AI技術の発展によって様々な業界でAIが導入されており、ビジネスや日常生活において身近な存在になりつつあります。従来のクラウドAIとは違う新たな技術として注目されているのがエッジAIです。
本記事では、エッジAIとはどういったものなのか、クラウドAIとの違いや導入によって得られるメリットから解説。また、エッジAI開発の流れや今後の展望などについてもまとめているため、参考にしてください。
目次
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エッジAIの特徴とクラウドAIとの違い
エッジAIの特徴や活用が注目されている分野を紹介しながら、従来のクラウドAIとの違いについても解説します。
●エッジAIとは?
エッジAIはエッジコンピューティングとAIを組み合わせた造語で、端末そのものにAIを搭載しているのが特徴です。エッジコンピューティングは、端末やその近くにサーバを配置するコンピューティングモデルを指します。
学習したデータを端末で即時に処理できるため、リアルタイム性が重視される分野に向いています。例えば自動車の自動運転は、エッジAIの活用が特に期待されている分野です。自動運転ではAIがカメラ画像をもとに解析や判断を行いますが、少しでもタイムラグが生じると衝突につながる恐れがあります。エッジAIなら即時に解析・判断を行えるため、自動運転の安全性に貢献することが可能です。
また、端末をインターネットに常時接続する必要がないので、インターネットアクセスが困難な災害時の緊急対応や農業の作物監視などにもエッジAIが活用されています。
●クラウドAIとの違いは通信遅延とコスト面
クラウドAIは、クラウド上のAIシステムにデータを送信して処理を行うシステムです。取得した学習データをすべてクラウドに送信するのが特徴で、大規模データの処理能力に優れています。一方で、データ処理を行うのにインターネットを経由しなければならず、転送速度の遅延や通信コストが発生するのがデメリットです。また、クラウド上にデータをアップロードするので、プライバシー保護やセキュリティリスクにも注意しないといけません。高速処理を得意としていないため、即時判断が求められる場面では活用が難しいといった違いがあります。
クラウドAIとエッジAIそれぞれにメリット・デメリットがあるため、お互いのデメリットをカバーできるようにクラウドAIとエッジAIを併用するのが一般的です。
エッジAIの導入メリット
エッジAIの導入メリットは、「リアルタイム応答が可能」「セキュリティリスクが低い」「通信コストを削減できる」の3つです。それぞれのメリットについて解説します。
●リアルタイム応答が可能
エッジAIは端末で直接データ処理を行うため、インターネットを介してデータを送受信する時間を省けるほか、通信負荷による回線遅延の影響を受ける心配もありません。データ収集とほぼ同時にデータを処理できるので、リアルタイム処理が求められる自動運転や産業用ロボット、製造現場での検品作業、警備分野での遠隔監視などに適しています。
●セキュリティリスクが低い
クラウドAIの場合、クラウドサーバやデータセンター、通信経路などでサイバー攻撃やネットワークの不具合が発生した際、情報が外部に漏えいする危険性があります。エッジAIなら端末内でデータ処理を行うので情報漏えいのリスクが低く、高いセキュリティ性を確保できるのが利点です。個人情報の保護や機密情報の保持が求められる金融機関をはじめ、病院や学校、オフィス、工場などでの顔認証を用いた入退室管理などにエッジAIが活用されています。
●通信コストの削減
クラウドAIが取得したデータをすべてクラウドサーバやデータセンターなどに送信するのに対し、エッジAIではクラウドでの保存・処理が必要な最小限のデータのみを送信します。通信量の削減によってネットワーク負荷を低減でき、通信品質の安定化を図ることが可能。最小限のデータ送信によって通信量や通信コストを削減できるため、従量制の通信料金プランを利用している企業の経費削減に大きく貢献するのもエッジAIのメリットです。
