
生活におけるさまざまな場面で活用されるようになり、身近な存在となったAI技術。その中でも、最近特に注目されているのが「エッジAI(Edge AI)」という技術です。
本記事では、エッジAIの基礎知識から、クラウドAIとの違い、エッジAIのメリット・デメリット、さらに具体的な活用事例まで、幅広く解説します。
目次
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エッジAI(Edge AI)とはどのようなものか

エッジAIとは、ネットワークの端末機器に直接搭載したAIのことです。ここでは、エッジAIの基礎知識とIoTとの関係性について詳しく解説します。
また、エッジAIの開発に携わっている企業も紹介しますので参考にしてみてください。
●エッジAIの基礎知識
エッジは日本語で「端」を意味し、私たちの身の回りにある、スマートフォンやIoT家電などの端末機器が「エッジデバイス:Edge device」にあたります。
エッジAIといわれるようになった理由には、「エッジコンピューティング」というコンピューティングモデルが由来しています。エッジコンピューティングは、上位システムへの負荷や通信遅延の解消を目的に端末やその近くにサーバを分散配置して情報を処理する方法です。
エッジAIはこの仕組みを応用・発展させたAIの形態で、学習したデータを端末で即時に処理し、リアルタイムに情報を解析できるのが特徴です。
たとえば、スマートスピーカーが私たちの話しかけた言葉を瞬時に認識したり、スマートフォンが顔認証でロックを解除したりするのも、このエッジAIの技術が使われているためです。
●エッジAIとIoTの関連性
スマートフォンをはじめ、電化製品や自動車、スマートスピーカーなどのIoT(Internet of Things)デバイスには、エッジAIの技術が重宝されています。クラウドAIだと時間がかかってしまうような分析であっても、エッジAIであれば端末機器側で迅速に行え、高度な処理をリアルタイムに行えるためです。
IoT技術の普及に伴い、身近なものの多くがネットワークにつながるようになりました。
ところが、データのやり取りに負荷がかかりすぎると、IoTで構築したシステム全体が機能しなくなる、安定的な運用ができなくなるおそれがあります。
このような問題の解決策として、端末側でデータ処理を行うため、クラウドに送るデータ量を大幅に減らすことができます。今では多くのIoT機器にエッジAIが搭載されています。
●エッジAIの開発に携わっている企業
GoogleやApple、Microsoftなど、複数の世界的企業がエッジAI開発に携わっています。代表的なエッジAIツールとして、Googleが2019年に発表したワンボードコンピュータ「Coral Dev Board」が挙げられます。
これは、AI開発者がエッジデバイス向けのAIを簡単に構築できるように設計された製品として有名です。
Appleは、2020年にエッジAIの開発に取り組むスタートアップ「Xnor.ai」の買収を発表しました。Xnor.aiのエッジAI技術は、バーチャルアシスタント「Siri ®」の音声処理や顔認証技術などの精度向上に役立てられています。
Microsoftが2018年に発表した「AI for Accessibility」は、障がいのある方や高齢の方を支援するAI技術として、さらなる活用を目指しています。
エッジAIとクラウドAIの違い

エッジAIについて正しく理解するためには、クラウドAIとの違いを把握する必要があります。
エッジAIがエッジデバイス上でAI処理を行うのに対し、クラウドAIはクラウド上でAI処理を行うのが主な違いです。
それぞれの違いについて詳しく解説します。
| AI処理を行う場所 | 通信コスト | 大量のデータ処理 | |
|---|---|---|---|
| エッジAI | エッジデバイス側 | 小 | 向いていない |
| クラウドAI | クラウド上 | 大 | 向いている |
●エッジAIはエッジデバイス上でAI処理を行う
エッジAIは、スマートフォンやセンサーなど、エッジデバイス(端末機器)上でAI処理を完結させ実行できるシステムの総称です。
