発注書は、ビジネスで取引を行う際にやり取りされる書類の1つです。下請法の対象取引を除いて法的な発行義務はありませんが、取引を円滑に進めるための重要な役割を担っています。
システム開発を外注する際にも、発注書を作成する機会があります。発注書を作成する際には、発注する商品の数量や金額、納期などの取引に関する内容を明確に記載することが重要です。発注書を誤って作成すると、取引の際にトラブルが起こりかねません。
本記事では、システム開発における発注書の概要や、発注書作成時のポイント、発注書の具体例などについて詳しく解説します。
目次
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システム開発における発注書の概要と項目例
そもそも発注とは、注文することや注文を出すことを表します。一般的なビシネスシーンにおいては、取引先に商品や設備、サービスなどの調達を依頼する意味で用います。
発注書とは、商品やサービスなどを発注する際に、発注者が申し込みの意思表示を行う目的で作成する書類を指します。商品やサービスを注文する側が、注文を受ける側に対して発行します。申し込みの意思表示と共に、注文の内容を明確にする目的があり、具体的な商品名やサービス名、数量、納期、支払い条件や発注書の有効期限などを記載します。
下請法の対象取引を除いて、発注書の発行に法的な義務はありません。発注書や契約書を作成せずとも、口約束のみでも契約は成立します。しかし口約束のみでは、「言った・言わない」のトラブルや、契約内容についての認識の齟齬が生じることも起こり得ます。
発注書を発行することによって、取引のうえでのトラブルの防止や双方の認識のすり合わせに役立つほか、社内処理を円滑に行うために、発注書を発行することが一般的です。
●発注書の項目例
発注書において、厳格な書式は決められていません。それぞれの企業が、自由にフォーマットを作成できます。とはいえ、発行の目的を考えると必要な項目は限定されるため、概ね以下の項目が共通しています。
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発注書のタイトル
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発注先(受注者)の宛名
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発注番号および発注日
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発注する業務の件名
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発注元の情報
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発注金額
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納品形式
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納期/支払い条件/発注書の有効期限
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詳細な発注内容
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小計/消費税/合計
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備考
それぞれの項目の内容は、以下の表のとおりです。
項目名 | 内容 |
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発注書のタイトル | 書類のタイトルとして「発注書」と記載します。書類を見た時に何の書類かわかりやすいように、大きく記載しましょう。 |
発注先(受注者)の宛名 | 発注書を発行する相手の名称を記載します。敬称は、受注者が法人か個人かで異なります。法人の場合は「御中」、個人の場合は「様」と記載しましょう。 |
発注番号および発注日 | 必要に応じて発注番号を記載します。発注番号を割り当てることによって、見積書や受領書との関連性が確認しやすくなります。発注日には、発注書を作成した日付を記入しましょう。 |
発注する業務の件名 | 注文した商品や依頼したサービス名を記入します。略称や通称を使用せずに、正式名称を記入しましょう。 |
発注元の情報 | 自社の情報として会社名や住所、連絡先や担当者名を記入します。メールアドレスも併記しておくとその後のやり取りがスムーズになります。 |
発注金額 | 注文した商品や依頼したサービスの金額を記載します。 |
納品形式 | システム開発を依頼した場合、成果物の納品形式を記載します。 |
納期/支払い条件/発注書の有効期限 | 取引先と事前に設定した条件を記入します。納期は商品やサービスが必要な期限、支払い条件は締め日と支払日を記入します。発注書の有効期限も記入しましょう。 |
詳細な発注内容 | 発注内容として、商品やサービスの概要や単価、数量などの詳細について記入します。 |