また、クラウドサーバやデータセンターのリソース使用量も減らせるので、運用コストの削減にも取り組めます。
エッジAI導入時の課題と注意点
エッジAIの導入を検討するにあたり、導入メリットだけでなく、エッジAIの抱える課題や注意点に目を向けることも大切です。エッジAI導入時の課題と注意点について解説します。
●処理能力に限界がある
エッジAIで採用されるCPUやGPUは、クラウドAIに比べてスペックが低いので処理能力に限界があり、画像や動画など大容量データの処理に向かないというデメリットがあります。また、推論と学習を実行する場所が異なるため、高度で複雑な処理が難しいのもエッジAIの抱える課題です。
エッジAIで高性能かつ高速な処理を可能にしようとすると、端末のサイズや消費電力が限界に達する恐れがあります。端末の処理能力によって性能が制限されてしまうのもエッジAIのマイナス要素です。大規模データの処理や高度な分析をするには、クラウドAIとの併用を検討する必要があります。
●管理コストが増加する可能性がある
エッジAIは端末にAIが搭載されるため、管理や運用が複雑化しやすいのがデメリットです。例えばクラウドAIならアップデートをベンダーに依頼できますが、エッジAIは自社で対応しないといけません。また、AIを搭載している端末が複数台ある場合、それぞれでアップデートやメンテナンスを個別に行わなければならず、相応の人材の確保や教育が必要です。
クラウドAIに比べて運用に手間やコストがかかるため、通信コストを削減できるというエッジAIのメリットを感じられない可能性もあります。エッジAIを導入したいとお考えの場合は、自社で管理や運用ができるだけのリソースを確保できるかを確認したうえで、導入を検討しましょう。
エッジAI開発の流れとポイント
エッジAIの開発は、企画からはじまって開発、実装・運用フェーズへと移行するのが一般的です。企画から実装までの流れや各フェーズでのポイントを解説します。
●企画と要件定義を最初に行う
エッジAIを開発するにあたり、まずは導入する目的や課題を明確にし、エッジAIで解決できるのかを検討します。エッジAIでの解決が可能な場合は、必要となる機能や性能、制約条件などを整理しましょう。さらにエッジデバイスのハードウェア性能や消費電力、ネットワーク環境、セキュリティ要件、コストなどを踏まえ、実現できる可能性を考えていきます。必要に応じてエッジAIとクラウドAIの併用を行うかどうかも検討しましょう。
要件定義のフェーズでは、ステークホルダーとの議論を十分に行い、システムの全体像を明らかにする必要があります。
●開発環境を構築する
エッジAIの開発に必要なハードウェアやソフトウェアを用意し、開発環境を構築します。適したハードウェアを選択することが、エッジAIの開発成功につながる重要なポイントです。ハードウェアにはCPUやGPU、ASIC、FPGAなど様々な種類があり、それぞれでメリット・デメリットが異なるため、用途に応じて選択しましょう。
開発環境を構築したら、AIモデルの学習に必要なデータ収集と前処理を行います。この時のデータの量と質がAIモデルの性能に大きく影響するため、データ収集と前処理を適切に行うことが重要なポイントです。
次にエッジデバイスのハードウェア性能や消費電力、必要な精度などを考慮し、適切なアルゴリズムやアーキテクチャを決めます。目的に応じたAIモデルを選択したら、収集した大量の学習データを使って、AIモデルのパラメータを最適化しましょう。エッジデバイスのリソース制約を考慮して、モデルの軽量化や高速化のための技術の適用を検討します。
●実装と運用をスムーズに進める
学習したAIモデルをエッジデバイスに実装し、テストと評価を行います。機能テストでは要件のとおりに動作するかの確認、性能テストでは処理速度やメモリ使用量、消費電力などを測定して目標値を満たしているかを評価します。様々な環境条件下でのロバスト性や長期運用時の安定性などの確認も必要です。テストと評価を通じて問題点を洗い出し、必要に応じて改善を繰り返していくことがシステムの品質の担保につながります。
