越境ECとは、インターネットを通じて行う国際的な電子商取引を指します。言葉や文化、商習慣の違いなどの課題を乗り越えられれば、商圏を拡大させるチャンスです。本記事では、越境ECへの参入を検討している方へ向けて、越境EC市場が持つ影響力やメリット・デメリット、注意点を解説いたします。あわせて、越境ECの成功事例もピックアップしました。
目次
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越境ECとは?
越境ECとは、インターネットを通じて海外の顧客と国際的な電子商取引を行うことです。本来は取引内容を限定せず、国境を越えた電子商取引全般を指す言葉ですが、現在は主に海外の顧客専用にECサイトを構築し、商品を販売することを意味しています。有名な越境EC企業としては、AmazonやWish(アメリカ)、アリババ(中国)などが挙げられます。現地に支社や支店などの拠点を設立するよりも、コストを抑えて商圏を広げやすいのが越境ECの魅力です。なお、ECサイトとは、Eコマース(E-Commerce)のサービスを提供するWebサイトの通称。より具体的には、通販サイトやオンラインショップなどを指します。
そもそもECサイトとは?
ECサイトとは、Eコマース(E-Commerce)のサービスを提供するWebサイトの通称です。Webサイトを通じて商品やサービスを取引することで、インターネット上で商品を販売したり、オークションしたりするWebサイトのことをECサイトと呼びます。端的に言えば、通販サイトやオンラインショップを指すことがほとんどです。
データでみる越境ECが注目されている背景
通信技術の発達や国外の販路拡大の重要性など、越境ECが注目を集めている背景には様々な要素があります。各種データを交えながら、越境ECが持つ影響力をご紹介いたします。
●越境EC市場規模の増加
越境ECの市場規模は拡大を続けており、令和4年度時点の調査では日本・米国・中国いずれの国でも増加していると報告されています。経済産業省の「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、日本国内における越境EC購入額は3,954億円と発表されました。続いて米国では2兆2,111億円、中国では5兆68億円という数値も報告されています。令和元年の越境EC購入額と比較すると、各数値は、以下のような伸び率となりました。
国 | 越境EC購入額(令和4年度) | 越境EC購入額(令和元年) |
---|---|---|
日本 | 3,954億円 | 3,175億円 |
米国 | 2兆2,111億円 | 1兆5,570億円 |
中国 | 5兆68億円 | 3兆6,652億円 |
データ出典:経済産業省
「令和4年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」
「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」
●グローバルニーズを意識する企業が増えている
越境ECは、クロスボーダーECとも呼ばれています。日本の製品をそのまま海外へ売るだけではなく、海外でのニーズがあるものを新しく商品化するほか、単一の国ではなく全世界をターゲットとした商品開発・販売を行います。日本国内だけでなくグローバルなニーズに応えるマーケティングや商品開発が必要です。
難易度が高いように見えますが、それでも「ECの売り上げ増加が期待できる」として、国内でも取り組む企業が増加しているのです。インバウンドで中国人による日本製品を”爆買い”が話題になったことからもわかるように、日本製品の品質の高さは世界中で知られています。日本製品に魅力を感じる海外の顧客は多く、越境ECを利用して日本製品を購入したい方々は、世界に数多くいるのです。
●世界的なスマホ普及率も越境ECの利用率を後押し
越境ECの発達には、世界的なスマホ普及率も関係しています。2021年6月時点で、全世界のスマホ普及率は約40億人という結果が発表されました。2021年の世界人口が約78億人だったことを踏まえると、全世界人口の約半数がスマホを所持しているという計算になります。スマホ技術が世界的に身近なものとなれば、越境ECサイトユーザーのさらなる増加も予想できるのです。
●国外ユーザーへのアプローチ手段として有効
