広い事業にAIが活用されるようになった現代、自社の作業効率やサービス品質向上のためにAIを取り入れる企業が増えています。そんなAIシステムを支えているのがAIエンジニアです。システムの多様化に伴い変化する、AIエンジニアの業務領域や求められるスキル、給与相場などをまとめました。
目次
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AIエンジニアとはどのような職種か
AIエンジニアは、AI(人工知能)を活用したシステム開発や研究を主に手掛けるエンジニアです。機械学習やディープラーニングといった技術を用いて、さまざまなデータを状況に応じて扱いながら目的に合ったAIモデルを構築するのが仕事です。
近年、顔認証や疾患の画像診断、自動運転など、幅広い領域に応用されているAI。扱う側のエンジニアに求められるスキルも幅広く複雑化しています。関連技術は日々急激に進化しているため、常に新しい情報の確認や勉強が必須。Web上で公開される関連論文に目を通したり、大学・研究機関の研究者と意見交換したりするなど、日々の研鑽が仕事のクオリティにつながります。
具体的な業務内容としてはAI開発、学習、分析の3つが主軸です。
●業務内容1:AI開発
AI開発は、解決したいビジネス課題に合わせ、適切なAIモデルを用いたシステムを構築する作業です。AIエンジニアにとってメインの作業となるのがこのAI開発になります。
システム処理や実装、テストを進め、期待とおり動作するように調整。AIは、どの分野や領域にも万能な訳ではないため、AIの導入は適切なのか、どの領域でAIを活用していくのか、といった検討も重要な仕事です。AI導入で最終目的となるリスクの低減化、作業効率の向上を達成できるかどうかを考えながら開発を進めます。
また、音声認識や画像認識といった機能を装備したAIを作る際には、ユーザーやデバイスとの相性も考える必要があります。単にAIを用いたシステムを開発するだけでなく、使用される状況や環境に合った開発もAIエンジニアの役割です。
●業務内容2:学習
AI開発後はデータを入れて精度を高める「学習」のステップへ進みます。AIの判断精度を高めるには、たくさんのデータを与え”正解”を教える「学習」の作業が欠かせません。
例えば、画像認識で犬を認識させる場合を考えてみましょう。柴犬の画像を犬だと教えただけでは、ほかの犬の画像を認識できません。何百種類の犬の画像を読み込ませ、これら全てが犬だと学習させることで、AIが犬の特徴を学習し、ハスキーやプードルも犬として認識できるようになるのです。
AIに学習させるデータを集めたり、作成したりするのは、AIエンジニアが担当するのが一般的です。データの質と量はAIモデルの性能に直結するため、データ管理はAIエンジニアの実力が試される場といえます。また不要なデータを削除するクレンジング作業もAIエンジニアが担当するケースがほとんどです。
●業務内容3:分析
AIシステムの性能が整ったら、実際にビジネスプロセスに組み込み、運用していく中で課題解決が叶えられているかを確認します。AIが抽出したパターンのデータを基にして、さらに解析したい音声や文章、画像といったデータをAIに分析させます。動作を確認して問題が発生した場合は迅速に対処。更新や改善を繰り返してシステムの精度を高めていきます。安定して利用できたり、拡張性を保ったりするためのメンテナンス計画を立てることも、AIエンジニアの仕事の一つです。
AIエンジニアに求められる4つのスキル
AIエンジニアはAIの専門家。システムを動かすプログラミング技術や機械学習の知識、システムで活用されている数学的な知見、データベース運用に関する知識など、幅広いスキルが求められます。代表的な4つのスキルを紹介します。
●プログラミングスキル
AIモデルの開発にはプログラミング言語を使用するため、プログラミング言語の知識やコーディングスキルが欠かせません。よく利用されるのはPythonやJavaScript、Julia、C++などです。特にPythonはAI開発やデータ解析で広く利用されているため、最低限備えておくべきスキルといえます。そのほかにも、統計解析と相性の良いR言語、Webシステムとの親和性が高いJavaScript、データ処理速度が速いC++などそれぞれのプログラミング言語には特性があります。開発したいAIモデルの特徴に合わせて学んでおくと便利です。複数のプログラミング言語をマスターすれば、柔軟なAIモデルの開発に役立ちます。
