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【クラウドAIの基礎知識】オンプレミス・エッジAIとの違い、活用事例をご紹介

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オンプレミス・エッジAIとの違いのイメージ図

AIやクラウドについては何となく理解していても、クラウドAIがどのようなものか、クラウドでAIを活用するとはどういうことか、いまいちピンとこない……そう感じている方はいませんか?

クラウドAIを正しく知っておけば、自社でAIを導入したい際にスムーズな検討ができるようになります。

本記事では、クラウドAIの基礎知識やオンプレミス・エッジAIとの違い、利用するメリット・デメリットをまとめました。クラウドAIの活用シーンや開発時の注意点についても解説していますので、AIの導入を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。

 

目次

 

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クラウドAIとは

クラウドAIとは、学習や推論をクラウド上で行うAIのことです。AIは膨大な量のデータを学習し、それによって推論を行いますが、そのためには大容量で処理能力の高いコンピューターが必要です。クラウドAIの場合、これらの学習や推論をクラウド上で処理するため、ユーザーはハイスペックなコンピューターやサーバを用意する必要ありません。

 

●クラウドAIの基礎知識

クラウドAIは、クラウド上に構築されたAIシステムに、ユーザーがアクセスすることで利用できるAIです。クラウドAIの膨大な学習データは、IoT機器やセンサーなどのデータ収集ポイントからクラウド上に集積・蓄積されます。クラウド上でAIがデータを学習して分析結果を導くため、ユーザーは自らAIシステムを持っていなくても、インターネットにつながっていればAI技術やサービスを利用できます。

 

●クラウドAIのプラットフォーム

クラウドAIのプラットフォームには、主に3つのタイプがあります。

最も多いのが「総合型AIプラットフォーム」で、AI開発に必要な全ての環境が用意されているサービスです。代表的なプラットフォームにAmazon SageMakerやGoogle Vertex AI、IBM Watsonが挙げられます。

特定の業界や機能にフォーカスしたAIソリューションを提供するプラットフォームを「特化型AIプラットフォーム」といいます。医療画像の診断や在庫仕分け、自動与信審査などの機能を持つのはこのタイプで、業界や業務に合わせた最適なAIモデルを提供しています。

アプリケーションを稼働させるために必要なハードウェアやOSに加え、学習済みのAIモデルが提供されるのが「PaaS系のAIプラットフォーム」です。AI開発の経験が少なく、あまり開発ノウハウを有していない企業でもスピーディーに開発を進められる利点があります。

 

クラウドAI、オンプレミス、エッジAIの違い

クラウドAIとオンプレミス、エッジAIの大きな違いはデータ分析を行うサーバの場所です。オンプレミスやエッジAIの特徴を知っておくと、クラウドAIについてより理解が深まります。

 

●クラウドAIとオンプレミスの違い

ハードウェアやソフトウェア、サーバを自社で保有・管理することをオンプレミスといいます。既存システムとの互換性が高く自社の機密データを保護しやすいため、社内システムを運用する場合などに向いています。

しかし、設置費用など高い初期コストがかかるほか、全てのシステム管理とメンテナンスを自社で行う必要があるため専門スタッフや継続的な維持管理コストが必要です。

クラウドサービスを利用する場合、クラウドベンダーと呼ばれる専門業者がネットワークやサーバの保守・管理、運用まで行ってくれるため、これらのシステムを保有・管理する必要はありません。クラウドベンダーが構築しているシステムをインターネット上で利用できるため、導入や運用コスト面で大きな差異が生じます。

 

●クラウドAIとエッジAIの違い

クラウド上でデータ分析が完結するクラウドAIに対して、エッジAIはデータ収集を担う端末(エッジデバイス)それぞれが内部でデータを分析し、分析したデータをクラウドに送信して学習モデルを作成します。

端末上でデータ処理を行うため、スピーディーでリアルタイムな反応が可能です。クラウドAIと比べて通信量も削減できるので、通信にかかるコストを抑えられるメリットがあります。

ただし、端末の処理能力に依存するため、処理能力には限界があります。

  クラウドAI オンプレミス エッジAI
データ処理の場所 ・クラウドサーバ上(データ分析・学習が行われる) ・自社ハードウェア、ソフトウェア(物理的な場所に保有し、全て自社で管理) ・エッジデバイス(端末機器)
・一部データをクラウドに送信
レスポンス速度とリアルタイム処理 ・リアルタイム処理には不向き(通信遅延の影響を受ける) ・リアルタイム処理・反応が可能 ・リアルタイム処理・反応が可能
通信・運用コスト、データプライバシー ・大量のデータ転送による高コストとプライバシー懸念 ・高い初期設置費用
・継続的な維持管理コスト
・処理の大部分を端末で完結させるため、通信コストが削減、プライバシーが向上
処理能力 ・高度な計算能力 ・保有するシステムの能力により異なる ・端末の処理能力に依存
運用のハードル ・専門知識が必要 ・全システムの自社管理、保守、運用が必要
・専門スタッフが必要
・システム設計と保守のハードルが高い
適用例 ・大規模なデータ解析と学習 ・社内システム運用 ・リアルタイム性が求められる用途
・データのローカル処理が重視される場面

