
システムやソフトウェア開発のプロジェクトは、事前に立てた計画や要望の通りに開発が進まず、失敗に終わってしまうケースも少なくありません。
ここでは、システム開発が失敗してしまう具体的な原因と、失敗を回避しプロジェクトを成功に導くための方法・ポイントについて詳しく解説します。特に、開発の現場で起こりがちなヒューマンエラーや認識のズレに焦点を当て、その対策も合わせて紹介します。
目次
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システム開発の失敗とは?
前提として、「システムやソフトウェア開発の失敗」について、実は明確な定義があるわけではありません。しかし、プロジェクトの成功・失敗は、関係者間の契約内容や期待値によって、その解釈が大きく変わることがあります。
最終的には、ビジネス上の目的を達成できたかどうかが、最も重要な判断基準となりますが、ここでは具体的な「失敗」の判断基準について解説します。
●「失敗」の定義はない
あえて失敗を定義付けるならば、システム開発では「成果物の完成」を目指すものです。そのため、「納期までに成果物が完成しなかった」の状況は、システム開発の失敗と呼んでも差し支えないでしょう。
しかし、単に納期遅延だけでなく、予算超過や品質不良、あるいは導入後のユーザー満足度が極端に低いなど、ステークホルダー(利害関係者)の期待値を大きく裏切る結果になってしまった場合も、実質的な失敗と見なされるべきです。
●「失敗」の判断基準は「成果物の状態」が関係している
特に下記のような状況に陥ると、成果物が完成しない、あるいは完成してもプロジェクトが失敗と見なされる可能性が高くなります。これは主にプロジェクト管理の破綻を意味し、QCD(品質・コスト・納期)のバランスが崩れている状態です。
- 休日稼働を視野に入れて開発スケジュールを立てても完成の見通しが立たない:納期の破綻
- 開発チームに欠員が出てしまい、エンジニアの不足が続いている:リソース管理の失敗
- 予算不足に伴いシステムに必要な機能が搭載できない:コストと品質のトレードオフが発生
また、成果物が完成したにも関わらず「システム開発の失敗」に至るケースも存在します。それは、開発側が発注者の真の意図を理解しないまま仕様を決めてしまい、結果として発注者が望んでいたものとまったく異なる成果物が完成してしまった時です。
例えば、操作性が悪かったり、必要なデータ連携ができなかったりする場合などです。「目的の成果物が完成しなかった」という点を考慮すれば、これも失敗と呼ぶべきでしょう。発注者の業務を本当に改善できるかどうかが、最終的な成功の判断基準となります。
また、システムが稼働しても、業務プロセスに適合せず使われなくなる状態も、失敗の1つです。先に挙げたような「納期の破綻」や、「見当違いの成果物の完成」など「システム開発の失敗」と呼べる事象ものは少なくありません。
プロジェクトの当初の目標(QCD:品質・コスト・納期)のいずれかが著しく達成できなかった場合、そのプロジェクトは失敗と評価される傾向にあります。
以下の項では、システム開発の際に発生しやすいリスクについて紹介します。
システム開発におけるリスクを知っておこう

| 名前 | 詳細 |
|---|---|
| 認識的リスク | 受注側と開発側で認識にズレが生じたまま開発が進むリスク |
| 金銭的リスク | 開発の途中で予算が不足してしまうリスク |
| 技術的リスク | 計画段階の機能が技術的に実装困難になるリスク |
この3つのリスクを理解し、事前の対策(リスクヘッジ)を行うことが失敗回避につながるでしょう。
●認識的リスクについて
システム開発における最大の壁は、コミュニケーションのギャップによる「勘違い」のリスクです。
例えば、「業務管理システム」と聞いたとき、発注側と開発側が思い浮かべる「システム」のイメージは千差万別であり、それぞれのイメージを、明確な形で共有するのは極めて困難です。発注側と開発側でイメージが異なると、その後の認識に齟齬が生まれやすく、開発が誤った方向に進んでいってしまう可能性が高まります。
特に業界特有の業務プロセスに関する解釈の違いは、開発の方向性を大きく狂わせる要因となります。そのため、早い段階で認識の誤認を正さないと、発注側の求めている機能とは異なった、「見当違いの機能」を実装するために、無駄に工数を割いてしまう事態にもなりかねません。このリスクを低減するためには、共通言語としてのモデリングや、画面イメージを早期に確認できるプロトタイプ作成が有効です。
プロジェクト完了後に発覚した「誤認」をリカバリーするためには、追加でコスト・工期を増やす必要があります。その結果としてプロジェクトを失敗に追い込む要因になってしまうのです。