AI処理によって得られたデータをクラウドストレージ上に保存することもありますが、AI処理そのものはエッジデバイス側で行われます。必要なデータのみをクラウドに送れば良いため、通信コストを節約しつつスピーディーに処理できるのが特徴です。
ただ、エッジデバイス側の限られたコンピューティング能力に依存するため、大規模なデータ解析や複雑な処理能力の面ではクラウドAIに劣るといわれています。
●クラウドAIはクラウド上でAI処理を行う
クラウド上のコンピュータでAI処理をするAIシステムのことをクラウドAIといいます。AI処理に必要なデータはクラウド上のAIシステムに送信され、クラウドシステム上で学習や推論を行って、AI処理の完了後にその結果をデバイスに返してもらう仕組みです。
クラウドAIの場合、AIの処理に耐えうる大容量のクラウドサーバが用意されているため、高精度なAIモデルの構築や、大規模なデータ解析に向いています。しかし、常にクラウドとの通信処理が必要になるため、コスト負担が大きいことや、リアルタイム性が求められる用途には不向きでとなっています。
●エッジAIとクラウドAIの使い分けのポイント
エッジAIとクラウドAIは、どちらか一方が優れているわけではなく、用途に合わせて適切に使い分けることが重要です。
リアルタイム性が求められる場面や、個人情報などの機密性の高いデータを扱う場面では、エッジAIが適しています。たとえば、車の自動運転や工場での不良品検知など、一瞬の判断が求められるケースです。
一方、大規模なデータの分析や学習、複雑な処理が必要な場面では、クラウドAIが強みを発揮します。たとえば、顧客の購買データを分析してマーケティング戦略を立てたり、膨大な画像データを学習させて高精度な画像認識モデルを構築したりするケースなどです。
多くのシステムでは、エッジAIとクラウドAIを組み合わせて使用します。エッジAIでリアルタイム処理を行い、必要なデータだけをクラウドに送信して分析することで、両者のメリットを最大限に引き出すことができるでしょう。
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▷【クラウドAIの基礎知識】オンプレミス・エッジAIとの違い、活用事例をご紹介
エッジAIを活用するメリット4つ

エッジAIは端末機器(エッジデバイス)でAI処理を実行できるため、クラウドAIに比べて多くのメリットがあります。 ここでは主なメリットを4つ紹介します。
●メリット1:高速でのレスポンスが可能
エッジAIの最大の利点は、高速なレスポンスが可能な点です。クラウドAIでは、データをクラウドに送信し処理結果を受け取る際にタイムラグが生じますが、エッジAIでは端末内でデータ処理を完結するため、このタイムラグが発生しません。
例えば、自動運転車はエッジAIを活用し、周囲の状況を即座に解析し、適切な運転判断を下すことができます。また、製造業の生産ラインでも、エッジAIを使えば不良品の検出を瞬時に行うことで生産効率の向上が期待されます。エッジAIはリアルタイム性が求められる多くの分野でその威力を発揮し、インターネット接続が不安定な環境でも高いパフォーマンスを維持できます。
これにより、遠隔地や災害時などでも迅速な対応が可能となり、多くの産業での応用が期待されています。
●メリット2:通信コストをカットできる
エッジAIのもう一つの大きなメリットは、通信コストを削減できる点です。クラウドAIでは、大量のデータをクラウドに送信しなくてはならず、通信費が高くなるのが懸念点です。しかし、エッジAIは必要なデータのみをクラウドに送信するため、通信量を大幅に抑えることができます。
例えば、スマートホームシステムでは、デバイスが収集したデータをローカルで処理し、クラウドへの送信を最小限に抑えています。これにより、通信費を削減し、全体のコストを抑えることが可能です。
産業用IoTデバイスでも、データをローカルで処理することで、クラウドへの送信を最低限に留め、通信インフラへの負荷を軽減します。これにより、企業は通信費の削減とともに、ネットワークの効率化を図ることができ、長期的なコストパフォーマンスを向上させられます。
●メリット3:情報漏洩のリスクに備えられる
エッジAIは、データをローカルで処理するため、インターネット経由でのデータ送信が不要になり、情報漏洩のリスクを低減できます。
クラウドAIでは、データが転送される過程で不正アクセスのリスクが高まりますが、エッジAIではデータが外部に出ることなく処理されるため、セキュリティが強化されます。