 

クラウドAIを活用するメリット・デメリット

大量のデータが蓄積された外部のクラウドにアクセスできるクラウドAIは、AI開発のシステムを持っていない企業にとってさまざまなメリットがあります。ただし、クラウドの特性上、デメリットが生まれるのも事実です。

メリット・デメリットの両方を知ったうえで、クラウドAIが自社に適しているかを検討することが大切です。

 

●クラウドAIのメリット

システムの保有や保守・運用が不要なうえ、大容量のサーバを利用できるクラウドAIでは、以下のようなメリットを得られます。

 

大規模な処理能力

クラウドAIは大容量のサーバ内にデータを蓄積して処理を行うため、大規模で複雑なデータ処理が可能です。エッジAIはパソコンやタブレット、電化製品などの小さな端末にAIが搭載されますが、どうしても端末の処理能力に依存してしまいます。高い処理能力が求められる作業の場合、クラウドAIのほうがクラウドの利点を大きく活かせるといえます。

 

サーバと端末の負荷軽減

クラウドAIはクラウド上で学習や推論を行うため、サーバや端末内でデータ処理を行う必要がありません。自社環境のサーバや端末で大量のデータ処理や推論を行うためのスペックを確保しなくても、大規模で複雑なデータ処理ができます。サーバと端末の負荷を軽減できるぶん、コスト・管理面での負担も軽減されるメリットがあります。

 

アクセス可能なサンプルデータ

既存のクラウドAIサービスには多くのサンプルデータがあり、既存のデータを利用して分析を行えるようになっています。新しくAI開発をはじめる場合であっても、はじめからデータ収集を行う必要がありません。スタートからすぐにデータ分析を行えるため、スピーディーにはじめられるのもメリットです。

 

即座に利用開始可能

クラウドAIはサービス提供者がクラウドの構築から保守・管理までを担うため、高性能なサーバや端末を設置しなくてもすぐに利用できます。さらに、学習済みのクラウドAIサービスやソリューションを利用すれば、AI開発に詳しいリソースを確保する必要もなく、コストや労力を抑えて開発をスタートできます。

 

●クラウドAIのデメリット

インターネットを介して行われる仕組み上、クラウドAIにはデメリットも存在します。業種や業態によっては課題を生んでしまう可能性もあるため注意が必要です。

 

通信遅延のリスク

クラウドと端末間のデータ送受信が必要なクラウドAIは、膨大なデータの送受信に時間が必要です。通信にタイムラグが発生するリスクは避けられず、業務の形態によっては問題になる場合があります。

5G回線の活用が進み高速かつ大容量の通信ができるようになった今、クラウドAIにおいてもリアルタイムなAI利用に向けて改善が進められています。

 

通信コストの増加

クラウドAIを利用する時、クラウドと端末の間で大量のデータ転送が発生します。これらは全てインターネットを介して行われるため、データ量が大きければ通信コストも増大。クラウドAIはサーバや端末の管理・運用コストをカットできる一方で、通信コストは増える傾向にあります。AI利用にコストを重視しているのであれば、双方のコスト面をみながら運用形態を判断すべきです。

 

セキュリティリスク

クラウドAIは、データをインターネット経由でクラウドへ送信するため、情報漏洩のリスクが高まります。社内の機密データなどをクラウドAIで処理するには不向きです。

エッジAIの場合、重要なデータは端末の内部に保存したまま、分析結果や推論だけをクラウドに送信します。セキュリティが重視される場面ではエッジAIのほうがおすすめです。

 

オフラインでは使用不可

常にインターネット接続が必要なため、接続がない場合には利用できません。インターネット環境がある場合も、通信障害が発生すれば利用できなくなります。クラウドAIを導入する際には、ネットワーク障害への対策も必要です。

 

クラウドAIサービス開発の課題

ここからは、クラウドAIサービスを開発する際に課題となるポイントについて紹介します。クラウドAIの導入を検討している方は、以下を踏まえたうえで対応策を講じていきましょう。

 

●適切なデータを収集する必要がある

AI開発プロセスの大部分を占めるのは、収集や分析といったデータ関連の作業です。特に、目的に合うデータが不足している場合、高品質なデータを自ら収集しなくてはなりません。

データの量、品質、収集コスト、収集時間を適切に管理しないと上手く進められないため、データ収集の段階でつまずいてしまうケースもあります。とはいえ、ネット上のデータを勝手に収集することもできません。著作権や個人情報保護法などの法令を守りつつ多くのデータを収集するのは、簡単ではないため、労力を要します。

 

●AI開発特有の課題がある

AIサービスの開発では、工数削減や生産効率アップのために、オープンソースのフレームワークやライブラリを利用する場面も多くあります。ただ、バグなどのトラブルが発生しやすく、万が一トラブルが発生しても、利用者側の責任となるため注意が必要です。さらに、AIは出力結果が一定ではなく、それに伴って品質管理や保証においても課題が生じます。AIシステムをターゲットとするサイバー攻撃も発生しているため、特有のセキュリティ対策が必要です。