これはダメージが大きいため、優先して回避すべきリスクと言えます。この認識的リスクは、アジャイル開発などで小まめに発注者レビューを挟むことで、低減可能です。
●金銭的リスクについて
システム開発で特にトラブルになりやすいのが、開発費の算出です。システム開発は「0から新しいものを作る」という特性上、最初から正確な費用を割り出すのが非常に困難という問題があります。
例えば、「外部企業にシステム開発を発注しよう」と検討する場合、「詳細が決まらない状態」での安易な開発費算出には注意が必要です。開発が始まった後に「やはりこの機能も欲しい」などと、システムの仕様などを変更するたび、開発費や開発期間などの費用が、雪だるま式に膨らみかねません。
契約形態が請負契約ではなく準委任契約の場合、見積もり以上に工数が増加すると、予算超過はより顕著になる傾向があるため注意が必要です。加えて、それまで決定していた事項が二転三転するような事態になれば、現場スタッフのモチベーションにも悪影響を及ぼすでしょう。
予算の管理手法としてEVM(出来高管理)を導入することで、プロジェクトの経済的な健全性を客観的に評価できるためおすすめです。
●技術的リスクについて
企画段階では開発可能に思われても、いざ着手すると技術的に実装が困難なケースに直面することがあります。また、現代はIT技術が高度になっており、「システム構築技術の複雑化」が顕著な時代となっています。動作に関しても様々な要因が絡むようになり、新しい技術を採用したシステムでは、開発側のテストでは問題なく動作していても、クライアント側のテストでは「動かない」と報告されるケースもあります。
特にレガシーシステムとの連携や、未検証のオープンソースライブラリの採用などは、予期せぬ技術的課題を引き起こしがちです。万が一、開発中に「実装が困難」と判断された場合には、クライアントと交渉をして機能の調整や代替案の検討を行う必要があります。
技術評価マトリクスなどを作成し、リスクの高い技術要素を事前に特定し、対応策を準備することでリスクを軽減していきましょう。
●リスクの連鎖にも注意が必要
先に挙げた3つのリスクは「それぞれ密接に関わっている」という点も留意しておきましょう。例えば、認識的リスクを蔑ろに軽視したままにすれば、無駄な工数や機能が増えてしまい、金銭的リスクや技術的リスクにも繋がりやすくなるのです。
プロジェクトのどこか一箇所で問題が起きると、それが波及して他のリスクを誘発するリスクの連鎖に注意が必要です。プロジェクトマネージャー(PM)は、常にこれらのリスクの相互作用を意識し、全体を把握した上での管理が求められます。
システム開発における失敗の原因とは?主な7つの原因

システム開発のプロジェクト失敗の原因の多くは「認識的リスク」を放置したことに起因しており、根底にあるのは、発注側と開発側の「コミュニケーション不足」です。ここでは、もう少し具体的に、システム開発における失敗原因を探っていきましょう。リスクと原因を押さえることで、システム開発の成功率をより高めやすくなります。
●目的が曖昧な状態でシステム開発をスタートさせた
失敗原因の中でも代表的なものが、プロジェクトの目的がしっかりと定まらない状態で開始してしまったなどの「準備不足」です。関係者の間で「どのようなシステムを作りたいのか」、「そのシステムを使ってどのような課題を解決したいのか」といった情報が共有できていなければ、理想とはかけ離れた異なるシステムが完成してしまいます。
例えば、発注側が「現状の業務の不満点」を伝えただけで「理想の業務プロセス」を示せない場合、開発側も何を目標とすべきか判断できません。中には、経営層と現場で目的が異なっているケースもあり、そういった場合、開発中に優先順位が頻繁に入れ替わることがあります。
このように、発注側と開発側双方におけるコミュニケーション不足の根底には、発注側にはシステム開発について高い理解度を有する人材がいないこと、そして開発側が目先の納期やコストに気を取られてしまうことが、大きく影響していると言えるでしょう。この問題を避けるためには、目的を文書化し、双方の合意を得ることが不可欠です。
準備不足による失敗を考慮すれば、開発初期は特に発注側と開発側で、コミュニケーションの量と質を増やすことが極めて重要です。また、発注側も、システム開発に関係する基礎知識をある程度身に付けておけば、より踏み込んだ建設的なコミュニケーションが取りやすくなります。
●プロジェクトの軸となる要件定義の認識にズレがあった
認識のすり合わせが必要なのは、プロジェクト準備段階だけではありません。プロジェクト中にも入念なコミュニケーションが取れていないがゆえに、プロジェクトの軸となる「要件定義」の認識のズレに気付けず、ずるずると開発を先に進めてしまうケースがあります。結果として、発注者の理想のシステムとは全く異なるものが完成してしまうことになるのです。
