システム開発における品質管理の重要性やシステム開発の工程や流れを知りたいと思う企業の担当者は多いのではないでしょうか。システム開発の品質管理は高い品質を維持するためにも、大切なプロセスです。
この記事ではシステム開発における品質管理の重要性や手法、実践のポイントなどを解説します。
目次
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システム開発における品質管理の重要性
システム開発の品質管理は、ソフトウェアやシステムが高品質を保ち、顧客の要求を満たすことを目指す活動です。開発の早い段階で品質目標を決め、設計からテストに至る各段階で品質を守る策を実施します。品質管理には、計画作成、保証活動、評価、改善措置が含まれ、製品が基準を満たし顧客を満足させることを目的とします。このプロセスは開発全体とリリース後も続きます。ここでは、「品質管理の目的」と「品質管理の工程」の2つの観点から、システム開発における品質管理の重要性をみていきます。
●品質管理の目的
品質管理は、システム開発における重要な役割を担い、複数の目的に基づいて実施されます。主な目的は、以下のとおりです。
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品質の確保や基準値の達成をするため
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堅牢なセキュリティ体制を構築するため
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パフォーマンスを最適化させるため
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バグの修正や変更作業などのプロセスを確立させるため
品質の確保や基準値の達成をするため
品質管理の最初の目標は、開発されるシステムが高い品質基準を達成し、顧客の期待を満たすことです。この段階では、システムが正確に機能し、予定された目的を果たすことが確認されます。具体的には、要件を明確に定義し、適切に実装されているかを検証することで、品質と基準値の両方を確保します。
堅牢なセキュリティ体制を構築するため
セキュリティはシステム開発において非常に重要な要素です。品質管理の一環として、セキュリティテストや脆弱性評価が実施され、システムが外部の脅威から保護されていることを保証します。この活動により、ユーザーのデータが安全に管理され、信頼性の高いシステム運用が可能になります。
パフォーマンスを最適化させるため
パフォーマンスを最適化するというのは、システムやソフトウェアの動作を速くし、より使いやすくすることを意味します。システムを速くて安定した動きにすることは、使用者が快適に感じるための重要なポイントです。速さや重い負担の下でもうまく動くかをチェックするテストをして、システムがスムーズに動くことを確かめます。このように品質管理によってシステムを良い状態に保つことで、動作が速くて使いやすいシステムを作れます。
バグの修正や変更作業などのプロセスを確立させるため
システム開発における品質管理の重要な側面は、バグの特定と修正、変更管理のプロセスを確立することです。適切なテスト手法を用いて品質に関する問題を効率的に特定し、迅速な修正を可能にします。このプロセスにより、開発チームは品質向上に継続的に貢献でき、将来の保守作業も容易になります。
●システム開発における品質管理の工程
システム開発における品質管理の基本的な工程と概要は、以下のとおりです。
項目 | 概要 |
---|---|
クライアントからのヒアリング | プロジェクト初期にクライアントの要件と期待を明確に理解するための意見交換 |
バグや不具合などのチェック | 開発されたソフトウェアやシステムを検証し、バグや不具合を発見するためのテスト手法の実施 |
エンジニアへの報告 | 発見されたバグや問題点について、開発チームに詳細な報告とフィードバックを提供 |
修正作業 | バグの修正と問題解決のためのエンジニアによるコード変更、及び修正後の再検証 |
各項目のステップは、ソフトウェア開発プロセスにおける品質管理の基本的なフレームワークを形成し、製品の品質を確保するために不可欠です。
システム開発における品質管理の手法と実践ポイント
システム開発における品質管理の主な手法は以下の2パターンです。
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ウォーターフォールシステム
-
アジャイルシステム
2つの手法を理解したうえで、品質管理を行う際の実践ポイントもあわせてみていきましょう。
●品質管理の手法2パターン
品質管理はソフトウェア開発の方法によって、以下のように異なります。
項目 | ウォーターフォールシステム | アジャイルシステム |
---|---|---|
品質管理の実施時期 | 各開発フェーズの終わり、特にテストフェーズで重点的に行う | 開発の全過程で継続的に実行 |
バグの修正時期 | テスト段階の終わりに一斉に行う | 各繰り返しのサイクルで対応 |
