システム開発における成果物は、プロジェクトの段階ごとに作成される文書やソフトウェアなど、各工程が正しく完了している証明となります。
システム開発の発注を検討している企業の担当者は、システム開発会社との重要なコミュニケーションツールである成果物について、正しく理解しておかなければなりません。
例えば、似たような意味合いで混同しやすい「成果物」と「納品物」の違いを踏まえて成果物の種類を明確にし、適切な管理を行うことで、スムーズなプロジェクト進行につながります。
本記事では、成果物の種類や管理する際のポイントについて詳しく紹介します。ぜひ、システム開発プロジェクトの成功にお役立て下さい。
目次
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システム開発における成果物とは
システム開発における成果物は、プロジェクトの各段階で作成された証拠や成果を示す文書やソフトウェアなどです。
成果物があることで、システム開発の各プロセスが正しく完了した証明になるため、プロジェクトを安心して進められます。
ここでは、システム開発の成果物を正しく理解するうえで、次の流れに沿って解説します。
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成果物の種類
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成果物の一つ「ドキュメント」とは
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成果物と納品物の違い
一つずつ見ていきましょう。
●成果物の種類
システム開発の成果物は次の3つに分類されます。
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中間成果物
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最終成果物
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受領物
それぞれの成果物の違いを次の表にまとめました。
内容 | 具体例 | |
---|---|---|
中間成果物 | 途中段階で進捗を把握するための成果物 | 契約書、設計書、開発途中のコード、タスク管理表など |
最終成果物 | 最終的に制作を目指している成果物 | 完成したシステムやプロジェクト報告書など |
受領物 | 開発を進めるうえで、開発者が外部から提供された成果物 | 開発者がクライアントや外部ベンダーから受け取ったソフトウェアなど |
成果物の違いを理解し、適切にプロジェクトを進めていきましょう。
●成果物の一つ「ドキュメント」とは
システム開発における「ドキュメント」とは、システムの要件、仕様、設計などを詳細に記載した文書のことで、プロジェクトの重要な成果物です。
ドキュメントの文書を作成して保管することにより、開発の過程が透明になり、後々の参照や理解にも役立ちます。
また、ドキュメントは、発注者と開発チーム間での認識のズレや間違いを未然に防ぐ役割も果たし、システム開発のプロジェクトには欠かせません。
適切なドキュメントを共有することで、双方の間のコミュニケーションが円滑になり、よりスムーズなプロジェクト進行につながります。
●成果物と納品物の違い
システム開発プロジェクトにおける「成果物」と「納品物」には明確な違いがあります。
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成果物:プロジェクトの各工程で生み出される成果の証となるもの
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納品物:最終的に顧客に納品する成果物のこと
プロジェクト管理における成果物には、文書だけでなく、各種データや図面、図面、タスク管理表などさまざまなものがあります。
一方、納品物は成果物の一部に過ぎず、全ての成果物が顧客に提供されるわけではありません。
例えば、プロジェクト進行中に作成される中間報告や内部でのみ使用される文書などは、顧客には渡されない成果物です。
システム開発を行う際には、成果物と納品物の違いを正確に理解し、適切に管理することが重要です。
システム開発における成果物を管理する際のポイント
システム開発を円滑に進めるためには、成果物の適切な管理を行い、発注者と開発者との間で認識のズレがないようにコミュニケーションを密に図る必要があります。
ここではシステム開発における成果物を管理するためのポイントを5つ紹介します。
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成果物を明確にする
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工程ごとの成果物をリストアップする
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管理ルールを明確にする
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成果物の内容を関係者全員に共有する
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管理の振り返りも行う
それぞれのポイントを詳しく解説します。
●成果物を明確にする
システム開発の成果物管理において、各プロセスの成果物が何かを明確にすることは重要なポイントです。
何を成果物とするかを明確にせずにプロジェクトを進めてしまうと、チームメンバーがバラバラに動いてしまって、意思統一を図れない可能性も生じます。チーム全員が共通の目標に合わせて効率的に進めるためにも、プロジェクトの開始時に、何を成果物とするかをはっきりさせることが大事です。
成果物が明確であれば、プロジェクトの全体像が定まり、チーム内での認識のズレを最小限に抑え、目標達成に向けた具体的な計画を立てやすくなります。成果物を初期段階で明確にすることで、プロジェクト全体の進行をスムーズにし、目標達成へと導く道筋を築けるようになります。
●工程ごとの成果物をリストアップする
システム開発の工程ごとの成果物をリストアップすることで、プロジェクトの進捗を具体的に把握しやすくなります。
そして、プロジェクト進行の遅れや問題が発生した場合にも、迅速に対応できます。
例えば、次のようなものも全て成果物にあたります。
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システム開発の企画書・計画書
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見積もり書・契約書
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システム設計書
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Webサイトのコード
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デザイン会社に依頼した制作物
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タスク管理表
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最終報告書
成果物のリストアップにより、プロジェクト管理者はどの工程が完了し、何が残っているのかを正確に認識でき、リソースを適切に割り当てやすくなります。
●管理ルールを明確にする
成果物の管理ルールを明確にすることは、プロジェクト内での一貫性を保つために重要です。
ルールが統一できていなければ、チームのメンバー同士で認識のズレが生じたままプロジェクトが進行してしまい、間違いや余計な手間が発生する可能性も高まります。
