読み取り技術が進歩した現代では、スキャナーで書類や取り込み、記載されている文字をテキストデータにして出力できます。このテキストデータの読み取りに必須なのが、「OCR」と呼ばれる技術です。昨今はOCRの精度も向上しており、AI搭載の「AI-OCR」が一般的になっています。今回は、OCRの活用を検討している方向けに、その概要やソフトの選び方、メリット・デメリットなどをご紹介していきます。
目次
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スキャナーと一心同体!OCR(光学文字認識)とは

OCRとは、「Optical Character Reader(Recognitionの場合もある)」の略称です。日本語では「光学文字認識」と訳され、文書に記載された文字・文章を、パソコンやスマートフォンなどへ取り込んで利用するための技術(またはソフトウェア)を指します。スキャナーにおける、「読み取られた画像データのテキスト部分を識別する」「識別したテキスト部分を実際のテキストデータへ変換、出力を行う」といったフローはOCRによって行われています。
コンピューターは、数値の計算はできても、文字の判別や読解はできません。人間が日常的に行っている、文字を見つけて読解する行為も、コンピューターにとっては不可解な行為です。そこで、OCRが必要になってきます。OCRを使うことで画像内のテキストデータを処理可能なデータへ変換し、パソコンやスマートフォンでもプレーンテキストとして使えるようになります。
書類や写真をスキャンして電子化するだけならば、OCRがなくても可能です。しかし、「電子化した書類をデータベースとして検索できるようにする」「書類をデータ化した後に編集、書き換えてから公開する」といった処理が必要な場合はOCRが必須となります。
●スキャナーとOCRの違い
スキャナーとOCRは、補完し合う関係性があります。スキャナーは書類や写真を読み取るためのハードウェア、OCRは読み込んだデータをテキストデータに変換する技術(またはソフトウェア)という認識でも良いでしょう。
スキャナーで単に取り込んだ書類は、テキストデータとして内部にある文字を抽出できません。単なる画像を構成している画素(ピクセル)の一部に過ぎないため、データの検索面や保管面などで課題が出てきます。OCR搭載のスキャナーであれば、文字がある部分を認識してテキスト化してくれます。プレーンテキストとしてコピーしてペーストする、必要であれば直接編集して書き換えるといった操作が可能です。
現代は、スキャナー機器やアプリにOCR機能が搭載されているのが一般的になりつつあります。文字が大量に入っている書類、テキストデータで管理する資料といったビジネス向けの紙媒体は、OCRが必要不可欠です。
OCRでできること・仕組み

OCRを活用して業務効率化を図るためには、できることや仕組みをしっておく必要があります。
ここでは、OCRでできることや仕組みについて解説します。
●画像取り込み
紙媒体の文書をイメージスキャナで画像の形式にして読み込みを行います。
テキストと画像がある紙媒体でも問題なく画像として取り込みが可能です。
●画像と文字領域を分離
レイアウト解析を行い、画像として取り込んだデータの中で、画像の部分と文字領域を分離する作業を行います。
段落などの文章のかたまりを読み込み、画像やグラフ、表などを分離します。
●文字列を解析
画像と文字領域を分離した際に検出した文字領域の段落ごとなどのかたまりを、1行ずつの文字列に分ける処理を行います。
●文字を解析
分解して1行になった文章を1文字ずつに分ける処理を行います。
●フォーマットに出力
WordやExcelとして活用できるように、変換してフォーマットに出力します。
精度や対応言語が重要!OCRソフトの選び方

