近年、私たちの生活のあらゆる場面でAI（人工知能）が活躍していますが、その波は農業にも及んでいます。農業と聞くと、手作業や熟練の経験が重要と考えがちですが、AIの活用で農業が大きく変わろうとしているのをご存知でしょうか。高齢化や労働力不足、そして気候変動による自然災害といった農業が抱える深刻な問題にAIがどう活用されているかが注目を集めています。本記事では、AIが農業にどのように役立つのか、具体的な事例と併せて解説します。
目次
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AIを活用した農業の進展とその重要性
日本の農業は、いくつかの大きな課題に直面しています。まず、2022年時点で基幹的農業従事者の平均年齢が68歳（※1）を超えているほか、若い世代の後継者が不足しており、農家の高齢化は深刻な問題となっています。その結果、農作業の負担が増し、農業の継続が困難になっています。気候変動による異常気象や自然災害が頻発し、農作物への被害が増加していることも課題です。
また、農村地域では都市部への人口流出による労働力不足も進んでいます。さらに、日本の食糧自給率は生産額ベースだと61％、カロリーベースでは38%にまで低下（※2）しており、国内の安定した食糧生産がますます重要になっています。
こうした複雑な問題を解決するために、AIの導入が注目を集めています。AIを活用することで、農作業の効率化や自動化が進み、労働力不足を補えます。気象データや作物の生育状況を分析することで、自然災害や気候変動に対する予測や対策の強化にもつながるでしょう。
また、政府もこのようなAIやIoT技術を用いた「スマート農業」の導入を推進しています。今後、AIを活用した農業の重要性はさらに増していくでしょう。
参照元：※1 出典：農林水産省│スマート農業をめぐる情勢について
AIを農業に活用した具体例
AI技術は、自動収穫や病害予測、収穫量の予測といった具体例を通じて、農業に新たな可能性をもたらしています。ここでは、AI農業の事例を紹介します。
●1. 自動収穫ロボットの導入
AGRIST株式会社が開発した自動収穫ロボット「L」は、ピーマンの収穫作業で活躍しています。このロボットは天井から吊り下げて使用します。天井から、ピーマンをAIで検出して適切なタイミングで収穫。手作業による収穫は、人間の目で果実を1つずつ確認したうえで、ハサミを用いて実を傷つけないように気を配りながら行わなくてはいけません。対して「L」は、カメラを用いて果実の位置や大きさを瞬時に把握し、自動で収穫を行います。
人間に変わってロボットが収穫するため、人手不足の課題解決につながります。また、農業の担い手を育成する時間も短縮でき、不注意によって果実を傷つけるリスクも低減するでしょう。AIを活用した自動収穫技術は、今後の農業の効率化に大きな影響を与えると期待されています。
参照元：AGRIST株式会社│【製品紹介】吊り下げ式ピーマン自動収穫ロボット「L」
●2. 病害予測システム
バイエル クロップサイエンス株式会社が提供する「プランテクト®」は、病害予測機能を搭載したモニタリングサービスです。温度や湿度、二酸化炭素などを測定するプランテクト®をハウス内に吊るして使用します。AIが野菜の病気の感染リスクを予測して、農薬散布の目安にするためのシステムです。農薬の使用を最小限に抑えながら作物の品質を維持できる点が農業経営にとって大きなメリットです。これまで経験に頼っていた病害予防をデータに基づいて行えるため、農薬の使用を最小限に抑え、コストの削減も可能になります。
参照元：バイエル クロップサイエンス株式会社│プランテクト®とは
●3. 圃場管理と収穫量予測
クレバアグリ株式会社が提供する圃場管理システムは、IoTセンサーを活用して圃場の状態をリアルタイムでモニタリングし、収穫量を予測するAIシステムです。土壌の状態や気象データをセンサーが収集し、そのデータをAIが解析して、作物の成長を最適化します。農業従事者は正確な収穫時期を見極め、適切なタイミングで収穫作業を行うことが可能です。さらに、データに基づいた作業計画を立てることで、無駄を減らし、収穫量を安定させられます。収穫予測の精度が高まることで、費用対効果が高まり、農業経営のリスクが減るでしょう。
参照元：クレバアグリ株式会社│IoT＋AIによる農業の専門家のための農業クラウド
AIを農業に導入するメリット
農業にAIを取り入れることで、従来の作業が大きく変わると期待されています。ここでは、具体的なメリットについて見ていきましょう。
●1. 作業効率の向上
農業では、種まきや灌漑、収穫など、様々な作業が必要です。特に収穫はタイミングが重要で、遅れると作物の品質が低下します。AIを活用すると、気象データや土壌の状態を分析し、収穫時期を経験の少ない若手でも予測できます。適切なタイミングで収穫することで、品質を維持しながら効率的に作業を進められるため、大きなメリットと言えるでしょう。
また、AIはドローンやセンサーと連携できるのも強みです。農地の状況をリアルタイムで監視し、必要な対応を自動的に提案してくれます。結果として、病害虫の発生予測や水分管理などの精度が向上するでしょう。作業効率があがることで、人手不足の解消にもつながります。
●2. コスト削減
農薬や肥料の費用は、農業経営において大きな負担です。AIは作物の成長や天候を詳細に分析し、必要な分だけ農薬や肥料を使うことで、無駄を減らしコストを抑える手助けをします。