運用フェーズではシステムの稼働状況を監視しながら、異常の検知や対処を行います。ハードウェアやソフトウェアの更新、AIモデルの再学習などといった定期的なメンテナンスも必要です。運用データを分析してシステムの性能を評価し、継続的な改善につなげていきましょう。
また、エッジAIを運用していくうえで、セキュリティ脅威への対応やデータ保護の強化などのリスク管理にも留意する必要があります。
今後のエッジAIの展望
従来のクラウドAIとは異なる新たな技術として注目されているエッジAIですが、今後の展望やクラウドAIとの連携によるメリットについて解説します。
●5Gとの連携で拡がるエッジAIの可能性
エッジAIの活用をさらに促進させる技術として注目されているのが、5G(第5世代移動通信システム)です。従来の4Gよりも圧倒的に高速かつ大容量のデータを送受信できるほか、通信におけるロスが少ない低遅延や多数同時接続が可能といった通信環境が強み。5Gとの連携によってエッジAIのリアルタイム性がより強化され、遠隔医療やドローン制御、自動走行といった分野への応用が期待されています。
製造業においては、5Gとエッジコンピューティングを活用したスマート工場の導入も進められています。5GとAIを活用することで省力化による人手不足の解消や生産性の向上、熟練の技術者の技能情報をビッグデータとして収集・活用することによる技術力の承継を実現でき、製造業の抱える様々な課題を解決することが可能。また、5Gの活用によって4K・8Kといった高画質のカメラで撮影した画像の通信も遅延なく行えるようになり、不良品を検知するAIの画像認識の精度や製品の品質の向上への貢献も期待されています。
●多分野への拡大が進むエッジAI
リアルタイムでの処理やセキュリティリスクの低さなどの利点を活用し、エッジAIの活躍は今後さらに多分野へと拡大する見通しです。
例えばエッジAIの導入が大きく進んでいる医療分野では、エッジAIを活用して患者の脈拍数や血液中の酸素濃度、睡眠パターンなどの生体情報の収集・健康状態のリアルタイム分析を行っており、早期診断や適切な治療を提案につなげています。また、医療画像のリアルタイム解析によって、診断精度と速度の向上にも貢献しています。
農業分野では、エッジAIで気象情報や土壌の状態、作物の成長状況などをリアルタイムで監視することで、農業の効率化を実現。農作物の病気や害虫の早期検出、自動化農業機器の制御による生産性の向上などにもエッジAIが活用されています。
そのほか、金融や小売業、セキュリティといった分野でもエッジAIが重要な役割を担っています。
●エッジAIとクラウドAIの連携による新たな可能性
エッジAIとクラウドAIの連携によって、それぞれの技術の持つ強みを生かした相乗効果を得ることができます。
例えばエッジAIはリアルタイム性に優れている一方で、処理能力に限界があるため、大容量データの処理には向きません。そこに大規模なデータ処理や高度な分析を得意とするクラウドAIを連携させることで、リアルタイムでの高速処理と大規模データの分析の同時実現が可能。また、クラウドAIのデメリットである通信コストについても、エッジAIでデータ処理を行うことによってクラウドへのデータ送信量を抑えられ、通信コストを削減できるメリットがあります。
そのほかにも、データセキュリティの向上や分散型アーキテクチャの実現、オンデマンドなリソース利用などのメリットを得られ、AI開発の可能性を広げられます。
エッジAIの開発を検討しよう
エッジAIは従来のクラウドAIの弱点だった通信遅延やコスト面を克服しており、リアルタイム性が求められる分野での活用が進んでいます。
ただ、エッジAIの開発を成功させるには、適したハードウェアやAIモデルの選択が求められるため、開発環境の構築に関する専門知識が必要です。また、管理や運用が複雑化しやすいといった課題もあるため、自社での開発や運用が難しい場合は、エッジAIの開発に対応可能な会社への外注を検討しましょう。
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