大規模なシステムの開発は、開発にかかわる人数が多くなったりプロジェクトにかける期間も長くなったりする分、成功させる難易度は高く、費用も高くなる傾向にあります。本記事では、大規模システムの導入・開発を検討する企業担当者の方に向けて、大規模システムの費用相場や、外注先の選び方などについて詳しくご紹介します。
目次
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大規模システムの定義
大規模システムには、明確な定義がありません。しかし、自社で開発したいシステムが大規模システムにあたるのか判断が必要なこともあるでしょう。そういった際に判断できるポイントとして、システム開発に携わるメンバーの人数が挙げられます。
経済産業省が管轄するIPA(独立行政法人情報処理推進機構)はソフトウェア開発に関する調査の際、100名以上のメンバーが携わる規模のシステムを「大規模システム」と定義しています。システム開発の費用は人件費が大きなウェイトを占めるため、携わるメンバーが多い大規模システムの費用は高額になります。そのことから、開発費用が数千万円~数億円単位の費用になるのです。
大規模システムの費用相場
大規模システム開発を検討している際、費用感は気になるポイントの1つではないでしょうか。大規模システムを開発する場合、大まかな費用相場は一般的に1,000万円~とされています。開発するシステムの規模や機能の複雑さによっては、費用が更にかかることも珍しくありません。
また、開発費用はシステムの規模の大きさだけではなく、システムの種類やシステムに搭載する機能、サーバなどによっても変動します。
規模によって費用が大きく変動するシステムの種類の例として、「CMS」が挙げられます。
CMSとは、「Contents Management System(コンテンツマネジメントシステム)」の略称です。専門知識がなくても、比較的簡単にWebサイトを構築・更新できるシステムのことを指します。
CMSは開発するシステムの規模によって費用の差が開く傾向があります。これは、システムで作成できるサイトのデザイン性やモバイル対応など、機能の範囲が幅広いことが影響しています。小規模のシステムであれば100万円以内に収まることが多い一方、大規模なシステムでは1,000万円程度かかることもあります。
「Google」や「Yahoo! JAPAN」のようなポータルサイトも、規模によって価格が大きく変動するシステムです。ポータルサイトは、様々な種類のコンテンツの入り口の役割を担うサイトのことを指します。
ポータルサイトは小規模なものであれば300万円以内に収まる程度ですが、コンバージョン機能や広告配信機能を備えた大規模なものは1,000万円以上かかることもあります。
大規模システムの費用の内訳
大規模システムの開発は高額になる傾向がありますが、かかる費用の内訳についてしっかり把握することが大切です。ここでは、システム開発において特に大きなウェイトを占める人件費と設備費、固定費について解説します。
●人件費
一般的に、システム開発にかかる費用の約8割を占めるのが人件費 だといわれています。そのため、人件費を把握することによってシステム開発のコスト管理をしやすくなります。
開発するシステムにフルスクラッチ開発を用いる場合はゼロから開発をする特性から相場がわかりづらく、外注先が提示した見積もり価格が適正なのか判断が難しい場合があります。システム開発に携わるエンジニアの人数と、開発にかかる具体的な期間などを外注先に確認してみましょう。
人件費は、エンジニアやプログラマーのスキルに応じて変動します。スキルに応じた人件費の1ヶ月あたりの一般的な相場は、以下のとおりです。
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スキルの高い上級システムエンジニアの場合:100万円〜200万円程度
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経験の浅い初級システムエンジニアの場合:60万円〜100万円程度
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大手企業所属のスキルの高いプログラマーの場合:80万円〜200万円程度
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下請け企業または経験の浅いプログラマーの場合:60万円〜100万円程度
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アジア圏のオフショア系プログラマーの場合:30万円~60万円程度
開発するシステムの規模や搭載するシステム、為替相場によって変動するため、上記はあくまで目安としてご参考ください。
人月単価を使った費用の計算法
システム開発の見積書において、「人月」という言葉を目にする機会は多いでしょう。
「人月」とは、作業量を表す単位の1つで、作業に必要な1ヶ月間の人員の数を指します。具体的な人月数は、「作業に従事する人員数×1人あたりの作業期間(従事期間)」で表されます。例えば、「人月単価100万円」という場合は、エンジニア1人に支払う月の単価報酬は100万円、ということになります。
