Windows関連のシステム開発に携わっている方であれば、馴染みの深いプログラミング言語が「Visual Basic」です。マイクロソフト社が開発した言語で、初心者でも使いやすいため、多くの開発者が利用しています。開発から30年を超える今でも愛される理由は、どこにあるのでしょうか。今回は、Visual Basicの基礎知識や特徴を踏まえて、魅力に迫っていきます。また、今後の継続利用における問題点や後継についても解説するため、ぜひ参考にしてください。
目次
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Visual Basic(VB:ビジュアルベーシック)とは?
Visual Basic(ビジュアルベーシック)は、1991年にマイクロソフト社によって開発・提供されたプログラミング言語です。「VB(ブイ・ビー)」とも呼ばれ、アプリケーション開発の現場で多く使われています。マイクロソフト社がMS―DOS時代に開発した「BASIC」というプログラミング言語から派生しており、初心者でも使いやすいのが特徴です。まずは、Visual Basicのバージョンや種類について解説します。
●Visual Basicのバージョンについて
Visual Basicは、1991年に初めのバージョン「VB1.0」としてリリースされました。広く浸透し始めたのは、1995年にリリースされた「Visual Basic 4.0」です。Windows95に対応したソフトウェアを開発できることから、利用者が増えてきました。その後、Windowsの32ビット用に作られたAPI「Win32」向けのVBは、1998年のVB6(バージョン6.0)で開発を終了しています。2002年には、Visual Basicの後継として「Visual Basic .NET(VB.NET/ビジュアルベーシックドットネット)」が登場しました。VB.NETは、Microsoft.NET環境で動作するように開発された言語です。
●Visual Basic(VB)とVisual Basic for Applications(VBA)は何が違うの?
Visual Basic(VB)とよく似たプログラミング言語に、Visual Basic for Applications(VBA)があります。VBAもVBと同じく、マイクロソフト社によって開発されたプログラミング言語です。VBは、「Visual Studio」という開発ツールに搭載されているため、使用する際はインストールする必要があります。一方の、VBAは、マイクロソフト社製の「Microsoft Officeシリーズ」に組み込まれており、パソコンにExcelやWord、PowerPointなどが搭載されていれば、すぐに使えるのが特徴です。これらの製品も、VBAを使って自動処理を行っています。VBAの言語仕様は、互換性の関係から、Visual Basic6.0相当です。
Visual Basicの歴史とWindows
概要でも触れたようにVisual Basicは、マイクロソフト社が開発した「Microsoft BASIC」というプログラミング言語が前身となっています。BASICが登場したのは1975年のことで、マイクロソフト社の創設者であるビル・ゲイツが開発しました。BASICは登場以来1980年代にかけて様々なパソコンに搭載されており、マイクロソフト社の基盤となるプログラミング言語です。
その後、1990年にWindows3.0がリリースされ、その翌年に登場するのがVisual Basic 1.0です。1995年にWindows 95向けのソフトウェアが開発可能なVisual Basic 4.0がリリースされると、広く浸透するようになりました。以降、新しいWindows OSが発売されるたびに、対応するVisual Basicへとバージョンアップしていきます。このように、Visual BasicはWindowsと深い関係があります。
Visual Basicの3つの特徴
Visual Basicは1991年のリリース以降、30年以上にわたり長く愛されているプログラミング言語です。変わらずに利用者が多く存在する背景には、3つの魅力的な特徴があります。続いては、プログラミングをするうえで、Visual Basicが好まれる理由ともいえる3つの特徴を、詳しく見ていきましょう。
【特徴1】覚えやすく使いやすい言語
Visual Basicは、初心者向けに作られたBASICというプログラミング言語から派生したこともあり、覚えやすくて使い勝手が良いのが特徴です。BASICは、「beginner’s all-purpose symbolic instruction code」の略称で、名前からも初心者のために作られた言語であることがわかるでしょう。
BASIC言語は、それぞれのプログラムを初めから順に処理していく手続き型プログラミング言語です。処理を順番どおりに記述すれば良いため、初心者でも使いやすくなっています。Visual Basicも、こうしたBASIC言語の特徴を踏襲しているのが魅力です。また、文法も非常に簡単なものが多く、使いやすさに特化した言語ともいえます。
