システム設計や開発において試作は欠かせません。試作には、認識の擦り合わせや、完成イメージの共有などに便利な「プロトタイプ」の活用が効果的です。プロトタイプを活用することで、工程の差し戻しといったトラブルを減らしながら、コストの無駄を防いで効率的な開発ができます。
本記事ではプロトタイプの意味や使い方について、ご紹介します。
目次
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さまざまな「プロトタイプ」の意味
プロトタイプとは、製品化される前の「原型・試作品」のことを指します。有形であるとは限らず、広義では以下をプロトタイプと呼ぶこともあります。
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商品を制作する際の基本となる試作品
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鉄道の量産前に試験運用を行うための先行量産車
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試験走行を行うための試作車
●IT業界での意味
IT業界でプロトタイプを使うのは「ITにかかわる商品・システムの原型となるものを制作する時」です。IT商材やシステムの原型となる試作品を、プロトタイプと表現します。
プロトタイプで制作される原型は、素材、機能、サイズ、色などの条件を、将来生産する可能性がある商品・システムと同じ仕様にするのが基本です。
実際に生産するものと同じ条件にして検証を行うと、問題点が見つけやすくなります。プロトタイプの実験で問題点を解決・あるいは見つからなければ、実際に生産を開始する工程に移行します。
プロトタイプは「実際に生産しても問題ないか、試作品を1つ作っていろいろな検証を行う」目的で作られます。IT業界においてビジネス戦略を成功させるために欠かせない、基本的な手段の1つです。
●プロトタイプ宣言について
IT業界をさらに限定してプログラミング言語に言及する場合、「プロトタイプ宣言」という言葉が使われるケースがあります。プロトタイプ宣言は、プログラミング言語において、関数の名前だけを先に記述して使えるようにする手法のことです。
通常のプログラミング言語では、独自の処理内容を記載した関数が使われます。関数はループ内容や処理対象となる要素などを指定した記述の一式です。例えば「func A」という関数は事前に記述していないと、いきなりほかの関数で使用できません。つまり以下のような順番で読み込みを行います。
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使いたい関数(func Aなど)をあらかじめ記述する
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ほかの関数で呼び出して使う
構文の読みやすさなどを考えて、最初に使いたい関数名だけを宣言し、ほかの関数で呼び出し、呼び出した関数の具体的な内容を記述する、という手法が使われます。こういった手法が、プロトタイプ宣言です。
関数名さえ最初に指定しておけば内容のルール決めがあとになっても、事前にほかの関数で呼び出して使えます。
プロトタイプを作る目的
プロトタイプを制作するのには、次のような理由があります。
●ユーザーにテスト体験してもらうため
プロトタイプを制作しないと、いきなりユーザーにIT製品・サービスを提供することになるでしょう。しかし、そうすると以下のようなトラブルが起こる可能性があります。
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実際に使ってみたら思っていたものと違う
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利用に関して思いもよらない活用がされる
プロトタイプを制作するのは、こういったユーザーと開発者間のずれをなくすことが目的です。
例えばゲームアプリでは、一部のユーザーをターゲットとして、モニターを採用するケースがあります。モニターは、アプリストア配布前のアプリデータを指定された方法でインストールしてから、以下のような点をアンケートで利用時・利用後に回答します。
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ゲームのコンセプトが伝わっているか
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機能はスムーズに使えるか
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予想外のエラーが発生しなかったか
集まった意見は、今後の改善や提供などに活用されます。このように、プロトタイプは一部のユーザーにテスターとして試してもらうことで、本当に提供しても大丈夫か確認するための基準になるのです。
●開発途中の早い段階で完成品を確認するため
アプリやツールなどのITコンテンツの開発は、規模や納期などに違いはあっても、途中で問題が発覚すると余計に時間や労力がかかります。開発途中で問題が発覚すると、以下のようなトラブルが起こるでしょう。
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一から工程をやり直す必要がある
