システム開発におけるMVP開発は、新しいプロジェクトを公開する際に向いている方法です。より短期間・低コストで最小限のシステムをつくり、ユーザーニーズを検証できます。
本記事では、MVP開発の概要やメリット・デメリット、基本的な開発の流れを解説します。合わせて、ほかのシステム開発手法との違いや、MVP開発を導入する際の注意点もまとめました。
目次
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システム開発におけるMVPとは
MVP開発とは、必要最低限の機能のみを搭載したシステムを開発し、ユーザーからのフィードバックを受けてシステムをブラッシュアップしていく方法です。システム開発そのものの手法というよりは、開発方法を含めたマネジメント方法だと捉えると良いでしょう。MVP開発の「MVP」とは、(Minimum-Viable-Product)の頭文字を取った略語です。Minimum-Viable-Productを日本語に訳すると、「必要最低限の製品」となります。最低限の機能を搭載したシステムやアプリを市場へ投入し、ユーザーニーズを素早く検証する方法だといえます。ユーザーニーズを速やかに把握できることで、改善の方向性が定まりやすくなるのが特徴です。
MVP開発がきっかけで誕生・成長したサービスもあります。例えば、国内ではフードデリバリーサービスとして定着している「Uber Eats」が挙げられます。アメリカ本国では自動配車サービスとしても定着しているUberですが、もともとのサービス内容はドライバーとiPhone所有者をつなぐシンプルなアプリでした。公開範囲も限定的でしたが、後に「タクシーを素早く手配するサービスにはニーズがある」という気づきを得たことで開発が本格化したといいます。Uberのほか、DropboxやAirbnb、食べログなどもMVP開発によって発展してきたサービスです。
MVP開発とそのほかの開発手法の違い
MVP開発は、従来のシステム開発の手法とどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、比較対象として「ウォーターフォール開発」「アジャイル開発」「PoC開発」を挙げてMVP開発との違いを解説していきます。
●ウォーターフォール開発との比較
MVP開発は「リーンスタートアップ」とも呼ばれており、開発手法というよりは製品のマネジメント方法に近いといえます。リーンスタートアップとは、できるだけ費用や時間をかけずに必要最低限の製品をつくり、ユーザーのフィードバックを繰り返し受けながら製品の方針を定めてマネジメントしていく手法のことです。対するウォーターフォール開発は、システムを開発するための手法の一つです。「ウォーターフォール(滝)」という名称のとおり、上流工程から下流工程へと順序良くシステムの開発を進める手法です。一般的なウォーターフォール開発の流れは、以下のとおりです。
- 要件定義
- 外部設計
- 内部設計
- 開発作業/実装
- 単体テスト
- 統合テスト
- 運用テスト
- 検収・リリース
- 運用・保守
ウォーターフォール開発は、大規模なシステムの開発や既存システムの改修といったシーンに適しています。開発手法も含めたビジネスのマネジメント方法なのか、開発手法そのものを指す用語なのか、といった点がMVP開発とウォーターフォール開発の違いです。
●アジャイル開発との比較
アジャイル開発も、ウォーターフォール開発と同じくシステム開発の手法の一つです。ただし、ウォーターフォール開発とは異なり各工程の後戻り・修正を行うことを前提としています。小さな機能単位で開発・実装・テストを短期間で繰り返し、一つのシステムをつくりあげていくのがアジャイル開発の特徴です。マネジメント方法と開発手法という違いはありますが、両方とも短いスパンで機能ごとの開発を進めていくという共通点があります。
●PoCとの比較
MVP開発とよく混同されるのが「PoC」です。PoCとは「Proof-of-Concept」の略語で、日本語に訳すると「概念実証」となります。新しいコンセプトやプロジェクトを発表する前に、実物商品の試作品を用いてそのプロジェクトが技術的に実現可能か否かを検証することです。MVP開発が試作品を制作してユーザーの反応を検証するのに対し、PoCはプロジェクトが実現可能かの検証を目的としています。