●機械学習の知識
機械学習とはデータ解析技術のことで、大量のデータを読み込ませたコンピューターが自動的にデータのルールやパターンを発見し、未知のデータに対しても分類や判断ができるようになることを指します。AIの一部にはこの技術が用いられているため、データの中から正解と一致するものを探す仕組みや数値を基に答えを導く方法、データ解析や統計理論の知識・スキルを持っておくことが大切です。また分野によっては、学習データを必要とせずコンピューター自身が試行錯誤しながら判断精度を高める「強化学習」についての知識も必要になります。
●数学的な知見
AIのプログラムは数学の理論を基に作られているため、数学的知識も必要です。今は便利な機能が増えていて、よく使用するコードや機能がまとめられているライブラリを使用すれば、中身が理解できなくてもAIモデルの作成自体は難しくありません。しかし、直面しているビジネス課題に合わせた柔軟なAIモデルを開発するためには、出来合いのライブラリばかりでは対応できない場面も増えてきます。トラブルがあった時にすぐ対処するためにも、確率論や微分積分、線形代数といったAIプログラムの基礎になる分野への理解は必要です。統計学や確率論といった数学的知識への理解は、AI開発だけでなくデータ解析にも活用できます。
●データベース運用に関する知識
AIモデルの精度を高める過程でビックデータを活用するため、データベース運用に関する知識や技術も大切になります。具体的にはデータベースの定義や操作、制御するために利用する言語など。特にSQLは広く普及しているデータベース言語なので、活用できるスキルや知見は必須です。
AIエンジニアの給与事情と採用時のポイント
AIエンジニアは業務の幅や必要なスキルが多岐にわたるため、採用の際にはその点を踏まえて必要な人材を明確化し、見極める必要があります。また需要の増加に伴い給与相場も平均より高めなため、かけられる採用コストとのバランスも考慮する必要があります。
●スキルの評価項目を明確にする
AIエンジニアが手掛けるAI開発やその運用のためには、プログラミング言語スキル、機械学習やディープラーニングに関する知識、数学的知識などさまざまなスキルが必要です。業務範囲によってはコミュニケーションスキルやマネジメントスキルが求められることもあります。また、それぞれのスキルがどの程度重要になるかはAIエンジニアにどのように活躍して欲しいかによって異なります。
採用の際には自社に必要なエンジニア像を明らかにし、評価すべきスキルを整理しておきましょう。理想の人物像を設定し、人事部内で共有することで採用のミスマッチを防げます。求めるプログラミングレベルやツールのスキルレベルを明確にして募集要項に記載すれば、採用企業側と応募者間の齟齬を防げます。
AIエンジニアは人気の高い職種ゆえ、転職希望者は複数の応募先を同時に検討していることがほとんどです。評価項目や評価方法の明確化は選考プロセスの最適化につながり、レスポンスの遅さで人材を逃すリスクの防止にもなります。また人事担当者が技術面を評価することが難しければ、現場のエンジニアやつながりのあるエンジニアの力を借りることで質の高い採用に近づきます。
●AIエンジニアとしての実績をチェックする
即戦力で活躍してくれるAIエンジニアを採用したいなら、実務経験やその実績を確認しましょう。「これまでどのような開発案件に携わってきたか」「どのような業務を担当したことがあるか」などを具体的に確認します。守秘義務を踏まえたうえでポートフォリオを提出してもらうのも有効です。求めているシステムと同等の物を開発した経験の有無や、仕事への取り組み方が企業の目指す形と合っているかどうかを確認して、ビジネス課題の解決が実現できるかを見極めましょう。具体的なスキルを確認することで、算出できるコストとのバランスや期待できる生産性向上の幅を見極める材料にもなります。
また、AIエンジニアといっても、その業務範囲は企業によって大きく異なるケースがあります。必要なスキルを持っていたり、AIモデルの開発経験があったりするだけでは、理想の人物像とズレていることがあるので、ポートフォリオで細かな業務実績を確認するようにしてください。