実際に具体的な例をあげて、人月単価を使って費用を計算してみましょう。
例えば、システム開発するのに1ヶ月3人のエンジニアが必要なら3人月となります。人月単価が80万円、開発期間が6ヶ月必要だとすると、人件費の計算は、以下のとおりです。
3人 × 80万円 × 6ヶ月=1,440万円
人月単価は、エンジニアやプログラマーの持つスキルや発注する時期、所属する企業の規模によって変動します。一般的に、エンジニアのスキルが高い場合やエンジニアが所属する企業が大企業である場合は、人月単価が高くなる傾向にあります。
●設備費
人件費の次に費用がかかるのは設備費とされています。設備費は大きく分けて2種類になります。
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システムを開発するための設備の費用
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システムを動かすための設備費
システムを開発するための費用として、開発に用いるパソコン代が挙げられます。システム開発を行うスペースがなく、オフィスを借りる場合はそのレンタル代もシステムを開発するための費用に含まれます。光熱費や電気代も該当します。
システムを動かすための設備費は、システムを動かすためのサーバ代やクラウドサービス代などが挙げられます。
人件費が占める割合が大きいため、つい人件費に着目してしまいますが、設備費も内訳の中では重要な要素の1つになるので、注意しましょう。
●固定費
固定費とは、システム開発において固定で発生する費用のことを指します。先述の設備費は固定費にも該当します。具体的には、ドメインやサーバ代、開発用のパソコン代が固定費にあたります。
システム開発の費用を抑えるためにできること
大規模システムの開発は費用が高額になる傾向にあるため、開発費を節約することが大切です。大規模システムの開発費を節約するポイントについて、詳しくご紹介します。
●各種補助金を活用する
システム開発の費用を節約するためには、まず国の補助金制度を活用することが重要なポイントです。
開発するシステムの規模や目的によって利用できる補助金は異なりますが、主に以下の2種類の補助金があります。
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IT導入補助金
-
ものづくり補助金
1つのシステム開発で活用できる補助金は1つで、申請だけではなく、基準や公募要領など条件を満たす必要があるため注意しましょう。賃上げ計画案や事業計画案などといった書類を提出し審査を受ける必要がある補助金もあります。
補助金は、システム開発が完了し、実績報告書を提出してからの交付となるため、後払いになります。システム開発開始時には、自社で負担する必要があるため注意しましょう。
また、設定されている補助事業期間内でシステムの発注、納品、支払を完了させることが定められています。定められた期間外の経費については対象外になるため、こちらもあわせて注意が必要です。
補助金の申請手続きは容易ではありません。しかし、補助金を活用することによって開発費用を抑えることができますので、自社の開発が申請の対象なのかを確認してみましょう。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者などが、自社の課題やニーズに合ったITツールを導入することを支援する補助金のことを指します。
通常枠(A・B類型)、セキュリティ対策推進枠、デジタル化基盤導入枠の3つの枠に分けられます。
通常枠は、中小企業・小規模事業者などが自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助することによって、業務効率化・売上アップをサポートするものです。
通常枠 | ||
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類型 | A類型 | B類型 |
補助額 | 5万~150万円未満 | 150万~450万円以下 |
補助率 | 1/2以内 | |
機能要件プロセス数※ | 1以上 | 4以上 |
ITツール要件 | 類型ごとのプロセス要件を満たすものであり、労働生産性の向上に資するITツールであること。 | |
賃上げ目標 | 加点 | 必須 |
補助対象 | ソフトウェア費・クラウド利用料(※最大2年分補助)・導入関連費など | |
※クラウド利用料 1年から2年に期間を長期化 |
※この場合のプロセスとは、業務工程や業務種別のことを指します。
セキュリティ対策推進枠は、中小企業・小規模事業者などのサイバーインシデントが原因で事業継続が困難となる事態を回避し、サイバー攻撃被害によって引き起こされる様々なリスク低減を支援するものです。
セキュリティ対策推進枠 | |
---|---|
類型 | なし |
補助額 | 5万円~100万円 |
補助率 | 1/2以内 |
機能要件プロセス数 | なし |
ITツール要件 | 独立行政法人情報処理推進機構が公表する「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されているいずれかのサービス |
賃上げ目標 | なし |
補助対象 | サービス利用料(最大2年分) |
