AI開発や人工知能の導入が進む今、「アノテーション」という言葉を耳にする機会が増えてきました。AIは何となく理解しているけれど、アノテーションについてはよくわからない、という方はまだ多いのではないでしょうか。
本記事では、アノテーションに関する基礎知識や進め方、実施時の注意点などについて紹介します。
目次
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AIの機械学習に不可欠なアノテーションとは
アノテーションとは、AIの機械学習における前処理作業の一つです。アノテーションを直訳すると「注釈」や「注意を与える」という意味がありますが、ビジネスやAI学習の文脈では、テキストや音声、画像などの形態が異なる様々なデータに、「タグ」や「メタデータ」を付ける作業を指します。
そもそもAIの機械学習には、先に正解を示してデータを学習させる「教師あり学習」と、正解を提示せずにデータを学習させる「教師なし学習」があります。教師あり学習はデータの分類や予測を行う場合に、教師なし学習は、類似しているデータをグループ分けする場合に用います。
これらの大量のデータをAIに正確に学習させるためには、幅広い形態のデータに正確なタグ付けを行わなくてはなりません。このタグ付け作業が「アノテーション」です。
●アノテーションはなぜ重要なのか
アノテーションを実施することによって、ビジネスに必要な大量のデータ群「ビッグデータ」を使用した機械学習AIを開発しやすくなります。ビッグデータは情報量が膨大なため、個々のデータをタグ付けして整理しておかないと必要な時に上手く活用ができません。データの分類やパターン化ができていると、ビッグデータを効率良く管理できるようになります。アノテーションは、大量の教師データを正確に管理して、AIの精度を高めるためには欠かせない作業なのです。
●アノテーションの具体的な種類
AI開発に求められるアノテーションには、以下のような種類があります。
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画像のアノテーション
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音声のアノテーション
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テキストのアノテーション
画像のアノテーション
画像のアノテーションは、主に電子商取引における商品リスト分類などに使われており、主に5つの種類があります。中でも最もシンプルな手法が「画像分類」です。1枚の画像にタグを付ける作業で、例えば犬の画像に対し、写っているのが犬であることをタグ付けします。そのほか、四角で囲まれた画像・動画の領域内に写っているものを検出してタグ付けする「物体検出」、特定の領域を選択して特定の物体だけを検出する「領域抽出」、画像や映像に映った物体を多角形で囲う「多角形での領域指定」があります。また、顔認識で使われている主なアノテーションは「目印検出」といい、目や眉、口などの些細な変化を検出。目印検出は「ランドマークアノテーション」ともいい、顔の表情から感情を読み取るAIで多く利用されています。
音声のアノテーション
主に、音声認識や意図抽出の分野で活用されているアノテーションです。具体的には、スマートスピーカーの精度を高めたりコールセンターなどでやり取りされる会話を理解するAIに活用されています。音声のアノテーションでは、音の種類や音量、言葉の意味などにタグ付けを行っています。言葉一つひとつの意味も含めて精度を高めているのが特徴です。自然言語解析とも密接なかかわりがあり、書き起こした文章はテキストデータのアノテーションにも活用されています。
テキストのアノテーション
テキストのアノテーションとは、あらかじめ定義されたカテゴリを、フリーテキストで書かれた文書に割り当てていく作業です。大量の文書から特定のテキストを抽出したり、散らばったデータの中から必要なテキストや文言だけを集約できるようになります。例えば、ニュースサイトにおいてカテゴリごとに記事を分類したりトピックごとにタグ付けするのに活用されます。事前にルールを設定してタグ付けすれば、文書の判別や内容の分析も可能です。不適切なコンテンツを取り除く際などにも利用されているアノテーションです。
アノテーションの実施方法
アノテーションは、AIに学習させたい各種データを入力する、またはツールを使って画像にある特定の対象物を選択するだけで完了します。作業自体はシンプルですが、学習させたいデータの内容や形態によっては専門的な知見が必要です。