例えば、医療分野や金融分野では、機密性が高いデータの扱う場面では安全性を確保するために、エッジAIが有効です。さらに、エッジデバイスには高度な暗号化技術やアクセス制御機能を備えることで、データの安全性をさらに高めることが可能です。
また、データの所在を常に管理下に置くことで、万が一のセキュリティ侵害にも迅速に対応できます。このため、プライバシー保護が特に重要視される分野での活用が進んでいます。
●メリット4:オフラインでも利用可能
エッジAIは、インターネットに接続されていないオフライン環境でも利用できるというのも大きなメリットです。
データ処理がデバイス内で完結するため、ネットワークの状態に左右されません。これは、山間部や災害現場、飛行機や宇宙空間など、通信環境が不安定な場所での利用を可能にします。
たとえば、自然災害の被災地でドローンが被災状況を撮影し、その場で画像を解析して必要な情報だけを救助隊に送信するといった活用が考えられます。
また、家庭の電力メーターがオフラインでデータを処理し、必要な情報だけを電力会社に送信するといった、プライバシー保護の観点でも有用です。
エッジAIを活用するデメリット3つ

エッジAIにはさまざまなメリットがある一方で、デメリットも存在します。導入を検討する際は、これらの課題も十分に理解しておくことが重要です。
ここでは、主なデメリットを3つ紹介します。
●デメリット1:処理能力が限られている
エッジAIの端末は、クラウドサーバと比べて処理能力が限られているため、大規模なデータ処理や高度なAIモデルの実行には向いていません。高性能なサーバと比べると、エッジデバイスは限られたリソースで処理を行うため、大規模なデータ処理や高度なAIモデルの実行には不向きです。
例えば、リアルタイムに大量のデータを解析する画像認識や音声認識のアプリケーションでは、エッジデバイスの性能がボトルネックになることがあります。このため、エッジAIとクラウドAIを組み合わせて使用し、それぞれの強みを活かすことが推奨されます。
エッジAIがリアルタイムの処理を行い、クラウドAIが大規模なデータ解析を行うことで、システム全体の効率が向上するでしょう。
また、エッジデバイスは消費電力や物理的なスペースにも限界があり、高度な演算処理を行う場合には、デバイスの設計や冷却システムの強化が必要となるケースもあります。
●デメリット2:運用のハードルは高め
エッジAIの導入と運用には専門知識が求められるのに加え、システム設計や保守運用が複雑化しやすいという課題があります。エッジデバイスごとにメンテナンスやソフトウェアのアップデートを行う必要があり、これには高度な技術が必要です。
例えば、工場の自動化システムにエッジAIを導入する場合、生産ラインに配置された各デバイスの管理や定期的なメンテナンスをしなくてはなりません。
クラウドAIの場合は、サーバの管理をクラウドサービス提供者に任せることができ、自社の運用負担が軽減されますが、エッジAI導入時には十分な準備とサポートが不可欠です。
さらに、エッジAIシステムの導入には初期費用が高くなる傾向があり、これが導入の障害となることもあります。
デバイスの設置、インフラの整備、技術者の育成など、トータルでのコストが考慮されるため、導入計画を慎重に検討する必要があります。
●デメリット3:大規模システム構築には非効率
エッジAIは、特定のタスクを高速で処理することに長けていますが、大規模なシステム全体をエッジAIだけで構築することは非効率です。
エッジデバイスの性能やコストの制約から、複雑なシステムや多くのデバイスを連携させる必要がある場合、クラウドAIやハイブリッド構成が適しています。
例えば、複数の工場にまたがる生産ラインのデータを一元管理し、全体最適化を図るようなケースでは、すべてのデータをエッジデバイスで処理することは現実的ではありません。
個々のデバイスでリアルタイム処理を行い、その結果をクラウドに集約して全体的な分析を行う、というハイブリッドなアプローチが主流となっています。
また、大規模なデータ学習やモデルの更新は、クラウド上で集中的に行うのが一般的です。エッジデバイスのモデルを定期的に更新する必要がある場合、クラウドと連携した運用が不可欠となります。
エッジAIでできることを活用例から紹介