クライアントとのやり取り | プロジェクト計画時や要件変更時のみ(接触は少なめ) | 定期的にフィードバックを取り入れる(接触頻度が高い) |
プロジェクトの柔軟性 | 要求の変更に対して柔軟性が低め | 要求の変更に対して柔軟性が高め |
品質管理のアプローチ | 詳細な計画と文書化に依存 | チームワークと協力に基づく |
品質管理に対する責任 | 品質管理チームが中心となる | 全メンバーが品質保持に責任を持つ |
開発手法ごとに品質管理の方法を見比べることは、プロジェクトをスムーズに進めるためや製品の品質を高めるために役立ちます。
ウォーターフォールシステムの場合
ウォーターフォールシステムの一連の流れは、以下のとおりです。
- 要件定義:顧客の要望と必要性を把握し、システムの要件を特定する
- 基本設計:システムの全体像、機能性、データの流れを決定する
- 詳細設計:各機能やコンポーネントの詳細な動作や構造を設計する
- コーディング:上記の設計を基にプログラムコードを作成する
- テスト:コードをテストして品質を検証し、問題を見つける。この段階で主に品質管理を実施
- 保守・運用:システムを実際に運用し、問題が発生した場合は修正や改善を行う
ウォーターフォールモデルでは、開発が順序立てて進行します。品質管理に関しては、テストフェーズで集中的に行われ、ここで初めてバグの修正や問題の解決が行われます。
アジャイルシステムの場合
アジャイルシステムの一連の流れは、以下のとおりです。
- プロジェクト計画(要件定義):プロジェクトの目的、範囲、必要なリソース、スケジュールを設定し、品質目標も定める
- プロダクトバックログ作成(基本設計):機能要件や非機能要件、改善点を優先順位付けし、品質関連の作業も計画に組み込む
- スプリント計画:短期間の開発サイクルで達成すべき目標と作業項目を決定し、品質管理のための活動も予定する
- タスク実施:チームがスプリント計画に基づいて作業を進め、進行中に品質を随時チェックする
- 進捗確認・調整:定期的に行われる会議で進捗状況を確認し、必要に応じて品質管理の計画を調整する
- テスト・検証:開発された機能や部品の品質をテストし、問題を見つけたら即座に対応する
- レビュー・デモ:各スプリントの終了時に成果をレビューし、クライアントや利害関係者からの品質に関するフィードバックを得る
- リリース:最終的に開発された機能を実際の運用環境に導入し、品質の維持や向上を図る
アジャイルシステムでは、顧客のフィードバックを迅速に取り入れるために、開発を小規模なステップに分けて進めます。各段階での品質管理を通じて、変更に柔軟に対応し、品質を継続的に向上できます。この方法では、短い開発サイクルごとに実装された機能をテストし、即座に改善点を反映させることで、最終製品の品質を保証します。この方法ではチームメンバー間での日常的なコミュニケーションと協力が不可欠であり、チーム全体で品質と進捗を共有しながら、プロジェクトの目標達成を目指します。
●品質管理を行う際の4つのポイント
品質管理を行う際のポイントは以下の4つです。
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基準値や指標値を明確に設定する
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要求内容の網羅性を確認する
-
開発工程ごとに品質チェックを行う
-
部署間の連携を強化する
ポイントを押さえておくことでシステム開発プロジェクトはよりスムーズに進行し、最終的な製品の品質を大幅に向上できるでしょう。
基準値や指標値を明確に設定する
開発チームが共通の目標に向かって効率的に進めるためには、品質基準や指標値をはっきりと設定することが必須です。これにより、目指すべき品質レベルが明確になり、プロジェクトの方向性が統一されます。さらに、品質基準を定めることで、開発過程や成果物の品質評価が容易になり、チーム間や関係者間での誤解を防げます。
要求内容の網羅性を確認する
プロジェクトの成功は、要求内容が完全に理解され、網羅的にカバーすることに大きく依存します。要求をはっきりさせて文書にすることで、何が必要な機能か、どんな性能が求められるかが具体的にわかります。これにより、開発を進める過程で、その要求を正しく取り入れることが可能です。また、優先順位の決定や要求の追跡管理も、品質を保つうえで欠かせないステップといえます。
開発工程ごとに品質チェックを行う
各開発段階における品質チェックは、早期に問題を特定し、修正するために重要です。要件定義から設計、実装、テストに至るまで、各段階での品質確認を徹底することで、最終的な製品の品質を高められます。このプロセスにより、開発の各段階でのフィードバックが可能になり、品質改善の機会が増えます。
部署間の連携を強化する
品質管理は、関連する全ての部署が協力し合うことで最大の効果を発揮します。開発初期から関連部署と連携を取り、要件定義を共有し、フィードバックを受け入れることで、システムの目標や要件が明確になります。開発の進捗状況や変更点を定期的に話し合うことで、品質を守るための活動を会社全体で支えることが可能です。
システム開発の品質管理で役立つ関連資格
システム開発の品質管理で役立つ関連資格は、以下のとおりです。