システム開発におけるMVPのメリットとデメリット
MVP開発の方式を取り入れることで得られるメリット・デメリットは以下のとおりです。MVP開発を取り入れる際は、メリットだけでなくデメリットもしっかり把握し、対策をとれるようにしておきましょう。
●メリット1:開発コストを抑えやすい
必要最低限の機能のみを開発・搭載すれば良いので、開発にかかるイニシャルコストを抑えやすいのがメリットです。多くの費用や時間をかけなくても開発でき、開発担当の負担も小さく済みます。MVP開発を行う目的は「ユーザーの反応やフィードバックを得ること」であるため、仮に失敗しても大きな損失にはなりません。
●メリット2:柔軟に方向転換が可能
MVP開発は、ユーザーの反応を随時確かめながら開発を進める手法です。そのため、ユーザーのフィードバックを受けて、プロジェクトの仮説や方向性が間違っていることがわかったら、柔軟に方向転換が行えます。ウォーターフォール開発のような従来のシステム開発には、戦略に問題があった際の方向転換がしにくいという課題がありました。その点、MVP開発の方向転換のしやすさは大きな魅力といえます。
●メリット3:ユーザーニーズを把握しやすい
MVP開発ではユーザーの反応を開発段階で確かめられるため、ユーザーニーズを素早くつかめます。「社内では需要があると見込んでいた機能であっても、実際のユーザーからは評価されないことがわかった」という気づきを、開発の早い段階で得られるかもしれません。逆に、社内でさほど期待されていなかった機能がユーザーからは評価されることも考えられるでしょう。このように、素早くユーザーニーズを掴み、対応できるのがMVP開発です。
●デメリット1:エンジニアのスキルに左右される
MVP開発のデメリットとして挙げられるのが、エンジニアのスキルに左右されるという点です。一定水準のスキルを持ったエンジニアを確保できれば、スピーディーに機能を開発できるでしょう。しかし、エンジニアのスキルがそのレベルにまで達していない場合は、最小限の機能を開発するのにも時間が必要です。場合によっては、エンジニアを早急に確保し育成しなくてはなりません。
●デメリット2:ユーザーの意見に振り回されやすい
ユーザーの本音を取り入れやすいのがMVP開発の魅力です。しかし、ユーザーのフィードバックを過剰に取り入れすぎてしまい、製品の方向性が定まらなくなることも考えられます。結果的に、搭載する機能や仕様の優先順位がつけにくくなったり、全体的な統一感が失われてちぐはぐな仕上がりになったりします。
MVP開発を成功させるためのポイント
MVP開発を成功させるためのポイントを5つご紹介します。MVP開発を採用する際には、メリット・デメリットと合わせて以下のポイントも参考にしてみてください。
●エンジニアのスキルレベルを考慮する
自社内にいるエンジニアへ開発を依頼する場合、まずはエンジニアのスキルに不足がないかをチェックしましょう。スキル不足と判断した場合は、できる限り早急にエンジニアを育成する必要があります。場合によっては、新たな人材の登用も視野に入れましょう。または、外部にシステム開発会社へ開発をアウトソーシングするという手もあります。
●開発の目的やゴールを明確にしておく
ユーザーの意見を柔軟に取り入れることは重要ですが、取り入れすぎて製品やプロジェクトの方向性が迷走してしまうのは本末転倒です。迷走を防ぐためにも、製品の開発目的や根本にあるコンセプト、達成したい目的などは明確にしておきましょう。目的から大きく逸脱しないことを前提にしつつ、ユーザーの意見を反映することが大切です。
●検証対象を明確にする
MVP開発を通して何をどのように検証したいのか、検証する対象を明確にしておきましょう。検証対象が曖昧だと、検証結果に対する意思決定や改善方法の決定などが遅れてしまいます。「どのような結果が得られたら改善するのか・開発を終えるのか」の指標を決めるためにも、検証対象の明確化は重要です。
●MVP開発に適したプロダクトかを確認する
MVP開発に適したシステムを選ぶことも大切です。新システムの構築や新サービスの立ち上げといった、実験的なプロジェクトにはMVP開発が向いているでしょう。逆に、既存のシステムやサービスの改善といったプロジェクトでは、ユーザーへ提供する価値がすでに明確になっているためMVP開発は不向きです。
