ECサイトを製作する際、サイトの仕組みや規模感によって大きくコストが変わってきます。しかし、コスト面で十分なECサイトが作れないという状況が発生するのを減らすために、ECサイトの構築で利用できる補助金や助成金の制度が用意されています。そこで今回は、ECサイトの補助金や助成金を得る方法を知りたい方に向けて、ECサイトで利用できる補助金や助成金、申請から受給までの流れなどを詳しく紹介します。
目次
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ECサイトの制作はお金がかかる?
ECサイトは、自社の商品やサービスをインターネット上で販売するサイトで、いくつもの商品ページを用意する必要があります。そのため、サイトが複雑化しやすく、どうしても大きなコストがかかってしまいがちです。
最近では、「モール型」のように手軽な形で出品できるECサイトも増えてきています。ですが、本格的なECサイトを制作するなら専門的な知識やノウハウが欠かせません。ECサイトの構築の知識はもちろん、CV導線やSEO・マーケティングについての知識も求められるため、その知識まで十分にもっているシステム開発会社への依頼が必要です。
ここでいうCV導線は、サイトの運営側が作った「ユーザーが商品やサービスを購入してもらえるような経路」のことです。これらを加味したECサイトを構築するには、Webデザインやマーケティングのスキルがないと立案が難しいでしょう。ECサイト構築におすすめの会社については、以下のページで紹介しています。ECサイトのアウトソーシングを検討しているはチェックしてみてください。
ユーザーにとって使いやすい規模が大きめのECサイトを制作するとなると、少なくとも百万円近くのコストがかかってしまいます。その費用を抑えるために、ECサイト制作に関する助成金や補助金を積極的に利用していきましょう。
利用できる企業向けの助成金・補助金とは
ECサイト制作で利用できる企業向けの補助金や助成金として、以下のものが挙げられます。
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IT導入補助金
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事業再構築補助金
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ものづくり補助金
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各自治体が設けている補助金
●IT導入補助金
IT導入補助金は経済産業省が管轄している補助金で、ITツール全般を導入する場合に申請できます。IT導入補助金が受けられる対象の範囲や金額などは、以下の表の通りです。
IT導入補助金 | ||
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補助対象 | 中小企業 | 小規模事業者 |
補助対象業種 | 製造業 建設業 運輸業 卸売業 サービス業 小売業 ゴム製品製造業 ソフトウェア業または情報処理サービス業 旅館業など |
商業、サービス業 宿泊業、娯楽業 製造業など |
補助金 | A類(補助率2分の1/補助額30万~150万円) B類(補助率2分の1/補助額150万~450万円) C類(補助率3分の2/補助額30万~450万円) D類(補助率2分の1/補助額30万~150万円) |
受けられる対象は中小企業や小規模事業者のみとなっていて、対象となる業種は細かく決められています。また、補助金の種類はAからDの4種類の枠です。この4種類の枠についてはこのあと詳しく説明していきます。対象となっている業種が限定されている一方、もらえる金額が高めです。申請できる頻度も数ヶ月に1回程度で申請しやすく、もし申請を逃しても長い間待つことなく申請できます。IT導入補助金、4種類の枠の金額や補助率、ツール要件などは以下の表の通りです。
補助金額 | 補助率 | プロセス数 | ツール要件 | 補助対象 | |
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A類 | 30万~150万円 | 1/2以内 | 1以上 | 労働生産性の向上を可能としたITツールであること | ソフトウェア導入費用 |
B類 | 150万~450万円 | 4以上 | |||
C類-1 | 30万~300万円 | 2/3以内 | 2以上 | 複数のプロセスの非対面化や 業務効率化を可能としたITツールであること |
ソフトウェア導入費用 ハードウェアレンタル費用 |
C類-2 | 300万~450万円 | ||||
