WBSとは？メリットやシステム開発を成功させるための作成手順を徹底解説

システム開発を円滑に進行させるためには、WBS（Work Breakdown Structure）の導入が重要となることも少なくありません。
中には、「WBSとはどういう言葉？」、「重要性がよくわからない」という人もいるのではないでしょうか。
ここでは、WBSの概要をはじめ、WBSを導入するメリットや実際の作成方法を紹介します。

 

目次

 

 

WBS（Work Breakdown Structure）とは？

システム開発におけるWBSとは、「開発全体の作業内容」を、細かく分解して、構造化する手法です。WBSを用いることで、プロジェクトの進行を効率的に管理できるようになります。

たとえば、「スマホ向けの勤怠アプリ」の開発プロジェクトを打ち立てた場合、「システムの要件定義」、「ユーザーインターフェースを設計」、「プログラミング」などの工程が必要です。これらの作業内容をさらに細かく分解していけば、「プロジェクトを構成するタスクがいくつあるのか」を把握しやすくなります。

WBSでは、これらのタスクを洗い出した後、タスクの担当者や工数などを大まかに決めてスケジュールを練っていくのが特徴です。

作業内容（Work）を

分解（Breakdown）して

構成図（Structure）にする。

上記のような手法で構造化を行うため、これらの頭文字を取って「WBS」と呼ばれています。

 

●WBSの種類

WBSには、プロジェクトの内容や目的に応じていくつかのタイプがあります。主に「プロセス分解型WBS」と「成果物分解型WBS」の2つが代表的です。

このようにWBSは、複雑なプロジェクトを整理し、タスクを管理しやすくするためにおすすめの手法となっています。

 

WBSを導入する目的

WBSをプロジェクトに導入する目的はさまざまです。ここでは、主な5つの目的を詳しく解説します。

 

●作業内容の明確化

WBSにより、プロジェクトの全体像を細分化し、それぞれのタスクの内容をはっきりさせることが可能です。「何をすべきか」が具体的に見えることで、担当者が迷うことなく作業に着手できるようになります。

 

●タスクの抜け漏れ防止

作業を体系的に分解することで、プロジェクトに必要なすべてのタスクを可視化できます。作業内容を階層的に整理するWBSなら、「気づかなかった業務」や「予定外の対応」といった抜け漏れが発生しにくくなるのです。

 

●作業分担と責任の明確化

WBSは、各タスクに担当者を割り当てることで、誰が何を行うかを明確にできます。これにより、責任の所在がはっきりし、チーム内での混乱や作業の偏りが起こりにくくなるのです。

 

●工数・コストの見積り精度向上

タスクごとに工数や必要なリソースを把握できるため、より現実的なスケジュールと予算を立てることができます。作業が細かく分解されているほど、見積もりの精度も上がり、無駄な工数やコストの発生を防げるようになるでしょう。

 

●進捗管理と課題の早期発見

WBSを活用すれば、タスク単位で進捗状況を把握できるようになります。作業の遅れや未着手のタスクが一目でわかるようになるため、問題の早期発見と対応が可能です。

 

WBSを導入するメリット

WBS（Work Breakdown Structure）をプロジェクトに導入することで、チーム全体の作業の流れが明確になり、管理が格段にしやすくなります。 ここでは、WBS導入によって得られる6つの主なメリットについて詳しく解説します。

• プロジェクトの全体像が把握できる

• 作業を分担しやすくなる

• 工数の見積もりがしやすい

• 各作業の関係性が見えやすくなる

• 作業範囲の共通認識ができる

• 進行管理がしやすくなる

 

●プロジェクトの全体像が把握できる

WBSを導入することで、「どんな作業が必要か」、「工数がどれくらいかかりそうか」などの点が明確になります。その結果、プロジェクトの全体像を把握しやすくなるのです。

同時に、必要な作業と不要な作業をあらかじめ可視化できるため、計画段階から効率的なプロジェクト運営を行えるようになります。

 

●作業を分担しやすくなる

作業内容が明確になれば、タスクごとに役割分担がしやすくなります。これによって、それぞれの作業を誰が担当するかを決めることができ、責任の所在もはっきりするため、チーム内の連携や進行管理が円滑になります。

また、プロジェクトの管理者にとっても、各メンバーの負担や進捗状況を把握しやすくなるのは大きなメリットです。

 

●工数の見積もりがしやすい

作業内容や作業する範囲が明確になるため、必要な工数が想定しやすくなります。工数が把握できれば、開発にかかるコストの算出もしやすくなるでしょう。予算管理やリソース配分の精度向上にもつながります。

