越境ECとは、インターネットを通じて海外の顧客と国際的な電子商取引を行うことです。インターネットの普及によって可能になったビジネスで、現地に支店や支社を開設して商売をするよりも、低コストでリスクを抑えながら商圏を広げられる点が人気です。しかし、国内市場とは異なる規制や決済方法、言葉の壁や消費傾向の違いなど難しい面も指摘されています。
今回は、これから参入を検討している人のために、越境EC市場の現状やメリット・デメリット、越境ECの始め方について紹介します。
目次
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そもそもECサイトとは?
ECサイトとは | |
---|---|
言葉 | 意味 |
ECサイト | 通販サイトやオンラインショップなどを表す言葉 |
EC | 「eコマース」の略称 |
eコマース | 「電子商取引」の仕組みや概念 |
コマース(Commerce) | 商売、取引 |
ECサイトとは、Eコマース(E-Commerce)のサービスを提供するWebサイトの通称です。
Webサイトを通じて商品やサービスを取引することで、インターネット上で商品を販売したり、オークションしたりするWebサイトのことをECサイトと呼びます。端的に言えば、通販サイトやオンラインショップを指すことがほとんどです。
通信技術が発達した現代では、「何かを購入する手段」として、ECサイトは一般的な手段となりつつあります。このECサイトを運用するうえで必要不可欠な機能、ECサイトを作る方法や運用方法、セキュリティに関しては以下の記事で詳しく紹介しています。
■ECサイトの構築・運用におけるセキュリティ対策。情報漏洩を防ぐには
越境ECとは?
越境ECとは、インターネットを通じて行う国際的な電子商取引のことです。本来は取引内容を限定せず、国境を越えた電子商取引全般を指す言葉ですが、現在は主に海外の顧客専用にECサイトを構築し、商品を販売することを意味しています。
越境ECサイトで主流なのは「海外に在庫があり、海外に運営会社がある」というタイプのもので、日本で有名なサイトはアリババ(中国)、Wish(アメリカ)、Amazon(アメリカ)です。Amazonは日本でも使えるECサイトですが、アメリカの消費者が使っているのはアメリカのAmazonです。海外から日本のAmazonにアクセスすることは可能ですが、言語や画面を切り替える手間が発生するので、現地でECサイトを持つ方が収益面でのメリットが大きくなりやすいのです。
「ECの売り上げ増加が期待できる」として、日本国内でも越境ECに取り組む企業は少なくありません。国内向けのECサイトを運営している、またはECサイトの開設を検討しているという企業担当者の方であれば、越境ECを開始してみてはいかがでしょうか。以下では、年々増加傾向にある越境ECの市場規模について解説をします。
越境EC市場規模の増加
越境ECの市場規模は拡大を続けており、令和元年においては日本・米国・中国のいずれの国でも増加しています。経済産業省が公表しているデータによると、2020年の中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は1兆6,558億円で前年比7.9%増、米国事業者からの越境EC購入額は2兆94億円で前年比16.3%増となっています。
日本の越境EC利用規模に比べると、アメリカは日本の5倍、中国は12倍もの市場を持っているのです。
日本・米国・中国の3カ国間における越境電子商取引の市場規模 | ||
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国 | 越境EC購入額 | 伸び率 |
日本 | 3,175億円 | 14.8% |
米国 | 1兆5,570億円 | 11.8% |
中国 | 3兆6,652億円 | 12.3% |
出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました」
●グローバルニーズを意識する企業が増えている
越境ECは、クロスボーダーECとも呼ばれています。日本の製品をそのまま海外へ売るだけではなく、海外でのニーズがあるものを新しく商品化する他、単一の国ではなく全世界をターゲットとした商品開発・販売を行います。日本国内だけでなくグローバルなニーズに応えるマーケティングや商品開発が必要です。
