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LoRAとは?AIモデル効率化技術の概要と導入方法を解説

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LoRAとは?AIモデル効率化技術の概要と導入方法を解説のイメージ図

LoRA(Low-Rank Adaptation、ローラ)は、AIモデルを効率的に調整する技術で、全パラメータを調整するファインチューニング手法に代わる新たな方法。LoRAは、画像生成AIや言語モデルの分野で特に注目されており、特定のスタイルやタスクに素早く適応させられるのが特徴です。

本記事では、LoRAの基本メカニズムや特徴、全パラメータを調整するファインチューニングとの違い、さらに導入手順までを初心者向けにわかりやすく解説します。

 

目次

 

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LoRAとは?概要と基本メカニズム

LoRA(ローラ)は、大規模なAIモデルを効率よく調整するための技術です。ここでは、LoRAの概要と仕組みをはじめての方にもにもわかりやすく解説します。

 

●LoRAの概要

LoRA(Low-Rank Adaptation、ローラ)は、Microsoftの研究者によって2021年に提案されたファインチューニングの1つです。一般的なファインチューニングではAIモデル全体のパラメータを再学習する必要がありますが、LoRAではモデルの一部だけを調整できる点が異なります。そのため、AIモデルを効率よく調整できる技術として注目されています

 

●LoRAの基本メカニズム

LoRAは、AIモデル全体を再学習せず、一部のパラメータだけを調整する仕組みや手法です。AIモデル内の特定の「重み付け」を「低ランク行列」に分解して行います。

「重み付け」とは、AIモデルがデータをもとに学習した判断基準のようなもので、モデルの出力結果を左右する重要な要素です。通常、モデル全体の重みを調整するには膨大な計算が必要ですが、LoRAでは「低ランク行列」という数学的な構造を使い、少ない計算量で一部の重みだけを調整します。「低ランク行列」とは、必要な情報を簡潔にまとめた行列のことで、情報量を減らしつつ、元の性能を保つための工夫です。

こうしたメカニズムにより、AIモデル全体を再学習せずに、少ない計算量で特定のタスクに対応できるのです。

 

LoRAの特徴と利点

LoRAは、AIモデルの効率的な調整が行えるため、計算リソースの節約や迅速な更新、モデル再利用性の向上といったメリットがあります。ここでは、LoRAの特徴と利点を解説します。

 

●計算リソースの削減

LoRAでは、全パラメータを調整するファインチューニングに比べ、全体の0.1%から1%程度の一部パラメータのみを更新する手法です。このため、小規模なGPU環境でも効率よく短時間でモデルの調整が行えます。

例えば、データ量の多い製品カタログを自動生成するための画像生成AIを再トレーニングする場合、通常のファインチューニングでは数日かかることが多いですが、LoRAを使うと数時間に短縮できます。このため、LoRAは計算リソースが限られた環境でも低コストで実行できるのがメリットです。

 

●すぐにモデルの更新が可能

LoRAの強みは、モデルのパラメータ更新を効率よく行える点です。ファインチューニングは全パラメータを再学習するため、特に頻繁な更新が難しい場合がありますが、LoRAは一部のパラメータのみを更新するため、数時間程度での調整が可能です。このため、頻繁な再トレーニングが必要なプロジェクトに適しています。

例えば、Eコマースサイトのレコメンド(おすすめ)機能では、顧客の購入傾向に応じた商品提案が求められ、トレンドの変化に合わせて定期的にモデルを更新する必要があります。LoRAを使えば、こうしたモデルの再調整を迅速に行え、最新のトレンドを反映したレコメンドが可能です。

 

●モデルの再利用が容易

LoRAを用いて再調整すると、一度学習したモデルを異なるタスクや分野にも容易に応用できます。例えば、整形外科向けに学習した画像診断モデルを、内科領域の画像解析用に調整するといったことが可能です。また、LoRAを用いた効率的なパラメータ更新により、再学習にかかるコストや時間を抑え、プロジェクトをスムーズに進行できます。

 

LoRAとファインチューニングの違い

LoRAとファインチューニングはどちらもAIモデルのパラメータ調整に用いられる手法ですが、それぞれ異なるリソース効率や適用方法が特徴です。ここでは、ファインチューニングの課題とLoRAとの違いについて紹介します。

