「発注ナビ」にご登録いただいている開発会社の皆様が発注ナビの導入に至った経緯、その使用感、そして導入後のビジネスの変化は、どのようなものだろうか。株式会社メビウスボックスの代表取締役である湯浅清氏にお話を伺った。
社名 | 株式会社メビウスボックス |
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所在地 | 東京都新宿区袋町5-1 FARO神楽坂301 |
従業員数 | 1 – 30名 |
事業内容 | AIサービスの開発・ビッグデータ解析 アジャイル・ウオーターフォール受託開発 業務分析から開始するサービス提案等のコンサルティング インフラサーバ構築・運用 |
掲載カテゴリ |
- 導入前の課題
会社設立後しばらくはリファラル営業で事足りていたが、あるとき大規模案件に対応するため人員を拡充。採用したエンジニアのため、大規模案件終了後に向けた何らかの営業手段が必要だった。また、単なる価格競争ではなく、商談を通じて自社の魅力をお客様に知って欲しいという思いもあった。
- 導入後の効果
案件数が豊富なことに加え、お客様に自社の魅力を伝えることができ、直近の3案件は、価格ではなく内容面で競合他社に競り勝ち、受注できている。また、リピート率が高く1度受注したお客様の大半から繰り返し受注できているほか、失注したお客様から声がかかるケースも複数あった。お客様に直接提案できるため、現場エンジニアの意識も高まった。
エンジニアの声を大切にし、お客様の課題解決を最優先に
株式会社メビウスボックスは、もともとエンジニアだった湯浅清氏が「エンジニアが活躍できる会社を設立したい」という思いから、2010年に設立した会社だ。
湯浅氏は「営業と戦って負けるのは理不尽なこと」という思いから独立を決意。「営業と戦う」と言っても、喧嘩をするというわけではない。たとえば、本来はお客様の課題を解決するのに最適な技術やノウハウがあるのに、営業サイドの都合で、それができないというケースや、自社の利益を優先するがゆえに、エンジニア本来のスキルや能力が軽視されていることに納得がいかないというものだ。
独立後しばらくは、個人でエンジニアとして活動してきた湯浅氏だが、顧客から、開発案件を受注するのに法人格でないと発注できないケースがあるという声があり、それに応えるために同社を設立。同氏の顧客第一主義はこうしたところにも、よく表れている。
会社設立からしばらくは、スタッフは湯浅氏一人だった。受注のための営業はエンジニア仲間からの紹介、いわゆるリファラル営業だったという。
湯浅氏は当時を振り返る。
「主に企業内で利用する業務システムの領域を手掛け、業務コンサルティング、システムコンサルティングを得意としていました」
業種を問わず手掛けていたため懐は深く、リファラル営業で持ちかけられる案件は業種・業界を問わず幅広く受け入れていたが、その一方で「これ」といった得意分野がなかったため、多くの開発会社の中に埋もれてしまい、顧客側からなかなか同社を見つけてもらえないという課題を、湯浅氏は認識していた。
その課題がより大きく同社にのしかかるきっかけが2015年にあった。
「当社としてはそれまでにないほどの大規模な案件を受注しました。1つの案件にかかりきりになるので、さすがに今までのように手の空いているエンジニア仲間を集めて、というわけにはいかず、自社でエンジニアを採用していくことになりました」
目の前の大規模案件に対して、新卒から育成というわけにもいかず、即戦力となる経験者を採用していった。ちなみに現在同社は12名のエンジニアを擁するまでに成長している。
そうして大規模案件も終盤に差し掛かれば、採用したエンジニアのためにも、新規案件を獲得していかなければならなかった。2017年頃のことで、このとき同社が選んだのは、発注ナビとは別のサービスだった。
「発注を希望するお客様企業に対して、こちらからテキストで紹介文を書き、お見積りを提出して、後は選んでくださるのを待つというタイプのサービスでした。しかし、それでは当社の強みを上手く伝えることができません。また、個人事業主も加入しているサービスだったため、価格勝負になる傾向があり、なかなか受注できませんでした」
決め手は、お客様と直接お話しができ、自社の強みや魅力を伝えられること
そのような中、発注ナビを見つけたという。他社サービスの契約がまだ残っていたこともあり、経費面も考え、重複しないようにまずは無料の案件情報閲覧プランからスタートした。2019年4月のことだ。
「どれぐらい案件数があるのか、まずは無料登録で様子を見ようという考えもありました。結果として、それまで利用していた他社サービスとは比較にならないほど、発注ナビの案件数が多いことに驚きました」
そこで、いい案件があればスポットでエントリーできる「リードジェンプラン」を利用し、まずは小さな案件にエントリーして案件受注までの流れを確かめることにしたという。
「印象的だったのは、エントリーしてから、お客様をご紹介いただいた以降は、こちらからお客様にアプローチして直接お話しができるという点でした。今までは、発注が決まってからでないとお客様と話せなかったので、当社のご提案を詳しくご説明する機会もなく、当社の強みを知っていただくことができなかっただけに、これは大きな違いでした」
「お客様と話せるのは大きなチャンス」と実感し無料登録から、1ヶ月単位で自由に案件獲得時期を設定できる「セレクトプラン」に切り替えた。
営業時のプレゼンは相手に合った方法で不安の解消に努める
湯浅氏の中では、発注ナビで初めて受注したときのことが印象深いという。
「まだ新型コロナウイルス感染流行が本格化する前のことでしたが、発注ナビで紹介された競合他社は、オンラインでお客様と商談していました。しかし、そのお客様はIT部門をお持ちでなかったので、当社は直接お客様のもとに足を運び、ご担当者と対面で商談しました」