【特徴2】直感的に操作できる
Visual Basicの特徴として、直感的に操作できる点も挙げられます。ツールボックスから、必要なボタンやエディタなどのGUIパーツをマウスで配置していくスタイルになっており、ソースコードを記述する必要がありません。フォーム状にドラッグ&ドロップするだけで操作できるため、難しいロジックではなく感覚的に使えます。ソースコードに慣れていない初心者でも、十分チャレンジしやすいプログラミング言語です。
【特徴3】RADの先駆け
Visual Basicは、RAD(Rapid Application Development)の先駆けでもあります。RADとは高速アプリケーション開発のことで、ソフトウェア開発手法の1つです。少人数の開発チームで作業を行い試作を繰り返しながら、評価・改良を行い徐々に完成度を高めていきます。RADの採用で作業工数の軽減が可能です。
Visual Basicの強みと弱み
多くのシステム開発者に愛されてきたVisual Basicにも、強みと弱みがあります。まず、強みは簡単なことが簡単にできる点です。以前のプログラミング言語はC言語が主流で、複雑な作業が必要でした。しかし、Visual BasicはWindows上で動作が完結し、CUIパーツをフォームに貼り付ける作業がメインとなっているため非常に簡単です。C言語を使うと、小さな動作1つでもすべての仕様を膨大なプログラムで指示しなければなりません。しかしVisual Basicであれば、結果的に起こる動作だけに意識を置いてプログラミングできます。
こうした簡単な言語に関しては力を発揮するVisual Basicですが、裏を返せば簡単なことしかできない点が弱みです。例えばロボットやAIのように、高度な技術が求められる分野には向いていません。
Visual BasicはVisual Studioで開発する
VBAはMicrosoft Officeに搭載されているため、ExcelやWordなどがあればすぐにでも使えます。しかしVisual Basicは、Visual Studioに組み込まれているため、インストールしなければなりません。Visual Studioとは、マイクロソフト社が開発したVisual Studio向けの統合開発環境(IDE)です。Windowsだけではなく、MacOSやLinuxでも使うことができます。注意点として、Mac版のVisual Studioは、Windows用のソフトが作れないため注意が必要です。
Visual Studioには、Visual Basicを使って開発するうえで必要な「コードエディタ」「コンパイラ」「デバッガ」などが、すべて搭載されています。そのため、Visual BasicはVisual Studio上で開発するのが一般的です。
VBでよく使われる文法例を紹介
システム開発には文法を使用します。プログラミングのハードルを上げているのがこの文法であり、挫折する方も少なくありません。しかし、Visual Basicは簡単な文法が多いため、初心者でもチャレンジしやすいのが特徴です。続いては、Visual Basicでよく使われる文法例を4つ紹介します。
●変数
変数といえば、数学を思い浮かべる方も多いでしょう。代数学で用いる「X」や「Y」などの数字を代用した文字を「変数」といいますが、プログラミングでもほぼ同じ意味で使います。プログラミングにおける変数は、数値や文字を入れる箱のような役割です。変数にはルールを設けることが可能で、名前を設定したり変数同士を足したりと様々な処理ができます。ほとんどのプログラミングにおいて変数を使うため、Visual Basicを使う際も最初に覚えておきたい文法といえるでしょう。
●演算子
プログラミングにおいて、加減乗除の四則演算を行う際に用いる「+」「-」「*」「/」の記号が演算子です。Visual Basicで利用できる演算子には様々な種類があります。まず、ベースとなるのが「足し算」「引き算」「かけ算」「割り算」を行う「算術演算子」です。そのほか、文字列をつなぐ「連結演算子」や変数に値を代入する「代入演算子」、2つの式や値を比較し結果を真偽値で表す「比較演算子」などがあります。
●条件判定
定義した変数を使って「変数が〇〇だった場合」という判定をする文法を「条件判定」といいます。例えば「if Y=1 Then」の文法を使うと「もしも、Yが1だった場合は、(Then)〇〇を実行する」という意味になります。このように、Visual Basicでは条件に合わせて異なった操作ができます。
●繰り返し処理
繰り返し処理とは「ループ」ともいわれる文法で、同じような処理を実行する際に使います。変数を定義して条件判定を行った後に、実施するのが一般的です。繰り返し処理で使う文法は「For」と呼び、繰り返しを命令します。最後に「Next」という文法を入れて、再び「For」に戻る仕組みです。
Visual Basicを取り巻く状況