 

●各作業の関係性が見えやすくなる

WBSによってタスク内容を洗い出していくことで、各作業の関係性が把握しやすくなるのもポイントです。

WBSでは、プロジェクトのゴールからトップダウン式にタスク内容を洗い出していき、それをもとにツリーを作成します。こうすることで、「Aのタスクが終わらないとBのタスクに進めない」、「AのタスクとBのタスクは順序が逆でもOK」などの優先順位が掴みやすくなるのです。

 

●作業範囲の共通認識ができる

必要な作業が明確になっているため、プロジェクトメンバーそれぞれに共通認識が生まれます。共通認識を持つことで「共に1つのプロジェクトを担っている」という一体感が生まれ、チームワーク強化にもつながります。

このほか、「作業範囲が把握できておらず、不要な作業を行ってロスが生まれた」という齟齬も発生しにくくなるでしょう。

 

●進行管理がしやすくなる

WBSを導入することで、各タスクの進捗状況も把握しやすくなります。「どのタスクがどれだけ進んでいるのか」、「どの程度の遅れが発生しているのか」という点が可視化できるため、進行管理がスムーズになるのは大きなメリットです。

また、タスクの遅れを可視化できるため、迅速に対策を練られるのも嬉しいポイントです。

 

システム開発におけるWBSの作り方6ステップ

WBSは、プロジェクトを効率的かつ確実に管理するための重要なツールです。ここでは、システム開発においてWBSを作成するための基本的な手順を、6つのステップに分けて紹介します。

 

●1.プロジェクトゴールの設定

最初に、プロジェクトの最終的なゴールや目的を具体的に定めます。ゴールが曖昧なままだと、その後のタスク分割や進行管理が難しくなるため、「何を達成すべきか」を明確に言語化しましょう。

 

●2.作業内容（タスク）の洗い出し

プロジェクトゴールを決めたら、次はその達成に必要な作業をすべてリストアップします。 システム開発の場合、「要件定義」「基本設計」「詳細設計」「実装」「テスト」など、大まかな工程ごとに分類していくのが効果的です。

 

●3.作業内容を細分化

プロジェクトを構成する「大タスク」を洗い出したら、さらに作業内容を細分化していきます。各大タスクを完了させるためには、どんな作業をする必要があるのかを考えましょう。たとえば内部設計であれば、「出入力の画面設計」、「機能ごとの明確化」などが詳細な作業になります。

 

●4.抽出・分解したタスクの整理

細分化したタスクを論理的に整理し、WBSの形にまとめます。「大タスクA」の下に「小タスクA-1」「小タスクA-2」といったように、階層構造を意識して記載すると、タスク同士の関係性や優先順位が明確になるため、おすすめです。

 

●5.タスクの作業時間を見積もる

タスク内容がWBS形式にまとまったら、タスクごとの必要工数を見積もりましょう。この段階ではタスクの優先順位や因果関係が明確になっているため、「どのタスクにどれぐらいの工数をかけるべきか」という点を適切に判断することができます。

 

●6.担当者を明確化する

WBSの図が完成したら、タスクの担当者を割り振っていきます。具体的な担当を定めておくことで、責任の所在がはっきりし、進捗管理もスムーズになります。

「できる人がその都度やる」という曖昧な決め方だと、最終的に責任の所在や進捗管理も曖昧になってしまうので注意が必要です。

以上の手順を踏むことで、晴れてWBSが完成します。必要に応じて、タスクをさらに細分化しても構いません。このほか、管理をしやすくする目的で、タスクごとに「費用」や「進捗状況」などの新たな項目を追加したりするのも良いでしょう。

 

WBSを作成する時のポイントと注意点

WBSを効果的に作成するためには、手順の理解だけでなく、実際の運用において意識すべきポイントを押さえることが重要です。ここでは、WBS作成時に覚えておきたい要点を具体的に紹介します。

 

●プロジェクトに関わる作業は全部洗い出す

大前提として、プロジェクトに必要な作業は全部洗い出しましょう。たとえばシステム開発の場合、「データ移行」、「旧データの削除」といった、見落としがちな業務も忘れずにリストアップしましょう。 後から想定外の工数が発生しないように、過去の類似プロジェクトを参考にしたり、チームメンバー全員でタスク抽出をしたりして、洗い出しに注力しましょう。

 