D類 | 30万~150万円 | クラウド環境に対応しつつ、非対面化や 業務効率化を可能としたITツールであること |
A類やB類が業務効率の向上を要件とした補助金、C類がそれに加えて業務時の非対面化を要件とした補助金、D類がさらにクラウド環境への対応を要件とした補助金です。もらえる金額の補助率がそれぞれで決まっていて、かつ指定された補助金額がもらえる金額の上限となっています。
プロセス数は「業務工程や業務種別の数」のことで、B類になると4工程以上が必要となります。業務効率化だけならソフトウェアの新調で十分として、A類やB類はハードウェアのレンタル目的では補助金がもらえない点に注意しましょう。ちなみに、ECサイト制作の場合、補助率の高さからC型での申請がおすすめです。
●事業再構築補助金
事業再構築補助金はIT導入補助金と同じく経済産業省が管轄している補助金です、新分野展開や業種の転換、事業再編などの取り組みで利用できます。事業再構築補助金が受けられる対象の範囲や金額などは、以下の表の通りです。
事業再構築補助金 | ||
---|---|---|
補助対象 | 緊急事態宣言によって一時的に月の売上が対前年または前々年の同月比で30%以上 減少している事業者 | |
新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編をする事業者 | ||
認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する事業者 | ||
補助対象業種 | なし | |
補助金 | 中小企業 | 中堅企業 |
従業員20人以下:100万~4,000万円(補助率:2/3) | 従業員20人以下:100万~4,000万円(補助率:1/2) | |
従業員21人~50人:100万~6,000万円(補助率:2/3) | 従業員21~50人:100万~6,000万円(補助率:1/2) | |
従業員51人以上:100万~8,000万円(補助率:2/3) | 従業員51人以上:100万~8,000万円(補助率:1/2) |
補助対象は緊急事態宣言などで大幅に売上が減少して事業の立て直しを目指す事業者や新たな事業分野に挑戦する事業者などとなっています。業種の縛りは特になく、もらえる金額は従業員の数によって上限値が大きく変わります。中小企業と中堅企業で補助率の割合が変わり、中小企業に対してかなり手厚いです。
●ものづくり補助金
ものづくり補助金も経済産業省が管轄している補助金で、中小企業などの生産性の向上を目指しつつ、新たな商品・サービスの開発や改良を目的として利用できる補助金です。ものづくり補助金が受けられる対象の範囲や金額などは、以下をご参照ください。
ものづくり補助金 | |
---|---|
補助対象 | 中小企業・小規模事業者 |
補助対象業種 | なし |
補助金 | 一般型(通常枠):上限1,000万円(中小企業補助率:1/2 小規模事業者補助率:2/3) |
一般型(低感染リスク型ビジネス枠):上限1,000万円(補助率:2/3) | |
グローバル展開型:上限3,000万円(中小企業補助率:1/2 小規模事業者補助率:2/3) | |
ビジネスモデル構築型:上限1億円(補助率:2/3) |
ものづくり補助金は補助対象の企業や業種にほとんど縛りがなく、誰でも利用しやすい補助金です。補助金は一般型とグローバル展開型、ビジネスモデル型の3種類あり、補助金額の上限はもちろん、中小企業か小規模事業者かで補助率が異なります。補助金の利用目的によってどの型になるか変わるため、申請前にきちんと確認を取りましょう。
申請スケジュールは第9回が上記日程で締め切り、通常通りであれば申請終了後にすぐ次の公募が開始されます。今回の日程で準備が難しい方は、焦って今回申請をせずに、次回すぐに申請できるように準備を進めておくのをおすすめします。
●各自治体が設けている補助金
ほかにも各自治体で用意している補助金がいくつも存在します。例えば、東京都の中央区ではECサイト活用補助金が用意されています。ECサイト活用補助金が受けられる対象の範囲や金額などは以下の表の通りです。
ECサイト活用補助金 | |
---|---|
補助対象 | 区内に本社あるいは本店のある中小企業者 |
補助対象業種 | 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条に規定されている業種以外 |
補助金 | 上限6万円 |
ECサイト活用補助金は中央区内の中小企業者を対象としていて、業種は風俗営業など以外のものであればすべて対象となっています。
上限は6万円までと国が設けている補助金よりは安い金額となっています。
個人事業主向けの補助金はないの?