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QC検定
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JSTQB認定テスト技術者資格
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R-Map実践技術者認定制
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IT検証技術者認定試験(IVEC)
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ソフトウェア品質技術者資格認定制度(JCSQE)
資格を取得することで、ソフトウェアの品質管理に関する専門知識と技術を証明でき、信頼性の高い開発プロジェクトの実現に貢献します。また、業界内での評価が上がり、キャリアアップにもつながるでしょう。
●QC検定
QC検定(品質管理検定)は、製品やサービスの品質向上に関する知識を証明する資格で、日本品質管理学会の認定と日本規格協会(JSA)及び日本科学技術連盟(JUSE)の実施により提供されています。この検定を通じて、品質管理の専門知識や技術が身につき、製造業からサービス業まで幅広い分野での品質管理やサービス改善に貢献できる人材として認識されます。この資格には1級から4級までのレベルがあり、レベルが高いほど、品質管理に関する詳細な知識が身につきます。級が上がるにつれて、企業の品質向上にさらに貢献できるようになると期待されています。
●JSTQB認定テスト技術者資格
JSTQB認定テスト技術者資格は、ソフトウェアテストの専門性を認定する国際資格です。この資格は、日本ソフトウェアテスト技術者認定委員会が運営し、世界各国のテスト技術者認定組織が集まるISTQBの一員として国際的に認められています。この資格を取得することで、テストエンジニアやQAエンジニアとしてのスキル向上はもちろん、ソフトウェアテストに関する基本的な知識を体系的に学ぶことが可能です。また、チーム内での用語の齟齬をなくし、共通の理解を深める助けとなります。資格には「Foundation Level」と「Advanced Level」があり、後者はより高度な知識と経験が求められますが、テスト技術の客観的な証明としても価値があります。
●R-Map実践技術者認定制度
R-Map実践技術者認定制度は、製品の安全性にかかわるリスクマネジメントの専門知識と技術を証明する資格です。この制度は2005年から日本科学技術連盟によって提供され、製品やシステムに潜むリスクを正確に対応できる人材を育てることを目指しています。資格取得には、リスクマネジメントに関する10の教育プログラムを修了し、最終的に成果を発表することが求められます。R-Map技法を使用することで、「発生頻度」と「危害の程度」を軸にリスクを視覚化し、適切な改善策を導出する能力を身につけることが可能です。この資格はリスク評価とアセスメントの全プロセスをカバーし、幅広い分野でのリスク管理に応用できます。そのため、リスクマネジメントの知識を深め、実践的なスキルを習得したい方におすすめです。
●IT検証技術者認定試験(IVEC)
IT検証技術者認定試験(IVEC)は、テストエンジニアの実務能力を証明する資格で、IT検証産業協会(IVIA)が実施しています。この試験は、実際のテスト現場での作業能力を評価する記述式の形式を取り、業界内でのテストエンジニアとしての実務経験とスキルの証明になります。2017年までは知識と実務の両方の試験がありましたが、2018年からは実務力を中心にした記述式試験に統一されました。試験は年2回行われ、合格すると実務で即戦力となる能力があると認められ、認定証が発行されます。2023年の発表で、試験クラスが5段階に再編され、初心者から専門家まで幅広いレベルのテストエンジニアを育成する体系になっています。IVEC資格は、ソフトウェアテストの知識と実務能力を体系的に学び、業界内で高く評価されるスキルを身につけられる資格です。
●ソフトウェア品質技術者資格認定制度(JCSQE)
ソフトウェア品質技術者資格試験は、一般財団法人日本科学技術連盟が提供するソフトウェア開発者向けの民間資格です。この資格はソフトウェアの品質を高めるための専門知識と、技術を持つエンジニアを育成することを目的としています。資格取得を通じてソフトウェア品質に関する深い理解を得られ、開発現場でより高度な業務を担当する能力が身につくでしょう。さらに、IT業界での求人が増えている中で、この資格は転職や就職の際にも有利に働きます。企業は資格取得者を高度なスキルを持つ人材として評価し、資格手当や報奨金の支給など、給与面でのメリットが得られる可能性もあります。この資格は、ソフトウェア品質の向上だけでなく、個人のキャリアアップにも大きく貢献するといえるでしょう。
品質管理はシステムの仕上がりを左右する重要な工程といえます。そのため開発力だけでなく品質管理の知識・技術を備えたシステム開発会社を選ぶことが大切です。
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