難易度が高いように見えますが、それでも「ECの売り上げ増加が期待できる」として、国内でも取り組む企業が増加しているのです。インバウンドで中国人による日本製品を”爆買い”が話題になったことからもわかるように、日本製品の品質の高さは世界中で知られています。日本製品に魅力を感じる海外の顧客は多く、越境ECを利用して日本製品を購入したい人々は、世界に数多くいるのです。
また、商材によっては越境ECでビジネスが拡大する可能性があります。海外にフィールドを移すだけで、日本でビジネスを行うよりもライバルが少なくなるケースがあるのです。日本国内で競争が苦しい商材でも、海外というブルーオーシャンに出ることで、ビジネスを拡大できるかもしれません。
越境ECのメリット・デメリット
越境ECのメリットとデメリット | |
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メリット | デメリット |
初期費用・人件費・光熱費などコストの軽減 | 配送料や手数料が高い |
少子化が進む国内のほかに商圏が広がる | 為替の変動があるため低価格を武器にするのが難しい |
希少価値がある商品で新規顧客が獲得しやすい | 販売先の国によって規制や法律が異なる |
越境ECは、外国人を相手にした取引です。そのため、国内での商取引とは異なるメリットやデメリットがあります。以下で詳しく見ていきましょう。
●メリット
・初期費用・人件費・光熱費などコストの軽減
越境ECはインターネット上のECサイトがベースなので、現地に直接出店する必要がありません。そのため、初期費用や人件費、光熱費などの固定費を抑えることができます。商品の販路拡大にあたり、費用を抑えて海外進出を検討したい企業に適していると言えるでしょう。
・少子化が進む国内の他に商圏が広がる
日本はこれからも少子高齢化が進み、人口はさらに減少、それに伴い消費は低下すると予想されています。そのため、越境ECは市場を一気に拡大する方法として注目されています。
・希少価値がある商品で新規顧客が獲得しやすい
海外市場で日本ならではの商品や、日本以外では手に入りにくい商品を販売することで、新たな顧客の獲得が期待できます。海外には品質の良い日本製品を望む顧客も多く、これまで海外に出ていなかった製品にもビジネスチャンスがあります。
●デメリット
・配送料や手数料が高い
越境ECは商品を海外に発送するため、送料が国内よりも高額です。さらに、地域によって送料が大きく変わるため、送料込みの価格を表示することも実現しにくいのが実情です。流通事情が違うので、商品が顧客へ到着するまでの日数も読みきれません。
・為替の変動があるため低価格を武器にするのが難しい
為替は常に変動するため、購入時期によっては同じ商品でも価格が異なってしまいます。そのため、低価格を武器にした販売戦略は難しいといえます。
・販売先の国によって規制や法律が異なる
越境ECでは、流通事情や決済方法、サイトの翻訳など、日本だけでなくそれぞれの国の規制や法律に従うことになります。例えば、欧米の決済方法は「PayPal」が主流であり、中国ではオンライン決済サービス「Alipay」やクレジットカードの「UnionPay(中国銀聯)」が主流です。これらに対応していなければ普及は難しいでしょう。
この他、越境ECは現地の事情に合わせたサイト制作が必要となります。商品説明を現地の言葉に翻訳したり、ヘルプページや各国語のカスタマーサポートを用意したり、現地の事情に合わせたECサイトを作る必要があります。しかし、これらのデメリットを加味しても、越境ECは手軽に始めやすくビジネスチャンスも大きい分野と言えるでしょう。
越境ECの始め方
越境ECの始め方 | ||
---|---|---|
方法 | メリット | デメリット |
国内外のショッピングモールを利用する | 出店の手間や費用を抑えやすい | 手数料がかかり利益率が低くなりやすい |
モールのブランド力を集客に活かしやすい | ECサイトのカスタマイズがしにくい | |
自社サイトで始める | イメージ通りのECサイトを自由に構築しやすい | 進出先の事前リサーチが必要となる |
利益率が高くなりやすい | 集客をゼロから行う必要がある | |
外部のシステム会社に依頼する | Web制作のノウハウが無くてもECサイトを作りやすい | 内製よりもサイト制作にコストがかかりやすい |