特に、性能やセキュリティ、保守性などの部分は口頭での確認だけでは不十分となることが多いため、明確なドキュメント化と計測可能な指標を設定しておくと良いでしょう。
要件定義は、システムの骨格を決める最も重要な工程であり、ここでの認識のズレは致命的な失敗に直結します。定期的な要件定義のレビューを実施し、認識のズレを早期に修正・改善する仕組みを作るようにしましょう。
●工程の優先順位が曖昧だった
システム開発の際に、各工程や機能の優先順位を決めることは非常に重要です。
例えば、開発工程を1つずつ完了させる「ウォーターフォール型」で開発を進めている場合、もし下流工程で問題が起きた時には1度プロジェクト全体を一度止めて手戻りが発生することになります。
結果として、スケジュールが大幅に崩れやすくなるのです。こういった手戻りを少なくするために、アジャイル開発では、優先順位の高い機能から順に開発する手法が採用されており、手戻りのリスクを最小限に抑えられるでしょう。
作業の手戻りを避けるためには、上流工程の段階で「本当に優先してほしいこと」、「確実にないと困るもの(必須機能)」などを念入りにヒアリングしておき、優先順位を的確に評価・文書化することが大切です。優先順位が低いものは、リリース後のフェーズへ見送るといった判断も時には必要になるでしょう。
●見積もりが不明瞭だった
システム開発が失敗する原因は、「見積もりの曖昧さ」に起因するものも多くあります。
例えば、スパイラル型(反復型)の開発手法を採用すると、機能のブラッシュアップや修正を行うたびに開発の工程をやり直すことになります。その分、質の高いシステムが出来上がったとしても、想定していた予算を大幅にオーバーしてしまい、結果として、プロジェクトが破綻することもあるのです。開発の途中で追加要件が発生した場合、その影響範囲やコストを曖昧なまま進めてしまうと、予算超過は避けられません。
これは金銭的リスクに該当しますが、基を辿れば認識のズレや要件定義の誤認によるものが発端です。システム開発の性質上、見積もりにズレが生じるのはある程度仕方ないことですが、発注側の要望が確定してから見積もりを算出する、追加・変更の要望があれば都度、見積もりの再設定を行う、などを行うことで予算と実態のギャップを小さくできます。費用対効果を常に検証しながら進めることがおすすめです。
●技術評定・設計判断に甘さがあった
開発側の技術的な判断ミスや甘い設計も、システム開発の失敗原因として挙げられます。開発に着手する前に、実現したい機能に対する技術的な難易度(技術評定)を正確に見極める必要があります。
この評価が甘いと、「予想外に実装が困難」であることや、「想定以上の工数がかかる」といった事態に陥ることがあるため注意が必要です。特に新しい技術や未経験の分野に挑戦する場合、技術検証(PoC:Proof of Concept)を十分に行わないまま本開発に進むと、設計段階での問題が見過ごされ、開発終盤になって大規模な手戻りを引き起こすリスクが高まるでしょう。
設計段階で将来の拡張性や保守性まで考慮に入れた設計を行わなかった結果、システムが複雑化しすぎてバグが多発し、プロジェクトが破綻することもあるのです。
●テスト設計に不備があった
システム開発の最終的な品質は、テスト設計の質に大きく左右されます。テスト設計に不備があると、致命的なバグや不具合が見過ごされたまま納品されてしまい、「納品されたシステムがまともに動かない」という失敗につながります。
具体的には、テスト観点の不足、テストケースの網羅性の低さ、または実運用環境に近いテストができていないことなどが原因です。
特に、要件定義の認識ズレがテスト設計に反映されていない場合、発注者の求める機能が正しく動作するかどうかの検証ができません。開発が完了しても、ユーザー受入テストで大規模な修正が発生し、納期遅延や追加コストを招く結果となるのです。
●目的の不一致や運用設計不足により導入効果が得られなかった
システムが無事に完成し、稼働を開始したとしても、「導入効果が得られない」場合は、広義の意味でプロジェクトは失敗です。これは、「何のためにこのシステムを作るのか」という目的(発注側の意図)が開発側と共有できていなかったこと、あるいは、システムの「運用設計」が不足していたことに起因します。
最新の機能を搭載しても、現場の業務プロセスに合っていなければ使われず、業務効率化につながりません。また、システムのリリース後の保守・メンテナンス体制、利用者へのトレーニング、トラブル発生時のフローといった運用面を設計初期から考慮していなかった場合、システムが形骸化し、多額の投資が無駄になってしまいます。
