さまざまな分野での活躍が期待されているAI技術ですが、OCRにも活用されています。従来のOCRにAI技術を組み合わせたのがAI-OCRで、これまで手作業で行っていた入力業務の効率化を図れるツールとして注目度が高まっています。AI-OCRの導入を検討しているご担当者様に向けて、そもそもOCRとはどういった技術なのかをはじめ、OCRにAI技術を活用することによるメリットやAI-OCRの種類、自社に合ったAI-OCRの選び方などについて解説。
目次
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AI-OCRとはどのような技術か
そもそもOCR(光学的文字認識)とは読み込んだ画像に含まれる文字をテキストデータに変換する技術のことで、OCRの仕組みやサービスにAI技術を取り入れたものが、AI-OCRです。海外ではAI-OCRではなく、ICR(Intelligent Character Recognition)と呼ばれることもあります。
AIの機械学習機能や深層学習機能をOCRに応用することで、OCRでは認識が難しい文字でも識別しやすくなるのがAI-OCRの強みです。また、文字認識率を高められるだけでなく、AIが変換したテキストデータの意味を理解し、文脈に合わせた処理を行えるといったメリットもあります。
AI-OCRでも識別できる文字に限界はあるものの、文書のデジタル化やデータ入力作業の自動化を行えるようになり、業務の効率化や文字認識の精度向上につなげられます。
●AI-OCRが文字を認識するまでの流れ
AI-OCRが文字を認識する仕組みは、以下の3ステップで構成されています。
1. 前処理 | 対象の文書画像に対してノイズ除去や画像の二値化、補正などを行い、認識精度を高める |
2. 特徴の抽出 | AIの深層学習機能によって対象の文書画像の特徴を抽出する |
3. 文字認識 | 抽出した特徴をもとに再帰型ニューラルネットワーク(RNN)や長・短期記憶(LSTM)モデルが働いて、文字や単語を認識する |
●AI-OCRと従来のOCRの違い
AI-OCRと従来のOCRの大きな違いは、AI技術が搭載されているかどうかです。
AIが搭載されていない従来のOCRだと手書き文字の認識率が高くなく、特に複雑なパーツで構成されている漢字やひらがな、カタカナは認識しにくいのが難点でした。紙帳票からの入力作業の効率化を図りたくてもできない状況を解決しようと、従来のOCRにAI技術を搭載したのがAI-OCRです。
AIの深層学習機能によって手書き文字の読み取り精度が向上し、複雑な文字でも認識ができるようになりました。
AI-OCRの種類
AI-OCRの種類は、主に「汎用・定型フォーマット型」「汎用・非定型フォーマット型」「業務特化・非定型フォーマット型」の3つです。種類によってメリット・デメリットが異なるほか、得意とする帳票も変わってきます。自社に合ったAI-OCRを導入するためにも、それぞれの種類の特徴について把握しておきましょう。
●汎用・定型フォーマット型
汎用・定型フォーマット型は事前に対象となる帳票のフォーマットを定義し、「どこに何が書かれているのか」を指定して情報を抽出するタイプのAI-OCRです。
フォーマットの定義作業を手動で行う必要があるので事前準備に時間はかかるものの、定義さえすれば幅広い帳票に対応できるのが強みです。抽出精度も高く、アンケートや注文書などといった書くことや、場所が決まっている帳票の読み取りに適しています。また、同一フォーマットの帳票を大量にデータ化したい場合にも汎用・定型フォーマット型が有効です。
汎用・定型フォーマット型のデメリットとしては、フォーマット定義を行った帳票しか読み取れないほか、フォーマットの種類が増えるたびに定義作業が必要になる点が挙げられます。
●汎用・非定型フォーマット型
汎用・非定型フォーマット型は定型フォーマット型と違い、事前にフォーマット定義を行う必要はありません。手作業によるフォーマット定義の手間をかけずに幅広い帳票に対応できるのが強みですが、抽出精度を高めるにはAIの事前学習が必須です。事前学習を行っていないフォーマットを使用した帳票だと、読み取り精度が低くなる傾向があります。ただし、抽出精度を高めようとAIの事前学習を行うにしても、時間がかかるのが難点です。
データ化したい帳票の種類が多い、または納品書や請求書などのフォーマットは異なっても書いてあることがある程度共通している帳票を読み取りたい場合に適しています。