長年愛されているVisual Basicの人気は衰えることがありません。実際、オランダのプログラミングコミュニティインデックスである「TIOBE」が発表するプログラミング言語ランキング(TIOBE Programming Community Index)では、常に上位にランクインしています。2022年7月に発表されたランキングでは、6位を獲得しました。1991年の登場以来、2000年代の半ばを過ぎても、Windowsアプリケーション開発において「Visual Basic 6.0」を使い続ける開発者や企業が多く見られます。2021年には若干減少傾向になったものの、それでもランキングが示すように一定数の人気を保っているのが現状です。また、Visual Basic 6.0で構築したシステムをVisual Basic .NETに移行するといった動きも見られるため、今後も需要が高まる可能性があるでしょう。
Visual Basic(VB6.0)の継続使用のリスク
根強い人気を誇るVisual Basic(VB6)ですが、継続使用にはリスクが伴います。2008年の段階で、VB6とVB6に対応した統合開発環境(IDE)のサポートが終わっているためです。また、VB6のIDEがインストール可能な公式OSであるWindows Vistaも、2017年にサポートが終了しました。さらに、サードパーティによって開発されたVB6の開発支援ツールも、ほとんどの製品でサポートが切れている状況です。
このような状況で新たな脆弱性が見つかっても、セキュリティサポートを受けられないため、企業やユーザーにも影響が出る恐れがあります。例えば、情報漏えいや不正アクセスが起こる可能性もあり、サービス停止に追いやられることも考えられるでしょう。
VB6で開発したプログラムを安定して運用するためには、サポート面だけではなく人材面でも問題があります。使用や要件も開発当時と変わらず最新の状態に適していないため、業務の効率化を妨げる点も否めません。
Visual Basicをマイグレーションする
前項で触れたVB6を使い続けるリスクを考えると、VB6で構築したシステムは後継である「Visual Basic .NET」への移行を検討するべきでしょう。マイクロソフト社では、VB6からVisual Basic .NETへ移行するための公式なツールを提供しています。
注意点として、Visual Basic .NETへの移行には様々な課題があります。マイグレーションに長けた人材が在籍していれば自社での移行もできますが、難しい場合はマイグレーションに関する知識が豊富で、高い専門性のあるシステム会社への依頼を検討するほうが賢明でしょう。
●「Visual Basic .NET」の活用もおすすめ
Visual Basicは1998年のVB6開発終了以降、後継である「Visual Basic .NET」(VB.NET/ビジュアルベーシックドットネット)に移行しています。「Visual Basic .NET」という名称になったのは2002年であり、「.NET Framework」に対応するようになりました。翌年の2003年には「Visual Basic .NET 2003」がリリースされましたが、2005年版からは「 Visual Basic 2005」になり、以前の名称に戻っています。2022年の段階で、最新版は2019年にリリースされた「Visual Basic 2019」です。
VB6では、従来の手続き型からオブジェクト指向が搭載されたものの、根強く残った手続き型から完全に抜け出すことができず、中途半端な印象を与えました。Visual Basic .NETでは、こうしたVBからの方針転換を行い今も改良を続けています。現在では「VB」は「Visual Basic .NET」を指すことが多く、広く浸透していることがわかるでしょう。
Visual Basicはマイクロソフト社の歴史と同等の流れをくむ、古参のプログラミング言語です。数々の変遷を経て「Visual Basic .NET」になった今も、多くの方に愛されています。また、初心者でも使いやすい構造になっており、プログラミングを始めたばかりの方でも利用しやすいでしょう。VB6に関してはすでにサポートが終了しているため、継続利用には注意が必要です。安心して利用するためには、速やかにVisual Basic .NETへの移行をおすすめします。
自社で移行作業を行うのは難しいという企業も多いでしょう。そこで利用したいのが、VBのマイグレーションに長けたシステム開発会社に依頼する方法です。しかし、自社に見合った企業を見つけるのには時間も手間もかかります。システム関連会社に特化し開発パートナー選定サービスを行う「発注ナビ」なら、最適な会社を探すことが可能です。業界を熟知した専門スタッフが在籍しているため、しっかりとヒアリングを行い、よりマッチした会社をご紹介します。ご相談から見積もりまで無料でご利用できるため、ぜひお気軽にご相談ください。
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