システム開発を成功させるためには、プログラミングやコーディングだけでなく、マネジメント能力、ヒアリング能力、論理的思考力といったスキルも必要です。こうしたスキルを持つ人材が不足している場合、「新しい人材の登用」または「外注」のいずれかの方法でカバーすることになります。
本記事ではシステム開発に必要な技術力について解説します。技術をもった人材を登用することによる内製化をする場合と、外部に発注する場合、それぞれのメリット、デメリットをご紹介しますので、人材登用か外部発注でお悩みのご担当者様はぜひご御覧ください。
目次
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システム開発に必要な技術とは?
システム開発は、要件定義にはじまり複数の工程を実行しながら進めます。各工程ではそれぞれ異なる技術力が求められるため、システム開発のフェーズに合わせた技術力を確保することが大切です。
●システム開発工程の概要
システム開発は、以下の工程で進行するのが一般的です。
工程の名称 | どのような作業を行うか |
---|---|
要件定義 | システムの目的や機能を明確にし、ユーザーの要望を整理・把握する |
設計 (基本設計および詳細設計) |
要件定義で定めた内容をもとに、UI(ユーザーインターフェース)や内部機能の設計を行う |
実装 | 実際にプログラムを記述し、システムを構築する |
テスト | システムを実際に稼働させて品質を確認し、バグや不具合を修正する |
運用保守 | システムを運用し、必要に応じて改修やアップデートを行う |
●各工程で求められる技術力
前述した工程ごとに必要となるスキルは、以下のとおりです。
要件定義の工程で必要となるのは、ヒアリング能力や交渉力といったコミュニケーションスキルです。要件定義では、ユーザーの要望をヒアリングしたうえでシステムに搭載すべき機能や性能を洗い出し、その内容をもとに「要件定義書」を作成します。要件定義書の内容をもって「このようなシステムで問題ないか」を開発側・依頼側の双方間で確認をとり、今後の開発の方針を固めていきます。システムエンジニアをはじめ、システム開発のプロジェクト全体を統括する職種であるPM(プロジェクトマネージャー)や、ITコンサルタントが深くかかわる工程です。
設計の工程では、データベース設計やサーバ構築に関する知識と技術が必要です。いわゆるITインフラと呼ばれる部分を構築する工程であり、特に深くかかわる職種としてはサーバエンジニアやアプリケーションエンジニアなどが挙げられます。同時に、システムエンジニアやPMなどの職種も引き続き重要な役割を果たしており、これらのメンバーが「仕様書」と呼ばれるシステムの設計図をまとめます。
実装工程は、設計工程でまとめられた仕様書をもとに実際にプログラミングを行う工程です。実装工程を担うのは主にプログラマーで、JavaやC#、Pythonなどのプログラミング言語と、プログラミング言語ごとのフレームワーク(Spring FrameworkやDjangoなど)を駆使してソースコードを記述していきます。
テスト工程では、パーツごとに動作確認を行う「単体テスト」、パーツごとの画面移動やデータ受け渡しの動きが正常かをチェックする「結合テスト」、本番に近い動作環境で全体を確認する「総合テスト」が行われます。テストエンジニアやデバッガーが主に担当する工程です。バグや不具合が見つかったら、プログラマーへフィードバックをして修正してもらいます。
運用保守の工程では、システムやサーバ、ネットワークが安定して稼働できるように運用します。毎日のメンテナンスを実施するほか、バグや不具合が発生した際の対応を行うのもこの工程です。運用保守を担当するのは、プログラマーやシステムエンジニアであることが一般的です。
●システム開発に必要なそのほかのスキル
システム開発は、PMやシステムエンジニア、プログラマー、サーバエンジニアなどさまざまな職種の技術者が一丸となって行うプロジェクトです。プログラミングやシステム設計の技術だけでなく、以下のスキルも必要となります。
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マネジメント能力:プロジェクトの進行状況を適切に管理し、納期を守る能力
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コミュニケーション能力/ヒアリング能力:顧客やチームメンバーと円滑にコミュニケーションを取る能力
