システム開発をする際は、業務フロー図を作成することで、課題の洗い出しや解決策を検討することが可能です。そのためフロー図を作成することは重要な役割があるといえます。
この記事では、システム開発における業務フロー図の基礎から書き方のルールまで詳しく解説します。フロー図を作成する際に押さえておきたいポイントもあわせて紹介。ぜひ参考にしてください。
目次
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システム開発におけるフロー図の重要性
システム開発における業務フロー図(フローチャート)とは、別名「流れ図」ともいい、業務の工程やシステム、コンピューターアルゴリズムなどの流れを図や矢印で表したものです。業務フロー図の種類には、主に以下が挙げられます。
フロー図の種類 | 目的 |
---|---|
文書フロー図 | 複数部門間での文書の共有や閲覧プロセスの視覚化した図 |
データフロー図 | システム内のデータの移動経路と管理の図 |
システムフロー図 | システムの物理的構成とデータの流れの図 |
プログラムフロー図 | システムのプログラム処理手順や管理方法の図 |
ワークフロー図 | オフィス業務の業務処理や文書・データの流れの図 |
そして、業務フロー図が必要な理由には、以下の3つがあります。
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業務の全体の流れを正しく把握するため
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現状の業務上の課題を洗い出すため
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引き継ぎや人材教育に役立てるため
業務フロー図の重要性をそれぞれの項目で、詳しくみていきましょう。
●業務の全体の流れを正しく把握するため
業務フロー図は、開発中のWebシステムやそのほかのシステムの処理内容の流れを明確に示します。これにより、プロジェクトにかかわるクライアントや開発チームなどのステークホルダー間で理解を一致させることができます。ステークホルダーとは、企業の活動に対して、直接的・間接的な利害関係を有するグループまたは個人のことです。業務フロー図を使用することで、開発するシステムが計画とおりに進んでいるか、また自動化されるプロセスにおいて漏れや誤りが無いかを確認できます。
また、業務フロー図を通じて、プロセス間の依存関係や連携を理解することが可能になり、プロジェクトのリスク管理や期間の見積もりにも役立ちます。このように、業務フロー図は複雑なプロセスを視覚化し、プロジェクトの進行に必要な情報を明確に伝えるための重要なツールです。
●現状の業務上の課題を洗い出すため
業務フロー図を活用することで、業務の中の無駄や問題点をすぐに特定できます。これにより、改善策を素早く考案し、業務の効率を向上させることが可能です。さらに、業務フロー図は設計上のミスや要件忘れを防ぐのにも効果的で、開発全体の質を高めることができます。また、業務フロー図は現行のプロセスを客観的に評価する機会にもなり、潜在的なリスクやボトルネックを特定するのに役立ちます。この情報をもとに、リソースの配分や優先順位の調整を行い、全体の業務をより効率的にできます。
●引き継ぎや人材教育に役立てるため
業務フロー図は、新しいチームメンバーや後継者への情報の引継ぎにも役立ちます。図があることで、業務の流れやシステムの構造を、新入社員やほかのチームメンバーへ迅速に共有できるためです。結果として、人材の教育を促進してプロジェクトのスムーズな進行を支援し、最終的に生産性を高めることができます。さらに、業務フロー図は、業務の標準化と統一性を図ることも可能です。業務プロセスの再現性が向上すれば、異なるチームや部門間でも一貫性を保ちやすくなるため、組織全体の効率性が高まります。
業務フロー図は、明確で理解しやすい形で重要な情報を提供することで、組織内のコミュニケーションを改善し、プロジェクト管理の効率を向上させる重要な役割を果たします。
業務フロー図とシステムフロー図の違い
業務フロー図とシステムフロー図は名称が似ていますが、それぞれは異なる目的で使用されます。これらの違いを理解することは、効果的なプロジェクト管理とコミュニケーションに不可欠です。それぞれ詳しく解説します。
●業務フロー
業務フロー図は、業務の進行過程のステップや手順が存在するかを示したものです。企業や組織内の特定の業務プロセスを視覚化しています。具体的には、「誰が」(役割や部署)、「何を」(具体的なタスクや活動)、「いつ」(タスクの順序や時系列)が書かれており、業務の流れや役割分担を把握できます。前述したように、新しい従業員のトレーニングや業務の標準化、効率的な作業の再設計、コミュニケーションの改善に役立つでしょう。
●システムフロー
システムフロー図は、コンピュータシステムやソフトウェアがどのように情報を扱い、処理するかを視覚的に示す図です。この図は、データがシステム内の異なる部分をどのように流れ、相互作用するかを描き出します。システム設計や開発の段階でこの図を使うと、必要な機能要件をはっきりさせることができ、かつ、問題点も見つけやすくなります。技術者や開発者にとっては、システムを設計したり、問題を修正したりする際に欠かせないツールです。
業務フロー図の基本的な作成方法
業務フロー図を作成する手順は、以下のとおりです。
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フロー図で使われる記号の意味を理解する
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フローにおける作業工程をすべて洗い出す
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要素は左上から右下に時系列に配置
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フロー図の基本構造を理解する
業務フロー図の基本や原則を把握することで、誰が見ても理解しやすい業務フロー図を作成できます。それぞれの手順を詳しくみていきましょう。
