システム開発を行う際はいろいろな開発手法があるので選択を行う必要があります。
最近広がっている「アジャイル開発」において認知度の最も高いのが「スクラム開発」です。
そしてスクラム開発で重要な要素が「スプリント」です。反復して計画を立案して見直す、といった手順を繰り返すことでさまざまなメリットを得られます。
今回はシステム開発の手法を調査している担当者向けに、アジャイル開発やスクラム開発、そしてスプリントについて知っておきたい内容を詳しく解説していきます。
目次
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柔軟でスピーディーな開発手法!アジャイル開発とは?
従来のシステム開発では、「ウォーターフォール開発」という開発手法が有名でした。ウォーターフォールは、以下のような手順で開発を行い、ローンチする手法です。
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1.要件定義でシステム内容や予算、人員を定める
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2.基本UIや内部機能について設計する
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3.実際にシステムを制作
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4.単体や複数のプログラムを動かして動作を検証する
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5.システム全体を動作検証、問題なければローンチ
ウォーターフォール開発は、システム分野において流動性の少なかった昔は適した開発手法でした。しかし今では状況が変化しています。ウォーターフォールの最大の長所であり短所なのが、「1回決めた計画通り、開発を長期的に取り組むこと」です。計画の変更は一度決定したら基本的にはなく、決められた手順通りに現場がシステムを制作していくだけになります。
しかし、今ではインターネットが普及して流動性の高い社会になっています。ユーザーのフィードバックをこまめに受けながら計画の見直し検討まで考えて開発を行わないと、ニーズに合わないシステムをローンチしてしまうリスクがあります。そこで登場したのが、「アジャイル開発」です。アジャイル開発は以下の手順で開発が行われます。
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1.顧客満足を最優先に動く
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2.ソフトウェアを素早く提供する
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3.クライアントと開発者がプロジェクトにおいて協力して動く
アジャイルは、トライアンドエラーを前提とした開発手法であり、数週間や数ヶ月といったスパンでシステムを制作します。都度計画の見直しを検討しながら、絶えず開発を続けていくのが特徴です。一度決めたら変更なしで長期的に開発を行う必要があるウォーターフォールと比較して、以下のようなメリットがあります。
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最低限の機能を持ったプロダクトをすぐローンチできる
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柔軟な変更も含めた計画立案、開発作業実行が可能
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こまめにユーザーの声をフィードバックして機能を調整できる
もちろんデメリットもありますが、今後の主流な開発手法として開発関係者は基本的な仕組みを理解しておく必要があるでしょう。このアジャイル開発は、次のような開発案件に適しています。
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ネイティブアプリの開発
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顧客のニーズが頻繁に変化するシステム開発
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短期間で最低限のプロダクトをローンチする必要がある開発
ユーザーから頻繁に口コミが寄せられるネイティブアプリでは、アプリストアでリリース後、都度アジャイル開発で機能追加や削除を行う場面が多いです。また顧客のニーズが頻繁に変わる可能性もあるシステムの開発や、短期間でシンプルなプロダクトを公開しないといけない案件でもアジャイル開発が役に立つでしょう。
ちなみにアジャイル開発にはさまざまな手法がありますが、特に有名なのが「スクラム開発」です。名前の通りラグビーのスクラムに由来した開発手法であり、チームメンバー間の連携を重要視しています。スクラム開発を理解できれば、アジャイル開発の目的や概念がより理解しやすくなるでしょう。アジャイル開発についてさらに詳しく知りたい場合は、下記の記事をご覧ください。
■アジャイル開発とは?今さら聞けない開発手法のメリット・デメリット
期間を短く区切る!スプリントとはどういうもの?