例えば、以下のように具体的なルールを設けることで、チームメンバー間での情報共有が容易になります。
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ファイル名の決め方
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保存場所の指定
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使用するツール
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WordやExcelなどのフォーマット
管理ルールを明確にすることで、作業の効率化が図れ、プロジェクトの進行がスムーズになります。
●成果物の内容を関係者全員に共有する
システム開発のプロジェクト管理において、関係者全員と成果物の内容を共有することが重要です。
もしチーム内や発注者との情報共有が不十分であれば、間違いや問題が生じた場合に適切なアドバイスやサポートを受けられず、プロジェクト進行に支障がでる可能性もあります。
成果物は、プロジェクトの進捗状況を示す重要な指標であり、内容を共有することで、クライアントやプロジェクトチーム全体の理解と協力を促します。
具体的には、プロジェクト管理ツールを活用して成果物を共有することも方法の一つです。
管理ツールにより、ファイルやデータのアクセスが容易になり、プロジェクトの進捗に関する情報が常に最新の状態で共有されます。
成果物の共有を通じて、プロジェクト関係者同士の円滑なコミュニケーションを促進しましょう。
●管理の振り返りも行う
プロジェクト完了後に成果物管理の振り返りを行うことは、継続的な改善のために重要なプロセスです。
振り返りをまとめた資料は、必要に応じて、発注者、上長、チームメンバーなどのプロジェクト関係者に共有しましょう。
システム開発のプロジェクトにおいて、何がうまくいったか、そしてどのような点の改善が必要かを把握するための貴重な機会となり、繰り返すことで社内にノウハウが蓄積します。
成功した点と改善が必要な点を把握して振り返ることで、次回のプロジェクトへの教訓となり、組織全体のパフォーマンス向上につながります。
システムの開発工程別にみる成果物
システム開発のプロジェクトでは、工程ごとに異なる成果物が必要とされます。
システム開発の一般的な工程は次のとおりです。
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要件定義
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基本設計
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詳細設計
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開発作業
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各種テスト
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リリース
ここでは、リリースの工程を除く各工程の成果物例を紹介します。
●要件定義における成果物
要件定義の段階では、「提案依頼書(RFP)」と「要件定義書」が重要な成果物です。
提案依頼書は、システム開発やWebサイト構築プロジェクトを計画する際に、発注側企業が開発・制作側に具体的な提案を求めるために作成する文書です。
具体的にはプロジェクトの目的、概要、具体的な要件、制約条件などが記載され、開発・制作側に対して、どのようなシステムやWebサイトを構築してほしいのか、イメージを明確に伝える内容が含まれます。
一方、要件定義は、開発側が行うプロセスで、発注側が望むシステムの具体的な要件や要望、現在の課題を理解し、解決するために必要な作業内容を明らかにします。要件定義の成果物として作成する文書が要件定義書です。
要件定義の成果物を通じて、発注側と開発側の間での明確な理解と合意形成を促します。
●基本設計における成果物
基本設計の段階で作成される主な成果物は、「基本設計書(外部設計書)」(外部設計書とも称される)です。
外部設計は、ユーザーが直接目にしたり操作したりする画面デザインや操作方法など、インターフェースの設計のことです。
基本設計書内では、業務プロセスの流れ、画面のレイアウト、機能間の連携などに関する詳細をまとめます。
基本発注書によって、開発者は発注者との合意をはかり、まとめた仕様をシステムの具体的な要件に反映させ、開発を進めていきます。
●詳細設計における成果物
詳細設計段階で作成される主な成果物は、「詳細設計書」(または内部設計書)です。
総裁設計の段階での設計で定義するのは、システムの内部構造に焦点を当てたもので、機能毎の処理フローやデータ処理の詳細、ユーザーには見えない内部の構造などです。
外部設計がシステムの外から見える部分を定義した後、詳細設計では外部設計に基づいて、システムの内部動作や構造を決定します。
詳細設計書には、内部仕様が細かく記載され、エンジニアが開発を進める際の具体的なガイドラインとなります。
●開発作業における成果物
開発段階における主な成果物は、「ソースコード一式」や「実行可能モジュール」などです。
開発作業の段階では、設計段階で定められた仕様書や設計書を基に、具体的なプログラミング作業が進行します。
機能を細かく分割し、複数の開発者がそれぞれの部分を担当することで、システム全体が構築されていきます。
各開発者が行うのは、特定のモジュールや機能のコーディングです。
開発作業のプロセスで特に重視されるのは、誰が見ても理解しやすい、清潔なコードの作成です。
そのためには、コードの可読性を向上させる命名規則の適用や、コーディングスタイルの統一が求められます。
●各種テストにおける成果物
テスト段階では、「テスト仕様書」を含む多岐にわたる成果物が生成されます。
テスト工程の目的は、開発されたシステムが全ての要件を満たしているかを徹底的に検証することにあります。
主なテストは以下の4つです。
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単体テスト:個々のプログラム構成要素が仕様通り正確に動作するかを検証
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結合テスト:異なるプログラム構成要素間の接続やデータのやり取りが正しく機能するかを確認
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システムテスト:開発されたシステム全体が、設定された要件や仕様に従って正しく動作するかを検証
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運用テスト:実際の運用環境でシステムが問題なく機能するかを確認
テスト段階の成果物には、各テストにおける詳細なテスト計画と仕様を記載したテスト仕様書、実行されたテストケース、収集されたテスト結果、性能評価レポート、品質評価レポートなどが含まれます。
テストはシステムの耐久性、処理速度、そして全体的な品質を詳細に検証し、改善すべき点を特定するために不可欠です。
特に運用テストでは、実際の環境でシステムが要件通りに機能するか最終確認を行い、問題がないことを確認できれば、システムはリリースの準備が整ったと判断されます。
最後に、システム開発の進捗を適切に把握するためには、必要な成果物の基本を正しく知っておくことが大切です。
ぜひ本記事で紹介した内容をシステム開発の発注やプロジェクト進行にお役立て下さい。
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