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チームワーク能力:職種や対応領域の枠を超えてほかのエンジニアと協力し、問題を解決する能力
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問題解決能力:論理的思考を駆使してエラーや不具合の原因を特定し、適切な対処法を見つける能力
システム開発は、複数の工程を踏んで進める作業です。全体のスケジュールを俯瞰し、時間やリソースを適切に管理するマネジメント能力は不可欠だといえます。顧客の要望を適切に汲み取り、それを適切にシステムへ反映させるコミュニケーション能力、ヒアリング能力も重要です。また、システム開発にはさまざまな職種・対応領域のエンジニアが参加します。立場や技術が異なる関係者と協力し、問題を解決するチームワーク能力や問題解決能力も求められるのです。
技術力の高い人材を採用するメリットとデメリット
高いスキルを持った人材を新しく採用し、システム開発を内製化するケースもみられます。システム開発には確かな専門知識や技術が必要ですが、新たにエンジニアを雇い内製化することで得られるメリットや注意すべきデメリットについて解説します。
●採用によるメリット
人材を採用してシステム開発を内製化できれば、システム開発に関するスキルやナレッジが社内に蓄積されてシステム開発に関する対応範囲が広がり、企業の競争力が高まります。高い技術を持った人材が中心となって実際の開発業務を行うことで、業務効率化のアイデアも生まれやすくなります。また、開発作業を内製化すれば必要に応じてシステムを柔軟に変更できるのもポイントです。特に、スモールスタートでシステム開発を行うケースや仕様変更を前提としているケースなどに向いています。
そのほかにも、システム開発に精通している人材が増えることで、業務のブラックボックス化を防止できます。さらに、当該の人材を講師役に据えたレクチャーの実施により、ほかの従業員のスキルアップにつなげることも可能です。
システム開発の内製化には、外注費や外部のシステム開発会社とのコミュニケーションコストの削減による費用的、時間的コストの改善も見込めます。浮いた費用を設備投資や人材への投資に使用でき、各種テストの時間も自社内で柔軟にスケジューリングできるため、結果的にシステム全体の品質向上も目指せます。
●採用によるデメリット
人材を採用する際のデメリットは、採用から育成までにコストがかかることです。新しい人材を採用してから実際の業務をこなせるようになるまでに時間がかかるほか、給与や福利厚生といった金銭的なコストも発生します。また、新入社員を対象とした研修やレクチャーによって、ほかの社員のリソースが圧迫される可能性もあります。新しい人材が加わることは大きな変化です。結果的に、チームの連携力や業務効率が一時的に下がってしまうことも考えられます。
外部に発注する際は、必要な労働力を必要なタイミングで確保できるため固定の人件費を捻出せずにすむのが利点です。これに対し、人材を採用して内製化すると人件費が固定費化してしまいます。
また、エンジニアのキャリア採用の難易度は高く、AI技術の発展やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進という背景もあり、エンジニアの需要は今後も増すと考えられます。一方で、経済産業省の予測によると2030年にはエンジニアをはじめとするIT人材が最大で79万人不足するとされています。需要に対してエンジニア人口が不足しているという背景があり、自社が求めるエンジニアを採用することが難しくなっているのです。
くわえて、採用したエンジニアの知識やスキルを自社内で有効活用することは簡単ではありません。エンジニア人材に開発業務が偏り、属人化につながるおそれもあるのです。組織内の情報が錯綜し、作業の重複や連絡ミスといったトラブルが発生することも考えられます。エンジニアの育成だけでなく、チーム全体のコミュニケーション体制を見直さなくてはなりません。
技術力向上のための方法
システム開発を自社内で完結させるにあたっての急務は、自社内の技術力を向上させることです。以下で、技術力を向上させる取り組みの一例をいくつかご紹介します。
●組織内での学習文化の促進