アノテーションの特性やデータの量に応じて、以下の方法を用いて実施しましょう。
●アノテーション代行サービスを使用する
最も手間がかからないのが、アノテーションを代行してくれる企業に依頼する方法です。アノテーションに関する専門知識や経験を持つプロが作業を代行してくれるため、スピーディーで高精度なアノテーションを実施できます。アノテーション対象のデータが膨大にある、または自社にリソースがないケースにも適しています。
ただし、サービスを利用するには当然コストがかかるため、自社の予算を踏まえたうえでの検討が必要です。また、自社が解決すべき課題やゴールを共有していないと、専門知識を持っているだけではニーズに応えられない可能性があります。担当者と事前に綿密な打ち合わせを行い、ゴールやイメージを共有できるかが成功のポイントです。
●自動化ツールを活用する
無料で提供されているアノテーションツールを利用して、自社でアノテーションを行う方法です。最近では、画像・動画のアノテーション、テキストのアノテーション、音声のアノテーションと、領域に特化した製品が次々に登場しており、自動運転やロボティクス、医療、スポーツなど、幅広い分野におけるAI開発に活用されています。
自動化ツールはコストをかけずにアノテーションを行えるメリットがありますが、AIに関する知識を持つ従業員が在籍していることが大前提です。
また、自動化ツールは1人での作業を想定して設計されている場合が多く、大量のデータを管理するにはあまり向いていません。自社にアノテーションを行うためのリソースがあり、かつアノテーションデータが限られているケースに向いています。
●データ収集のみ外注する
アノテーション対象となるデータ収集を外注し、アノテーション作業自体は自社で行う方法です。専門企業に依頼するよりもコストを抑えられるので、予算が限られている企業でもAI開発を進められるようになります。
ただし、外注先が行うのはデータ収集のみなので、その後の作業は自社で行わなくてはなりません。自動化ツールを活用するケースと同じく、AI開発に関する知識を有した従業員が在籍していないと、上手く活用できない可能性があります。自社に十分なリソースがあり、コストを抑えて効率良くアノテーションを実施したい場合に向いています。
アノテーション実施時の注意点
アノテーションを実施する際に特に注意しなくてはならないのは、スケジュール管理と自社の状況把握、ルール策定の3つです。特に大量のデータを扱う場合、十分な時間とリソースを確保して管理体制を整えておかないと、上手く進められない可能性があります。データの精度や作業の品質にも左右されるため、以下に注意したうえで取り組みましょう。
●データ収集作業も見越してスケジュール管理を行う
アノテーションを行うには、対象となるデータを収集しなくてはならないのが前提です。十分なデータが揃っていない場合はデータ収集から始める必要があるため、アノテーションを始めるまでの事前準備に時間がかかる可能性があります。また、アノテーションの前提条件やタスクの性質、各プロセスの組み合わせによっては準備時間が大きく異なる場合もありますので、これらを見越してスケジュール管理を行いましょう。
また、データ収集はアノテーション作業の質を左右するため、収集時点から高品質なデータを得ることが求められます。そのためには、データ収集プロセスの計画段階で、どのようなデータが必要かを明確にし、必要なリソースや時間を確保することが重要です。
さらに、収集したデータを効率的に管理するためのツールやシステムの導入も検討しましょう。これにより、データ収集からアノテーションまでの全工程がスムーズになります。データの収集とその準備に対するしっかりとした計画を立てることで、スケジュールの遅延や不備を防ぎ、アノテーションの質を確保することが可能になります。
●自社内のリソース状況を正しく把握する
大量のデータを扱う場合、自社内のリソースだけでは作業をこなしきれない可能性があります。どの程度の人材をどの程度の時間だけ必要か、確実に使用できるか自社のリソース状況を正しく把握しておきましょう。リソースが足りない場合には、必要に応じて自動化ツールやアノテーションの外注サービスを使用するかを検討するのも一手です。
自動化ツールは、作業の効率化を図りつつコスト削減にも寄与しますが、導入にはそれなりの初期投資と習熟期間が必要となります。また、外注を利用する場合は、信頼できる発注先を見つけることが大切です。