エッジAIがどのようなシーンで活用されているかを知っておくと、具体的な導入イメージがしやすくなります。
ここからは、エッジAIの活用例を詳しくご紹介しますので、自社の製品やプロジェクトに活用できそうか参考にしてみてください。
●車の自動運転
エッジAIの活用で特に注目されているのが、車の自動運転です。近い将来、本格的な実用化が期待されているのは、エッジAIの高速処理による技術革新です。
自動車の自動運転を実現するには、周囲の交通状況や障害物の有無、適切な進路などを速やかに判断する必要があります。しかし、車は時速40km以上のスピードで走行する場面も多いため、わずかな判断の遅れが重大な事故を招きます。そのため、いかに速くリアルタイムに情報を処理できるかが最大の課題なのです。
自動車にカメラやセンサーを設置し、自動車に搭載したエッジAIコンピュータを使用すれば、自動運転に必要な処理を速やかに実行できます。
自動車が自ら歩行者の情報を解析し、車道への飛び出しを瞬時に判断できるようになれば、より自動運転技術の安全性を高めることができます。
タイヤの摩耗など走行状況の変化をAIが検出できるようになれば、状況に適した対応を取れるようになるでしょう。このように、通信のタイムラグをエッジAIでなくすことによって、より自動運転の実現性が高まります。
●製造現場での検査効率化
工場などの製造現場においてもエッジAIの活用が注目されています。産業用ロボットにエッジAIを導入することによって、リアルタイムな推論ができ、より的確な情報把握や制御が可能になります。
外観検査のプロセスでもエッジAIが活躍します。検査レーンにカメラを設置し、高速で流れる製品を一つひとつスキャンして画像を認識し、不良品を検出する仕組みがすでに導入されはじめています。
ラインを次々に流れてくる製品の全てを正確に判定するには、スピーディーなレスポンスが重要です。これまでは人間の判断力やノウハウだけに頼っていましたが、人間の場合は、体調やモチベーションによって作業品質にばらつきが生じることもあります。
AIを活用すれば作業の質を一定に保つことができるため、慢性化する人手不足や従業員の高齢化による技術力・ノウハウの継承の難しさといった課題解決にも期待がかかっています。
●ATM操作の異常検知機能
金融業界でもエッジAIの活用が進められています。北洋銀行の一部の店舗では、エッジAIカメラを導入して、振り込め詐欺などへの対策がすでに行われています。
このソリューションでは、エッジAIを搭載したカメラが「電話をかけながらATM操作をする」といった不審な行動を検知します。すると、すぐに銀行職員へ通報されて、詐欺の被害を防ぐという仕組みです。
ほかにも、携帯電話の使用やマスク・サングラスの着用を画像検知して、ATM画面に取引を中止する注意喚起が表示される、詐欺に関する質問が表示されて回答内容によっては取引を強制的に中断するといったソリューションも登場しています。
画面がエッジAIならカメラ映像を録画せずに分析できるため、プライバシー保護の観点や情報漏洩のリスク回避につながります。
●農作物の収穫予測
AIにはほど遠いように見える農業の分野でも、すでにエッジAIの活用が進められています。エッジAIを搭載したカメラを活用して天候のモニタリングを行ったり、カメラから得られた情報をもとに収穫時期や収穫量を予測したりする機能が活用されています。
ほかにも、センサーでハウス内の環境情報を収集し、病害の発生リスクを予測するサービスもエッジAIを用いています。さらに、ドローンにエッジAIを搭載することで、作物の育成状況を把握したり農薬や除草剤を散布する場所やタイミングを可視化したりできるサービスも、ドローンにエッジAIを搭載することで実現しました。
エッジAIによって業務効率化や生産性の向上を図れるようになれば、深刻な人手不足による影響に歯止めがかかる日も近いかもしれません。
エッジAIは、小規模なAIシステムや特定の処理に特化したAIシステムを導入したい場合に向いています。エッジAIの導入ノウハウを持っていない場合や専門知識を有する人材がいない企業であれば、まずはAI開発や導入のナレッジがあるベンダーにコンサルティングの相談をしてみるのがおすすめです。
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