越境ECは、日本国内の人口減とそれに伴う消費の減少への対抗手段にもなります。日本国内の人口は、2011年以降14年連続で減少しています。2023年1月時点の国内人口は約1億2,242万人で、2022年より約80万人の減少となりました。今後も国内の人口は減少すると予想されており、国外へ販路拡大できる越境ECが注目を集めています。
●インバウンド効果の影響も大きい
2023年11月現在、訪日外国人観光客によるインバウンド需要の影響は回復の兆しをみせています。来店した外国人観光客をECサイトへ誘導するような仕組みをつくったり、外国人観光客の消費行動を分析したりすることが、越境ECを成功させるポイントになります。
越境ECのメリット・デメリット
越境ECは、外国人を相手にした取引です。国内での商取引とは異なるメリット・デメリットがあります。具体的なメリット・デメリットを、以下でそれぞれご紹介します。
●メリット
各種コストの削減をはじめ、越境ECには様々なメリットがあります。代表的なメリットを、以下で4点ピックアップしました。
初期費用・人件費・光熱費などコストの軽減
越境ECはインターネット上のECサイトを拠点とします。現地に実店舗を出店する必要がないため、現地のテナント費用をはじめ雇用コストや商品の運送費、光熱費といったコストを大幅に削減できます。販路拡大にあたり、費用を抑えて海外進出を検討したい企業に適しているといえます。
希少価値がある商品で新規顧客が獲得しやすい
海外市場において、日本ならではの商品や日本以外では手に入りにくい希少価値のある商品を販売することで、新たな顧客の獲得が期待できます。海外には品質の良い日本製品を望む顧客も多く、これまで海外に出ていなかった製品にもビジネスチャンスがあります。
ブルーオーシャンでビジネスを展開しやすい
提供する商品のジャンルによっては、国外市場のほうが国内市場よりも競合が少ない可能性があります。国内のレッドオーシャンでは生存が難しくても、海外のブルーオーシャンに販路を広げることで事業の存続やさらなる発展が期待できるのです。
経済成長している国を相手にビジネスを展開できる
先進国や経済成長が著しい新興国を相手にビジネスを展開できるのも越境ECのメリットです。特に、経済成長率が高く越境EC取引も盛んに行われている中国を顧客にできるのは大きなチャンスだといえます。言語の壁や商習慣の違いといった課題をカバーできれば、中国以外の新興国も有力な顧客候補となりえます。
●デメリット
越境ECのデメリットとしては、以下のポイントが挙げられます。
配送料や手数料が高い
越境ECは商品を海外に発送するため、送料が国内よりも高額です。さらに、地域によって送料が大きく変わるため、送料込みの価格を表示することも実現しにくいのが実情です。流通事情が違うので、商品が顧客へ到着するまでの日数も読みきれません。自社の商品と相性の良い配送パートナーを見つける、自社に合わせてカスタマイズした越境ECシステムを構築するなどの工夫が必要となります。
為替の変動があるため低価格を武器にするのが難しい
為替は常に変動するため、購入時期によっては同じ商品でも価格が異なります。そのため、低価格を武器にした販売戦略は難しいといえます。価格以外のセールスポイントや施策を見つけることが、越境ECを成功させるポイントです。
販売先の国によって規制や法律が異なる
越境ECでは、国内外の法律に則った対応が求められます。各国の法規制に則った商品の取り扱いや、各種許可証の取得など、考えられるハードルはいくつもあります。例えば、個人情報の取り扱いが挙げられます。EU圏の「GDPR(General Data Protection Regulation)」、中国独自の個人情報保護法、アメリカのCCPA(California Consumer Privacy Act)など、個人情報関連の法規制は国によって大きく違います。これらの法規制を理解したうえで、越境ECを展開する必要があります。
言葉の壁や文化の違いへの配慮も必要
越境ECでは国境を超えて取引をするため、ターゲットとなる国の言語についても把握しておかなくてはなりません。外国語対応が可能なスタッフを雇用したり、翻訳代行サービスを導入したりと行った工夫が必要です。
越境ECを始めるうえでの注意点4つ
越境ECを始める際に押さえておきたい注意点は、以下の4点です。以下のポイントを参考に、自社の越境EC計画を立ててみてください。
