Eclipseは開発業務の効率化に欠かせないツールです。開発に必要とされる便利なツールを結合した統合開発環境で、主にJavaの開発に使用されています。豊富なプラグインが用意されており、Java以外のさまざまな言語で開発を行えるため、一度覚えるとさまざまな開発現場で活用可能です。
この記事ではEclipseの基礎から導入方法、基本的な使い方まで詳しく解説します。初心者の方でもEclipseをすぐに使えるようになるため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
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Eclipse(エクリプス・イクリプス)とは?
Eclipseとは、アメリカのIBM社が開発したオープンソースの統合開発環境(IDE)のことです。総合開発環境とは、開発に必要な便利なツールを統合した環境のことをいいます。Eclipseは主にJavaの開発に使用されていますが、プラグインを利用することでC、C++、JavaScript、PHP、Perl、Ruby、Pythonなどの言語を用いた開発環境としても使用可能です。
Eclipseには、優れたコード補完機能やリファクタリング機能、プラグイン機能による柔軟な拡張性など、プログラミングに必要な機能が備わっています。開発環境を構築する手間も大幅に軽減してくれるため、効率的に開発を進めるためには欠かすことのできないツールとして、世界各国の多くのソフトウェア開発者に支持されています。
Eclipseを導入するメリット
Eclipseは、作業を効率良く進めるために必要な機能が備わっているツールです。Javaの開発環境が標準搭載されており、Javaの開発がすぐに行えたり、豊富なプラグインが用意されていたりすることなどから、多くのソフトウェア開発者や企業に活用されています。ここではEclipseを導入するメリットをさらに詳しく解説します。
●Javaの開発環境を搭載している
EclipseにはJDT(Java Development Tools)という高精度のJavaの開発環境が標準搭載されているため、Eclipseを導入すればすぐにJavaの開発が可能です。なおJavaで開発を行う場合は、高い確率でEclipseが使用されるというほどの人気を誇っています。JavaのIDEという認識をしている方も多いようですが、プラグインを使用することでさまざまな言語の開発環境としても使用できるIDEです。Javaの開発以外にも活用できるでしょう。
●素早い操作性を持つ
Eclipseは軽量で素早い操作を行えることもメリットの一つです。独自のネイティブコンポーネントSWT(Standard Widget Toolkit)を利用しているため、他社のGUIを使っているIDEと比較すると軽快に動作します。一方で、起動していると動作が重くなることがあります。開発中に重くなった時は、Eclipseのテーマをクラシックにしたり、不要なメモリを削除したりしてみるのがおすすめです。
テーマをクラシックに変更する方法は「ウィンドウ>設定>一般>外観」の流れです。メモリの削除は、Eclipseの右下にあるゴミ箱のアイコンをクリックすることで削除できます。もしゴミ箱のアイコンがない場合は「ウィンドウ>設定>一般」でヒープ・ステータスの表示にチェックを入れることで、アイコンが表示されるようになります。こまめにメモリの削除をして、効率的に開発を進めていきましょう。
●デバッガー機能がある
プログラムを作成していると、エラーや意図しない結果になりバグが発生してしまうことがよくあります。バグの原因を調査してデバッグ作業を行う際に使うツールを「デバッガー(debugger)」と呼びます。プログラム作成時に不具合が発生した場合は、Eclipseのデバッガーを使ってバグの原因を検証できます。
●豊富なプラグインでカスタマイズ可能
Eclipseには便利なプラグインが豊富にあり、使用者の用途に合ったカスタマイズが可能です。プラグインを使用することによって、Java以外のプログラム言語の開発を行えるようにしたり、コンバイル機能やバージョン管理機能を行えるようにしたりできます。そのため、開発環境やプロジェクトの変更にも柔軟に対応しやすいといえます。
●無料で利用できる
Eclipseはオープンソースソフトウェアとして提供されているため、誰でも無料で利用可能です(別途、有料版のMyEclipseも存在します)。無料であっても高度な開発機能を持っており、開発予算をハードウェアなどほかへ振り分けることもできます。
●開発を効率的に行いやすい機能を持つ
