
近年話題のChatGPTやClaude、Geminiといった生成AIには、LLM(大規模言語モデル)という仕組みが用いられています。しかし、このLLMのほかにもSLM(小規模言語モデル)という異なる特性を持ったAIモデルがあることをご存知でしょうか?
専門分野に特化できるSLMは、LLMとは違った価値を提供できるとビジネスの世界で注目を集めています。本記事では、SLMの特徴やLLMとの違い、SLMのメリットやデメリット、具体的な活用事例などを解説します。
目次
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SLMとは?LLMとの違いとその特徴

SLM(Small Language Model)は、特定の分野やタスクに特化することで、効率的に動作するAIモデルです。
ここでは、そのSLMの特徴とLLM(Large Language Model)との違いを比較しながら、それぞれの特徴を詳しく解説します。
| 項目 | SLM(小規模言語モデル) | LLM(大規模言語モデル) |
|---|---|---|
| 主な用途 | 特定の分野に特化 | 幅広いタスクに対応 |
| モデルの大きさ | LLMと比べて小さい(数億〜数十億のパラメータ) | 大きい(数千億〜数兆のパラメータ) |
| 開発コスト | 比較的低い | 高い(膨大なデータが必要) |
| ハルシネーション | 比較的起こりにくい(特定のデータを学習するため) | 起こりやすい(膨大なデータから誤情報も生成しやすい) |
●SLMの特徴
SLM(Small Language Models:小規模言語モデル)は、その名の通り「小規模」なAIモデルです。
LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)が膨大なデータからあらゆる質問やタスクに対応できるように訓練されているのに対し、SLMはLLMに比べて必要なデータ量や計算量が少ないため、必要最低限の情報を覚えた軽量なAIモデルで、特定の目的に向けた知識やスキルだけを覚えさせることが多いのが特徴です。
例えば、SLMを医療分野向けに訓練すれば医療に関する情報には非常に詳しく、それ以外の分野には答えられない、といった具合です。
SLMは、スマートフォンやIoT機器(ネットにつながった家電やデバイス)といったリソースが限られた場所でも動作します。また、大規模言語モデルと比べて必要なデータ量・計算量が少ないので、動作速度が速く、素早い反応が期待できる点も大きなメリットです。
●パラメータ数や性能の違い
SLMとLLMは、パラメータ数というAIの学習規模を示す指標や用途において、大きな違いがあります。
LLMは、大量の情報を学習して多くのデータを扱える巨大なAIモデルです。GPT-4などがその一例で、数十億~数兆もの学習項目(パラメータ)を持ち、さまざまな質問や複雑な文章や幅広い質問の生成にも対応できる巨大なAIモデルです。
そのため学習するデータが多い分、LLMを動作させるには非常に高い計算能力が必要で、インターネットに接続されているクラウド上や高性能なコンピュータ上で動作することがほとんどです。そのため、導入や運用には、それなりのコストがかかり、開発するにはハードルが高いと言えるでしょう。
一方、SLMは特定の分野や用途に特化したコンパクトなAIモデルです。数百万から数億程度のパラメータで構成されるコンパクトなAIモデルです。また、LLMと比較して学習するデータ量が少ないため、スマートフォンやタブレットなどのいったモバイル端末や、オフライン環境でも動作します。
●ハルシネーション率の違い
SLMとLLMはハルシネーション(AIが誤った情報を事実であるかのように回答する現象)の発生しやすさにも違いがあります。
LLMは膨大なデータを学習している分、信頼性の低い情報から誤った回答を生成するリスクが高い傾向にあります。これに対し、SLMは特定のタスクに必要な情報のみを学習するため、LLMと比べてこのリスクが軽減される傾向があります。
こうした特徴から、LLMは汎用的なタスクに、SLMは専門的で正確性が求められる分野で活躍が期待されているのです。専門性が問われる場面や、企業の機密情報を扱う場面では、ハルシネーションの少なさは非常に重要な要素となります。
SLMをビジネスで使うメリット