●UIやUXの見やすさを重視する
必要最低限の機能を搭載したシステムであっても、UI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)にこだわることは大切です。UIやUXは、システムの使いやすさや満足度を左右する重要な要素です。満足のいくUI・UXでなければ使いにくさが目立ってしまい、ユーザーの不満がそちらへ集中してシステムの内容そのものの検証が難しくなります。
MVP開発の流れ
MVP開発は、以下のような流れで進むのが一般的です。
-
アイデア出しと目標設定
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搭載する機能の決定
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開発作業
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市場検証
-
データ収集と評価
-
改善のためのアクション
それぞれの工程ではどのような作業が必要なのか、以下でご紹介します。
●アイデア出しと目標設定
自社がユーザーへ提供しようとしている価値、または自社が解決しようとしている課題などを明確にします。そのうえで、定量的に測定できる目標を設定し、MVP開発で開発するシステムでどのような目的を達成したいのかを定義しましょう。目標とゴールをしっかりと設定できていれば、プロジェクトが迷走しにくくなります。
●搭載する機能の決定
システムにどのような機能を搭載するのかを決定するフェーズです。システムのコアとなる機能に焦点を当てて、必要最小限の機能をピックアップしましょう。複雑な機能は省き、量・質ともにシンプルにまとめることが大切です。搭載する機能に迷ったときは、「目的達成に必須の機能はどれか」「価値を提供するのに欠かせない機能はどれか」といった視点を持つと良いでしょう。
●開発作業
搭載する機能が決定したら、開発作業へ移ります。この時重要なのは、開発自体を目的化しないことです。システムとしての形ができることで事業が成立していると錯覚してしまいがちですが、MVP開発の最終的な目的はユーザーのフィードバックを受けてシステムをより良いものへブラッシュアップし続けて完成形の商品やサービスをつくりあげることにあります。手段と目的が入れ替わらないよう、常に達成すべきゴールや目標を意識しましょう。
●市場検証
開発したシステムを実際にリリースし、市場検証するフェーズです。ユーザーからの反響やフィードバックを観察しながら、ユーザーニーズの確認と課題を掴みます。実際にユーザーにシステムを使用してもらうことで、社内からは見えにくかった強みや弱み、課題点などが見つかるかもしれません。トラブルが発生した際は、その原因と対策も同時に考察しましょう。
●データ収集と評価
ユーザーの意見を収集したうえで、システムの評価を行います。想定ニーズとの合致度や相違点、実際に得られた成果や検証から得た学びなどをわかりやすく簡潔にまとめましょう。また、データの収集や評価をするだけに留まらず、改善のためのアクションも考察することが大切です。評価作業は、開発前に定めた定量的な目標や達成基準をもとに客観的に行うことが大切です。
●改善のためのアクション
収集したフィードバックをシステムへ反映させ、システムを改善していきます。必要に応じて、搭載機能の追加や削除、入れ替えなどを行いましょう。改善のためのアクションは1回きりではなく、継続して行うことが重要です。「開発・改修」「市場リリース」「フィードバック収集」という一連の流れを繰り返し、システムを成長させていくことがMVP開発の意義です。
MVP開発は、実験的なプロジェクトや新規システムの開発といったシーンに適しています。しかし、MVP開発がスムーズに進むか否かは十分なスキルとリソースがあることが前提です。「自社内のエンジニアのスキルやリソースが不足している」という場合は、外部のシステム開発会社へ外注するほうが、結果としてコストが安く済むかもしれません。
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