
現代のビジネスは変化が早く、昨日のやり方が今日も最適とは限りません。そこで企業が力を発揮するために欠かせないのが、業務を見える化して改善を回し続ける仕組みです。本記事では、BPM(Business Process Management/ビジネスプロセスマネジメント)の基本から目的、メリット、実践プロセス、導入時の注意点まで分かりやすく解説します。
目次
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BPMの定義
BPMは、企業が業務プロセスを継続的に改善・最適化するための管理手法です。特定の業務の流れを整理し、分析し、改善を繰り返すことで、組織全体のパフォーマンスを高めます。ここからは、BPMの根っこにある考え方と、なぜ今注目されているのかに続けて触れていきます。
●BPMの基本
BPMの実践は、一定のサイクルに沿って進みます。まず、業務を誰もが理解できる形に可視化します。次に、可視化したプロセスから課題を洗い出し、解決の計画を立てます。改善案を実際に運用し、KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)などの数値で効果を確認します。最後に、効果を検証したうえで再度修正し、改善を続けます。いわゆるPDCA(Plan-Do-Check-Act/計画・実行・評価・改善)を、業務プロセスに組み込むイメージです。
●注目される背景
BPMが注目される背景には、グローバル競争の激化や法改正の頻度、顧客ニーズの多様化があります。DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業にとっても、BPMは土台です。非効率な手順をそのまま自動化しても効果は限定的だからです。また、担当者の経験や勘に依存する属人化からの脱却も重要なテーマです。BPMは標準化と可視化によって、誰が担当しても同じ品質で業務が回る状態をつくります。
BPMの目的
BPMの目的は、業務効率の向上、コストの削減、そして組織全体の力を引き出すことです。ここでは、継続改善の仕組みと、組織力の底上げという二つの柱で説明します。
●継続的な業務改善
BPMでは、PDCAサイクルを繰り返し実践することで、業務のやり方を常に見直し、より良いものへと進化させていきます。業務は一度決めたら終わりではなく、現場での気付きや改善点を次のアクションに反映しながら、少しずつ成長させていくものです。たとえば、「承認に平均3日かかるプロセスを1日以内に短縮する」「問い合わせ対応の完了率を95%以上にする」といった具体目標を置けば、成果が測れ、次の手が打ちやすくなります。
●組織全体の力を高める
BPMはタスクの効率化だけでなく、組織力を底上げします。業務の標準化により属人化を防ぎ、突然の退職や異動でも業務が滞りにくくなります。OJT(On-the-Job Training/職場内訓練)も効きやすくなり、新人や異動者が早く戦力化します。さらに、業務を隅々まで捉えることで、部門間の壁を越えた情報共有が進み、協力体制が整います。
BPMのメリット
BPMのメリットは、可視化、根本原因の解決、生産性向上、変化対応力の強化、IT投資判断の精度向上と、多方面に及びます。ここからは、具体的に見ていきましょう。
●業務全体を可視化できる
プロセスを図やフローで整理すると、業務の全体像が明確になります。ボトルネックや無駄な作業、不要な承認、重複入力といった非効率な箇所が可視化されます。部署をまたぐ引き継ぎの実態も把握しやすくなり、連携上の課題を発見できます。
●根本的な課題を解決できる
BPMは対症療法ではなく、原因にアプローチします。たとえば「請求処理が遅い」なら、担当者へ「急いで」と指示するのではなく、承認の段数やデータの分散といった構造的な要因を見直します。プロセスを再設計すれば、恒久的な解決につながります。
●生産性を向上できる
重複作業や待機時間を減らせば、従業員は付加価値の高い業務に集中できます。標準化により属人性が薄れ、分担や応援がやりやすくなります。そこで生まれた時間を、新商品の企画や顧客満足の施策に振り向けられます。
●変化に強い仕組みを持てる
プロセスが可視化・標準化されていれば、法改正や市場変化があっても、影響範囲を特定して迅速に修正できます。組織の“変化対応力”が底上げされます。
●IT導入を判断しやすくなる
BPMは、IT投資の優先順位づけに役立ちます。RPA(Robotic Process Automation/ロボティック・プロセス・オートメーション)やクラウドを「どこに効かせると効果が高いか」を見極めやすくなります。自動化に向く定型作業と、人の判断が必要な作業の線引きも明確です。ROI(Return on Investment/投資対効果)も測りやすくなります。
BPMと他の手法の違い