小計/消費税/合計 | 税抜きの小計金額と、小計金額に対する消費税額を記入します。小計金額と消費税額を合計した金額が、合計金額になります。 |
備考 | 発注に際して特記事項があれば記載しましょう。ない場合は空白でも問題ありません。 |
システム開発における発注書作成時のポイント
発注書は、取引においてトラブルを防いだり、円滑な取引を進めたりするために重要な書類です。
特にシステム開発においては、形のあるモノの売買などとは異なり、最終的に完成するシステムの全体像を明確にイメージするのが困難という特徴があります。そのため、発注書の発行は重要な要素です。
システム開発において、発注書の作成をする際には下記の6つのポイントに注意しましょう。
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注金額や納期が正しいかをチェック
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発注書と見積書の内容が合致するかチェック
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法律で定められた郵送方法で送付
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定められた期間内の保管を行う
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外注先から書式の指定をされたらそれに従う
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下請法にしたがった対応をとる
それぞれのポイントについて詳しくご紹介します。
●発注金額や納期が正しいかをチェック
まず、発注金額や納期について、正しい内容が記載されているか、取引先に送る前にチェックしましょう。前項で触れた発注書の項目例の中の、「発注金額」「小計/消費税/合計」「納期」にあたります。
誤った内容で発注してしまうと、予定していたシステムのリリースのスケジュールに間に合わなかったり、予算より高い金額を支払わなければいけなくなったりします。そのような事態が起きてしまうと、会社にとって大きな損失を招きかねません。
それだけでなく、発注先との信頼関係にも悪い影響を及ぼす可能性があります。発注書を送る前には発注金額や納期について、社内でしっかり確認することが大切です。
●発注書と見積書の内容が合致するかチェック
発注書と見積書の内容が合致するかチェックすることも重要です。受注者から送られてきた見積書の内容と相違がないかを確認しましょう。
発注書と見積書の内容が異なる場合、どちらが正しいのかわからなくなり、トラブルを招くリスクがあるため、注意深くチェックしましょう。見積書の内容が当初から変更になった場合には、見積書の内容も変更しておくことによってトラブルを防げます。
●法律で定められた郵送方法で送付
発注書は信書に該当し、法律で定められた方法による郵送が必要です。発注書を送付する際には適切な郵送方法を選びましょう。信書の送付は、日本郵便株式会社および国が認定した信書便事業者のみの利用が可能です。ビジネスシーンでメール便などが広く使われていますが、発注書の送付には利用してはいけません。規定に反して信書を送付すると違反となり、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。十分注意しましょう。
●定められた期間内の保管を行う
発注書は国税関係書類であり、法人税法に基づき、発行後は一定期間の保管が義務付けられています。法人の場合、事業年度の確定申告書提出期限の翌日から7年間保存することが義務付けられています。青色申告書を提出し、その事業年度に欠損金額が生じた場合、または青色申告書を提出せずに災害損失金額が生じた場合は、保存期間が10年間に延長されます。一方、個人事業主の場合は5年間の保存が必要です。
会社法では、計算書類や帳簿書類の保存期間を10年としています。ただし、発注書は会社法で定める会計帳簿には含まれないため、先述の法人税法に従った保存期間で問題ありません。
法人税法に違反すると、青色申告者の承認取り消しなどのペナルティが科されることがあります。さらに、発注書が適切に保存されていない場合、取引の証明ができず、法人税や所得税、消費税の計算で内容が否認されるリスクもあるため、十分な注意が必要です。
●外注先から書式の指定をされたらそれに従う
外注先からあらかじめ書式について指定されている場合は、そちらに従って作成するようにしましょう。見積書とも書式を合わせます。
●下請法にしたがった対応をとる
下請法は、親事業者から下請事業者への優越的地位の不当な取扱いを規制するために制定された法律で、正式名称は「下請代金支払遅延等防止法」です。この法律に基づき、発注者である親事業者は、受注者である下請事業者に発注書を交付する義務があります。下請法に違反した場合、公正取引委員会からの勧告の対象になるため、注意が必要です。
下請法に該当する取引では、電磁的記録などの提供が求められます。その方法には以下のようなものがあります。