Eclipseは、開発プロセスの効率化をサポートする多彩な機能を備えています。例えば、開発者がコードを迅速かつ正確に記述したいときには、コード補完やエラーチェック、リファクタリングツールなどの機能が便利です。複数のプロジェクトを一元的に管理できるプロジェクト管理ツール機能もあり、各メンバーの作業進捗を容易に把握できます。また、前述したように軽量なので素早い操作性を持つところも、開発者の生産性向上につながります。
●活発なコミュニティがある
Eclipseにはユーザー同士が多様な知識や経験を共有できるコミュニティが存在します。ここでは開発に関する疑問や問題に対する迅速なサポートを得られたり、新たなプラグインやツール、アップデートなどに関する情報交換が盛んに行われていたりします。Eclipseはオープンソースのため、コミュニティ主導の開発モデルであり、最新の技術トレンドにも迅速に対応できるところは大きなメリットです。
Eclipseを利用する際のポイント
Eclipseには上手く活用するポイントやいくつかの注意点があります。ここでは利用前に知っておきたい活用ポイント・注意点を解説します。
●大規模プロジェクトには有料版がおすすめ
Eclipseは無料で利用できますが、有料版のMyEclipseも存在します(30日間の無料トライアル版あり)。無料のEclipseは必要に応じてプラグインを追加することになりますが、MyEclipseはすでに多くのプラグインが組み込まれており、より高度な機能も追加されています。プラグインの追加などが必要なく、スムーズな開発が可能になるため、大規模プロジェクトなどにおすすめです。
●バージョン管理システムを利用する
バージョン管理システム(VCS)を活用することで、コードの変更履歴を詳細に追跡し、必要に応じて以前のバージョンに戻すことが可能です。これは、チーム開発や長期間にわたるプロジェクトなどで、コードの整合性を保つ際にために便利な機能です。メンバー間でのコードの共有やマージなどがスムーズになります。
●プラグインの利用に注意する
Eclipseのプラグインは開発効率化に役立ちますが、誤って不要なプラグインまで過剰にインストールしてしまうと、管理が難しくなり、かえって開発プロセスを複雑化させるリスクがあります。古いバージョンや不安定なプラグインは予期せぬエラーを引き起こすおそれがあるため、インストール時は常に最新の情報を確認しましょう。
また、信頼できるソースから入手することも重要です。非公式のソースや不正なソースからダウンロードしたプラグインは、マルウェアなどセキュリティのリスクを伴う可能性があるため使用を避けましょう。加えて、外部からの不正アクセスに対応するためにも、定期的なアップデートを行い、Eclipseやプラグインを最新の状態に保ちましょう。
なお、多くのプラグインをインストールすると、起動時間が長くなったり、システムが遅くなったりすることがあるため、不要なプラグインは定期的に削除してパフォーマンスが低下しないように注意しましょう。多数のファイルを同時に開くと、メモリ使用量が増加してパフォーマンス低下の原因となるため、なるべく避けるのがおすすめです。
●デバッグの利用に注意する
Eclipseのデバッグ機能は、強力ですが正しく使わないとエラーが起こって効率が大幅に低下します。効果的なデバッグを行うためには、コードの特定のセクションに集中し、必要な情報のみを選んで監視するようにしましょう。
Eclipseで開発できるアプリケーションの例
Eclipseはその拡張性と使いやすさなどから、多くのアプリケーション開発に利用されています。
特にデスクトップアプリケーションの開発によく用いられます。JavaFXなどのフレームワークを利用して視覚的に豊かなUI(ユーザーインターフェース)を備えたアプリを作成したり、プラグインを活用してOpenOfficeのような複雑なものを開発したりすることもできます。
ほかに、Webアプリケーションの開発においても広く使用されています。JavaをベースにしたWebサーバを利用し、SpringやStrutsなどのフレームワークを組み合わせることで、動的なWebアプリケーションを構築できます。ECサイトや企業向けの内部管理システムなど複雑なWebアプリケーションの開発が可能です。
また、JavaをベースにしたAndroidアプリケーションの開発もできます。Android開発用のプラグインが用意されているので、モバイル向けのUI設計やAPIの利用など、モバイルアプリケーション開発に必要な機能も揃っています。
