電子契約の利用が広まっています。業務効率化やコロナ禍によるテレワークの浸透、ペーパーレス化の推進などの影響で電子契約システムを導入する企業が増えてきているからです。
今回は、電子契約システムの基本機能の解説から、導入によるメリット、導入時に気をつけるべきことまでを解説しています。ぜひ本記事を参考に電子契約についての理解を深めてみてください。
目次
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電子契約システムの基本機能
電子契約システムとは、これまで紙の契約書に印鑑を押印して締結していた契約を、インターネット上の電子ファイルに電子押印・署名することで締結できるシステムです。契約の締結はもちろんのこと、契約書の保管や検索、外部サービスとの連携なども行えます。インターネット上で契約にかかわる業務を完結できるため、紙の契約書での押印・署名よりもスムーズに契約が締結できます。
電子契約システムの基本機能は主に下記のようなものが挙げられます。
●電子押印・署名、送付機能
紙の契約書に押印するように、電子でも押印、署名が行える機能です。法的な力を持たせるために、第三者機関(電子認証局・時刻認証局)が発行した「電子証明書」を契約書に埋め込み、本人による契約と証明させます。またメールアドレスの認証などによって本人確認を行い、署名での契約締結も可能です。
これらの契約書のやり取りはクラウド上で行う送付機能も備えています。クラウド上でのやり取りのため、紙の契約書に添付が必要だった収入印紙が不要となり、印紙税がかかることはありません。
●外部サービスとの連携機能
業務で活用する契約書は1つではありません。そのため外部サービスと連携させることで、ほかの業務システムで作成した契約書を送付させることも可能です。契約にかかわる業務を電子契約システム内ですべて完結できるため、業務効率化につながります。
●ワークフロー機能
契約にかかわる社内稟議の起案から承認までをすべてシステム上で行えます。紙の契約書のように押印まで時間がかかることなく、設定した承認ルートでスムーズに行えるのがメリットです。
●タスク管理機能
契約にかかわる業務のタスク管理を行えるのも特徴です。メンバーのタスクを一元管理できるのはもちろんのこと、タスクが少ないメンバーに業務を依頼することも可能です。
●電子署名・タイムスタンプ機能
電子署名とは文字どおり、インターネット上で契約書に署名を行うことです。電子契約では電子署名の有効性を示すために、タイムスタンプ機能が付与され、「誰が・いつ・どの契約書」について証明します。タイムスタンプ機能があることは、電子署名の有効性を示すと同時にコンプライアンスの強化にもつながります。
●原本保管機能
電子契約システムで作成し、契約した原本はすべてシステム上で管理ができます。システム上に保管されているため、契約書の原本を紛失するリスクはありません。また、検索機能も有しているため、後から契約書を探す時などもスムーズに見つけることが可能です。紙の契約書の保管と比較して、保管スペースが必要ないため、コスト削減につながります。
そのほかの便利な機能
電子契約システムに備わっているそのほかの便利機能について簡単に解説します。主な機能としては下記があります。
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進捗状況機能
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期限アラート機能
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案件一括管理機能
進捗状況機能はその名の通り、案件の進捗を確認する機能です。タスク管理機能と似ていますが、タスク管理はメンバーがやるべき業務を確認する機能です。進捗状況確認はメンバーではなく、案件に対しての進捗を確認するので、確認する対象が異なります。また、期限アラート機能は、契約満了が近い案件や更新が必要な案件などをアラートで知らせてくれる機能です。アラートで知らせてくれるため、契約漏れなどを防ぐことが可能です。
加えて企業では案件が多岐に渡る場合がほとんどです。そのため様々な案件を一括で管理できる機能を活用して、業務効率化につながるようになります。
電子契約システムを導入するメリット
電子契約システムを導入するメリットは主に下記の4点が挙げられます。
●経費・コスト削減につながる
電子契約システムの導入によって、経費・コスト削減につながります。なぜなら印紙税や契約書にかかわる人件費、紙の契約書の場合に必要な保管スペースのコストなどが削減できるからです。
紙での契約書には印紙税がかかってきます。一件の契約にかかる印紙税は高くはないですが、契約件数が増えれば増えるほど印紙税の支出は高くなっていきます。繰り返しになりますが、電子契約システムでは印紙税はかかってきません。そのため長期的に見ると大きな経費削減になるのが大きなメリットになります。ほかにも収入印紙を用意する手間や製本、郵送にかかる人件費もなくなるため経費の削減につながります。