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1.電気通信回線を通じて送信し、下請事業者の電子計算機に備えられたファイル(以下「下請事業者のファイル」という)に記録する方法
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2.電気通信回線を通じて下請事業者の閲覧に供し、当該下請事業者のファイルに記録する方法
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3.下請事業者に電磁的記録媒体交付する方法
電子メールによる電磁的記録の提供に関しても留意点があります。例えば、発注書を携帯電話のメールで送信しても、それが下請事業者のファイルに記録されない場合、下請法における電磁的記録の提供とは認められません。下請事業者がPCで適切にファイルを受信し、ファイルが記録されることが必要です。単にブラウザで電磁的記録を閲覧するだけでは不十分です。下請事業者のファイルに記録できるような措置、例えば別途メールでの確認やWebサイトでのファイルダウンロード機能の設置が必要になります。
参考:下請取引における電磁的記録の提供に関する留意事項│公正取引委員会
発注書の具体例を紹介
「発注書の項目例」のとおり、発注書には特定のフォーマットが定められているわけではありません。ただし、下請法に該当する取引では、必要な内容がすべて記載されていることが求められます。また、下請法に該当しない取引であっても、記載が推奨される項目は存在します。ここでは、一般的な発注書の例と、下請取引に対応した発注書のテンプレートを紹介します。
●一般的な発注書の例
一般的な発注書の項目例は以下の図のとおりです。
発注書には押印の義務はなく、印鑑や角印(社印)が押されていなくても無効にはなりません。しかし、多くの企業では取引の信頼性を高めるため、また「担当者の一存ではなく会社として正式に発行された文書」であることを示すために角印(社印)を使用します。
原則として、発注書に収入印紙を貼る必要はありませんが、取引内容が課税文書に該当する場合には収入印紙が必要になることがあります。
発注書の無料テンプレートはWebサービス上で多く公開されており、自社の要件に合ったテンプレートを探すことも1つの方法です。
●下請取引に沿った発注書のテンプレート
下請取引に使用する発注書のテンプレートは、公正取引委員会によって見本として公開されています。内容の作成に不安がある場合は、公正取引委員会が提供するテンプレートをそのまま利用することで安心して対応できます。取引内容に応じた複数のテンプレートが用意されているため、ぜひ参考にしてください。
参考:下請代金支払遅延等防止法第3条に規定する書面に係る参考例│公正取引委員会
発注書と注文書に明確な違いはない
発注書と混同しやすい書類の1つに注文書がありますが、法的には発注書と注文書に違いはありません。記載事項、発行のタイミング、書類が果たす役割、内容などは同様ですので、どちらの用語を使用しても問題はありません。ただし、業界や企業によって以下のような使い分けがされていることがあります。
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形のないものやサービスの取引:発注書
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形のある商品の取引:注文書
このような使い分けは慣例に基づくものであるため、取引先や社内での混乱を避けるためには、どちらかに統一するか、明確なルールを設けます。また、注文書以外にも「契約書」や「発注請書」といった発注書と混同されやすい書類があります。ここでは、これらの書類の違いについてそれぞれ解説します。
●発注書と契約書の違い
契約書とは、注文をする側(発注者)と受ける側(受注者)双方が取り交わす書類を指します。通常、発注書や注文書は発注者が発行するものですが、契約書では双方が署名を行います。発注書は一方的に発行されるのに対し、契約書は双方の合意のもと作成されるのです。
また、発注書や注文書は、発注する側の契約申込みの意思表示が目的で、受注者の承諾がなければ契約は成立しません。ただし、基本契約で「発注書発行により契約成立」と合意している場合や、注文書を受け取った受注者が了承する場合には、発注書のみで契約が成立することがあります。
●発注書と発注請書の違い
発注請書とは、商品やサービスの注文を受けた受注者が、注文した発注者に対して発行する書類です。これは発注を受け付けたことを伝える役割を果たします。発注請書の発行は義務ではありませんが、発注者からの要求に応じて発行されることもあります。その場合、受注者は発注書を確認し、問題がなければ発注請書を交付します。発注書も発注請書も義務ではありませんが、取引先の要望に応じることで取引がスムーズに行われます。
発注書について理解を深めたところで、システム開発の外注先をこれから選定するという担当者の方もいるのではないでしょうか。より効率良く外注先を選定したいとお考えの方は、発注ナビへおまかせください。
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