ニーズに応じてピンポイントな活用ができるSLMは、ビジネスにおいてコスト削減や効率化に大きく貢献します。具体的にどのようなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
●コスト削減と効率性の向上
SLMのメリットは、導入コストを抑えながらも高いパフォーマンスを発揮できる点にあります。
従来、LLMを運用するには多くの計算能力が必要なため、専用の高性能GPUや大規模なインフラが求められていました。そのため、インフラや設備のコストがかさみ、資金的にも管理面でも負担が大きくなることが課題でした。
これに対し、SLMは特定の目的に合わせて必要な知識だけを学習するため、その分計算量が少なくて済みます。そのため、高価な機材には依存しません。一般的なサーバーやクラウド環境でも十分に機能するため、SLMなら大掛かりな設備投資をしなくても、比較的手軽に開発・導入できます。
また、SLMは大規模モデルに比べて学習や実行にかかる時間が短く、トレーニングや応答速度も速いため、業務のレスポンス向上にも役立ちます。このように、SLMはコストを抑えつつ、業務の効率を高める優れた選択肢となるのです。
●特定業務への最適化
SLMは、医療や金融、法律といった専門性が求められる業界のニーズに合わせてカスタマイズしやすいことも大きなメリットです。
医療や金融、法律など専門性が求められる業界では、汎用的なタスクが得意なLLMは不向きです。SLMは、その業界に特化した知識を学習させることで、専門的な業務に対応できる「スペシャリスト」的な役割を果たします。
例えば、医療分野のSLMでは、診療にかかわる用語や症例についての知識を集中的に学習させることで、診断をサポートできます。金融分野のSLMであれば、融資審査やリスク分析など、金融特有の情報をもとに迅速かつ的確な判断を補助することも可能でしょう。
汎用モデルには難しいタスクでも、特定のデータに特化して学習したSLMはパフォーマンスを発揮できる点が強みです。
代表的なSLMモデル3選

近年のAI技術の進化により、多くの企業が独自のSLMを開発し、公開しています。ここでは、ビジネスでの活用が期待されている主なSLMモデルを3つ紹介します。
●Microsoft Phi-3シリーズ
Microsoft Phi-3シリーズは、軽量で高性能なオープンソースのSLMです。特に「Phi-3-mini」は、4B(40億)パラメータという比較的小さなモデルながら、高い性能を発揮します。
これは、高品質な「教科書レベル」のデータセットで学習することで、少ないデータでも高い推論能力を獲得しているためです。
一般的なLLMと比較して低コストかつ高速で動作するため、モバイルデバイスやエッジAIのアプリケーション開発に適しています。
●Google Gemma
Google Gemmaは、Googleが開発したオープンソースのSLMで、LLMである「Gemini」から派生しています。2B(20億)と7B(70億)の2つのモデルサイズがあり、軽量ながらも優れた性能を持っているのが特徴です。
Gemmaは、高い安全性基準に基づいて構築されているため、AI開発の観点からも注目されています。ローカル環境での実行も可能で、研究や商用利用にも幅広く活用できるでしょう。
●Meta Llama 2
Meta Llama 2は、Metaが開発したオープンソースのLLMシリーズです。7B、13B、70Bの3つのモデルサイズが提供されており、特に7Bモデルは、パラメータ数が比較的小さいため、SLMの範疇として扱われることもあります。
大規模なデータセットで学習されており、推論やテキスト生成など、多様なタスクで高いパフォーマンスを発揮するでしょう。特に、対話に特化した「Llama 2-Chat」は、チャットボットやカスタマーサポートへの応用が期待されています。
商用利用も可能であり、カスタマイズの自由度が高い点も魅力です。
SLMの活用方法

SLMは、専門性の高い業界で活用できるAIです。ここでは、SLMの特徴を活かした具体的な活用事例として、医療と金融、製造業界での応用を紹介します。
●医療分野での活用
SLMは、膨大な医療データや専門的な医学論文を扱う際にSLMが役立つと考えられています。医療従事者が多くのデータを素早く分析し、診断の補助として利用できることが期待されているのです。
例えば、患者のカルテや検査結果をもとに、医師が診断する際の参考となる情報を迅速に提供することで、医師の診断支援ツールとして活用できるでしょう。
また、SLMはデータが軽量で処理が速いことから、診断結果を早く提供できることも期待される役割の1つです。病院では緊急の判断を求められる場面も多いため、SLMがあれば診断までの時間が短縮され、医療のスピードアップが見込まれます。
ただし、医療分野でのAI活用には厳格な規制や認証が必要であり、実際の診断は必ず医師が行う必要があるため、あくまで参考程度に留める必要があります。
●金融業界での応用
金融業界におけるSLMの活用は、顧客の膨大な取引履歴や市場動向の分析から、よりパーソナライズされたサービスの提供まで多岐にわたります。SLMは迅速なデータ処理が可能なため、取引履歴や市場の変動データをもとに、顧客ごとに最適な投資アドバイスを提供できます。
例えば、個々の顧客の投資傾向やリスク許容度を分析し、最適な投資戦略を提案することで、より精度の高いリスク管理にもつながります。
●製造業界での応用
製造業界では、製品の品質管理や生産プロセスの最適化にSLMが活用できます。
例えば、製造ラインで取得される膨大なセンサーデータをリアルタイムで分析し、異常の兆候を検知する予知保全システムに応用可能です。これにより、機器の故障を事前に防ぎ、生産停止のリスクを低減できるでしょう。
また、製造工程における不良品の画像を学習させることで、画像認識による自動品質検査を効率化することも可能です。
さらに、複雑なマニュアルや技術資料を学習させたSLMは、作業員向けのAIアシスタントとして、トラブルシューティングや手順の確認をサポートし、作業効率を向上させます。
SLMのデメリットと対策

