プロジェクトマネジメントは、システム開発を成功させるために不可欠な業務です。プロジェクトマネージャー（PM）は、チームメンバーと取引先の間に立ち、交渉や調整を行います。
この記事では、システム開発におけるプロジェクトマネジメントの概要や重要性、プロジェクトを成功に導くためのポイントを解説します。
目次
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システム開発のプロジェクトマネジメントとは？
どのような開発を行う上でも、プロジェクトを成功させるためには、開発期間や人員、予算といったリソースの有効活用が欠かせません。
システムやソフトウェア開発は、数ヶ月から数年に及ぶこともあり、入念な準備や進捗管理が重要となります。
「プロジェクトマネジメント」とは、サービス・製品開発における機能要求を、工期・予算・人員という制約の中で達成できるよう計画し、実行をすることです。
この重要な役割を担うのは、プロジェクトの最高責任者であるPM（プロジェクトマネージャー）の役目になります。端的に言えば、企業の社長が「会社経営の指揮」を行うように、PMは「開発プロジェクトの指揮」を担う存在なのです。
システム開発におけるプロジェクトマネジメントの業務
システム開発におけるプロジェクトマネジメントには、主に5つの業務があります。ここでは、それぞれの業務について詳しく解説します。
| 業務 | 詳細 |
|---|---|
| 要件定義 | 「何をどうやっていつまでに開発するか」を関係者と打ち合わせする |
| プロジェクト計画書の作成 | システム開発を成功に導く「具体的な計画」を立てる |
| スタッフや環境構築の準備 | 開発スタッフのスケジュール管理や機材の準備などを行う |
| 進捗確認 | スケジュール通りにシステム開発が進行しているかを管理する |
| 評価 | 次回の開発に活かす目的で、プロジェクトのレビューを実施する |
●要件定義
PMが担う「要件定義」とは、スタッフや取引先と打ち合わせを行うことです。開発の目的や予算、納期といった要望のヒアリングなどを明確にします。
実現が難しい要望がある場合は早い段階でクライアントと協議し、双方にとって最適な妥協点を探ります。
また、要件定義の段階で「成果」というゴールの共通認識を築いておくことも重要です。共通認識がないままプロジェクトが進むと、システム開発の進行や成果物に悪影響を及ぼすこともあります。あらかじめ、クライアントに自社の担当範囲やスケジュールを伝えておき、仕事がしやすい作業環境を整えておくことも、プロジェクトマネジメントの重要な役割です。
●プロジェクト計画書の作成
要件定義によって目標が定まったら、システム開発を成功に導く「具体的な計画」を立てます。各工程にQCD（Quality：品質、Cost：コスト、Delivery：納期）を定め、役割分担ができるようスコープ（作業範囲）を明確にして作業を構造化します。
ちなみに、開発における要件定義や計画の段階を「上流工程」とも呼びますが、上流工程の時点でリスクを最小限に抑えることができれば、プロジェクトが成功する可能性も大きく向上します。プロジェクトマネジメントの中でも、PMの力量が問われる大切な工程と言えるでしょう。
【関連記事】
▷「上流工程はシステム開発の要！プロジェクト成功に必要なスキルとは？」
●スタッフや環境構築の準備
プロジェクト計画書が完成したら、開発スタッフや環境構築の準備に入ります。エンジニアの配置やスケジュール管理、システム開発に必要となる機材やソフトウェアの準備などを行い、開発の準備を整えましょう。
外部の開発企業に依頼をする場合は、PMが外部パートナー企業と交渉を行います。プロジェクトを推進するマネージャーとして、社内と社外の関係各所と調整を行い、万全の準備を整えましょう。
チームを統括することを求められる以上、PMの人心掌握スキルや意思疎通を円滑に行えるコミュニケーション能力がプロジェクトの成否を分けます。
●進捗確認
システム開発がスタートすると、PMの主な業務は進捗管理になります。スタッフやクライアントと定期的な打ち合わせを行いながら、スケジュール通りにシステム開発が進行しているかを確認します。遅れが出ている場合は原因を分析し、スケジュールを調整するなどの対応を行いましょう。
また、プロジェクトによっては、PMがエンジニアやデザイナーとして、管理業務と開発業務を兼任することもあります。
●評価