ここまでご紹介した補助金は企業向けのもので、個人事業主向けのものではありません。個人事業主でも企業でも申請できる補助金として、「小規模事業者持続化補助金」が挙げられます。一般型と低感染リスク型ビジネス枠の2種類あり、ECサイトの場合なら低感染リスク型ビジネス枠で申請可能です。小規模事業者持続化補助金は商工会議所が管轄している補助金で、個人事業主でも申請できる数少ない補助金です。小規模事業者持続化補助金が受けられる対象の範囲や金額などは以下の表の通りです。
小規模事業者持続化補助金 | |
---|---|
補助対象 | 小規模事業者の要件を満たした企業や個人事業主、特定非営利活動法人 |
補助対象業種 | なし(業種により小規模事業者の人数が異なる) |
補助金 | 上限50万円(補助率:2/3) |
小規模事業者や特定非営利活動法人であれば、大抵の場合は申請できます。ただ、商業・サービス業なら従業員5人以下、宿泊業・娯楽業なら従業員20人以下といった形で小規模事業者の定義が業種によって異なります。個人事業主であれば問題ないですが、企業で申し込む場合は小規模事業者の定義を確認しましょう。
補助金・助成金の申請から受給までの流れ
今回ご紹介した5つの補助金や助成金の申請から受給までの流れを、1つずつ解説していきます。
●IT導入補助金
IT導入補助金は、以下の流れで申請を進めていきます。
- IT導入支援事業者の選定、ITツールの選択
- gBizIDプライムアカウントの取得、SECURITY ACTIONの実施
- 交付申請の事業計画の策定
- ITツールの発注、契約、支払い
- 事業実績報告
まずIT導入支援事業者と確保し、導入するITツールを決めていきます。次に、gBizIDプライムのアカウントを保有していない方はアカウント作成を進めてください。アカウント作成ができたら、中小企業・小規模事業者が情報セキュリティ対策に取り組むことを宣言するSECURITY ACTIONを実行していきます。
そこまで済んだらIT導入支援事業者と話し合って交付申請書を作成していきます。申請は公式サイトの「申請マイページ」から申請可能です。申請して、事務局から交付決定の通知を受けたらITツールの発注、契約、支払いなどが行えます。交付決定の通知が届く前にITツールの発注を進めてしまうと補助金がもらえなくなるため注意が必要です。ITツールの支払いまで完了したら、完了の旨を事業実績報告書に記載して事務局に提出します。この報告が完了すると補助金が交付されます。
●事業者再構築補助金
事業者再構築補助金は、以下の流れで申請を進めていきます。
- gBizIDプライムのアカウントの作成、ログイン
- 申請書類の提出、審査、審査結果の確認
- 補助金の交付審議申請
- 補助事業実施期間
IT導入補助金同様にgBizIDプライムアカウントを作成してログインします。必要な申請書類を提出して審査してもらいます。審査が終わると事務局から採択されたかどうか通知が届くため、その通知内容を確認してください。審査が終わってすぐもらえるわけではなく、そこから補助対象経費の精査をしてもらうために申請を出す必要があります。補助対象経費と認められない経費が含まれていると、支払われる額が減額され、実際に支払われる金額が確定します。提出した内容通りに経費を使ってください。
それから、申請に出した経費通りに事業を開き、12ヶ月から14ヶ月の補助事業実施期間で事業開始の準備を整えます。その期間が終わり、適切に経費を支払ったことが確認されたら補助金が支払われます。
●ものづくり補助金
ものづくり補助金は以下の流れで申請を進めていきます。
- gBizIDプライムのアカウントの作成、ログイン
- 申請受付、採択通知
- 交付申請、交付決定
- 補助事業実施、確定検査
こちらでも、gBizIDプライムの準備をします。それから必要な書類を準備して申請を出して、申請から1ヶ月半あるいは2ヶ月程度で採択結果の通知が届きます。事業者再構築補助金と同じように、ここで採択されたら交付の申請をして交付決定通知がもらえれば手続きを進めることが可能です。通知が届いたら事業開始の準備を進めて、補助事業実施期間である10ヶ月以内に、発注や契約、納品、検収、支払い、事業の成果がわかる実績報告書の準備が必要です。実績報告書を提出したら、事務局で交付される金額が確定して、実際に支払われます。