●業務特化・非定型フォーマット型
業務特化・非定型フォーマット型は、自社の特定業務で扱う帳票に利用するAI-OCRです。AIの学習はサービス提供事業者側が事前に済ませるため、利用者側でAIの事前学習を行う必要はありません。手軽に利用できるほか、帳票の内容を読み取るのに加え、データの意味付けを行うことも可能。既存システムとも連携させやすく、業務効率化を図れるのが業務特化・非定型フォーマット型のメリットです。
業務特化型のタイプなので決まった業務の帳票にしか対応できませんが、大量の作業が必要となる特定業務への導入に適しています。
AI-OCRを導入するメリット
AI-OCRは、業務の効率化に大きく貢献するツールです。業務の効率化につながる具体的なポイントとしては、「読み取り精度の高さ」「外部システムとの連携」「幅広いフォーマットの帳票への対応」の3つ。それぞれのメリットについて詳しく解説します。
●従来のOCRよりも精度が高い
AIを搭載していない従来のOCRだと、事前に設定されたロジックの範囲内でしか文字の識別ができないという課題がありました。一方で、AI技術を活用したAI-OCRの場合は読み取った文字がデータとして蓄積され、AIが学習を繰り返すことで文字認識率を少しずつ高めることが可能です。
1回目の識別で文字を誤認したとしても、AIが読み間違えた結果を学習することによって、学習の成果が次回以降の文字認識に反映されるようになります。読み取りと学習の作業を繰り返して多くのデータを取り込むことで、文字識別の精度が向上し、従来のOCRでは難しかった手書き文字への対応も行いやすくなります。
●ツールによっては外部システムと連携させられる
紙の請求書に記載された情報を業務システムに入力する際、OCRを活用すれば入力作業を効率化できます。ただ、従来のOCRだと、決められたフォーマットの帳票しか利用できないため、使用する帳票の種類ごとに用意しなくてはいけません。また、業務システムに入力するにあたって請求書に書かれている情報の意味付けや部門・科目などの仕訳を手動で行わなければならず、準備作業や入力作業に大幅な時間を費やしていました。
AI-OCRであれば基幹システムやRPAシステムと連携できるツールも登場しており、読み取った情報を自動的に項目分けしたり、業務システムの入力に必要な情報を抽出・生成したりすることが可能。AI-OCRツールの中には、帳票のレイアウトやキーワードなどを、事前に設定した情報をもとにして、任意の項目だけを抽出できる機能もあります。この機能を使うことで、「発行日」や「支払期日」といったキーワードで情報を検索できます。
また、RPAシステムとの連携によって紙帳票からデータを抽出し、これまで手動で行っていたデータの入力や集計、加工、出力といった業務を自動化できるのもAI-OCRの強みです。一連の業務の自動化によって、入力作業の効率化に大きく貢献できます。
●異なるフォーマットの帳票にも対応できる
従来のOCRの場合、文字の読み取りには、位置や項目などを事前に細かく定義し、調整しなくてはなりませんでした。
AI-OCRを使えば文字の読み取り位置や項目を自動抽出できるため、紙の資料をスキャンするだけで手軽に文字を認識させることが可能です。請求書や発注書、納品書などといった異なるフォーマットでも問題なく抽出できるため、効率化や担当者の負担軽減につながります。
AI-OCR導入時のポイント
AI-OCRをスムーズに導入するために押さえておきたい、導入までの6つのステップやツールの選び方について解説します。
●AI-OCRを導入するまでのステップ
導入のステップは、以下の流れに沿っていることが一般的です。
- 読み取り対象となる帳票や業務内容の洗い出し
- 読み取り量を把握
- 出力フォーマットをはじめとするアウトプット先を選定
- 各AI-OCRサービスを比較
- PoC検証
- 本格導入
自社に合ったAI-OCRを導入するには、読み取り対象となる帳票や業務内容を洗い出し、そのうえで帳票の特徴や課題に応じた製品をピックアップします。次に読み取り量や枚数を把握し、ピックアップした製品の料金体系を確認しましょう。そのほかにも、出力フォーマットやほかシステムとの連携といったアウトプット先を検討します。さまざまな企業がAI-OCRを提供しているため、料金体系や読み取りの精度、サポート体制などについて、比較検討することが大切です。
製品を選んだら、性能を確認するPoC検証を行い、問題がなければ本格導入を行います。
●AI-OCRツールはどう選ぶ?