晴れてシステムが完成した後は、PMがプロジェクト全体のレビューを実施します。万が一、工数やコストの実績が計画を超過した場合は、その理由や設計変更の要因などを振り返り、その原因を徹底的に分析します。管理者であるPMが総合的に判断して下すレビューは、後のプロジェクトに活かせる情報となります。
レビューは文書に残されることがほとんどですが、文面ですべてを伝えるのは難しいことから、次の開発に携わるPMを交えてレビュー結果を報告するケースもあります。
プロジェクトを管理する5つのメリット
プロジェクトを管理するのには、複数のメリットがあります。ここでは、主な5つのメリットを紹介します。
- 作業計画と進捗を体系的に整理可能
- 役割分担とチーム内連携の明確化
- リソース（人員・予算）の最適配分
- 問題や遅延の早期発見・迅速な対応
- プロジェクト全体の業務効率と成果を最大化
●1.作業計画と進捗を体系的に整理可能
プロジェクト管理を導入することで、業務全体の流れや個々のタスクが明確になります。これにより、計画的かつ段階的にプロジェクトを進められるのは大きなメリットです。
PMは、各工程で必要な作業、期限、担当者を明確に把握できるため、抜け漏れのない進行が可能になります。
●2.役割分担とチーム内連携の明確化
プロジェクト管理では、メンバーそれぞれの役割と責任範囲が明確に定義されます。
誰がどのタスクを担当し、どの段階でチーム内の連携が必要かを全員が把握できるため、認識の誤りや作業の重複を防ぐことができます。これにより、各メンバーが自分の役割に集中でき、効率的なチームプレイが可能になるでしょう。
●3.リソース（人員・予算）の最適配分
限られた人材や予算を、どの工程にどれだけ投入するか最適化できるのも、プロジェクト管理の大きな利点です。プロジェクトの状況に応じてリソースの再配分を行うことで、重点的に取り組むべき工程や不足している人員を即座に補強できます。
無駄なコストや遅延のリスクを抑え、最も効果的にリソースを活用できるのは大きなメリットと言えます。
●4.問題や遅延の早期発見・迅速な対応
プロジェクト管理では、日々のタスクや進捗状況を継続的に確認するため、問題や遅延の兆候を早い段階で発見できます。トラブルが発生した場合も、関係者と早急に情報を共有し、迅速に対応策を講じることが可能です。リスクを未然に防ぎ、プロジェクトを安定して進行できるようになるでしょう。
●5.プロジェクト全体の業務効率と成果を最大化
全体の管理を通して、プロジェクト全体の業務効率が向上し、期待された成果をより高い確率で達成できるようになります。無駄な作業をなくし、リソースを最適に活用することで、プロジェクトの生産性が大幅に向上するのは大きなメリットです。
また、プロジェクトの目標や作業範囲が明確になるため、チーム全体が同じ方向を向き、高品質な成果物を生み出すことにつながるでしょう。
システム開発で起こるプロジェクト失敗の原因
ここで言うプロジェクトの失敗とは、予定していたQCD（品質・コスト・納期）を達成できない状況に追い込まれることを指します。プロジェクトが失敗する主な要因について解説します。
- 不明確な要件のまま進める
- コミュニケーション不足
- 無理な納品設定
- リスク管理の甘さ
●不明確な要件のまま進める
プロジェクトが失敗に陥る理由の多くは、発注側と開発側のコミュニケーション不足です。例えば、発注側が「こんなイメージで作って欲しい」と言ったきり丸投げをしてしまい、開発側も要件を詰めずに自己解釈でシステムの実装を進めてしまうケースが考えられます。
信頼できる外部の開発会社に任せるのは悪いことではありませんが、放置すると意に沿わないシステムになってしまう可能性があります。また、開発側も不明確な要件のまま進めてしまうと、後になって大幅な仕様変更の必要があり、コストも工数もかさんでしまいかねません。
要件定義からリリースまで、発注側と開発側とで誤認が生じないように密にコミュニケーションを取ることが大切です。
●コミュニケーション不足
発注側と開発側、あるいはチーム内のメンバー間でコミュニケーションが不足すると、多くの問題が発生します。システムに求める要件が十分に共有されなかったり、開発途中の仕様変更が正確に伝わらなかったりすると、認識のずれが生まれやすくなります。
また、進捗状況や課題が共有されないまま進むと、問題の発見が遅れ、手戻りが発生する原因となるため注意しましょう。
●無理な納品設定
実現する可能性が低い予算・納期を設定することで、プロジェクトが失敗に終わるケースもあります。特に、開発会社が案件獲得を優先してしまった場合は、非現実的な見積もりが出されることも多く、プロジェクトが炎上しやすくなります。