●各自治体が設けている補助金
例に挙げた中央区のECサイト活用補助金は、以下の流れで申請を進めていきます。
- 申請書を郵送で提出、審査
- 実績報告書の提出
ECサイト活用補助金の申請は簡単です。まずは専用の申請用紙の必要事項を記入して、郵送で提出します。審査が行われて、審査に通れば補助対象経費を先に支払ってください。それから実績報告書を提出して、きちんと経費を支払った事実確認がとれれば補助金が支払われます。
●小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、以下の流れで申請を進めていきます。
- 地域の商工会議所に申請書を提出、審査、採択通知
- 交付決定通知、補助事業実施
- 実績報告書の提出
申請報告書を作成したら、申請書を地域の商工会議所に提出します。それから審査が行われて、採択通知が1ヶ月半程度で送付され、受取完了後から1週間程度で交付決定通知が送付されます。受取完了したら、補助事業が開始可能です。補助事業終了後に実績報告書を提出して、実際に支払われます。
申請する時の注意点
補助金や助成金を申請する際には、以下の3つの点に注意が必要です。
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補助金・助成金の申請には多大なコストがかかる
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申請しても審査に通らないことがある
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補助金・助成金はすぐに交付されるわけではない
●補助金・助成金の申請には多大なコストがかかる
補助金や助成金の申請は複雑で、一人で正しく申請するのが難しいです。補助金や助成金の申請に代行業者を使う場合は、数万円程度のコストがかかります。着手に数万円かかり、実際に補助金が支払われたら追加で数万円を支払うプランもあります。
●申請しても審査に通らないことがある
正しく申請できていないのはもちろん、申請の内容を見て適切でないと判断されれば、審査に通らないこともあります。補助金の種類によっては、支払われる人数が決まっているものもあります。事前に支給対象者や支給条件などを細かく確認するようにしましょう。
●補助金・助成金はすぐに交付されるわけではない
補助金や助成金は1回あるいは2回の審査を経て、通ればすぐにもらえるわけではありません。正しく経費が支払われているか確認して、申請通りに支払われていることが確認できてから支払われます。先に自費で費用を払う必要のある補助金や助成金が多いため、先払いする分の資金を準備しておきましょう。また想定した分をきっちり受け取れるように、補助金の対象施策の実行内容と結果は細かく記載するようにしてみてください。
なお、補助金や助成金を申請する際は、補助金・助成金を運営する事業や団体のオフィシャルサイトを確認しながら行いましょう。オフィシャルサイト情では申請のガイドラインが公開されているので、申請のフローや必要書類などをより細かく確認できます。
納得のいくサイト作りのために補助金活用を
ECサイトの制作は内容次第では数万円で済ませられる一方で、何百万もかかる場合もあります。
自力で制作するのも1つの手段ですが、質の高いECサイトを用意して充実したサービスを提供する仕組みを作ることが大切です。妥協せずに成功が約束された先行投資をするつもりで、自分たちの求めるECサイトの構築を目指してみてください。その際にはコストを気にせず投資できるように、国や自治体の補助金を活用してみましょう。発注ナビでは、ECサイトの制作に実績がある開発会社の紹介が可能です。クオリティの高いサイト制作のため、まずはお気軽にご相談ください。
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