プロジェクトの成功は、システムが安定的に稼働し、本来の目的を達成できたときに初めて得られるのです。
システム開発を成功させる方法については、後の項でも紹介しますが、まずは「開発におけるリスク」、「具体的な失敗原因」についてしっかりと理解し覚えておきましょう。なお、原因の項で紹介したウォーターフォールやスパイラルといった開発手法については、別ページでも紹介しています。開発手法の特徴や、適した開発案件などを参考にしたい方であれば、下記ページをご参照ください。
システム開発の失敗事例

システム開発における失敗例として、「成果物に対して大幅な修正を余儀なくされた」という事例を詳しくみてみましょう。期日通りにシステムを受け取ったクライアントから「まともに動かない」というクレームが入ってしまうケースが考えられます。
こうなると、システムの「作り直し」や大規模な修正を余儀なくされます。このように、たとえ納期通りに完遂してもシステムのパフォーマンスが理想とかけ離れていると、クライアントの信頼を失い、クレームへと発展しやすく、追加工数が発生してしまいます。この事例の根本的な課題は「品質管理不足」ですが、プロジェクトを失敗に至らせた原因は、発注側と開発側の双方の問題に分けて考えることができます。
- 1つ目は発注側の問題で「開発知識がなく、希望を伝える努力を怠った」こと。
- 2つ目は開発側の問題で「希望を鵜呑みにし、確認しないまま実装した」したことです。
●発注側:開発知識がなく、希望を伝える努力を怠った
システム開発を依頼する際、発注側に「システム開発に関する知識がほとんどない」というケースは往々にしてあります。
しかし、開発の基本をまったく知らない状態で「こちらが言わなくても知識があるなら察してほしい」というスタンスは、誤認を生みやすく、結果として意に沿わないシステムを自ら作らせるようなものです。
せめて、開発の流れや開発方法といった基本的な知識については事前に把握しておきましょう。発注側にも、自社の業務プロセスを徹底的に分析し、何が課題・問題で、システムで何を解決したいのかを言語化する責任があります。それが難しければ、実現したい目的、希望の機能や妥協点を詳細かつ明確に伝える努力をすることが、理想のシステムを作ってもらうためには重要です。
●開発側:希望を鵜呑みにし、確認しないまま実装した
発注者の意見は「この通りに実装しなくてはいけない」という命令ではなく、あくまで「実現したい」という要望にすぎません。発注側は、単に伝えた通りの機能を欲しているのではなく、開発側の専門知識を活かして、より使いやすく、業務効率を高められるシステムを作り上げることを第一に望んでいます。
しかし、先方の言葉を「絶対的な命令」として受け取り、ただ要望通りの機能を実装するだけであればどうなるでしょう。無理のある実装で使い勝手が悪い、あるいは従来と変わらない使用感であるとなれば、「コストパフォーマンスにまったく見合わない」ということにもなりかねません。
わざわざ開発してもらう必要性を感じられないため、結果として仕様の再調整や大規模な修正依頼に繋がってしまいます。開発側には、要望の実現可能性や、より業務効率を高めるための代替案を積極的に提案するコンサルティング的な姿勢も求められます。
システム開発を成功させるためには
繰り返しになりますが、システム開発における失敗原因の多くは、発注側と開発側のコミュニケーション不足によるものです。これを改善するためには、まずは意識的にコミュニケーションの量と質を増やすことが重要です。
相手の言っていることを「理解した」と思っても、自分の言葉でまとめてから先方にお伝えし、認識にズレがないか確認するという丁寧なプロセスを徹底することが重要でしょう。
議事録の作成と相互確認も欠かせません。特に決定事項は、誰が、いつまでに、何を行うか(WBS: Work Breakdown Structure)まで明確にし、書面で合意しておくと安心です。
また、発注側がある程度のシステム開発に関する知識を有しておくことも、非常に効果的な対策です。ゼロから開発の知識を身に付けるのは困難ですが、システム開発の流れや開発手法、必要な工程といった基本的な知識を身に付けておくだけでも、より円滑なコミュニケーションを取ることができるでしょう。
外部のPMO(Project Management Office)を活用することも、客観的な視点からプロジェクトを推進し、成功率を高めるための方法の1つです。
これらに注意し、積極的かつに質の高い双方のコミュニケーションを取ることで、システム開発の成功率を高めやすくなるのです。
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