似た用語との違いを押さえると、BPMの立ち位置がクリアになります。ここではBPR、BPMS、BPMNを簡潔に整理します。
●BPMとBPRの違い
BPMは継続的な改善、BPR(Business Process Re-engineering/ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は一度に大きく作り替える改革です。両者は対立ではなく補完関係を築けます。違いは次のとおりです。
| 比較項目 | BPM(継続的改善) | BPR(抜本的改革) |
|---|---|---|
| 範囲 | 特定プロセスが中心 | 組織や戦略を含む全体 |
| 手法 | 段階的・累積的 | 一度きりの再設計 |
| 期間 | 長期・継続 | 短〜中期プロジェクト |
| 推進主体 | 現場主導のボトムアップ | 経営主導のトップダウン |
| リスク | 比較的低い | 比較的高い |
●BPMとBPMS・BPMNの違い
BPMは「手法」です。BPMS(Business Process Management Suite/System/BPM支援システム)は、その実践を支える「ツール」です。BPMN(Business Process Model and Notation/業務プロセス・モデリング表記法)は、誰が描いても同じ意味で伝わる「表記ルール」です。関係は「手法をBPMNで描き、BPMSで運用する」と覚えると整理しやすいでしょう。
BPMの実践プロセス
実践はPDCAに沿って進みます。ここでは各フェーズの要点を紹介し、次のアクションにつなげましょう。
●業務の可視化
現状の業務を洗い出し、フローチャート化します。担当者、手順、使うシステムや帳票、意思決定のポイントを整理し、関係者全員が同じ絵を見られる状態を作ります。暗黙知を形式知に変える第一歩です。
●課題の特定と改善計画
可視化したフローを見直し、「この作業は本当に必要か」「承認は適正か」「もっと簡単にできないか」を検討します。無駄や遅延の要因を特定し、あるべき姿(To-Be)を設計します。改善案が複数ある場合は、シミュレーションで効果を事前に見極めます。
●運用とモニタリング
設計した新プロセスを現場で実行します。処理時間、コスト、エラー率などのKPIを収集し、目標値と比較して効果を確認します。ダッシュボードで進捗や滞留点を見える化すると、早期の手当てが可能です。
●再設計と継続改善
検証結果をもとに、プロセスを再調整します。目標を達成したら標準化して定着させ、未達なら原因を深掘りして次の改善につなげます。ここで終わりではありません。再び計画に戻り、改善のサイクルを回し続けます。
BPMツールとは?
BPMツール(BPMS)は、BPMのライフサイクル全体を支援するソフトウェアです。議論で終わらせず、実行と測定を日常に組み込むための基盤になります。主な機能は次のとおりです。
- モデリング機能:業務をBPMNのフロー図として整理します。
- シミュレーション機能:改善の効果や影響を事前に検証します。
- モニタリング機能:運用後の状況を監視し、KPIを可視化します。
- 連携機能:ERP(Enterprise Resource Planning/基幹業務システム)やCRM(Customer Relationship Management/顧客関係管理)などとデータ連携し、エンドツーエンドで最適化します。
BPM導入の注意点
BPMの成功には、「プロセス」「人」「テクノロジー」の三位一体が欠かせません。ここでは導入時に外せないポイントをまとめます。
●目的を明確にする
「BPMを導入すること」を目的化しないようにします。具体的で測定可能な数値目標を置きます。例として「承認時間を平均3日から1日以内へ」「問い合わせ対応完了率を95%以上へ」といったKPIを設定します。ゴールが明確だと、効果測定と意思決定が楽になります。
●現場と協力する
現場は業務のプロです。可視化から課題抽出、改善策づくりまで、初期から巻き込みましょう。なぜ取り組むのか、どんな利点があるのかを丁寧に共有し、合意形成を図ります。影響の小さい範囲から試し、成功体験を横展開すると進めやすいでしょう。
●教育と定着化を行う
ツールの操作だけでなく、BPMの考え方や改善の基本スキルを学ぶ機会を用意します。定期レビューや改善提案の仕組みを設け、改善を文化として根づかせます。導入して終わりにしないことが要点です。
BPMで組織の成長を加速しよう
BPMは、業務を継続的に良くしていくための管理方法です。属人化を解消し、変化に強い仕組みを作り、DXやRPAの効果を最大化する土台になります。中長期でPDCAを回し続けるほど、組織はしなやかに強くなります。では、最初の一歩として何をするか。まずは一つのプロセスを選び、現状を可視化してみましょう。
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