●給与相場や採用コストを考慮する
厚生労働省の統計によると、AIエンジニアの平均年収は558.3万円(令和5年時点)。AI分野の発展に伴いAI人材の需要が増えており、給与を高く設定する企業が増えています。採用する際は平均年収を踏まえた給与設定をし、採用コストとの費用対効果を考慮しましょう。AIエンジニアの平均年収はレベルごとに以下のようにまとめられます。
レベル | 年収 |
---|---|
ITSSレベル1~2 ※実務未経験者/一定範囲の作業であれば独力で担当できるスキルレベル |
420~620万円 |
ITSSレベル3 ※要求された作業を全て独力で担当、遂行できるレベル |
450~700万円 |
ITSSレベル4 ※自らのスキルを活用し、独力で業務上の課題の発見と解決をリードできるレベル(高度IT人材) |
500~780万円 |
参照元:Jobtag|AIエンジニア
業務の幅やスキルの幅が広いほど給与は高い傾向にあります。転職を考えているAIエンジニアは、今よりも高い給与を求めているケースが多いため、良い人材を確保するには給与設定に配慮が必要です。以前の会社での給与を確認し、仕事内容や役職の違いを含めながらエンジニアと人事採用者側、双方ですり合わせることで有益な採用につながります。
AIエンジニアと類似する職種との違い
近年はAIやコンピューターを扱う場面が増え、AIエンジニアをはじめとするAIやコンピューターの専門職も業務の幅や種類が多岐にわたっています。機械学習エンジニアやデータサイエンティストなど、AIエンジニアに類似したエンジニア職の特徴を紹介します。
●機械学習エンジニア
AI技術の中でも機械学習に特化しているエンジニアを指します。開発や実装など、プログラミング分野が主な業務領域。機械学習の領域において、サービス開発や設計、分析、運用、保守を担当します。AIエンジニアはAI分野の全般を担当するのに対し、機械学習エンジニアはAI開発分野の一部を担当するのが大きな違いです。
ただし、定義の仕方によっては機械学習エンジニアをAIエンジニアと呼ぶケースもあります。また、会社によってはAI研究に携わる方をAIエンジニア、開発を担当する方を機械学習エンジニアと区別しているケースもあります。
●データサイエンティスト
データサイエンティストはビジネス課題の解決をデータ分析によってサポートする職業です。アルゴリズムや統計を活用してデータ分析を行い、大量のデータから規則性や関連性を抽出。そこから企業にとって役立つ情報を提供し、成果や課題解決につながる提案を行います。システムを開発・運用していくAIエンジニアに比べ、データサイエンティストはコンサルティング要素が強め。扱う領域もAIに留まらず、統計モデルや機械学習アルゴリズムなどさまざまで、研究者や統計学者に近い作業も業務に含まれます。
統計を活用したり、データを扱ったり、という点ではAIエンジニアとも似た部分がありますが、扱うシステムや業務の性質で違いがあります。
●データエンジニア
データエンジニアはデータの収集や整理、管理にかかわるITエンジニアです。主な業務内容は、データの「収集」「蓄積」「加工」「分析」を目的としたシステムを開発すること。収集から分析までをスムーズに行えるよう、基盤を設計・構築します。特にビックデータ(全体の把握が困難な巨大データ)を扱うためには、データを効率良く抽出・収集できる基盤づくりが欠かせないため、需要が高まっている職業です。
開発分野を扱う職業である点やデータを扱う点ではAIエンジニアとも共通しますが、データエンジニアはあくまでデータを扱うための基盤づくりを行う領域に限定される点で違いがあります。
需要の増加でAIエンジニアの人材確保がさらに困難に
電話の自動応答や検品、研修のトレーニングなど、AIを活用して事業展開している企業は増えています。大量のデータを高精度・高速に処理できるAIは、今後もさまざまな場面で応用されていきます。それに伴いAIエンジニアの需要も増えるため、今後さらに人材確保が難しくなる可能性があります。評価制度の整備や採用コストの捻出を行い本格的にAIエンジニアの採用に力を入れるのも良いですが、AIシステムの構築を目的とするのであれば、はじめから外注するのも一つの手です。
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