●タスクの順序や時系列を意識する

混乱を避けるため、作業内容はできるだけ時系列別に並べましょう。

作業内容の中には、「次のタスクへ進めるために必要な作業」と「順序が変わっても問題ない作業」があります。これらの順序関係をしっかり把握していないと、作業時の混乱や抜け漏れにつながるため注意が必要です。

 

●階層は増やし過ぎない

WBSでタスクを掘り下げれば掘り下げるほど、階層が増えていきます。タスク内容を詳細に深堀りしていくことは大切ですが、階層を増やし過ぎると、スケジュールの構造が複雑化しやすくなり、管理の負担も増えてしまいます。

また、万が一トラブルが発生した際にスケジュール調整が難しくなってしまうので、タスクの階層は目安として3～4階層までに留めましょう。

 

●チーム全体で認識を合わせて作成する

WBSは担当者や関係者全員の共通の認識のもとで作成することが重要です。個人の判断だけで進めるのではなく、定期的にチームで内容を確認し、意見を集めながら更新しましょう。これにより、後になって「認識のズレ」によるミスや混乱を防ぎやすくなります。

 

●過去の類似プロジェクトを参考にする

WBSを初めて作成する場合や、新しい分野のプロジェクトで悩んだ際は、過去に実施した類似プロジェクトのWBSや進行記録を参考にすると効率的です。 これにより、抜けやすいタスクや問題になりやすい工程を事前に把握しやすいというメリットもあります。

 

●マイルストーンを設定する

WBSを作成する際は、重要な区切りごとにマイルストーン（節目となる目標時点）を設定すると管理がしやすくなります。 マイルストーンを設けておけば、進捗状況の確認や、問題発見・修正のタイミングも的確につかめるようになり、プロジェクト全体のコントロールにもつながるでしょう。

 

WBS作成をサポートするツール

最後に、Excelやマインドマップ、ガントチャートなど「WBS作成に役立つツール」をご紹介します。上手に活用することで、WBS作成の負担を軽減しやすくなるでしょう。

 

● Microsoft Excel

表計算ソフトとして高い認知度を誇るMicrosoft Excel（エクセル）ですが、WBSに使用できるテンプレートも用意されています。テンプレートを導入したうえで、プロジェクトの内容やタスク数に応じて使いやすいようカスタマイズするのがおすすめです。

ただし、Excelはリアルタイムでの進捗確認や複数人での共有には向いていません。Excelのテンプレートは、あくまでラフやベースをメモするものとして活用すると良いでしょう。

 

●マインドマップ

マインドマップとは、アイデアや作業内容など大まかなテーマを書き出し、その周辺に関連事項を書き連ねていく図です。マインドマップを作成することで、アイデアや作業内容同士の因果関係が掴みやすくなります。加えて、思いつくままに作業内容を書き出すことで、頭の中を整理できるのもポイントです。

 

●ガントチャート

ガントチャートとは、タスクの期間や作業担当者の割り当てなどを書き表した表を指します。縦棒グラフと横棒グラフを使用するのが特徴です。縦軸にはタスク内容、横軸には日付（日程）を書き記し、棒グラフの動きによってプロジェクトの進捗状況を視覚的に把握しやすくなります。WBSで作業内容を抽出・分解したら、ガントチャートを合わせて作成してスケジュールを管理すると良いでしょう。

今回は、WBSの概要と導入するメリット、実際の作成方法を詳しく紹介しました。システム開発に限らず、ビジネスのプロジェクトは規模が大きくなるほど、タスク内容も比例して複雑化します。明確なゴールを把握することはもちろん、抜け漏れを防いで確実な成果物を仕上げるためにもWBSは役立つ手法なのです。

 

システム開発の最適な発注先をスムーズに見つける方法

システム開発会社選びでお困りではありませんか？
日本最大級のシステム開発会社ポータルサイト「発注ナビ」は、実績豊富なエキスパートが貴社に寄り添った最適な開発会社選びを徹底的にサポートいたします。
ご紹介実績：27,000件（2025年9月現在）

外注先探しはビジネスの今後を左右する重要な任務です。しかし、

「なにを基準に探せば良いのか分からない…。」
「自社にあった外注先ってどこだろう…？」
「費用感が不安…。」

などなど、疑問や悩みが尽きない事が多いです。
発注ナビは、貴社の悩みに寄り添い、最適な外注探し選びのベストパートナーです。
本記事に掲載するシステム会社以外にも、最適な開発会社がご紹介可能です！
ご相談からご紹介までは完全無料。
まずはお気軽に、ご相談ください。 →詳しくはこちら

 

 

■システム開発に関連した記事