ひと口に「システム開発」と言っても、開発するシステムによってはWeb系やオープン系、汎用系などの種類に区分されるケースも少なくありません。
ここでは、汎用系システムの導入や開発を検討している企業担当者に向けて、汎用系のシステム開発の概要や機能、メリットやデメリット、具体的なシステム例について解説します。
目次
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そもそも「汎用機」とは?
汎用系システムを紹介する前に、まずは「汎用機」についてカンタンに解説しましょう。
汎用機は、現在世間に普及しているパソコンやスマートフォンが生まれる前に主流だったコンピュータを指します。銀行や保険会社政府機関のように「大規模なデータを扱う企業や機関」に設置されているコンピュータで、膨大なデータを超高速で処理できる性能が特徴です。企業や機関によっては、汎用機のことを「メインフレーム」や「汎用コンピュータ」と呼ぶこともあります。
わかりやすく言えば、「汎用機とは業務用の大型コンピュータの一種」という認識でも構いません。
「汎用」という名前から、多彩な用途に使えるパソコン(またはスマートフォン)と汎用機を混同してしまうケースもしばしばですが、「まったくの別物」という点を留意しておきましょう。この汎用機は、IT企業や電機メーカーなどが製造を手掛けていますが、内部のシステムやソフトウェアは「メーカーのオリジナル」というケースがほとんどです。
汎用系システムとは?
さて汎用系とは、そんな汎用機(メインフレーム)に組み込むシステム、または「汎用機を基軸にシステム開発を行うこと」を指します。
先に挙げた通り、汎用機には膨大なデータが蓄積されており、これらのデータを処理するシステムが「汎用系システム」なのです。このシステムの開発や運用保守、再構築を担うエンジニアのことを「汎用系エンジニア」と呼びます。なお、開発したシステムを「汎用機だけに使用する」という特性から、汎用系システムのことを「クローズド(閉鎖的)」と呼ぶケースも多々あります。
汎用系について基本情報を学んだ所で、汎用系以外のシステムに該当する「オープン系」や「WEB系」についても紹介します。
●「オープン系」や「Web系」との違い
名前 | 意味 |
---|---|
汎用系システム | 汎用機に組み込むシステムのこと |
オープン系システム | パソコンやスマートフォンで稼働するシステムのこと |
WEB系システム | インターネット接続を前提としたシステムのこと |
オープン系システムは汎用機ではなく、小型コンピュータ(パソコンやスマートフォンなど)で動かすシステムのことです。汎用系システムが持つ「汎用機だけ」という特性とは真逆に、オープン系は様々なコンピュータで使用することを想定しているため、閉鎖的を意味するクローズドに対して「オープン」という名が付けられているのです。
この、オープン系の派生として「Web系」と呼ばれるシステムも存在します。その名の通り、Web系は「インターネット接続を前提としたシステム」です。Web系の具体例としては、SNSや通販サイトといったシステムがあります。オープン系と一括りにされることも多いWeb系ですが、オープン系はインターネット接続が必須ではないため、インターネット接続が前提のシステムをWeb系と分類しているのです。
汎用系システムのメリット
「インターネット社会」と呼ばれて久しい現代では、パソコンやスマートフォン上で稼働するオープン系やWeb系が主流となりつつあります。減少しつつある汎用系システムには、オープン系やWeb系と比較をしてどのようなメリットがあるのでしょうか。以下では、業務に汎用系システムを導入するメリットとデメリットを紹介します。
●動作の安定性やセキュリティ性が高い
オープン系やWeb系のシステムは、様々なコンピュータまたはインターネットを通じた使用を想定している分、環境によっては「システムが動作しない」、「外部からの攻撃を受けやすい」という特徴があります。汎用系システムは、「汎用機だけで稼働する」という特性上、動作の安定性と高いセキュリティ性があります。
すでに汎用系システムを導入している企業の場合、長年運用し続けてきたシステムをオープン系に移行するには、かなりのコストがかかります。加えて、オープン系へ移行したからといって、今まで積み重ねてきた「システムやセキュリティの信頼性」を担保できるわけではありません。動作やセキュリティ性の安定感は、汎用系システムにおけるメリットと呼べるでしょう。
●大規模なデータを処理しやすい
汎用機を用いる業種は、銀行・保険・カード会社など、膨大なデータを秒単位で処理する必要性がある金融系が多くを占めています。これは、汎用系に使用される「COBOL」という言語が、事務処理用に開発された非理系向けのプログラミング言語だからという背景があります。英文さながらの可読性の高さは、エンジニアではない事務員や官吏でも書けるようにという配慮からですし、演算機能も事務処理に特化しています。