 

●ファインチューニングの課題

ファインチューニングにおける主な課題は、計算リソースとコストの負担です。大規模なモデルを用途に合わせて適応させるためには、複数の高性能GPUや膨大なメモリが必要となり、これらの設備の導入や運用コストが大きな負担になります。スタートアップやリソースに限りがあるプロジェクトでは、このハードルがファインチューニングを妨げる要因でしょう。

また、データの品質と可用性も課題です。AIモデルを調整するには、正確で多様なデータが必要です。しかし、分野ごとに適切なデータを収集するのは難しい場合があります。データが不足すると学習効果が薄れ、モデルの精度も低下してしまうでしょう。

環境への影響も無視できません。大規模モデルのファインチューニングには膨大な電力が消費されるため、CO₂排出量が増えると懸念されています。

 

●LoRAの利点とファインチューニングとの対比

LoRAとファインチューニングは、必要とする計算リソースや用途が異なるため、それぞれに適した状況で活用する必要があります。

LoRAは、モデル全体ではなく一部のパラメータ(低ランク行列のみ)を調整するため、メモリ使用量を抑えつつ効率的にモデルを調整できます。これにより、スマートフォンなどのリソースが限られたデバイスや、簡易なシステムに適用しやすいという利点があります。

一方、ファインチューニングはモデルの全パラメータを再学習するため、膨大な計算リソースが必要ですが、医療診断や金融リスク評価など、高精度が求められる用途に適しています。

このように、プロジェクトのリソースや用途の特性に応じて、LoRAとファインチューニングを適切に使い分けることが重要です。

項目 LoRA ファインチューニング
更新対象のパラメータ 一部の低ランク行列のみ更新 モデル全体のパラメータを再学習
リソース効率 メモリ消費量が少なく、低スペック環境でも動作可能 高メモリ・高性能なGPUが必要
適応スピード 短期間での適応が可能 全パラメータを再調整するため時間がかかる
適用分野 リソース制約がある環境、モバイル端末、短期調整 高精度が求められるタスク、大規模データに対応する用途
メリット リソース制約がある環境、モバイル端末、短期調整 用途に対する全体的な精度が高い
デメリット 精度や対応力が全体学習には劣る 高いリソースコスト、実行環境が制限される

 

LoRAの導入方法と具体的な手順

LoRA(Low-Rank Adaptation)を導入するには、特定のツールや環境の整備が欠かせません。ここではPython環境の構築からトレーニングまで、初心者でもわかりやすい手順で説明します。

 

●環境構築の手順

LoRAを使うための環境構築には、Pythonや機械学習ライブラリが必要です。以下の手順に沿って実施してみましょう。

 

1.Pythonと仮想環境の設定

LoRAの利用には、Pythonのバージョン3.10以上が推奨される場合もあるため、Pythonを最新の安定版にアップデートすることを検討してください。仮想環境を構築して依存関係を管理することで、各プロジェクトで異なるライブラリバージョンを独立して管理できます。Pythonの仮想環境は、プロジェクトごとにインストールしたパッケージを分離する仕組みです。

以下のコマンドをターミナル(Mac/Linux)またはコマンドプロンプト(Windows)で実行して、仮想環境を作成します。

python3 -m venv lora_env

 

2.PyTorch(パイトーチ)とTransformers(トランスフォーマーズ)のインストール

PyTorchは、ディープラーニングに特化したオープンソースのライブラリです。TransformersはHugging Face社が提供するライブラリで、大規模言語モデルや画像生成モデルなどの実装に使います

PyTorchのインストール前に、PyTorchの公式サイトで自分の環境に合ったバージョンやCUDAの有無を選択し、表示されるインストールコマンドを確認してください。これにより、GPUを活用した高速なトレーニングが可能です。

そして、以下のコマンドでTransformersをインストールします。

pip install torch transformers

 

PyTorchはモデルのトレーニングや推論に必要で、TransformersはLoRAを利用する際に役立ちます。

また、以下のHugging Faceの「Accelerate」および「Diffusers」ライブラリをインストールすることで、トレーニング環境が整います。

pip install accelerate diffusers

 