 

●継続的な運用や保守の問題がある

AIの追加学習や入力するデータの変化により、出力結果に変動が生じる場合もあります。導き出される結果について、継続的なモニタリングや品質チェックをしなくてはなりません。

システムの運用中にモデル修正などを行うと、利用者の作業に影響が生じたり負担が増えたりするため、留意したうえで進める必要があります。

 

●リアルタイム処理は難しい場合がある

クラウドAIには膨大なデータの送受信が必要なため、リアルタイム性に欠けており、推論処理にタイムラグが発生する可能性があります。これは端末とクラウド間のデータ送受信によって遅延が発生するためで、リアルタイム処理には向いていません。

 

●AIポリシーとの整合性の必要性

AI企画は、顧客のニーズに基づくものでなければならず、かつデータの品質や一貫性を確保しなくてはなりません。AIポリシーと整合性を持たせたうえで運用するためのルール整備が必須です。セキュリティやプライバシーに関する規制を遵守したデータモデルを採用し、組織全体で一貫した利用ができるようにします。ポリシーの策定後は定期的な監査や正しく運用が行われているかの確認が必要です。

 

●採算性の確保をしなくてはいけない

AI開発のプロジェクトは高リスクで、採算性の確保が大きな課題となります。本格的な開発に至らず失敗に終わってしまわないよう、ビジネスモデルとしての採算性を事前に評価する必要があります。資金回収を意識した計画の作成や料金の検討、AIがコスト削減に寄与する度合いなど、総合的に検討して判断できるかがポイントです。

 

クラウドAIの活用方法

クラウドAIはすでに多くの企業で採用されており、さまざまなシーンで利用されています。

クラウドAIを活用している事例をご紹介しますので、自社のビジネスシーンや業務効率化に役立つか参考にしてみてください。

 

●不良品の検知

製造業や食品加工など、さまざまな工場で商品の不正や不良品を検知するクラウドAIが使われています。ある食品メーカーでは、ベルトコンベアー上の原料をカメラで捉えて不良品を自動検出するシステムで検品作業を自動化することに成功しました。

 

●商品の需要予測

あるスーパーマーケットでは、コロナ禍の需要変動に対応するためにAIによる自動発注システムを導入し、欠品や廃棄ロスを減少させました。気温や曜日、時間帯、季節などさまざまなビッグデータに基づいた人流データから店舗の混雑具合を導き出すことで高精度な需要予測ができ、より効率的な店舗経営につながります。

 

●ECサイトでのレコメンデーション機能

あるゲーム販売サイトでは、クラウドAIを活用し、ユーザー分析に基づいた製品をおすすめするレコメンデーション機能を開発しました。クラウドAIを活用することで開発工数も削減し、クリック率やコンバージョン率、売上向上を実現しています。

 

●自動運転技術

自動運転のデータ処理と判断に利用されているのがクラウドAIです。運転時にデータの送受信が遅れると走行の安全性にかかわるため、車に搭載したカメラやセンサーに搭載されたエッジAIとの組み合わせで安全な走行を実現しています。

 

●農作物の栽培管理

日照、温湿度などのデータをクラウドAIに学習させて、農作物がその時に必要としている最適な栽培条件を導き出すことができます。人的管理よりも正確に生育条件を整えることによって、収穫増加や安定供給につながっています。

 

●広告の最適化

インターネットユーザーの行動分析に基づき、広告効果の最大化を図る施策にもクラウドAIが用いられています。AIに閲覧者の行動や閲覧する広告のタイプを大量に把握・分析させることで、より効果の高い広告を配信できます。

 

●チャットボットの強化

企業のカスタマーサービスで、ユーザーの質問に対する自動回答を提供し、顧客満足度の向上を図る機能です。クラウドAIでは、ユーザーからの質問を想定してチャットボットを設定し、適切な回答を返せるような学習機能も備わっています。中にはオンプレミス型のものもあり、自社のニーズに合わせて最適なシステムを検討できます。

 

●文字起こしサービス

音声認識AIを利用して音声データを文字データに瞬時に変換する機能を使えば、会議録やインタビューの文字起こしの効率化を図ることができます。テレビ番組で表示される字幕や文字表示サービスなどに文字起こしのAI技術が活用されています。

 

クラウド上の膨大なデータを活用できるクラウドAIは、運用や保守・管理のコストがかからない、高度な処理や大規模なデータ解析も行えるなどさまざまなメリットがあります。一方で、大量のデータ転送により通信コストがかかる、プライバシーへの懸念があるなどデメリットも存在します。

クラウドAIで新たなAIサービスを開発するにあたっては、これらの課題をクリアしなくてはなりません。自社内にノウハウがあれば手間をかけずに効率よく開発できますが、そうでない場合は開発完了までに時間がかかります。

クラウドAIを新たに導入する、クラウドAIを使ってはじめての開発に試みるといった場合には、専門ノウハウを備えた外注への依頼を検討するのも手です。

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