とはいえ繰り返しになりますが、汎用系は今や「古いシステム」とみなされており、オープン系への移行が着々と進んでいます。しかしIT事情に明るくなければ、問題なく動いているシステムを一新させるメリットはまったく感じられないでしょう。それゆえに「汎用系=ITに明るくない企業が採用し続けている古いシステム」という立ち位置にあるのは否めませんが、上記のように「汎用系」を稼働し続けるメリットは少なからず存在するのです。
汎用系システムのデメリット
●導入そのものに大きなコストが発生する
大型コンピュータである汎用機は、処理能力の高さこそメリットと呼べますが、膨大なデータを扱わない企業にとっては性能を持て余しがちです。処理速度や安定性よりも、システムの柔軟性や拡張性を求める場合は、汎用機や汎用系システムの恩恵を享受しにくいのです。時代を経るごとに、コンピュータの性能はみるみる向上していき、汎用機と比べても見劣りをしないパソコンや携帯デバイスが安価で手に入るようになりました。
端的に言えば、技術が進歩するにつれて「業務のシステムはオープン系やWeb系で賄える」という状況になりつつあるのです。汎用機や汎用系システムは運用や開発費が高く、オープン系やWeb系と比べてコストパフォーマンスに劣る点がデメリットとしてまず挙げられます。
●ベンダー依存に陥りやすい
システムに特定の開発元企業(ベンダー)独自のサービスや製品を組み込むことで、他のベンダーやシステムへの切り替えが困難になることを「ベンダー依存」と呼びます。汎用機は、大企業や政府機関など向けのクローズドなコンピュータで、内部の設計や部品、OS、アプリケーションソフトまで、ほとんどがベンダーによる独自仕様・独自開発です。このため、汎用系は組み立てから保守まで、すべての工程をベンダーが独占受注する形が多く、ベンダーありきのシステムが完成してしまいます。
たとえ現行システムに問題を感じていたとしても、現在のシステムを保守できなくなる可能性を考えると簡単に切り替えることができません。結果として、ベンダーが提供する製品に固定せざるを得ない状況になるうえ、開発コストもベンダーにコントロールされてしまうというデメリットがあります。
●エンジニアを見つけにくい
汎用機や汎用系システムが廃れつつあることに比例して、これらを支えるエンジニアの数も減少しています。
現在も汎用系が現役で稼働しているために、保守のためには汎用系エンジニアが必要とされているのは確かです。しかし、オープン系と比較をすれば、技術者を見つけにくいという側面がある分、新たに汎用系システムを導入するといった試みはおすすめできません。汎用系は、あくまでも「昔から使い続けているケース」において、メリットを発揮するシステムという点を留意しておきましょう。
汎用系システムのメリットとデメリットまとめ | |
---|---|
メリット | デメリット |
動作の安定性が高い | 導入に大きなコストが発生する |
セキュリティ性が高い | ベンダー依存に陥りやすい |
大規模なデータを処理しやすい | エンジニアを見つけにくい |
汎用系システムは何に使用されている?
最後に、汎用系システムの具体的な使用例について紹介しましょう。汎用系が用いられている例として、銀行や保険会社などの金融系の基幹システム、国税庁や年金といった政府機関の基幹システムが挙げられます。いずれも大規模なデータを扱う、セキュリティ性が求められるという特性上、汎用系システムが採用される、汎用系システムが使われ続けているという事情があるのです。
今回は、汎用系のシステム開発の概要や機能、メリットやデメリットについて詳しく紹介しました。
汎用系システムは、システムの構築から保守運用までを特定のベンダーが独占受注する形で行われており、IT部分をベンダーに頼りきりになってしまうというデメリットはありますが、利用するユーザーが一定数いる以上、システムを放り出してリセットするという判断も下しにくいのが現状です。汎用系は技術者の高齢化による人材不足から需要が高くなっているように見えますが、新たな需要が生まれるとは考えにくい技術なのです。
とはいえ一定の需要がある分、開発企業によっては「汎用系システムを得意とする企業」も多く、開発を承っていることも珍しくありません。もしも「汎用系に特化したエンジニアがいない」、「汎用系のシステムを導入したい」という企業担当者の方がいれば、外注という形でシステム開発を依頼するのも良い方法と言えるでしょう。
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