また、自動収穫システムを導入すれば、収穫作業に必要な人手も削減できるのもメリットです。自動収穫システムは昼夜を問わず稼働するため、労働コストを削減し、収穫時の労働力不足の問題を解決するでしょう。
●3. 品質管理の向上
作物の品質は、消費者の信頼や市場での競争力を左右する重要な要素です。AIは作物の成長を常に監視し、適切な生育環境を維持するための調整を行います。例えば、センサーが土壌の水分や栄養素のバランスをチェックしてAIが自動で灌漑や施肥を行うことで、品質のばらつきを抑えるといったことが可能です。
また、AIは病害虫の早期発見にも効果的です。異常が発生した際には迅速に対応策を提案してくれるだけでなく、適切なタイミングで農薬を散布することで被害を最小限に抑えられます。
AI農業の導入に伴う課題と対策
AI技術の導入は多くのメリットをもたらしますが、同時にいくつかの課題も存在します。ここでは、導入時に直面する主な課題と、その対策について解説します。
●1. 導入コストの課題
AI農業の導入には、特に小規模農家にとって負担となる高額な機器やシステムの購入が必要です。そのため、初期コストが大きな壁となり、多くの農家がその費用をまかなうことに困難を感じています。
加えて、初期費用だけでなく、システムの維持費やメンテナンス費用もかかります。これらの費用が農業経営に与える影響は無視できません。
こうした課題に対して、政府や自治体が用意している補助金や助成金を活用する方法があります。初期投資を抑えることで、導入のハードルが下がるでしょう。
さらに、一部の地域では、農機具や技術を共有する仕組みを活用して、コストを分散させる取り組みも進められています。コスト面での課題はありますが、適切な支援を利用することでスムーズに導入できます。
●2. 技術習得の必要性
AIを農業に導入する際、使う側には新しいシステムの操作に慣れなければいけません。しかし、これまでITやAIに触れてこなかった方にとって、新しい技術を使いこなすのは不安や難しさを感じる場面があるでしょう。
このような課題を解決するために、AI導入時にはしっかりとしたトレーニングやサポート体制が不可欠です。例えば、AIの基礎を学ぶセミナーや、実際にシステムを操作しながら学べる研修を用意すると良いでしょう。
また、使いやすさを重視したAIシステムを選ぶことも重要なポイントです。操作が直感的であれば、技術的な知識が限られていても問題なく利用できるため、導入後の負担を減らせます。さらに、導入後も定期的なサポートを受けられる環境が整っていることで、万が一のトラブルにも迅速に対応できる安心感があります。
農業で使うAIのシステム開発を外注するという選択も検討
農業にAIの導入を検討する際、外注という選択肢も有力です。外注するメリットについて説明します。
●1. 専門的な技術力の活用
AIシステムの開発には高度な専門知識が求められます。AIが農業の現場で効果を発揮するためには、システムの設計やプログラミング、データ解析など、専門的なスキルが必要です。しかし、すべての農業経営者がこれらの技術を習得することは現実的ではありません。
そこで、AI技術に精通した外部の専門業者に依頼することが選択肢となります。専門業者は、農業分野に特化した技術やノウハウを持ち、多くのプロジェクトで蓄積した経験を活かして、精度の高いシステムを開発します。
こうした専門家の力を借りることで、農業経営者はAIの最新技術を迅速に導入し、システムの運用に関する不安を軽減できます。さらに、外注先の業者はシステム導入後のサポート体制も整えており、技術的なトラブルが発生した際にも迅速に対応してもらえるため、安心してシステムを運用できます。
●2. コストとリソースの最適化
AIシステムを自社で開発しようとすると、開発に必要な人材を確保し、教育するための時間とコストがかかります。特に中小規模の農業経営者にとっては、こうした負担は大きく、ほかの重要な業務にリソースを割くことが難しくなるかもしれません。
しかし、外注という選択をすることで、コストとリソースを最適化できます。専門業者に依頼することで、自社での大規模な設備投資や教育コストを削減できるだけでなく、限られたリソースをより重要な作業に集中できます。
また、外注によってシステム開発のスケジュール管理が効率化され、希望する納期に遅れることなく開発が完了できるでしょう。
●3. サポート体制の充実
AIシステムを安定して稼働させ続けるためには、導入後に定期的なメンテナンスと技術進展に応じたアップデートが不可欠です。外注先の業者は、導入後もシステムの保守や更新を行い、不具合が発生した際には迅速に対応できるサポート体制を整えています。そのため、農業従事者は農作業に集中できるのです。
また、新しい技術や農業現場のニーズに応じたアップデートもスムーズに行われるため、システムを新しいバージョンにすることも任せられます。
AIを活用した農業で生産性を向上させる
AIが農業にも積極的に取り入れられるようになり、従来の手作業では難しかった効率化が進んでいます。事例にもあったように、AIによる病害予測システムや圃場管理システムを使うことで、農作業全体の管理がより精密になり、作物の品質も安定につながるといったメリットがあります。
しかし、新しい技術を導入するとなると、「本当に自分の農場でもうまくいくのだろうか？」と不安に感じることもあるでしょう。特に、技術に詳しくない場合や、導入コストが気になる場合は、なおさら悩むことが多いかもしれません。それなら、発注ナビにぜひお問い合わせください。
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