●1.越境EC向きの自社商品やサービスを用意できるか
自社商品やサービスが越境ECに向いているか考えてみましょう。越境EC向きの商品の一例として、デジタル商品が挙げられます。これは、電子書籍やオンラインゲームなどデジタルで利用できる商品のこと。各種デジタル商品は、提供から決済まですべてインターネット上で完結できます。国を問わず瞬時にサービスを届けられるという点もあり、最も越境ECに適したジャンルだといえます。また、ターゲットとなる国の売れ筋商品に注目することも大切です。例えば、アメリカでは新型コロナウイルス対策の緩和により、外出ムードが高まっています。これにより、アメリカ向け越境ECでは、デジタルカメラや日本製の自動車パーツなど外出関連商品の売り上げが伸びました。中国では化粧品や健康食品などのヘルス&ビューティー関連の商品が根強く支持されています。
●ターゲットとなる国のニーズに合った商品を用意できるか
コスメグッズや美容品、アニメアートやキャラクターグッズ、日本独自の工芸品など、越境ECで人気となる品物は様々です。だからこそ、ターゲットとなる国ではどのような商品の需要があるのか、丁寧に分析しなくてはなりません。「自社が提供できる商品と、ターゲットの国の需要がマッチするか」を考えましょう。
●2.言語の違いはどのようにカバーするか
トラブル防止や顧客満足度向上のためにも、越境ECには正確な翻訳機能が求められます。具体的な対策として挙げられるのは、以下の3つです。
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プラットフォームに搭載されている翻訳機能を活用する
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専用の翻訳ソリューションを導入する
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翻訳会社へ翻訳を依頼する
自社が取り扱う商材やECサイトの規模に適したサービスを活用することが大切です。
●3.各国の認証・許可証について知っておく
越境ECを始める際は、各国の法規制に則った認可や許可証を取得しなくてはなりません。例えば、アメリカ向け越境ECで医薬品を扱う場合、FDA(Food and Drug Administration)認証を受ける必要があります。また、中国向け越境ECでは「化粧品安全技術規範」による成分基準を満たさなくてはなりません。法規制や認可に関する知識に不安がある場合、認証取得代行に精通している企業にコンサルティングを依頼するのも手です。
●4.ターゲットの国に合った決済方法を導入できるか
国や地域によっては、主流となる決済方法が異なります。例えば、欧米の決済方法は「PayPal」が主流であり、中国ではオンライン決済サービス「Alipay」やクレジットカードの「UnionPay(中国銀聯)」が主流です。国ごとに、主流な決済方法を導入できるECサイト(またはプラットフォーム)を選定しましょう。
越境ECの成功事例
以下でご紹介するのは、国内発の越境ECサイトとその成功事例です。アパレルや文房具、ディスカウントストアなど、異なるジャンルの成功事例をピックアップしました。
●アパレル:ユニクロの事例
ユニクロは、日本だけでなく欧米や中国でも支持されているアパレルブランドです。新型コロナウイルスの感染が広まった2020年3月~5月期には一時的な売り上げの落ち込みがみられたものの、「エアリズムマスク」をはじめとする新商品を打ち出すことによって売り上げ回復を果たしています。
●文房具ショップ:カキモリの事例
カキモリは、オーダーメイドのインクやノートなどを提供している文房具専門店です。2021年から越境ECに注力し始め、現在は約30カ国で商品を販売しています。ECサイトの翻訳の仕組みを整備したり、国際宅配便サービスを導入したりといった工夫を経て、海外の顧客に愛される文房具ブランドを確立しました。
●ディスカウントストア:多慶屋の事例
多慶屋は、実店舗に年間40万人以上の観光客が訪れるディスカウントストアです。越境EC事業では、一度来店した外国人ユーザーにリピートしてもらえるような工夫を展開。代理購入サービス「Buyee(バイイー)」を導入し、越境ECサイトを構築しました。そのうえで、ECサイトのURLやQRコードが掲載されたチラシを実店舗に来店した観光客へ配布し、気軽に購入をリピートしてもらえるような施策を実施しています。くわえて、中国の大型ECモール「アリババ」が提供する決済システム「アリペイ」をいち早く導入し、中国人ユーザーの購入を後押ししたのも特徴です。