また、契約書の原本を社内で保管している企業は多いでしょう。契約書が多くなれば、当然ですが保管スペースも広いスペースが必要です。電子契約システムではこれらの紙の契約書がなくなり、システム上で保管するため、物理的な保管スペースが必要ありません。こうした保管スペースにかかわるコストが削減できるのもメリットです。
●コンプライアンスの強化ができる
電子契約システムでは「いつ・誰が・どの契約書」にサインしたか、また、締結した契約書をいつ受信したかなどのログを残すことが可能です。契約にかかわる情報が可視化されるため、コンプライアンスの強化につながります。また閲覧制限などをかけることで、より情報の機密性が高まります。
紙の契約書だと、紛失や改ざんなどが行われてしまうことで追跡が困難になります。しかし電子契約システムはすべてインターネット上でのやり取りになるため、改ざんなどが起こった場合でも対応が迅速に行えます。
●業務効率の向上が期待できる
電子契約システムはインターネット上で契約書の作成から締結、原本管理までを行うので業務効率の向上が期待できます。なぜなら契約書の管理や検索が容易になるからです。紙の契約書での原本管理がなくなり、物理的に保管する手間が省けます。また、紙の契約書だと後から契約書を確認する時に原本を探すのに時間がかかってしまいますが、電子契約システムだと検索をかけることで瞬時に表示させることが可能です。
●契約がシステム内で完結する
電子契約システムは契約にかかわる業務がシステム内ですべて完結します。そのため契約業務のスピードアップにつながります。紙の契約書の場合は製本から捺印、送付、返送と多くの手間と時間がかかってしまうのが現状です。時間がかかってしまうと、月末までの契約が完了しないなど業務負担も大きくなってしまいます。システムを利用することで、これらの業務がリアルタイムに近い形で進行でき、完結まで至るのは業務の大きなメリットといえるでしょう。
電子契約システムは法的に有効なのか
結論からいえば、電子契約システムで締結した契約は法的に有効になります。なぜなら「電子署名法」によって、きちんと条件が満たされた電子署名がされた電子契約は紙の契約と同等の効力があると示されているからです。
電子契約で必要な条件は、誰が・どのように文書にかかわったのかを証明する「電子署名」と、いつ電子署名がされたのかを証明する「タイムスタンプ」があることです。電子契約システムにはこの2つの機能が標準で装備されているため、「電子署名法」の条件を満たしています。そのため電子契約システムは法的に有効になります。
ちなみに厳密な説明をすると電子署名には当事者型と立会人型があり、立会人型の法的効力は検討中であるものの政府が有効であるという見解を示しているのが現状です。現在クラウドタイプなどで利用できるのは立会人型のシステムです。
電子契約システムを導入する時のポイント
電子契約システムを導入する時のポイントは主に下記の6点です。
●導入する目的を明確にする
電子契約システムに限らず、システムを導入する際は導入する目的を明確にすることが大切です。なぜなら目的が明確でないと、システムを導入することが目的になってしまい、本当に効果が得られているかわからないからです。契約の手間を減らして業務効率化を図りたい、印紙税による支出や人件費をここまで下げたいから導入するなど目的は企業によって異なります。ぜひ自社が導入する目的を明確にしたうえで、どのシステムにするかを検討してみてください。
●費用対効果が見込めるかを検討する
電子契約システムを導入しても費用対効果が見込めなければ、導入する意義がありません。電子契約システムには多くの種類があるため、どのシステムを導入するかで費用が大きく異なってきます。
初期導入費用やランニングコストなどを加味したうえで、投資する金額を決定するようにしましょう。また電子契約システム単体ではなく、連携したいシステムと重複する機能はないかなどを確認する、業務にかかわるシステムを電子契約システムに集約させるなどで、総合的なコスト削減も可能です。きちんと利益が得られるように検討しましょう。
●汎用性・拡張性のあるシステムか比較する
汎用性・拡張性のあるシステムか比較するのもポイントです。なぜなら汎用性や拡張性があるシステムはほかのシステムと連携がしやすい、利便性が高いなどがあるからです。
例えば電子契約システムの中には、自社がアカウントを保持していても取引先にアカウントがなければ利用できないシステムなどがあります。そうしたシステムを選択してしまうと、いつまでも紙の契約書での手続きになり、業務効率は変わっていきません。自社ですでに利用しているシステムと連携はとれるか、取引先のアカウントは必要かなど、汎用性・拡張性があるかどうかを比較しましょう。
●コンプライアンスが考慮されているシステムを選ぶ
電子契約システムを導入するメリットの1つが、コンプライアンスの強化ができることです。そのためコンプライアンスが考慮されているシステムを選ぶことは大切なポイントです。「いつ・誰が・何をしたのか」を追えるか、契約期限が切れそうな契約書の対応がスムーズにできるか、気密性を保持して保管できるかなど、コンプライアンスが強化できるシステムを選ぶと良いでしょう。