デジタル化基盤導入枠は、インボイス対応を見据えた企業間取引のデジタル化の推進を目的とし、受発注ソフトや決済ソフト、会計ソフトなどの経費の一部を補助するものです。
「デジタル化基盤導入類型」と「複数社連携IT導入類型」の2種類があり、デジタル化基盤導入類型は、単独事業者がPCやレジ、券売機などのITツールを導入する場合に支援されるものを指します。複数社連携IT導入類型は、複数の企業が協力し、ソフトウェアやシステム導入の費用を補助するものです。
デジタル化基盤導入枠 | ||||
---|---|---|---|---|
類型 | デジタル化基盤導入類型 | |||
補助額 | ITツール | PC・タブレットなど | レジ・券売機など | |
下限なし〜最大350万円 | 〜10万円 | 〜20万円 | ||
内、〜50万円以下部分 | 内、50万円超~350万円部分 | |||
機能要件 | 会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 | 会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 | 左記、ITツールの使用に資するもの | |
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 | 1/2以内 | |
対象ソフトウェア | 会計ソフト、受発注ソフト、決済ソフト、ECソフト | ー | ||
補助対象 | ソフトウェア購入費・クラウド利用費(クラウド利用料 最大2年分補助)、ハードウェア関連費、導入関連費 |
参考:IT導入補助金2023
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、中小企業などによる生産性向上を目的とした革新的サービス開発、試作品開発、生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金のことです。
正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。
「通常枠」「回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠」「グリーン枠」「グローバル市場開拓枠」の4種類があります。
種類 | 通常枠 | 回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠 | グリーン枠 | グローバル市場開拓枠 |
---|---|---|---|---|
補助上限額 | 最大750~1,250万円 | 最大750~1,250万円 | 750~4,000万円 | 3,000万円 |
補助率 | 中小企業1/2、小規模・再生事業者2/3 | 2/3 | 2/3 | 中小企業1/2、小規模事業者2/3 |
※補助上限額・補助率は、従業員数や申請枠によって異なります。また、「大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例」として、補助事業終了後、3~5年で大幅な賃上げに取り組む事業者に対し、上記枠の補助上限を100万円~1,000万円、更に上乗せします。(ただし、回復型賃上げ・ 雇用拡大枠などは除きます。)
●搭載したい機能を明確にする
搭載したい機能が増えれば増えるほど、開発期間や工数がかかり費用も増加します。そのため、開発するシステムに搭載したい機能を明確にすることも大切です。要件定義の内容を明確にすることによって、修正や変更のリスクの削減につながり、その結果費用を抑えることができます。
スタート時点では最小限の機能にするということも1つの手です。システム公開後に、ユーザーの評価を見て機能を追加することも可能です。
●類似ジャンルの開発実績がある外注先へ依頼する
開発したいシステムに類似したジャンルの開発実績がある外注先へ依頼するのも、費用を抑えるポイントの1つです。
システム開発においてコストが増加するケースとして、開発を依頼した側と外注側の認識に齟齬がある場合が挙げられます。システムの完成後に修正依頼が発生し、修正するたびに全体の開発費用が膨らんでいくことが挙げられます。
外注先が開発したいシステムと同じ、もしくは類似したジャンルの開発実績があれば、要件定義の段階で認識の齟齬を防ぐことが可能になります。
開発したいシステムが大規模システムともなると、外注先の選定にもより慎重になる必要があります。外注先の選定にお悩みの場合は、ぜひ発注ナビへお任せください。 外注先を選ぶ際には複数社に見積もりを取り、十分に比較検討してから選ぶことが求められます。しかし、比較検討には手間がかかるものです。
そこで発注ナビでは、開発の外注を依頼したい企業と受託したい企業のマッチングサービスを展開しています。ITに特化した知識豊富なスタッフが丁寧なヒアリングを行い、4,000社以上の開発会社データベースの中から、お客様のニーズに合った開発会社をご提案しています。「自社に合った開発会社がわからない」「選定にできるだけ時間をかけずにスムーズに導入したい」とお考えのご担当者様はぜひ一度ご検討してみてはいかがでしょうか。
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