価値を参考にして逆算すると、ローンの頭金の設定がしやすくなります。
●患者の転倒リスクの予想
ある複数の企業が共同開発したAI予測システムは、電子カルテや看護記録などの患者情報からAI解析を行い、入院患者の転倒や転落のリスクを可視化できます。
また、高齢化社会が進む中、病院でも患者の高齢化が進んでおります。入院中の転倒リスクも、課題となっていました。高齢者の転倒転落リスク問題は、厚生労働省も重視する課題の1つです。
●生鮮トマトの収量予想
生鮮トマトの収量予測システムは、生鮮トマトの需要調整にとって重要な収量予測の精度を高めることに貢献しています。生鮮トマトの生産は、気温・室温や湿度、日照量などの栽培環境、施肥量などの多くの要素が影響し、生産管理が困難でした。栽培元が所有する栽培技術や管理データなどのビッグデータと、最先端のAI解析技術を持つ収量予測システムにより、収量予測システムが精度の高い予測が可能になりました。
AIによる収量予測は精度が高いため、正確な営業計画が可能となり、食品ロスの削減にもつながります。
●タクシーの乗客数予測
タクシー業界で利用されているのがAIによるエリアごとの乗客数予測です。過去の運行データや人口統計をもとにしており、需要予測に基づいてタクシーが乗客を見込めるエリアに向かうため、待機時間の短縮につながります。また、経験や土地勘が必要なくなるため、新人ドライバーでもベテラン並みの効率良い運行業務を行えます。
●食品需要の予測
東京都は食品ロス削減対策として、AIによる食品需要の予測を活用しています。まず、食品メーカーや卸売、小売店などからの在庫情報を予測会社に提供しまう。次に、予測会社は気象・イベント情報も加味してAIによる需要予測を行います。これにより、細かい需要予測を行えていない中小の食品メーカーにとっては製造量を調節しやすくなり、結果的に食品廃棄の削減につながっています。
紹介した事例以外にも、AI予測を活用した事例は多くの分野に広がっています。AI予測の事例についてもっと知りたい方は、ぜひこちらをもご覧ください。
▷需要予測システムの選び方は?開発・構築・改修・導入の違いなどについても解説!
10.AI予測システムの開発会社選びのコツ
上記の事例から、AI予測システムが便利なことが 分かっていただけるかと思います。現在AI予測システムの導入をご検討中の方は、システム開発会社選びに悩む方が多いのではないではないでしょうか。そこでAIシステム開発会社の選び方のポイントを、3つ紹介します。
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課題を明らかにする
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複数の開発会社を比較する
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開発会社の実績の有無を確認する
ポイントを押さえることで、自社に合うシステム会社を選びましょう。
●課題を明らかにする
最初に、自社が抱えている課題を明らかにする必要があります。課題を明確にすることで、見積もりの精度が上がり、コストパフォーマンスも良くなります。
開発会社に依頼をする場合も、AI導入の目的や課題が明確になっていないと開発会社側もどのような提案をすれば良いのかわからず、見積もりの作成にも時間がかかってしまうからです。
●複数の開発会社を比較する
1社だけで決めるのではなく、複数の開発会社を比較検討することで、自社に最適な開発会社が見つかりやすくなります。内容、価格、サポート体制など、開発会社によって様々です。自社の課題に必要な項目を中心に、比較して決めましょう。
また、見積もりをとることで開発会社の対応がわかります。こちらの質問に親身になって応えてくれるか、対応が丁寧かどうかも見極めると良いでしょう。開発の依頼をする際の話し合いなどを通して、金額だけでなく対応に関してもしっかりとチェックすることが重要です。
●開発会社の実績の有無を確認する
自社の抱えている課題に近い事例の実績があると、システム開発のノウハウがあるため、開発から導入までの計画がスムーズになります。また実績が多いと応用もでき、顧客の要望に柔軟に対応できるケースも多くなるでしょう。
特に、自社と同業種の開発実績が多い開発会社がおすすめです。こちらが気づかない機能の提案をしてもらえるかもしれません。
11.まとめ
AI予測システムで予測できるものには「未来の物事の発生」と「未来の値」の2種類があります。AI予測の導入によって、今まで経験者の勘や数少ないデータから予測していたものが、AIによってより正確に予測することが可能になりました。
AI予測は公共事業や農業、病院など様々な分野で導入されています。開発会社の選定前には自社の課題を明確にしてから選ぶことをおすすめします。
IT化のために補助金を利用し、開発会社を探している企業は少なくありません。しかし、開発会社をどうやって選んだら良いのかお困りの方も多いでしょう。自社に合った会社を探すとなると、時間も手間もかかります。
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