OCRのソフトウェアを導入すれば、OCR機能がないスキャナーでもテキストデータの抽出ができます。以下では、OCRソフトの選び方を解説していきます。
●読み取り精度で選ぶ
CRソフトによって、読み取り精度は微妙に違います。この精度は、以下のように「どのような文字の種類に特化しているか」で変化します。
- 手書き文字読み取りに特化している
- 活字読み取りに特化している
- 業界用語読み取りに特化している
ちなみに、精度面ではAI搭載のOCRのほうが、学習可能な分将来性があります。仮に非搭載のものを導入した場合、安く導入できるかもしれませんが精度面では難がある点に注意しておきましょう。このAI搭載のOCRについては、後の項で詳しく解説します。
●使いたい言語に対応したものを選ぶ
中にはグローバルに事業展開しており、多言語対応で書類を読み込む必要性がある企業も少なくないでしょう。日本語以外の英語や中国語、フランス語といった言語については、読み取れるか読み取れないかがOCRソフトによって違ってきます。
グローバルに事業展開している企業であれば、多言語対応しているソフトを導入したほうが安心です。
ただ、多言語対応の場合は海外産ソフトの場合があります。海外産だと、日本語に詳しいベンダーが開発しているとは限らないので、日本語の読み取り精度が低いことも少なくありません。また、言語によって精度が変化するので、本当に対応したい言語の読み取り精度が高いか確認しながら導入を検討できると安心です。
一方、日本語のみに対応すれば良い場合は、国内産の日本語読み取り精度が高いOCRソフトを導入したほうが良いでしょう。
●機能重視で選ぶ
機能は限定的ですが、OCRソフトには無料で使えるモデルもあります。
最低限の読み取りはできますが、指定ソフトとの連携による高度なフロー自動化や独自学習によるパーソナライズ、表の自動作成などの充実した機能を求める場合は有料ソフトを導入する必要があります。
無理に有料ソフトを導入する必要はありませんが、求める機能について無料で対応できない、ビジネスの業務効率化弊害になると考える場合は有料版を検討してみましょう。
一度無料プランが用意されているソフトを利用してから、有料プランに気に入ったら切り替えるという選択肢もあります。
GoogleドライブやOffice Lensが有名!無料で使えるOCRソフト
無料で使えるOCRソフトとして、おすすめしたいのは「Googleドライブ」です。Googleドライブ自体は無料のオンラインストレージであり、厳密にはOCRソフトではありません。
ですが、アップロードしたファイルをOCRで読み取って、サービスの一部である「Googleドキュメント」形式で出力する機能が搭載されています。
具体的には、以下のフローでOCRが利用可能です。
- Googleドライブを起動させる
- 内部にテキスト化したいファイルをアップロードする
- ファイルを右クリックしてメニューを開き、「アプリで開く」→「Googleドキュメント」を選択
- GoogleドキュメントにOCRで読み取った結果が出力される
Googleドライブで文書管理している場合は、そのまま指定ファイルを保存・管理しながらテキストデータ化できるので便利です。
Googleドキュメント形式で出力されるので、面倒な手間なく共有および編集、コピーなどができます。活字だけでなく手書きの文字対応や、画像内の文字を検索して、指定のファイルを表示させることも可能です。
無料なので漢字を中途半端に読み込む、文字の並びが崩れるといった弱点はあります。ですが、無料でAI搭載、簡単なテキストであれば正確に読み取れるといった特徴があるGoogleドライブは、導入が手軽でOCRソフトとしてもある程度活用が可能です。
Googleドライブ以外にも、スマートフォンアプリでは「Office Lens」が有名です。こちらはスマートフォンのカメラをスキャナーとして利用することで目の前の画像を認識、テキストデータを抽出してくれるアプリです。
Office Lensは手持ちのスマートフォンをスキャナーとして使えるだけでなく、ビジネス面での読み取り精度にも定評があります。Microsoft社製なので、同社「Office」製品との連携もしやすいのが利点です。
OCR(文字認識)のメリット・デメリット

優れた技術であるOCRにも、相応のデメリットが存在します。ここからは、OCRのメリット・デメリットを紹介します。
●メリット
OCRには、以下のようなメリットがあります。
- パソコンに入力する時間が削減できる
- 文書の保管スペースを削減できる
- 過去データの発見が簡単になる
人の手で書類を確認しながらパソコン内に文字を入力、データベース化するのには時間がかかります。データ入力の代行業者に作業を任せるという手もありますが、依頼の手間を考えると面倒に感じる方も多いでしょう。しかしOCRソフトを導入すれば、スキャナーへ書類を読み取らせるだけで文字抽出できます。抽出された文字の確認や訂正、加工などへ時間をかけやすくなります。
また、ペーパーレス化によって文書の紙保管スペースが必要なくなる点もポイントです。電子帳簿保存法といった法律で規定されている書類は紙で残しておく必要がありますが、紙管理によるスペース確保やコスト発生の手間が削減されるので社内で使うだけの書類は電子化がおすすめです。さらにOCRによって文字として検索できるようにしておけば、利活用しやすくもなりしっかりした管理体制を構築できます。
パソコンだけでなくスマートフォンで文字検索して文書を出せるようにすることで、急な出張や商談といった場面でも必要な書類を確認・活用できるようになるでしょう。OCRでテキスト化した書類をクラウドで共有する体制にしておくと、業務効率化が進みます。
●デメリット
一方、OCRには次のようなデメリットがあります。
- スキャナーで済む場合がある
- 文字認識精度が低い場合がある
ひと口に文字といっても、「氷」と「水」のように形状が似ているものも数多く存在します。紛らわしい文字が多い分、文字認識精度に関わらずOCRは誤ったテキストデータが抽出されることもしばしばです。文字の認識精度によっては確認や修正に時間がかかってしまい、業務効率化が妨げられてしまう可能性もあります。
OCRの読み取り精度を上げるコツ