スプリントは日本語で「短距離走」といった意味を持っており、スクラム開発の基準となる考え方です。簡単に説明すると時間を細かく区切り、その中で目標を立てて開発を行っていきます。
スプリントでは1週間から1ヶ月前後を基準として、「タイムボックス」という期間を構築します。そしてタイムボックスごとに仕様の設計や開発、リリースなどを行い反復して開発を行っていくのが特徴です。スクラム開発においてスムーズに開発を進めるためには、スプリントの上手な管理が必要になります。スプリントを上手く組み立てて開発を行っていく際は、以下のような役割を持つリソースを集めてチームアップを行いましょう。
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プロダクトオーナー:プロジェクト管理などを行う総責任者
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スクラムマスター:開発における課題解決やルール説明を行う調整役
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開発メンバー:実際にシステム設計や構築を行う技能を持ったメンバー
ちなみにスプリントのことを「イテレーション(日本語訳で「反復」という意味)」と呼ぶケースもあります。結論からいうと両者に意味の違いはありません。あえて違いを説明するならば、アジャイル開発全体においては反復開発のことをイテレーション、スクラム開発ではスプリントと呼称することが多くなっています。スクラム開発では、スプリントという言葉で統一して開発を行ったほうが、混乱を招かないで済むでしょう。
スプリントにはどんなメリットやデメリットがある?
スプリントには、次のようなメリットやデメリットがあります。
スプリントのメリット・デメリット | |
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メリット | デメリット |
仕様変更や不測事態にも対応しやすい | 習得に時間がかかる |
テストとフィードバックが簡単にできる | 管理が複雑になる |
短期目標がモチベーション向上につながる | メンバー間のコミュニケーションが必須 |
それぞれ解説していきます。
●メリット1:仕様変更や不測事態にも対応しやすい
スプリントを活用すると短い期間に区切って都度機能の開発とリリースを進めていけます。長くても1ヶ月前後で1つのスプリントが終了するため、こまめな見直しが容易です。そのため、クライアントの要望によりシステムに大きな仕様変更が起きた、不測事態により機能に不具合が起きた、などの状況に陥っても、すぐに対応して問題の解決をはかれます。反対にウォーターフォール開発では、上記のような状況が発生すると、すぐ対応するのは困難です。
●メリット2:テストとフィードバックが簡単にできる
スプリントが優れているのは、実際にシステムを使用するユーザーの声を色濃く反映できる点です。
ウォーターフォール開発のように一度ユーザーニーズを決めてから開発を進めてしまうと、後で「自分たちが使いたかったのはこういうシステムではない」という不満が起こってしまう可能性があります。ユーザーニーズと開発するシステムのずれをなくすためには、ユーザーニーズをこまめに聞きながらシステムへ反映する方法が有効です。スプリントの考えは、このユーザーニーズを積極的に反映するのに適しています。これは、以下のようなテストとフィードバックのプロセスが短い期間で簡単に実行できるからです。
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新しい機能を短期間で開発
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運用テストやリリースでユーザーの声をフィードバック
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機能の追加や見直し、必要であれば削除なども検討
ユーザーニーズの流動性が高くなっている今、システムを継続して使ってもらうためにはこまめなシステムのアップデートが必要不可欠になっています。スクラム開発でスプリントを実行して継続的なシステム改善を実現してみましょう。
●メリット3:短期目標がモチベーション向上につながる
スクラム開発、そしてスプリントのベースにあるのは作業に当たるメンバーです。メンバー間で密接にコミュニケーションを取りながら開発へ取り組む姿勢が重要になっています。目標は短期で設定されるので、スプリントごとに開発者が「自分たちが今やっている作業にはこういう意味がある」という意義を持ちやすいのがメリットです。結果的にモチベーションが向上して、質の高いシステムを制作しやすくなります。
ウォーターフォール開発の場合、最終目標こそありますが、プロセスごとに目標立てをすることはありません。そのため開発現場のモチベーションが途中で下がってしまう懸念がありました。もしウォーターフォール開発のモチベーション維持に課題を感じている場合は、スクラム開発とスプリントの考えを新たに取り入れてみてください。
ただしスプリントは、あくまでスクラム開発を中心に使用される方法であり、最初から綿密に計画を練ってシステム開発を行うウォーターフォール開発には不向きです。「ウォーターフォール開発にスプリントを入れ込もう」というのは、あまりおすすめしません。以下では、スプリントにおけるデメリットについて解説をします。
●デメリット1:習得に時間が掛かる
スクラム開発でスプリントを立てて実行する際は、以下のポイントを押さえる必要があります。