さらに、予算が少なすぎると、希望した機能の実装が難しくなることもしばしばです。また、納期を短くしすぎると、間に合わせるために品質が落ちてしまうか、間に合わずに遅延しやすくなるため注意しましょう。
●リスク管理の甘さ
プロジェクトの進行中には、予期せぬトラブルやリスクがつきものです。しかし、それらに対する備えが不十分だと、問題が発生した際に適切な対応ができず、プロジェクト全体に大きな影響を与えてしまいます。
リスクを事前に洗い出し、発生した場合の対処法をあらかじめ検討しておくことで、トラブルの被害を最小限に抑えられるのでおすすめです。リスク管理の甘さは、スケジュール遅延や品質低下の直接的な原因となるため、慎重に検討しましょう。
プロジェクトを円滑に進めるためのポイント
最後に、PMが押さえておきたい「プロジェクトマネジメントのポイント」を5つ紹介します。
- 目標を明確にする
- スケジュール・役割・優先順位を明確にする
- 円滑なコミュニケーションをはかる
- 取引先との関係を構築
- 問題・リスクへの早期対応
●目標を明確にする
成果物に対する指針だけでなく、プロジェクトメンバーで共有できる、達成可能な具体的な目標を設定することが不可欠です。
具体的な目標を明確にすることで、作業途中で「どこから手を付けてよいのか分からない」といった混乱を防げます。また、「何を達成するためにこの作業をしているのか」を明確にすることで、スタッフのモチベーション向上にもつながるでしょう。
また、目標確認や進捗報告を全体で行えば、スタッフに方向性を提示できるだけでなく一体感も生まれやすくなります。連携が強固になれば、作業をより進めやすくなるでしょう。
●スケジュール・役割・優先順位を明確にする
プロジェクトを成功に導くためには、「誰が、いつまでに、何を担当するのか」を明確にすることが不可欠です。スケジュールや役割を事前に決めておくことで、作業の重複や無駄な工数ロスを防ぎ、効率的にプロジェクトを進めることができます。
各タスクの担当者や期限、優先順位が明確になると、チームメンバーは自分の役割に集中でき、個々の生産性が向上するでしょう。
●円滑なコミュニケーションをはかる
実際に開発を進め、システムを作り上げるのが人間である以上、プロジェクトマネジメントではスタッフとのコミュニケーションも大切です。また、スタッフ同士の積極的なコミュニケーションを促して、チーム間の風通しを良くするよう働きかけることも求められます。
もしコミュニケーションが滞ると進捗状況やトラブルの情報共有が行われにくくなり、スケジュールに遅れが生じやすくなるため注意が必要です。
特に、テレワークや外部パートナーがメンバーに多い場合は、社内・社外で手軽にコミュニケーションが取れるプロジェクト管理ツールやチャットツールを導入するのも有効な手段です。
●取引先との関係を構築
PMの役割は、開発を円滑に進めるだけではなく、「ビジネスと技術を繋ぐこと」でもあります。いわば、取引先とシステム開発スタッフの窓口です。システム開発を成功に導くためには、プロジェクトチーム内だけではなく取引先との関係性も大切です。取引先と協力関係ができていないと「すべてお任せする」と一任されますが、それでも取引先の希望通りのシステムに仕上げなくてはプロジェクトも成功しません。
取引先を蚊帳の外においてしまうと、仕様や計画の策定スケジュール、調整対応に遅れが生じる可能性があります。一緒にプロジェクトに参加してほしいという姿勢を見せてクライアントとの協力関係を強固にしておくことで、仕様やプロジェクト計画をスムーズに定められるでしょう。発注側と開発側のどちらであっても、綿密なコミュニケーションは「プロジェクトを成功させる鍵」ということを留意しておくことが大切です。
●問題・リスクへの早期対応
プロジェクトの進行中には、予期せぬトラブルやリスクがつきものです。例えば、特定のタスクに遅れが出ている場合、その原因を早期に特定し、人員を増やす、スケジュールを調整するといった対応を、できる限り速やかに行えるようにしましょう。
迅速な対応のためには、事前に取引先と開発側で問題やリスクへの対応方法を検討しておくことが大切です。
今回は、システム開発におけるプロジェクトマネジメントの概要と重要性、プロジェクトを成功に導くコツについて紹介しました。システム開発だけに限らず、多くのスタッフや組織が関わる業務においては、「誰がどうやってマネジメントを行うか」が重要となるでしょう。
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