●インバウンド事業:サムライストアの事例
日本独自の工芸品として、レプリカではない本物の鎧兜を売り出しているサムライストア。2002年の越境ビジネス黎明期にオンラインショップを開設し、国内外から支持を集めています。海外人気の高い商品に焦点をあて、成功した事例です。また、伝統的な手法と素材にこだわるブランドの世界観を、ECサイトを通して上手くアピールできたケースだともいえます。
越境ECの始め方
越境ECに参入するには、「ショッピングモール」と「自社の越境ECサイトを構築する」というパターンがあります。それぞれの方法の特徴は、以下のとおりです。
●国内外のショッピングモールを利用する
ショッピングモールを利用すればシステム開発や進出先リサーチの必要がなく、出店の手間や費用を抑えられます。越境ECを支援しているショッピングモールを利用すれば、進出先の流通システムや決済方法、税制に関する知識、ライセンスなどがなくてもベースを築きやすいのが魅力。また、メジャーなショッピングモールは、ブランド力があるため集客にも有利です。
ただし、ショッピングモールには利用料がかかります。月額利用料や売り上げに応じた手数料を支払うため、その分の利益率が低くなります。また、ショッピングモールごとに独自の運営規約があるため、ECサイトのカスタマイズがしにくいというデメリットもあります。
●自社の越境ECサイトを構築する
自社で越境ECサイトを構築するパターンです。自社サイトであればショッピングモールのような規定がないため、比較的自由な設計が可能。システムを構築するための初期投資が必要ですが、決済手数料やシステムの利用料がかからないため利益率が上がります。
しかし、自社サイトで始めるには、進出先の事前リサーチが必要です。決済方法や流通システムなども、各国独自の事情や法律、規制をきちんと調べて対応しなければなりません。くわえて、法律や規制が改正された際には、それに応じた素早い対応が求められます。さらに、自社サイトはゼロから集客する必要があるため、利益が出るまでには時間がかかります。
社内に越境ECサイトの構築や運営のノウハウが不足しているのであれば、外部のシステム会社に越境ECサイトの構築や開発、運営代行を依頼するのもおすすめ。ECサイトの構築を得意とする企業の中には、越境ECに対応可能な企業も多くあります。その中から、適切な企業を選ぶ際のポイントは以下のとおりです。
越境ECサイトの構築実績があるか
越境ECサイトの構築実績数に注目しましょう。構築実績をチェックすることで、開発会社のスキルや得意分野、依頼できそうな作業範囲などを大まかに掴めます。依頼後・制作後のミスマッチの防止にもつながります。
ターゲットとなる国のマーケティング事情に詳しいか
進出を予定している国の法律やトレンド、市場規模などの知識が豊富な開発会社を選びましょう。特に、法規制に関する知識は重要です。ターゲットとなる国の法規制の知識が不足していると、出店が難しくなるだけでなくペナルティを受ける可能性もあります。
ECサイトの運用代行やアフターフォローも依頼できるか
越境ECサイトは、適切に運営してはじめて効果が期待できます。多言語による各種カスタマーサポートや出品代行、定期的なマーケティング施策の提案など、開発会社のアフターフォローの充実度にも注目しましょう。
自社に合った開発形式を採用しているか
オープンソース開発・パッケージ開発・フルスクラッチなど、ECサイトの開発形式は様々です。自社が依頼したい開発形式はどれか、また目星をつけている開発会社がその形式に対応してくれるかといった点を事前にチェックしましょう。
発注ナビでは、越境ECサイトの構築・運用実績が豊富な開発会社の情報を豊富に取り扱っております。全国5000社以上の開発会社の中から、案件内容に合った開発会社を厳選して紹介いたします。「自社に合った開発会社がわからない」「越境ECに関する知識やECサイト構築のノウハウが足りず不安」とお悩みのご担当者様は、一度発注ナビへご相談ください。
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