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短期間であること
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期間内にメンバーが集中して取り組むこと
特にウォーターフォール開発に慣れている企業ではスクラム開発やスプリントの考え方を1から覚える必要があります。開発の際重要視する項目や開発プロセスがまったく違うため、すぐ慣れるのは難しいでしょう。ある程度、スプリントで開発する練習をしておくことも重要です。
●デメリット2:管理が複雑になる
スプリントの考えでは、こまめに目標や計画を立てて、機能ごとに開発を行うのが基本となります。スプリントの回数が増えるほど全体の管理が難しくなり、「自分たちが今システムをどこまで作っているのか」を適切に管理しにくくなるのがデメリットです。そのため、スプリントを作って適切に管理を行うためには、開発について精通している管理者(プロジェクトマネージャー)などのリソースを自社内で確保しておく必要があります。
またクライアントの依頼といった影響でスプリント回数が増加すると、開発期間が長引いてしまうのもデメリットです。システムの開発要件によっては、開発期間を明確に決めてシステムを制作するウォーターフォール開発を選ぶのも良いでしょう。
●デメリット3:メンバー間のコミュニケーションが必須
繰り返しになりますが、スプリント内の開発においてはメンバー間のコミュニケーションが必須です。1人でも情報の伝達に抜け漏れがあったり作業が滞ったりすると、プロジェクト全体に影響が出ます。開発に必要なスキルは持ち合わせているのはもちろん、「遠慮なく課題や進捗を共有し合えるチーム関係を構築する」という点も、開発成功のポイントを握っています。
今まで黙々と作業していたエンジニアなどはコミュニケーションに苦手意識を感じているかもしれません。スプリントを業務で実行する前に、コミュニケーションのコツやチームでの働き方などを研修しておくと安心です。
スプリントはどうやって作るの?1つ1つ手順に分けて解説
ここからはスプリントの作成方法を解説していきます。
●プロダクト・バックログ作成
まずはシステム要件をまとめた「プロダクト・バックログ」を作成していきます。プロジェクト責任者であるプロダクトオーナーが中心となって作成しましょう。プロダクト・バックログにはシステムにおける機能の優先順位などが記載されています。また記載されている内容を基にスプリント計画を立てていくのもポイントです。
●スプリント計画
スプリントにおける基本的な開発の進め方を決めていくプロセスです。プロダクト・バックログを基に「スプリント・バックログ」と呼ばれる計画書を作成していきます。スプリント・バックログには、以下のような項目を記載していく必要があります。
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スプリントの目標
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開発期間
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システムの詳細仕様
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作業の内容
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作業に当たる各担当者
●スプリント実施・デイリースクラム
スプリント・バックログの制作が完了したら、次は実際にスプリントを実施していきます。スプリント期間中は「デイリースクラム」と呼ばれるミーティングが定期的に開催されています。デイリースクラムでは、今までの作業状況や本日の作業予定、現状の課題などを短時間で共有していくのが理想です。進捗に問題があったり、課題が見つかったりした際は、放置せずにすぐ対策を取りましょう。
●スプリントレビュー
スプリントレビューは、端的にいうとシステム検証です。プロダクトオーナーが立ち会い、完成したステムの動作を確認していきます。必要であれば、顧客といった開発に直接かかわっていない関係者も参加する必要があります。機能に問題がなければリリースへ移行し、問題があれば次のスプリントで解決するといった対策を行うのもポイントです。
●スプリントレトロスペクティブ
スプリントのプロセスがいったん終了した後は、反省会として「スプリントレトロスペクティブ」を行う必要もあります。スプリントレトロスペクティブでは、スプリント実行で良かった点や良くなかった点、フィードバックをどのように活用するか、などの反省を行い、次のスプリントをより良く進められるように意見を出し合います。スプリントレトロスペクティブの後は、またバックログ作成やスプリント計画立案などに戻り、何回も繰り返してシステムを構築していきましょう。
アジャイル開発は外部に依頼しよう
スクラム開発は流動性の高い今の時代に合ったシステム開発手法です。ただし今まで実行していない企業が1から学習して開発に慣れるのには時間が掛かります。またスクラム開発においてはスプリントを上手く制作・管理できるリソースも必須です。もしもスクラム開発やスプリント実行に自信がない、そもそも開発環境やエンジニアがいないという場合は、システム開発を外部に発注してみましょう。外注するとスプリントの作成や実施などを業者が行ってくれるのが魅力です。以下のページでは、アジャイル開発を得意とするシステム開発会社を紹介しています。
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