●セキュリティが万全かどうか確認する
繰り返しになりますが、電子契約システムはインターネット上で契約を締結し、原本を保管するものになります。従来の紙の契約書であれば、ロッカーに保管をして鍵をかけるなど物理的な保管が可能でした。しかし電子契約システムは、インターネット上での保管になるためセキュリティが万全でなければ、データが流出するリスクもあります。そのためセキュリティは最重要課題といっても過言ではありません。
暗号化技術などを用いているか、監視機能はどのようになっているかなど、万全なセキュリティ環境が整えられるシステムをお選びください。
●予算内で収まるシステムを選ぶ
電子契約システムは必要最低限の機能を備えているものから、高度な機能まで備えているものまで幅があります。そのため予算を設定し、その予算内に収まるシステムを選びましょう。
予算内に収めるためには、自社にとって必要なシステムはどれか、ほかのシステムと連携することで利用しないシステムはないかなどを確認することが大切です。予算を超えてしまうと、費用対効果が得られるハードルも上がってしまいます。そのためきちんと精査を行うようにしましょう。
電子契約システムの費用相場はどれくらい?
電子契約システムは導入時にかかる初期費用と月額でかかるランニングコストの2つを合わせて考えます。
導入にかかる初期費用は自社の環境や導入するシステムによって変わってきますので、導入を依頼する会社にきちんと見積もりを出してもらうことが大切です。一方で、月額でかかるランニングコストは一般的に1万円から5万円ほどです。利用する機能が多ければ多いほどランニングコストも上がっていくため、導入前にきちんと精査することが大事になります。
●低価格プランでローコスト化を狙う
電子契約システムの中には低価格プランで利用できるものもあります。具体的にはある会社は期限アラート機能をつけて月額1万円から利用可能、ほかの会社はワークフロー認証をつけて月額1万円で利用可能などです。低価格プランの選択は自社に必要な機能をピンポイントで利用するのに適しています。
電子契約システムを導入する時に気をつけたいこと
電子契約システムを導入する時に気をつけたいことには以下の3点です。
●周囲に導入を理解してもらう必要がある
電子契約システム導入を行うことで、業務フローの変更やシステムの操作を覚える必要が出てきます。そのため社内には電子契約システムに抵抗を感じる人もいるでしょう。
導入のためには周囲に導入を理解してもらう必要が出てきます。導入には多くの人の協力が必要なため、電子契約システムのメリットや導入時のフォロー体制などを丁寧に伝え、理解を得るようにしていきましょう。理解が得られないまま導入を進めてしまえば、電子契約システムを最大限に活かすことにつながらないため、注意が必要です。
●相手方にもコストや手間が生じる
電子契約システムは自社で導入して終わりではありません。取引先にも電子契約を行ってもらうために、アカウントを取得してもらう、必要な対応をしてもらうなど手間が生じてしまうケースもあります。そのため導入前に取引先にも説明を行い、初めて電子契約を行う際には操作方法などをフォローするように体制を整えておく必要があります。
●電子契約ができない書類もある
電子契約はすべての書類に対応はしていません。現状ではほとんどの書類で電子契約は可能ですが、下記の書類は紙での契約が義務づけられています。
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定期建物賃貸借契約
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定期借地契約
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不動産取引における重要事項説明書等
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マンション管理業務委託契約
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特定継続役務提供などにおける契約前後の契約等書面
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金融商品クーリングオフ書面
自社で取り扱う契約書に電子契約ができないものはないか、導入前にきちんと確認しておくことが必要です。
導入の目的を明確にして上手に業務効率化を
電子契約は今後も法整備が進み、さらに世の中に浸透していくことが予想されます。
電子契約システムの導入により、業務効率化やコストの削減など多くのメリットを受けられるでしょう。しかし闇雲に導入してしまっては費用対効果を得ることはできません。自社が導入する目的は何か、目的を達成するために必要な機能は何かなど、きちんと精査したうえで進めていくことが大切です。
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