SLMは業務効率に役立つ一方で、特定の分野に特化しているがゆえの課題も存在します。ここでは、SLMのデメリットとその対策について説明します。
●汎用性が低い
SLMは、特定のタスクや分野に特化して学習したAIです。そのため、メールや資料の作成、会話のデモンストレーションといった日常的な汎用業務には活用できないというデメリットがあります。これは、LLMのように多様な質問や異なるタスクに対応する「汎用性」を重視するモデルとは異なる点です。
そのため、SLMを導入する際には、使用する業務やタスクの要件を事前に明確にし、SLMがその業務に十分に対応できるかを確認することが大切です。日常業務と専門的な業務の両方をどちらも効率化したい場合には、SLMとLLMの両方を用途に合わせて使い分けると良いでしょう。
●データ収集の難しさ
SLMを効果的に運用するには、特定の分野に特化した高品質な学習データを用意して学習させる必要が不可欠です。しかし、医療や金融、法務などの専門性の高い分野では、データの収集や整理自体が難しく、時間やコストがかかるという点がデメリットです。
また、SLMの精度は学習データの質に依存するため、質の低いデータを使用すると、十分なパフォーマンスが発揮できなくなる恐れもあります。
こうしたデータ収集の課題に対処するには、SLMを導入する前に、必要なデータの質と量を確保するための計画を立てることが重要です。
必要なデータが十分でない場合には、外部のデータセットを活用したり、独自に収集したデータを補完的に使用するなどの工夫が役立ちます。また、データの品質を一定に保つためのデータクレンジングや前処理などでデータ整備を行い、性能が低下することを避けましょう。
SLMを選ぶポイントとは?

SLMを導入する際は、自社の業務に適したモデルかどうかを見極めることが大切です。ここでは、SLMを選定する際の重要なポイントについて解説します。
●対応可能なタスクの明確化
SLMを導入する前には、まず自社の業務でどのようなタスクを自動化・効率化したいのかを明確にしましょう。
SLMは、汎用性の高いLLMと異なり、幅広いタスクに対応する柔軟性は持っていません。逆に、特定の分野で高い効率と精度を発揮するため、医療や金融、法律など専門的な業務に対応できるモデルを選ぶことで、業務効率が向上するケースが多いです。
そのため、まず業務で求められる要件やニーズに合わせ、特定分野のタスクに応じたSLMを選定することが大切です。
●導入後のサポート体制
SLMは、導入時に自社の業務に合わせたカスタマイズが必要になる場合が多いため、適切なサポート体制が整っている企業を選定することも大切です。初期設定や業務に合わせたチューニング(独自のデータ学習)がうまくいかないと、SLMの性能を最大限に引き出すのが難しくなるため、迅速にサポートを受けられる企業を選びたいところです。
また、サポート体制には、技術的な支援や定期的なトレーニング、モデルのアップデート対応などが含まれているか確認すると良いでしょう。
例えば、業務内容や市場の変化に応じて、SLMに対するニーズが変わることもあるため、導入後も定期的なアップデートが可能なサポート体制が整っていると、長期的にモデルを有効活用しやすくなります。
加えて、トラブルが発生した際に迅速な対応ができるサポートプランが用意されているかどうかも、選定基準の1つです。企業のニーズに応じて柔軟にサポートしてくれるプランがあるか事前に確認しておくと、導入後の運用がスムーズに進むだけでなく、予期せぬ問題が発生した際も安心して対応できるでしょう。
SLMを活用して効率的なビジネス運用を
SLM(小規模言語モデル)は、特定の分野や用途に特化した軽量なAIモデルで、効率的なデータ処理やコスト削減、業務のスピード向上といったメリットがあります。幅広いタスクに対応できるLLM(大規模言語モデル)とは異なり、SLMは専門的なデータをもとに必要なスキルを持つ「スペシャリストAI」として活躍できるため、医療や金融、法務などの専門分野での活用が期待されています。
一方で、SLMには汎用性が低いことや、データ収集が難しいといった課題もあるため導入に際しては業務ニーズをしっかり見極め、適切なモデル選定とデータの準備が大切です。
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