さまざまな企業がAI-OCRツールを開発・提供しているため、どのツールを選べば良いのかわからないとお悩みのご担当者様もいるはず。AI-OCRツールを比較検討する際の主なポイントは、「読み取りタイプと精度」「操作性」「外部システムとの連携性能」「ツールの対応言語」の4つです。それぞれのポイントや特徴、注目すべき理由について詳しく解説します。
読み取りタイプと読み取り精度をチェック
AI-OCRは製品によって「印字された文字の読み取りが得意なタイプ」と「手書き文字の読み取りが得意なタイプ」に分かれます。自社に必要な機能要件を考慮したうえで、どちらの読み取りに強いタイプが望ましいかを検討しましょう。特に手書き文字の読み取りには高い精度が求められるため、製品の読み取り精度には注意が必要です。
読み取り精度をチェックする際は、現在だけでなく、将来的に対象になるだろう業務・帳票に適しているかも考慮する必要があります。長期的な視点で比較検討することが、最適なAI-OCR製品を選ぶうえでの重要なポイントです。
操作性をチェック
AI-OCRは業務効率化につなげることが導入の大きな目的のため、現場の社員が操作しやすいかはチェックしたい比較ポイントです。読み取り精度が高くても使いこなすのが難しい製品だと、業務の効率が悪化する可能性もあります。導入をスムーズに進めるのであれば、できる限りシンプルかつ直感的に操作できる製品がおすすめです。
製品によってはトライアル期間を設けているものもあるので、積極的に利用して操作性を確認してから導入を検討しましょう。
外部システムとの連携性能をチェック
業務効率化につなげるには、自社で扱っている会計や顧客管理などの既存システムと統合できるかも確認したいポイントです。うまく統合できれば二度手間が発生しないため、業務効率化の向上につなげられます。製品を比較する際は、既存システムと連携できるかに加え、統合方法やその容易さも確認しておきましょう。
既存システムとの連携においては、APIと呼ばれるシステムを利用していることがほとんどです。連携のしやすさを確認するには、複数のAPIに対応しているかもチェックしておきます。
ツールの対応言語をチェック
AI-OCR製品によって対応言語が異なるため、導入対象の業務では何語に対応している製品が必要かを踏まえたうえで、製品を比較検討しましょう。自社が国内向けに営業しているなら日本語のみに対応していれば良いですが、自社や取引先が海外企業なのであれば、多言語対応している製品でないと、望むような効率化につながりません。
そのため対象業務が海外展開している、または取引先にグローバル企業がいる場合は、多言語対応の製品が必要になってきます。
自社の業務に適したAI-OCR製品を選ぶためにも、ツールの対応言語は必ず確認しておきましょう。
業務の効率化を向上させたいなら、AI-OCRの機能を搭載したシステムやアプリを導入するのは有効な方法です。自社の業務によりフィットするAI-OCRツールを開発・導入したいとお考えの場合は、ぜひ発注ナビにご相談ください。発注ナビでは発注先の選定をサポートしており、全国5000社以上のシステム開発会社から、ご要望や案件内容に合った開発会社を厳選してご紹介いたします。
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