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エラーを発見・解決する手間が増える
問題が見つけられれば良いですが、検証を挟まずに開発を終わらせてしまうと余計に問題発見が難しくなるのもネックです。プロトタイプは、開発工程でも最初の段階で作られるケースが多いです。そうすることで、検証を挟みながら以下の点をステークホルダー間で共有しやすくなります。
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希望する開発イメージにずれがないか
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機能面で使いにくい内容になっていないか
クライアントや開発メンバー間で完成品に対するイメージが違うと、ちぐはぐな納品物ができあがるリスクがあります。すり合わせるためにプロトタイプを開発・共有することで、スムーズな開発が実現するでしょう。また、開発工程の無駄をなくして工程を少なくする意味でも、プロトタイプの存在は重要です。
プロトタイプで得られるメリットとは
プロトタイプを制作することで、次のようなメリットを得られます。
●成果物の品質が向上しやすくなる
プロトタイプはアプリにおけるアジャイル開発でも使われます。こまめにプロトタイプを挟むことで、アプリのエラー・機能の問題を洗い出せるからです。例えば、アプリに大きなアップデートを行う際、プロトタイプを制作・一部ユーザーに提供するとします。そうすることで、以下の点をあらかじめ確認できます。
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想定していない使い方ができないか
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操作性でユーザーを困らせる致命的な問題が起きないか
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そのほかの余計な不具合が発生しないか
検証なしで配布して不評が起こり、信頼性が低下するリスクの防止につながります。
サービスを利用する際の環境やタイミングは、ユーザーごとに異なります。思いがけない問題を防ぐためには、プロトタイプを使った検証が不可欠です。サービスの利用に熱心なユーザーを中心にモデルケースを作ることで、トラブルに前もって対応することができます。
また、継続的な品質の向上にもつながるので、ユーザーをさらに増やすためにもプロトタイプによる検証は必要です。
●滞りなく開発を進められる
開発の途中でクライアントが口を出し、思いがけないトラブルに発展することはよくあります。そういった事態を防ぐためにも、プロトタイプの活用が有効です。段階ごとに問題がないか、プロトタイプの提示によって確認できます。最初の段階でずれがなくても、あとでずれが生じるリスクは考えられます。段階ごとにプロトタイプをアップデートして、都度確認することで、大きなトラブルは減らせるでしょう。
従来のウォーターフォールの開発手法は、最初から仕様を決めてそのとおりに大きな開発を行うっていく手法なので、プロトタイプを挟みにくい問題があります。ユーザーニーズが多様化し、リスク低減への意識が強い現代においては、ウォーターフォールが適切な開発手法ではなくなりつつあります。プロトタイプをこまめに用意できる、アジャイル型の手法により、都度開発・提供する方法が今後いっそう求められるでしょう。
スキルや認識の違いを吸収しながらアジャイル開発を進めていくためにも、プロトタイプは必要です。
●認識のズレを回避できる
ステークホルダーとは利害関係者を指しますが、IT業界では以下の人物が該当します。
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利用が想定されるユーザー
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発注元のクライアント
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社内の開発メンバー
立場ごとに重視する点や、実際の納品物へのイメージが異なる場合があります。ステークホルダーの間に少しでも認識のずれがあると、納品物の内容がブレてしまうリスクが高まります。納品物がイメージどおりでないと、手戻りやユーザーの不評へつながるでしょう。
そういった事態を防ぐためにはプロトタイプが役立ちます。プロトタイプの活用によって、各ステークホルダーに実際の商品・サービスに近いコンテンツを提供して共有できます。
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利用が想定されるユーザーは実際の利用に対して問題を提示できる
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クライアントは納品物がイメージどおりになるかを前もって確認できる
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メンバーはチーム間で認識がずれていないか確かめられる
上記のようなメリットが得られるので、認識のずれの解消に役立ちます。プロトタイプの内容がステークホルダーにとって思っていたものと違う場合でも、あらかじめ訂正できるので失敗のリスクが減ります。プロトタイプは計画の成功に不可欠です。