3.PEFTのインストール

PEFT(Parameter-Efficient Fine-Tuning)は、LoRAのようなパラメータ効率の良いファインチューニング技術を使用するためのライブラリです。PEFTをインストールすることで、LoRAを含む複数のパラメータ効率の良い調整手法が利用でき、リソースが限られた環境でも効率的なモデルの調整が行えます。

以下のコマンドでPEFTをインストールできます。

pip install peft

 

4.GPU環境の設定(必要に応じて)

LoRAのトレーニングには通常16GB以上のVRAMを持つGPUが推奨されています。NVIDIA製GPUの場合、CUDAドライバをインストールするとGPUを用いた演算が可能です。AMD製GPUの場合は、ROCm(Radeon Open Compute)プラットフォームを利用してGPU演算に対応できます。

 

5.学習データの準備

仮想環境と必要なライブラリをインストールした後は、学習データ(画像やテキストなど)を準備し、適切なディレクトリ構造に配置します。準備が整えば、LoRAのトレーニングを開始できます。

 

●必要なツールとセットアップ

LoRAを効果的に導入するための主要なツールについて、改めてどのような役割があるのかを説明します。

  • Python 3.7以上:Pythonは、AI分野で幅広く使われるプログラミング言語です。バージョン3.7以上であれば、最新のライブラリに対応でき、互換性も高くなります。

  • PyTorch:ディープラーニング用のフレームワークで、計算効率が高く、GPUに対応しているため、特に大規模モデルのトレーニングに適しています。

  • Transformers:大規模な自然言語処理モデル(GPT-3やBERTなど)や画像生成モデルを扱うライブラリです。TransformersはLoRAの実装にも便利です。

  • PEFT:PEFTは、パラメータ効率を重視したファインチューニング手法を提供するライブラリで、LoRAを効率的に適用するための基盤です。

 

●トレーニング手順の具体例

LoRAを用いてモデルをトレーニングする際の基本的な手順です。

 

1.モデルとデータセットの準備

LoRAを適用したいモデルと、それに合わせたデータセットを用意します。画像やテキストなど、学習に適したデータを選びましょう。また、あらかじめ前処理を行うことでトレーニングの精度が向上します。

 

2.LoRA行列の設定と適用

LoRAでは、モデルの一部に専用の小さな追加パーツ(行列)を組み込みます。この追加パーツは、元のモデル全体を再学習するのではなく、一部の調整だけで新しいタスクに適応できるようにするものです。この仕組みが、少ないメモリで効率的なトレーニングが行える理由です。

 

3.モデルの評価と結果の確認

トレーニングが完了したら、モデルを評価し、目的に応じた出力結果が得られているか確認します。例えば、画像生成モデルであれば、生成された画像が期待どおりのスタイルや内容になっているかをチェックして、問題があれば再度トレーニングを行ってパラメータを調整します。

 

LoRAを用いた商用利用の注意点

LoRAを商用で活用する際は、著作権やデータの取り扱いに注意が必要です。ここでは、商用利用時のリスク管理のポイントを解説します。

 

●著作権に関する考慮事項

AIが生成するコンテンツが著作権の保護対象となるかどうかは、各国の法律により異なります。特に、生成物が学習データに依存する場合、著作権侵害のリスクが生じることがあるため、商用利用には注意が必要です。

例えば、特定のブランドやアーティストに似たデザインやスタイルが生成された場合、その内容が第三者の著作権を侵害する可能性があります。

AIによる生成物については、著作権のリスクを事前に知っておくことが、トラブルを避けるためには欠かせません。

 

●商用利用時のリスク管理

LoRAを商用で利用する際には、著作権やライセンスのリスク確認が重要です。特に、使用データや事前学習済みモデルが商用利用に適したライセンスかを確認しましょう

オープンソースでも商用利用に制限がある場合があるため、提供元の利用条件を事前に把握することが必要です。

また、データやモデルの提供元と契約する際は、利用範囲や条件を契約書で明確にしておくと、後のトラブルを防げます。さらに、各国の法律や業界ガイドラインを守り、リスクを抑えながらプロジェクトを進めることも大切です。

 

LoRA技術の活用をサポートするAI開発会社を選ぶ

LoRAを効果的に導入し、プロジェクトを成功させるためには、信頼できるAI開発会社を選ぶことが重要です。専門的なサポートを受けることで、導入から運用までスムーズに進められます。

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