各種研修プログラムやセミナー、ワークショップを開催し、社員の技術力を向上させる取り組みです。研修プログラムの一例として、コーディングのベストプラクティスを意識する機会を設けることが挙げられます。コーディングにおけるベストプラクティスとは、ソースコードの品質や保守性、可読性を高めることを目的としたガイドラインや推奨事項のことです。これらを意識し日々のプログラミングのトレーニングを積むことで、書きやすさと読みやすさ、メンテナンスのしやすさを兼ね備えたコードを書けるようになります。エンジニアとしての知識と経験が豊富な社員をメンター役・講師役に据え、技術力の向上に協力してもらうことも重要です。
●技術力向上のための外部リソースの活用
社外研修やeラーニングを活用し、社員のスキルアップを促進する手もあります。社外研修をセッティングして費用の補助をしたり、外部から専門家を招いて研修を依頼したりする取り組みです。費用の補助や業務量の適宜調整などを行えば、社員が気軽に外部研修へ参加できます。こうした取り組みは、技術力の向上だけでなく外部の技術者コミュニティとのつながりをつくるうえでも重要です。技術コミュニティとの連携を通して、IT技術に対する社員のアンテナが高くなり、モチベーションアップにつながる可能性があります。IT技術に関するトレンド情報もキャッチアップしやすくなり、最終的に、システム開発を内製するにあたって必要な技術力やナレッジを自社内に蓄積できます。
システム開発を外注する場合のメリットとデメリット
社員の技術力を磨き、対応範囲を広げる手段としても内製化は有効な手段です。ただし、自社の状況によっては、人材を育成する費用や時間を確保することが難しいことがあり、システム開発の外注を検討するという場合もあります。以下では、システム開発を外注する際のメリットとデメリットをご紹介します。
●外注のメリット
システム開発会社へ外注することで、専門的な知識や技術を借りられます。さらに、システム開発の技術は多様なフレームワークや開発ツールの登場により、常に進歩しているのが現状です。システム開発会社であれば、「どのような規模で/どのようなプログラミング言語を使い/どのような開発体制で/どのようなフレームワークを使い/どのようなスケジュールで開発すべきか」といったノウハウをひととおり持っているため、開発効率がさらに向上します。トレンドを意識した手法を用いたシステム構築も期待できます。
また、システム開発を外注することで自社のリソースを確保しやすくなり、開発作業は外部に任せて自社内の社員にはより重要度の高い業務へあたってもらうという体制を敷くことも可能です。
くわえて、外注することで人件費の変動費化や設備投資費用の大幅な削減ができるのもポイントです。新しい人材を採用する際は、採用や育成コストのほかに給与や賞与、福利厚生といった固定費用も発生します。外注であれば、必要な労働力を必要なタイミングで確保しやすいため、結果的に人件費を抑えやすくなります。自社で開発環境を構築する必要もなく、時間的、金銭的コストを抑えやすいのが外注する利点だといえます。
●外注のデメリット
システム開発を外注する際は、コミュニケーションコストに注意を払いましょう。外部の会社とやり取りするため、指示や要件が正確に伝わらないことや誤解が生じるなどのトラブルが懸念されます。
特に、オフショア開発ではこの問題が顕著になります。オフショア開発は海外の開発会社や現地法人へシステム開発を委託する形態であるため、物理的な距離をはじめ、言語や文化の違いによる課題が発生することがあります。こうした課題をクリアするためには、管理ツールの導入や指示系統の統一といった対策をとる必要があります。
外部の企業へ情報を提供することで、予期せぬ情報漏洩や不正アクセスなどのトラブルが発生する可能性も考えられます。自社の機密情報やビジネス戦略に関する情報、顧客情報などのデータが漏洩すれば重大なインシデントへ発展します。開発会社のプライバシーポリシーやセキュリティポリシーに着目し、セキュリティ体制がしっかりと整っているか否かをチェックしましょう。
また、一言で開発会社といっても得意分野や開発実績はさまざまです。自社が望むシステムと開発会社の得意分野がマッチしなければ、思うようなシステムは構築できません。技術力はもちろんですが、「どのようなシステムを開発してきたのか」「どのような開発分野を得意としているのか」といった点を確認したうえで外注先を選定しましょう。そのためには、複数の開発会社を比較、検討することが大切です。
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