進出する国のニーズに合わせた機能を搭載しやすい | 機能の追加や改修に費用がかかることもある |
越境ECに参入するには、「ショッピングモール」と「自社サイト」、「外部のシステム会社」の3つの方法があります。それぞれ、詳しく見ていきましょう。
●国内外のショッピングモールを利用する
ショッピングモールを利用すれば、システム開発や進出先のリサーチの必要がなく、出店の手間や費用を抑えることができます。進出先の流通システムや決済方法、税制に関する知識、ライセンスなどがなくても支援してくれて、翻訳作業も自動で行えます。越境ECを支援してくれるショッピングモールを利用すれば、「楽天」や「Yahoo!ショッピング」と同じように、手軽にオンラインショップを運営できます。メジャーなショッピングモールは、ブランド力や顧客からの信頼があるため集客にも有利です。
ただし、ショッピングモールには利用料がかかります。月額利用料や売り上げに応じた手数料を支払うので、その分、利益率が低くなります。また、ショッピングモールごとに独自の運営規約があるため、ECサイトのカスタマイズがしにくいという特徴もあり、自由度は低いというデメリットも目立ちます。また、中国、アジア、欧米などすべてのエリアをカバーしているショッピングモールはありません。全世界に対応するためには、いくつかのショッピングモールを使い分けることになり、その点も手間がかかります。
●自社サイトで始める
自社サイトを構築し、越境ECを始めることもできます。自社で保有しているドメイン名を使い、ブランドを前面に出したコンテンツを作成することで、効果的なマーケティングにも繋がります。自社サイトはショッピングモールのような規定がないので、自由にサイトを作ることが可能です。自社サイトには、システムを構築するための初期投資が必要ですが、決済手数料やシステムの利用料がかからないため利益率が上がります。
しかし、自社サイトで始めるには、進出先の事前リサーチが必要です。決済方法や流通システムなども、各国独自の事情や法律、規制をきちんと調べて対応しなければならず、法律や規制が改正されたときには、それに準じた素早い対応が求められます。さらに、自社サイトはゼロから集客する必要があるため、利益が出るまでには時間がかかるでしょう。
●外部のシステム会社に依頼する
越境ECは、流通事情や決済方法、サイトの翻訳など、出店するそれぞれの国の規制や法律に合わせたECサイトを作る必要があります。
ここでネックになりがちなのは、専門的なノウハウが社内にないことです。表面をなぞっただけでは、ユーザーのニーズを満たせないばかりか、法律面のトラブルなどさまざまなリスクを抱えることになってしまいます。言語や決済システムなどは現地のニーズに合わせて作り込んでいくことが望まれますが、市場調査に貴重なリソースを取られてしまいます。オンラインの電話などは時差の関係もあって難しいというケースではチャットオンリーにするなど、運用の課題を解決する機能も取り入れていくことが求められます。
もしもノウハウが不足している状態からのスタートなら、外部のシステム会社に依頼するとスムーズに出店することができます。ECサイトの構築を得意とする企業の中には、越境ECに対応可能な企業も多くあります。
システム会社を検索できるサービスを利用すれば、越境ECを始めるという目的にピッタリな企業を検索できます。「どんな機能を備えるべきかわからない」、「構想しているサービスに合うシステム会社を見つけられない」というケースにおいても、専門知識を備えたコンシェルジュに依頼することで、最適な企業を選択できるのです。日本最大級のシステム開発会社ポータルサイト「発注ナビ」では各分野で厳選した、ECサイト構築で豊富な実績を持つ開発会社15社を以下の記事で紹介しています。
計り知れない底力を秘める越境ECの魅力
越境ECを支援する業者も増え、企業の参入が容易になりました。ショッピングモールと自社サイトのどちらを選ぶかは、商材や業界特性、ブランド力などから総合的に判断するのがよいでしょう。
ただし、途中でやり方を変えることはおすすめできません。途中でやり方を変更してしまうと、せっかく築いたブランド力や集客力、信用が無駄になってしまいます。越境ECを始める前にじっくり検討し、自社に合った方法をよく考えましょう。
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