これらの手段を組み合わせ、自社のリソースを最適に配分することで、アノテーション作業を効率的かつ効果的に進めることができます。加えて、定期的なリソース評価と見直しを行い、変化するニーズに迅速に対応できる体制を整えることも重要です。
●アノテーションルールを策定する
アノテーションを開始する前に、ルールを策定しておく作業は重要です。アノテーター(アノテーションを行う方)が各々でアノテーション作業をしてしまうと、データの品質にばらつきが出てしまうおそれがあります。データの品質を揃えるために工数が発生することになり、効率的とはいえません。
また、外注サービスを利用する場合、アノテーターとの認識相違によってミスや修正が発生すると、工数が増えるため追加コストがかかる場合もあります。あらかじめ作業フローをマニュアル化し、アノテーションルールやレギュレーションを統一してアノテーター全員へ周知しておくことが重要です。
さらに、ルール策定には継続的な見直しが不可欠です。プロジェクトの進行に伴い、新たな問題や改善点が見つかることがあるため、定期的にルールを見直し、必要に応じてアップデートする体制を整えましょう。
アノテーションの品質をチェックするため、監査プロセスやフィードバックループを導入し、データの一貫性と精度を保つことが求められます。これにより、アノテーション作業全体の効率と品質を高めることができます。アノテーションルールの策定とその徹底は、AIモデルのパフォーマンスに直結するため、非常に重要なステップです。
アノテーションサービスやツールの導入によるメリット
膨大なデータにタグ付けを行い、データの品質を揃えるにはかなりの労力を要しますが、アノテーションサービスや自動化ツールを活用すれば、より効率的にアノテーションを進められます。
アノテーションサービスやツールの導入は、作業効率を高める以外にも以下のようなメリットがあります。
●自社内の重要な業務に集中できるようになる
アノテーションばかりに自社のリソースを割いてしまっては、肝心のAI開発に注力するのが難しくなってしまいます。アノテーションを外部に委託すれば、人的リソースに余裕が生まれ、自社の従業員がコア業務に専念することが可能。アノテーションのために人員を教育するコストも削減できるため、より重要度の高い業務へとリソース集中できるようになり、全体の生産性向上につながります。
●専門的なナレッジやノウハウを借りられる
アノテーションを専門としている企業に外注すると、高品質なラベル付きデータを効率良く収集できます。データ収集だけでなく、求める品質やコスト、スケジュール管理、セキュリティなどの観点からもアノテーションの専門知識は重要です。アノテーションのノウハウをまだ持っていないスタートアップなどの企業にとっては、効率良く自社内にノウハウを構築できるため特にメリットが大きいといえます。
●人件費を抑えやすい
自社の状況に応じて、データ収集といった必要な分の作業のみを外注・委託できるので、自社で専用の人員を抱えるよりもコストを安く抑えられます。アノテーション専門の人員を雇用して育成するには採用や教育にもコストもかかるうえ、人員を管理するにもリソースとコストが発生します。十分なデータを作成するまでには時間もかかるため、AI開発のスケジュールに支障をきたしてしまう可能性もあります。
自社のリソースでは賄えない作業分だけでも外部に委託すれば、人員の採用・教育コストとともに管理コストも抑えられます。少しでも管理コストを抑えたいスタートアップには特におすすめです。
●大量の学習データにも対応できる
自社のアノテーターが少量のデータをアノテーションするには特に問題はありませんが、実際の運用に向けたモデル改善のフェーズに入ると、大量の学習データのアノテーションを長期的かつ継続的に行わなくてはなりません。そうなると、自社内のリソースだけでアノテーションを完結するには限界があります。
アノテーションサービスを利用すれば、自社だけの作業では限界があった膨大なデータも効率良くタグ付けできるようになります。ただ、大量のデータに対応するには、アノテーションするデータの品質を一定に揃えることも重要です。外部サービスやツールを利用する前のルール策定やガイドラインの統一も欠かさず行うようにしましょう。
質の高いAI開発を成功させるためには、アノテーションを始め様々な作業や専門知識が必要です。社内にAI関連の専門知識がない、リソースが不足していて不安な場合は、発注ナビから開発パートナーとなる企業を探してみてはいかがでしょうか。
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