さらに、家電製品や自動車、IoTデバイスなどの組み込みアプリケーションの開発にも対応しています。組み込みデバイス向けの開発ツールやデバッグ機能が提供されており、リアルタイムオペレーティングシステム(RTOS)などの特殊な環境での開発や、高度な制御を必要とする組み込みシステムの開発を効率的に行えます。
Eclipseでよく使用される5つのプラグイン
Eclipseが人気を集める理由の一つは、豊富で便利なプラグインがあることです。種類が多くて紹介しきれないため、この記事ではよく使用される5つのプラグインについて解説します。Eclipseで開発をする際には必須ともいえるプラグインもあるため、ぜひご一読ください。
●Glance
Glanceは、インクリメンタル検索が便利になるプラグインです。インクリメンタル検索とは、一文字入力するたびに候補となる文字列を表示してくれる検索のことをいいます。Glanceは、入力した検索キーワードにヒットした場所が強調表示されたり、スクロールバーにヒットした場所が表示されたりするため、探している文字列を即座に把握することが可能です。また、ハイライトの色を設定したり、検索履歴を呼び出したりなどの便利な機能もあります。
●QuickREx
QuickRExとは正規表現のためのプラグインです。正規表現は文字列パターンを表現する表記法で、JavaやRubyなど、さまざまな言語で使える便利なメソッドのことをいいます。構文が特殊なためわかりにくい点がデメリットですが、QuickRExは記述の補完を行ってくれたり、文字列の検索・置換ができるようになったりします。正規表現の入力が簡単になるため、初心者の方におすすめのプラグインです。
●Subclipse
Subclipseとは、バージョン管理システムの「Subversion」をEclipseで活用するためのプラグインです。Eclipseもバージョン管理システムに対応する機能を備えていますが、CVSにしか対応していません。以前のSubclipseは動作が不安定でしたが、最近のバージョンは問題なく動作しています。開発を行う際にはバージョン管理を行わなければならないため、必須のプラグインの一つといえます。
●Pleiades
Pleiadesは、Eclipseのメニューや表示メッセージを日本語化するためのプラグインです。Eclipseは英語のソフトウェアのため、インストールしたまま使用すると英表記になってしまいます。Eclipseをスムーズに使いこなすためにも、日本の開発者にとって必須のプラグインの一つといえるでしょう。
●Eclipse Color Theme
Eclipse Color Themeとは、Eclipseの配色テーマを自由に変えられるプラグインのことです。プログラムの開発をする際は長時間画面を見なければならず、目が疲れてしまいます。目に優しい色に変更することで、開発の疲れを軽減することが可能です。
Eclipseの導入方法
次はEclipseを導入する方法を説明します。導入方法は簡単ですが、ダウンロードするWebサイトによってはEclipse本体と日本語対応のプラグインPleiadesがセットになっているパッケージだったり、後から日本語対応の設定をする必要があったりします。自分がわかりやすい方法で実際に導入してみましょう。
- Eclipseをダウンロードする
- システムを起動する
- 日本語対応のプラグインをインストール
●1.Eclipseをダウンロードする
Eclipseの最新版をダウンロードする方法は以下の3つです。
公式サイトのインストーラー版
公式サイトのパッケージ版
MergeDoc Projectの「Pleiades All in One」
公式サイトの場合、Eclipseは英語表記です。前述の日本語化プラグインを拡張することで日本語化できるため、後述するプラグインの導入方法を参考にしてください。
参考:Eclipse公式サイト
最初から日本語版のEclipseを使いたい場合は、日本語化プラグインが標準搭載されているMergeDoc Projectを利用しましょう。ダウンロードに少し時間がかかりますが、プラグインで拡張する手間を減らせます。
開発現場や会社でバージョンが指定されている場合は、ダウンロード時にバージョンを選択してください。特に指定がなければ、最新バージョンを選択すると良いでしょう。
●2.システムを起動する
インストーラー版は、ダウンロードした実行ファイルをダブルクリックして、ウィザードにしたがってインストールします。Cドライブ直下に配置した場合、「C:\pleiades\eclipse」のeclipse.exeを実行すると起動できます。
パッケージ版の場合は、ファイルを解凍するだけで利用可能です。解凍したフォルダ内のeclipse.exeを実行すると、Eclipseが起動します。解凍先は、特にこだわりがなければCドライブ直下やデスクトップに設定しましょう。