●フロー図で使われる記号の意味を理解する
業務フロー図は複数の記号を使用するため、それぞれの記号の意味を理解しておくことが大切です。それぞれ解説します。
・端子(開始・終了)
角の丸い四角形または楕円形で示され、業務フロー図の始点や終点を表します。システム開発では外部環境からの入口や出口を示す記号としても使われます。
・四角形(処理)
四角形の図形は、業務フローの個別のプロセスや作業、単一の処理を示します。これはフロー中の1つのステップを表し、基本的に1ボックスに1つの処理や作業内容を記載します。明確な内容を伝えるためには、簡潔かつ共通認識のある言葉で記載することが重要です。
・ひし形(判断・条件分岐)
ひし形の図形で、フロー中の「Yes/No」や「真/偽」のような二者択一の判断や、複数の選択肢に分岐する条件を表す記号です。条件分岐によって異なるプロセスに進むことを示し、各頂点からの線や矢印で次のステップに向けたルートを指示します。
・台形(ループ開始・終了)
台形のような六角形で、上辺の両端が少し折れているような形です。これは、繰り返し行われる処理(ループ)を示します。繰り返しの条件と終了条件をボックス内に記入し、間に具体的な処理を挟みます。これにより、同じ処理の反復が明示されます。
・円柱(システム・データベース)
円柱の図形で、業務システムやデータベースへの入出力やデータの保管を表します。システムやデータベースへの具体的な操作を示し、使用するシステムが複数ある場合は、1つずつその名称を記載することが一般的です。
・平行四辺形(データ入力・出力)
平行四辺形で、データやファイルなどの入出力処理を表します。主にデータベースやファイルに関する操作を区別して表示する際に用いられ、処理の内容に応じたデータの流れを示します。
●フローにおける作業工程をすべて洗い出す
業務フロー図の作成では、関連するすべての業務やシステムの工程を細部に渡ってリストアップすることがポイントです。すべてのプロセスを詳細に把握しておくことで、業務フロー図作成時の見落としや誤りを防ぐ目的があります。単に工程を羅列するだけではなく、各ステップ間の関連性や重要性を考慮に入れることも重要です。
工程を洗い出す段階では、各業務の実担当者からフィードバックを得ることで、業務フローに即した正確な図を作成できます。このプロセスを通じて、業務フロー図に含めるべき重要な要素や適切な粒度を設定し、その後の作成がスムーズに進むようにします。
●要素は左上から右下に時系列に配置
業務フロー図では、各要素を時系列に沿って左上から右下へと配置します。この配置は、人間の自然な視覚の流れと一致するため、業務フロー図の読み取りやすさを高めます。
業務フローを作成する初期段階では、必要な図形を大まかに配置して、フローの流れを把握します。この段階では、各要素の正確な位置や細かな配置にこだわる必要はありません。フローな流れと要素の配置に齟齬が無いか、見やすい配置になっているかなどを確認したうえで、清書に移ります。
●フロー図の基本構造を理解する
業務フロー図の作成では、「順次構造」「分岐構造」「反復構造」という3つの基本形式の理解が不可欠です。これらの構造は、業務フロー図の骨格で、プロセスを視覚的に示すための基礎となります。
「順次構造」は、プロセスが一連の順序で進行する様子を表します。「分岐構造」では、特定の条件に基づいて異なる方向に進むプロセスを示し、選択肢や決定点を図式化します。「反復構造」は、ある条件が満たされるまで同じプロセスが繰り返される状況を表現します。
この3つの構造は、フロー図を作成する際だけでなく、フロー図を読む際にも必要な知識です。そして、このような基本原則に基づいて作成すると、理解しやすい業務フロー図が完成し、効果的だといえるでしょう。
業務フロー図作成の3つのポイント
フロー図に必要な要素や図形、基本構造について理解したら、次は実際に作成する際のポイントを押さえておかなくてはいけません。業務フロー作成時に意識しておくべきポイントは、以下の3つです。
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記載する情報の粒度を統一する
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見やすさを意識する
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1つのフローチャートは1ページ内に収める
ポイントを押さえることで、見やすさや読みやすさが高まり、理解しやすい業務フロー図を作成できるため、参考にしてみてください。それぞれ詳しく解説します。
●記載する情報の粒度を統一する
業務フロー図に記載される情報の粒度を一貫させることは、理解を深めるために非常に重要です。すべてのプロセスやステップを同じレベルの粒度で記述することで、業務フロー図全体の一貫性と明瞭さが保てます。例えば、あるステップが非常に詳細に記述されている一方で、ほかのステップが大まかな記述に留まっている場合、業務フロー図の全体像を理解することが難しくなります。情報の粒度を保つことで、業務の全体的な流れや各ステップの関連性が明確になります。
●見やすさを意識する
業務フロー図の視覚的な見やすさは、理解度に大きな影響を与えます。業務フロー図の色使いや色数を最小限に抑えることが見やすさにつながります。使用する図形は整理された状態で配置し、一貫性のあるサイズと形状で統一することが望ましいです。また、各要素間には適度なスペースを確保し、図形内のテキスト量も最小限に留めるように意識して作成することが大切です。
●1つのフロー図は1ページ内に収める
業務フロー図は、その全体像を一目で把握できるように、1ページに収めるのが理想的です。複数ページに渡るフローチャートは、情報の追跡が難しくなり、理解の障害となる可能性があるためです。フローチャートが1ページに収まらない場合は、キリの良いところで分けられないか検討したうえで、複数ページに分けるようにしてください。また、情報の粒度をどうしても細かくしなければならない場合も、無理に1ページに収めると見にくくなってしまうため、適切な箇所で分けるようにします。
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