プロトタイプの活用例を解説
本項では、プロトタイプの活用事例を解説します。
●Webサイトの制作
Webサイトの制作では、プロトタイプの作成が必須です。
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レイアウトの概要を作成する
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具体的にレイアウトやデザインを作り込んでいく
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具体的な画像やイラスト・デザインを挟み込んでいく
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アクセス先やページごとの関連性を記載する
といった作り込み作業によって、プロトタイプが作成されていきます。ステークホルダー間で問題が起こらないと判断できれば、実際のプログラミング・コーディングへ移行して、納品物を作成します。
あとでソースコードを大規模に編集するのは非効率です。あらかじめプロトタイプによってイメージが共有できていると、プログラミングやコーディングで迷いがなくなり、編集すべき部分も減少します。
ユーザーへプロトタイプを共有して感想をヒアリングする際は、アンケートサイトが使われるケースもあるので利用検討すると良いでしょう。ただし、間違って検索エンジンへ掲載される状態になっていると、SEOに影響が出ることがあります。プロトタイプとして提供する際は、URLだけを共有できる状態にして、検索エンジンへの掲載はOFFにしましょう。本格的に提供開始したあとは、検索エンジンへのページ掲載を許可する設定へ変更しておくのも注意が必要です。
●システム開発
システム開発においては、今までになかったような斬新なビジネスモデルが、生まれることもあります。システムによる斬新なビジネスモデルの提供にも、プロトタイプは活用されます。
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イラストでシステム・コンセプトなどを具体的に伝える
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実際の完成品をいったんプロトタイプとして提供・使ってもらう
このような工程を挟みましょう。それにより、以下の課題を可視化しながら、品質の向上へつなげられます。
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需要が一定数見込めるか
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思ったとおりのサービス提供が可能な状態であるか
ちなみに、有効なプロトタイプにはいくつか種類があり、得られる効果もそれぞれ異なります。詳細は次項以降で解説するので、最後までご覧ください。
プロトタイプの種類を使い分けよう
プロトタイプは作成方法や役割などによって、大きく3種類に分けられます。
●ファンクショナルプロトタイプ
動作を検証するために制作されるのが、ファンクショナルプロトタイプです。ページ間の移動やボタン押下などの機能面にトラブルが起きないかチェックします。実際に動作を確認しないと失敗するリスクが高い条件下で、ファンクショナルプロトタイプの活用は有効です。
ファンクショナルプロトタイプは主に動作面を確認するための試作品ですが、さらに踏み込んで完成品に近い内容を検証するためにはデザインプロトタイプが必要となります。
●デザインプロトタイプ
ファンクショナルプロトタイプより、さらに完成品に近い状態に仕上げたものが、デザインプロトタイプです。デザインプロトタイプでは機能だけでなく、レイアウトやカラーリングなどのデザインがはっきりしており、より完成度の高いイメージへと仕上げます。
ファンクショナルプロトタイプを設計初期段階、そしてデザインプロトタイプを後期段階で共有することで、より正確に納品物のずれを減らせるでしょう。視認性だけでなく、実際の処理速度まで加味して検証します。
●コンテクスチュアルプロトタイプ
コンテクスチュアルプロトタイプとは、利用イメージを共有するためのプロトタイプです。共有には動画などのメディアが使われることが多いです。
アンケートサイトでは、提供前の製品のCM映像を確認できることがあり、そういった動画がコンテクスチュアルプロトタイプにあたります。事前にユーザーに共有することで、製品を疑似体験してもらえるのが魅力です。
コンテクスチュアルプロトタイプを成功させるためには、出演者のイメージを利用想定者に合わせる、簡潔にわかりやすく利用イメージを共有できる構成を心がける、といったコツがあります。
まとめ
本記事では、プロトタイプの意味や使い方などをご紹介しました。プロトタイプの活用はシステム設計において基本です。プロトタイプの活用は、将来的な開発リスクを減らして、認識のずれをなくすためには不可欠です。プロトタイプにはファンクショナルプロトタイプやデザインプロトタイプなど種類に違いがあります。違いを理解しながら適切な場面で各プロトタイプを制作・共有できるようにしておきましょう。
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