OCRでは、読み取りがきちんとできなければ効率的に活用できません。
読み取り精度を上げるためには、読み取り前にコツをおさえて調整しておく必要があります。
●高解像度の画像を利用する
読み取り画像は、できるだけ高解像度の画像を利用することで、読み取りの精度が高くなります。
影が写って一部が暗くなっている、反射して文字が見えづらくなっているなど解像度の低い画像は避けましょう。
読み取りをする画像は、鮮明であるほど誤字がなく正確な情報を取り込めます。
●文字が見やすくなるように印刷をする
文字が小さな紙媒体は、事前に文字が見やすくなるように拡大処理を行って印刷すると、文字を正確に読み取れるようになります。
特に画数の多い漢字はフォントが小さいままの場合、詳細部分が分かりづらく、正しく読み取りができない恐れがあります。
●標準的なフォントの使用・大きな文字にする
フォントの種類は豊富にありますが、標準的なフォントを使用し、読み取りがしやすいようにしましょう。
フォントの種類だけでなく、文字そのもののサイズを大きくするとさらに読み取りの精度が上がります。
●背景はシンプルにする
背景がシンプルでない場合、読み取りの精度が低くなるため注意が必要です。
文字の部分の背景は無地、または薄い色とすることが好ましいです。
例えば、タイトル部分が濃い色で囲まれている場合、読み取りの際に濃く写ってしまい、文字が読み取りづらくなる恐れがあります。
OCRの活用例

OCRの具体的な活用例を紹介します。自社での活用方法の参考にしてみてください。
●帳簿や書類のデジタル化
手書きの帳簿や伝票などの種類などのデジタル化を進めたい場合に、OCRは活用できます。
OCRを活用せずに手書きの書類を手入力でデジタル化させるためには、大量の人員を導入し、コストや時間をかけて行なう必要があります。
手入力の場合、入力ミスが起こる恐れがありますが、OCRを活用すれば、スピーディに正確な情報のデジタル化が可能です。
●名刺のデジタル化
名刺をデジタル化することで、社内で名刺を共有でき、業務効率が向上します。
営業活動で入手した名刺は、紙ベースで所持していると、管理が大変であり、必要なときに取り出して確認することが困難です。
デジタルデータとして管理することで、保管場所が必要なく、名刺を確認したい際に簡単に確認することができます。
OCRのデメリットは「AI-OCR」でカバーできる
OCR従来の弱点は、AI-OCRである程度カバーできます。ここでいうAI-OCRとは、人間でいう頭脳に該当する人工知能、AI技術を活用してより精巧・正確に処理を行えるOCRです。AIによって「複数のフォーマットを自動認識する」「テキスト領域を自動で読み込んでくれる」「手書き文字にも学習で対応できる」」といったメリットを得られます。
通常のOCRよりも文字認識率が高く、ほかツールとの連携によって複数の作業フローを自動化できるのも特徴になっています。例えば、RPA(定型的な作業を自動化するためのロボットツール)と一緒に使えば、以下のような文書作成自動化ツール構築も可能です。
- スキャナーで書類を読み取る
- 書類をOCRでテキストデータ化する
- データベースへ保存、自動振り分けしながら整理を行う
金融機関の中には「ロボットアームを購入、それをRPAで動かしながら書類へ給紙、OCRで文字を読み取って活用する」といったようなおもしろい事例も見られます。給紙まで自動化することで高い経済効果を得られました。
AI-OCRの導入方法
AI-OCRを導入するには次のような方法があります。
●AI-OCRソフトを購入する
一般的には、ソフトを直接購入する方法が考えられます。
ベンダーごとに販売AI-OCRソフト特徴に違いがあります。以下のような目的を明確にしてから導入するソフトを選択してください。
- グローバルに多言語対応したい
- 日本語の精度を徹底的に挙げたい
- 業界用語にまで細かく対応したい
目的が明確になれば、ソフトに求める機能やスペックなども把握しやすくなります。ちなみにベンダー側では、「2ヶ月間無料トライアル」「学習済みの状態でAIを提供」などのサポートを行っています。
目的や機能と合わせ、サポートの内容も吟味した上でソフトを選ぶのが理想です。
●システム会社に依頼する
このほか、システム会社にオリジナルのAI-OCRソフト開発を依頼する方法もあります。開発予算が相応に必要なので、事業規模がある程度大きくOCRの導入効果が高くなる企業向けです。システム会社に依頼を行うと、希望に沿って独自の機能が開発されるので業務によりパーソナライズしたAI-OCRになるでしょう。
また、職種や業種に特化した機能も搭載可能なので「パッケージソフトだと対応できない、重要度の高い機能が必要」という場合は開発を依頼してみると良いでしょう。運用保守のサービスが受けられるシステム会社であれば、管理やメンテナンスにかかる手間も軽減できます。OCR・文字認識システムの開発が得意な企業については、以下のページでご紹介しています。
やりたいことに合わせてOCRの開発依頼を検討しよう
今回はOCRの概要やメリット・AI-OCRの導入方法などについて解説しました。
OCRによって業務自動化やペーパーレス化が進み、DX(デジタルトランスフォーメーション)も実現しやすくなります。またDXまで視野に入れて柔軟にOCRを利活用したい方は、ぜひAIによる学習機能搭載のAI-OCRを利用してみましょう。ただ、OCRにも得手・不得手があります。ベンダーごとにソフトを比較・検討しながら、場合によってはオリジナルソフトの開発依頼も検討してみてください。発注ナビでは、専門コンシェルジュが案件内容を詳細にヒアリングします。やりたいこと、開発したシステムに合わせて、適切な開発会社を紹介することが可能です。まずは気軽にご相談ください。
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