聞けば、他社の提案はシステム部分に終始した提案書のみだったという。しかし、お客様が本当に知りたかったのは、提案書以外の部分だったことが分かった。
「提案書以外の部分についても、対面で商談することで丁寧にご説明し、不安を解消することができ、それが受注につながりました」
その一件以来、同社はプレゼン内容も修正していった。現在は、なかなか対面での商談が行えないため、提案書を工夫している。
情報システム部門を置くような大企業への提案は、システムに関する部分を作り込み、システムに対する不安を払拭することを心がけ、専任の情報システム担当がいない中小規模の企業への提案では、システム上の細かな点よりも、たとえば予算面や導入後の運用などへの不安を解消するように構成にした。
エンジニアの声を反映した誠実な対応がお客様の信頼にもつながった
また技術的な質問に対しては、丁寧な説明を行い、お客様の利益につながらないときは「NO」を突きつけることも辞さないという。
「たとえばお客様から『最近よく耳にするクラウドにしたい』というご要望があったとしても、お客様のビジネスを分析した結果、その必要が無ければ、あえてその旨をお伝えすることもあります」
聞き取りの結果、既存システムを一気に作り直すよりも、部分的に必要なところから手をかけていったほうが良いのでは、と提案することもあるという。
自社の売上を優先する営業的判断ではなく、あくまでもエンジニアとして「正しい」かどうかを判断基準にして提案を行うのは、まさに湯浅氏が同社を設立した理念が表れていると言える。もちろん、良かれと思った提案だが、結果としてそれがアダになり、失注してしまうこともあるという。
しかし同社のスタンスは、エンジニアの声を無視した開発は行わないというもの。それでもこれまでに発注ナビ経由では10件のお客様と商談し、5件(計2000万円)の受注に成功しており、この成約率は他社に比べて高い。
「日々、学習しています。提案で競り負けた場合は、なぜダメだったのかを、お客様に教えてもらうようにしています。金額と言われればあきらめるしかありません」
しかし一方で、そうした取り組みが、お客様から信頼されるケースが増えつつある。
「直近の3案件はすべて競りかって受注に至っています」
さらに、発注ナビで受注したお客様とは1社を除き、その後もリピートで関係が続いているという。たとえ失注しても、それで終わらないこともある。
「あるお客様の案件では、最終まで候補に残り、感触もかなり良かったのですが、結果として受注には至りませんでした。理由は現場の方々の印象が今一つだったとお聞きしています。ところが、そのお客様に年始のご挨拶をさせていただくと、別の開発案件を打診されました。1月から9月までかかる大型のシステム開発でした。情報システム担当の方は、当社のことをきちんと理解してくださっていたことがわかり、とても嬉しかったですね」
ほかにも、エントリーした案件自体は失注したものの、他社の開発案件を紹介してくれたケースもあったという。
「こうしてきちんと商談をして、後につながる人と人との関係を構築すること、当社の良さを知ってもらうこと自体が、当社にとって大きな財産です。そういう意味で、発注ナビを選んだことに間違いはありませんでした」
現場の意識も向上! 受託開発と自社サービスの両輪でさらなる飛躍を目指す
発注ナビの運用法も少しずつ変わっていっているという。当初はエンジニアのスキルにマッチした案件選んでいたが、現在は、お客様の業務自体に興味・関心が持てるかどうかで選んでいるという。
「発注ナビ導入前から導入直後は、私が一人で営業活動を行っていましたが、次第に、提案に関われる、提案力が磨けるということで、プロジェクトを主導する管理層が参加するようになりました。担当が増えたことで、興味・関心が広がり、現在、さまざまな案件に目が向いています」
また、同社の開発現場においても「お客様が何を求めてこの案件を発注してきたのか」といった背景をきちんと把握して開発に取り組めるため、現場エンジニアにプラスの効果が出ているという。
こうしたエンジニアの興味・関心を自社の特徴、新たな強みにつなげていきたい考えもある。
「受託開発で資金を貯め、いずれは自社サービスを展開していきたいと考えています。他社と競うには何らかの分野に特化していることも重要です。何でもできますは、確かに間口が広がりますが、特徴が打ち出せなければ、その他大勢に埋もれてしまうこともあります」
そんな同社では2021年より、領収書電子化サービス「E-receipt」、ビニールハウス専用AI自動栽培サービス、そして訪問看護サービスを展開する株式会社N・フィールドで運用中の精神科向けAI サービス「TWiNSS」という3つの自社サービスを提供している。
「TWiNSSは収益化に成功していますが、E-receiptとビニールハウス専用AI自動栽培サービスはこれから。現在のところ主にエンジニアの採用に寄与しているという側面が大きい。AI関連は今後とも伸ばしていきたい当社の強みの1つです」
AIは、あくまでも強みの1つ。エンジニアの興味・関心が向く業務ならば、今後も積極的に受託開発案件に積極的に取り組んでいくという。
「もし自社に情報システム部門を置いていないお客様でしたら、当社を情報システム部門として使ってください。技術的にわからないことは何でも聞いてください。他社の提案についてどう思うか?ということでも構いません。当社としても、お客様が相談しやすい雰囲気作りに、より一層注力していきたいと考えています」
●Infomation:
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