Eclipseを起動すると「ワークスペースとしてのディレクトリー選択」というダイアログが表示されます。ワークスペースとは、作成したプロジェクトを保存するフォルダのことです。任意の場所を設定することができます。ワークスペースを選択して「起動」ボタンをクリックすることで、開発画面が表示されます。これでEclipseの起動が確認できました。
●3.日本語対応のプラグインをインストール
日本語対応のプラグインが標準で搭載されている「Pleiades All in ONE」のEclipseは、メニューの表記が日本語になっていますが、公式サイトから入手したEclipseは全て英語表記のままです。英語に精通していれば問題ありませんが、日本語表記のほうがわかりやすい場合は、日本語化のプラグインを導入しましょう。
MardocProjectでお使いのPCのOSに適したPleiadesプラグインのみダウンロードします。ファイルを解凍して、以下のフォルダとファイルをEclipseのホームフォルダに上書きしましょう。同じフォルダ名がありますが、上書きで問題ありません。
フォルダ「plugins」
フォルダ「features」
ファイル「eclipse.exe -clean.cmd」
Eclipseを初期値のままインストールした場合のホームフォルダは「C:\IDE\eclipse」です。次に、ホームフォルダ内の設定ファイル「eclipse.ini」を変更します。メモ帳などのエディタで開き、最後の行に以下の2行を追加して保存します。
-Xverify:none
-javaagent:plugins/jp.sourceforge.mergedoc.pleiades/pleiades.jar
設定は以上です。Eclipseを起動するとメニューが日本語の表記になっています。プラグインの追加は簡単に行えるため、日本語表記で開発を行うようにしましょう。
Eclipseでプログラムを作成する方法
Eclipseの導入が終わったら、実際にEclipseを使ってJavaのプログラムを作成してみましょう。今回は簡単なプログラムを書いて実行する方法を紹介します。Eclipseの基本的な使い方がわかるため、ぜひご参照ください。
1.新規プロジェクトを作成する
Eclipseのメニューより「ファイル>新規>その他」を選択します。ダイアログが出てきたら「Javaプロジェクト」を選択します。「新規Java プロジェクト」ウィンドウが表示されるため、プロジェクト名の項目を入力しましょう。ここでは「Sample」とします。「完了」ボタンをクリックすると、「Sample」のプロジェクトが作成されます。
2.プログラムを実行する
次は実際にプログラムを作って実行してみます。「Sample」プロジェクトの「src」を右クリックして「新規>クラス」を選択してください。「新規 Java クラス」ウィンドウが表示されるため、名前の項目を入力します。
Javaではクラス名の頭文字を大文字にするのが一般的のため、半角の英数字で名前をつけましょう。ここでは「Sample001」とします。「完了」ボタンをクリックすると、新規にjavaファイルの「Sample001.java」が作られています。javaファイルに以下のプログラムを入力します。
public class
Sample001 {
public static void main(String[] args) {
System.out.println(“Hello World!”);
}
}
次にJavaプログラムを実行します。Eclipseメニューから「実行」ボタンをクリックします。ショートカットキーの「Ctrl+F11」でも実行できるため、覚えておくと便利です。コンソールに以下の実行結果が表示されます。
Hello World!
エラーが出ると途中で止まってしまうため、Javaプログラムを見直してみましょう。以上がEclipseの基本的な使い方です。Javaであれば今すぐに開発を進めることができます。
Eclipseの特徴やよく使われているプラグイン、基本的な使い方を説明しました。Eclipseは開発に必要とされる便利なツールが備わっています。また豊富なプラグインも用意されているため、自分の使いやすいようにカスタマイズすることも可能です。基本的な使い方で説明したとおり、Javaであればすぐに動かすことができる環境が標準搭載されています。ほかの言語でも活用できるため、開発を効率的に進めるためにEclipseの導入を検討してみましょう。
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